あらすじ
ここに書かれたことは実現しなければならない――好色で、酒好きで、暴力癖のある作家・須賀庸一。業界での評判はすこぶる悪いが、それでも依頼が絶えなかったのは、その作品がすべて〈私小説〉だと宣言されていたからだ。他人の人生をのぞき見する興奮とゴシップ誌的な話題も手伝い、小説は純文学と呼ばれる分野で異例の売れ行きを示していた……。ついには、最後の文士と呼ばれるまでになった庸一、しかしその執筆活動には驚くべき秘密が隠されていた――。真実と虚構の境界はどこに? 期待の新鋭が贈る問題長編!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
文身だと刺青という意味にもなるが本作はそれとは少し違う。分身、とでも言うべきなのだろうがそれともまた違う。ではやはり文身なのか、と延々にループする。
ロクでもない男たちの物語ではある。救いようがない。
ただ、そのロクでもない人物たちから生み出されたものが面白いのだから仕方がない。
本作の展開が見事だった。次第に虚構と現実が混ざり合ってその境界線が見えなくなってくるのだ。凶悪さとも違う、本当にどうしようもない人間たちの虚無的視点とも言えばいいのか。それに射抜かれるようだった。
Posted by ブクログ
いやいやいや…ちょっと待って…
こんな読後感、初めてかも。
「夜更けより静かな場所」で、岩井圭也さんを知り、他の作品も読んでみたいと思い、こちらを手に取りました。また全然違う作風。
読んでくうちに内容に飲み込まれていました。
今も飲み込まれたままです。
Posted by ブクログ
『文身』という言葉を初めて知りました。
刺青のことだそうですね。
虚構が現実になる、というよりも、自分の手で現実にしてしまう。という表現の方が近いように、兄の人生は優秀である弟の手中にある。
しかし、それすらも兄自身が望んだことだとしたら、本当に虚構を生きていたのは弟の方だったのかもしれません。
終盤は読者である私も『どちらが虚構でどちらが現実なの?』といった具合に境目がわからなくなってしまいました。これも作者の狙い通りなんだろうな。
わたしたちの身の回りにもきっと、現実だと思ってた中に虚構が含まれているんだろうと思います。気づかないまま一生を終えることもあるでしょうけど。
おもしろい読書体験でした!
Posted by ブクログ
うわ〜、凄いとは聞いてたけど、これは凄い!
よくこんなプロット考えつくな〜
「虚構と真実の境目に迷い込んでみませんか?」
岩井さんのこの言葉どおり、まんまと迷い込んでしまった。
弟の描く私小説に、翻弄される兄の人生。
大筋の話だけでも先が気になって読む手が止まらなかったけど、最後の方で降りかかる、???の嵐。
そしてラスト1行で更なる、???の嵐。
どこまでが虚構なのか、いったい何が真実なのか?
めっちゃ翻弄された。。
今も頭の中で、え?どういう事?ってぐるぐるしてる。
岩井さんの思惑にしっかりハマってしまった。
人によって解釈が違うだろう作品。
また時をおいてじっくり読み直してみたい。
その時はまた違った捉え方をするかも知れない。
すっきりはしないけど、めっちゃ面白かった!
Posted by ブクログ
またまた岩井さんにやられました!
この前読んだ『水よ踊れ』
読む手が止まりませんでした
気づけば一気に読み
そして思いました、
「あぁ、すごい!」と
そのときの感覚が再びやって来ました
この『文身』で
気づけばまた一気に読み
そして今度は、
「あぁ、すごい!」じゃない
「あぁぁぁぁぁぁ、すごい!」だ
「あぁぁぁぁぁぁ、すごい!」のこの気持ちをレビューに書こうとチャレンジするも…
「あぁぁぁぁぁぁ、ダメだ!」
書けない!
この凄さが書けない!
ま、いいっか
書くのを諦めました
「あぁぁぁぁぁぁ、すごい!」
もうこれだけでこの作品の凄さを感じ取ってください!
Posted by ブクログ
ブク友さんの熱いレビューをみて、読まずにはいられなくなった本。岩井圭也さんは初読み。
これは、すごい!
読み終えてタイトルの「文身」という言葉(入墨という意味があることは知らなかった)、装丁の石(虹の骨)を改めて見ると、その意味がぐっと心に押し寄せてくる。
物語の中の小説は多くの人に嫌悪感を持たせるであろう内容なのに、これほど惹きつけられてしまうのが不思議。
そして、ラストは「え?どういうこと???」となりながら、何が真実で何が虚構なのか最後の最後まで迷いながら読んだ。
岩井さんの他の作品も読まなくては!
