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Posted by ブクログ
6編が収められたダークな短編集
*海の子
*僕はエスパーじゃない
*捏造カンパニー
*極楽
*蟻の牙
*堕ちる
短編なのをすっかり忘れて読み始めた
第一話「海の子」
告別式を終えた日の夕方、
妻を病で亡くした佐々木は、二十歳の息子・海太と仏壇の前にいる場面から始まる。
私は一瞬で物語に引き込まれ、ドキドキしながら50頁ほど一気に読み進めた。
えっ?終わり?
まだ続くよね?
突然、闇の中に放り出された気分。
第二話「僕はエスパーじゃない」
あれ?
さっきと違う話?
今度は、幼い息子を持つ夫婦の話だ。
私はここでようやく短編集なんだと思い出す。
これまたラストで闇の中に置き去りにされた。
最後の「堕ちる」
地方の美術館に赴任したばかりの学芸員が主人公。
めちゃくちゃ怖いよ。
でもこれが一番良かった。
人間の欲望は、なんと恐ろしいんだ。
6編どれもブルっと震える、こわ~いお話。
まさにタイトル「暗い引力」の通り、
主人公たちは闇の世界へと転落していくのだ。
岩井圭也さんの作品を読むのは4冊目だけど、どれも作風が違うんだ。
スゴイなぁ。
Posted by ブクログ
暗い引力。実に的確なタイトルだった。
岩井圭也氏は心癒される作品が多いと思っていたが、この小説は心の暗部をじわじわ見せつけてくる。
各短編は勧善懲悪ではない結末がまた唸らせる。2話目の夫婦の話は実に身につまされる話で、このような夫婦関係に自らの生活を顧みて疑心を浮かばせてしまった程である。
人が暗