Posted by ブクログ
初めての作家さん。
一気に引き込まれた。
分かっていたはずの虚構と現実が、最終章でぐちゃぐちゃになる。何度も読み直して、時々思い返して悩む。何日も掛けてようやく答えが出た。
娘明日美を描いてこなかった理由。しばらく放心した。
Posted by ブクログ
どんでん返しのどんでん返し。
1回目のどんでん返しではちょっとガッカリしたけど
やはりラストは裏切らなかった!
よしっ!
しかし私小説って面白いのかな。
文章読んだ感じではそんなにヒット作になるような作品ではなかったけど。(奥さんの死のとこは除く)
とりあえず弟の人生は嫌だ。
波乱万丈だった兄の方がマシだ。
Posted by ブクログ
己の分身にして、決して消えることのない刺青ー文身
ちょっとこれ凄いじゃないのよあーた(いきなりの美川憲一)
いやもうこれ★3以下の人とは友達になれないわほんと
そのぐらい凄い!
特に最後の一行はゾワゾワゾワーっと鳥肌が立ちまくりです
そして消えない
まさに鳥肌が文身のよう!
よっしゃ!うまいこと言うたった
小説というのはもともと虚構であるわけなんだけど、私小説という作者の実体験を元にした小説が真ん中にいることで、どこまでが虚でどこまでが実かの境界線が曖昧になってるんです
そしてラストに向けてどんどんぐちゃぐちゃになっていく感じが見事すぎるのよ
これは虚なの?実なの?虚?実?虚?実?
虚虚実実虚虚虚実虚虚…うきょーー!!
Posted by ブクログ
初めから衝撃的でグッと掴まれた。弟の書いた筋書き通りの破天荒な生き方を兄が実行して生きていく。この二人の切れない絆が、物語がエスカレートしていくにつれて怖かった。だけど後半にまた一番の衝撃があり、最後は頭が混乱。結局庸一の人生は誰が決めたものなんだろう。悲しくて虚しい人生。でも小説だから本当のところはわからないということなんだな。
Posted by ブクログ
うわぁ〜と叫びたい‼︎
完全に弄ばれた感が。゚(゚´ω`゚)゚。
高校生の庸一と中学生の堅次
頭脳明晰な弟と弟に着いていくだけの兄
「弟を信じていれば間違いはない」
この二人が弟の擬装自殺という計画を立て故郷を捨て東京に出るまでの第一章。
昭和30年代頃かな?ノスタルジックな文体に引き込まれていきます。
そこからの怒涛の展開は兄を意のままに操る堅次がサイコパスか?と思える。怖い!薄気味悪い!
堅次にとっての庸一は何なのか?愛か執着かただの道具か?
庸一の発表する私小説で物語は進みます。
壮絶な人生、その私小説に昭和最後の文士と呼ばれるまでの庸一と庸一の人生を創っている堅次。
絶筆となる「巡礼」そして死後に登場する「文身」
ここまでも相当面白いのですが…
ここからがもう読むのが止まらない!
いや待て!そうくるのか⁈と驚き
全てを覆す後半に絶句…
ラストの一行にトドメの一撃です_| ̄|○
岩井圭也さん凄いよ!
地味に面白かったとレビューした「最後の鑑定人」
からの今作‼︎
ぜひ読んで頂きたいわ\(//∇//)
Posted by ブクログ
久しぶりに寝る時間を忘れて読みふけりました。
知り合いに紹介されて「そんな面白いのー?」と疑心暗鬼でしたが、謝ります。
どんでん返し、や、ちょっと変わった設定が好きな人にオススメです
Posted by ブクログ
最後手前までは読んでいて、胸糞悪いなぁなんて思いながら読んでいたら最後…
え、弟さえも?…え?結局??なにが真実で何が虚構なのか…怖すぎる…
衝撃は確実にここ最近の中で一位。
Posted by ブクログ
第4章までは、読み進めるのも嫌なくらい、とっとと飛ばして読んでしまおうと思うくらいだった。が、その後の展開にはやられた。最後の一行が最高。
Posted by ブクログ
私小説,最後の文士.現実と虚構の真実は紛らわしい.
死んだとされる弟の小説ありきの壮絶な人生を生きる兄.そもそも弟は生きているのか?と言う問を最後に投げかけ,そしてラストの1行でひっくり返す.いやもう,モヤモヤしていまだによくわからない.
Posted by ブクログ
私小説は、現実ではない。
虚構と現実が混ざったものである。
では、現実はどうなのか。
虚構を招き入れる″虹の骨″を、私たちは手にすることはできるのか。
そんなことをつらつら考えた。
Posted by ブクログ
面白かった。2度のどんでん返しより、父の存在意義を見出せなかった娘が、最後父と同じ生き方を選択する、それも同じ理由である所が血は争えないというか、そういった親子の絆の描き方もあるのかと感心した。あと庸一の娘を不要と位置付けて小説では描いてこなかった賢次が、兄が亡くなった後最後の文士に明日美を選ぶことで、兄が情をかけていた娘の存在を認めたことにより初めて兄の意思を汲んだ様に取れて、歪な兄弟の絆からまだ解放されない賢次にぞっとする様な嬉しい様な複雑な気持ちにさせられた。
人として生を受けた以上は何か残して死にたい、後世まで語り継がれる自分の存在という何かを。(私が勝手に受け取ったメッセージ)自分の生きる意味を渇望してたようにとれる明日美の最後の独白にひどく共感してしまって、私もこの小説を読んだ意味はそれに気がつくことなんだと思わされてしまった。
Posted by ブクログ
続きが気になってしょうがなかったので、ほぼ一気読みした。
エンディングでは、弟の堅次は生きているのか死んでいるのか、もうどっちが真実なんだか訳わからない状態になってしまった。
庸一の妻、詠子の死に方が本当に作中作「文身」の通りであるならば、詠子も庸一も堪らないだろう。 詠子の台詞。
『〈本当の須賀庸一〉なんか好きじゃないから。あたしが愛してきたのは、傍若無人で社会不適合な、文士の須賀庸一なの。作り物の、虚構の、操り人形の須賀庸一なの。あなたの自由意志なんか知らないし、聞きたくもない』
庸一が、電車の中で会った初対面の一家に対して、泣き喚く弟を泣き止ませるよう兄に命令し、兄が実行する場面、それがその二人のそれ以降の兄弟関係に大きな意味を持った、という、設定が、この作品中唯一といっていい位、「いい話」だった。
プロットは全く関係ないが、作品の匂いとして、米澤穂信さんの『追想五断章』を思い出した。
Posted by ブクログ
凄い作品に出会った。
作品自体がその時代背景があるからなのか、昔好きで読んでいた昭和の文豪の小説を読んでいるような不思議な感覚を感じる。
まずタイトルが「分身」ではなく「文身」。読後考えてみて「分身」でも違和感なくストーリーと共和する気がするが、さらに彫っての「文身」なのだろうと推測。
「現実と虚構」というテーマ、読後に考えてみれば作品全体に蔓延り、読者である自分も作品を読みながら「現実と虚構」が整理がつかずグチャグチャに混ざりなんだかわからない状態になる。
虚構を読んでいるのにその中の虚構に虚構か現実かが分からなくなってくる不思議さ。
そこを上手くミステリー風に仕立てている感じが凄く関心を引っ張られていく。
これは凄い作品だと。
文体や言葉の表情等は違うのだが、太宰治の「人間失格」ような不思議な魅力を感じる、文学史に残るべく作品かとも思う。
Posted by ブクログ
途轍もなく趣味が悪く陰鬱な内容に嫌気が差しながらも、この物語の結末が気になり読み続けた。
自伝や私小説は先にその人の歩んだ人生や経験ありきで描かれるが本作で描かれる私小説はその逆を行く。
小説で書いた内容をなぞる様に、酒好きで暴力癖のある男を演じる須賀庸一。
その裏には兄弟間の秘密が隠されている。
兄弟と言えど別々の人間、何故そこまで?と理解が追いつかないでいると終盤で衝撃の事実に慄く。
その瞬間、人間の多面性がもたらした物に一瞬納得をするものの、それはすぐ裏切られラスト1行で再び驚愕させられる。
余韻が凄まじい 。
Posted by ブクログ
なんとも表現し難い作品でした。
あまりの展開に嫌悪感が募り、顔を背けたくなりながらもどうしても先が気になり読んでしまう。
昔のウッチャンナンチャンのバラエティ番組で『未来日記』というコーナーがあったのですが、それを思い出しました(歳がバレる笑)。司令書に未来の日記が書いてあって、そうなるように自分たちで動いていくのです。
この物語の主人公は兄弟ふたり。15歳の時に偽装自殺した弟が、その後姿を隠して小説を書き続け、兄の名前で世に出す。その小説は私小説として発表する。
「私小説は自然主義の文学であり、現実にあったことでなければ書いてはならないという認識すらある。」
でも普通の私小説と違うのは、弟が書いた小説の内容を後から兄が経験するというところ。
ここまで読んで、え?ということは、序幕で書かれていたあの場面は弟が書いたシナリオの結果なの?と気付き、なんとも言えない嫌悪感が‥‥。
どこまでが事実でどこからが虚構なのか?この兄弟を結びつけているものは何なのか?
何とも言えない薄暗い物語でした。
でも、先が気になってどうしてもページを捲ってしまいました。
Posted by ブクログ
ほんの少し前に読んだ「夜更けより静かな場所」とは
全くテイストの異なる作品。
岩井圭也、二作目だけど全く掴めない作家さん…!
読み心地はとても重く、しんどさを感じつつ、
それでも先が気になる内容。
後半は
ん?どっち?どっちなの?と行ったり来たりの宙ぶらりん状態。
体力気力の必要な読書だった。
人の、何かそこから逃れられない宿命を感じた。
Posted by ブクログ
やっと読み終わった。庸一も堅次もその両親も庸一の妻も理解不能で、この感じ、読んだことあるなと思ったら太宰治の人間失格だった。そういえば、あの小説も、最後の一文でハッとさせられた気がする。記憶が正しければ。
作中の文身は読み進めていくにつれて、どんどん不快感が強まる。幼少期の何気ない一家の様子から、どんどんありえない展開になっていく。一番の転換点は、妻の死を唆すあたり。兄弟が一気に不穏な空気になる。そこからのあまりにもな展開に、顔をしかめながら最後まで一気に読んだ。
最後、どんな終わり方になるのかとおもったら、結局弟は生きているというラストであってるのか?そうだとしたら、結局何が本当で何が虚構か本当にわからない。この、何がなんだかわからない感じ、この本を読む前のレビューで知っていたから、本当にこの感想になったことに今驚いている。けど、このわからない感じは、私は好きじゃない。最後にスッキリするかというと、全くそんなことはない。わたしの読解力では、最終的にこの本のジャンルは、ホラーになる。ただただ怖い。私の理解が追いついてないなら、教えてほしい。でもとりあえず読み終えることができてよかった。凄い本であることは確かだと思う。ただ次は明るい幸せな血の通った話が読みたいとつくづく思った。
Posted by ブクログ
面白くてどんどん読み進めたけれど、「いやちょっと無理あるだろう」という冷めた気持ちがずっと付き纏っていたのも事実。
文章が読みやすく、テンポも良く、ストレスを全く感じずに読めた。この作家さんの本は好きな気が直感的にするので、他の本も読んでみたい。
インパクトのある、面白い本であることは間違いない!
Posted by ブクログ
想像してたものを遥かに超える内容に、嫌悪感を強く感じてしまった。
が、後半に実は書いていたのは弟ではなく本人だったのかという展開に驚きつつ、ラストでまた覆され一体なにが本当なのか。
兄弟の絆は本当にあったのか、あったとしてそれは絆なのか呪いの鎖だったのか。
Posted by ブクログ
ん??どゆこと??そゆこと??物語終盤危うく超ガッカリするところだったが、何とか持ち直してくれ煙に巻かれたような不思議な感覚を残してくれた。そして終始振りまかれた壮絶で陰鬱な感触はなかなかのもの。酒豪で乱暴者で破天荒さに定評のある作家の本当の正体。それは考えることが極端に苦手な平凡な男。頭脳明晰な弟の書いたシナリオどおりに人生をなぞる操り人形だった。ゴーストライターというのは巷でもたまに聞く話だが、本書はゴースト側のパワーバランスが凄い。弟のまぁ恐ろしいこと。凡人には理解しがたい兄弟の絆のお話だった。
Posted by ブクログ
波瀾万丈で破天荒な私生活を小説に綴り最後の文士と言われ亡くなった男が娘に実は自分が小説を書いたのではなく弟が小説を書きそれを自分が実行に移してきただけだったという衝撃的な事実を手紙で送ったことから始まる物語。
自分で決めた事とはいえ表に出ない弟と自分は描いてないのに持て囃され人気者にある兄と関係性の変化がリアルだった。
そして最後に衝撃的な内容が書かれており、さらに最後の一文でまたどんでん返しのようなものが待っている作品。
途中読むのやめようと思ったけど読んで良かった。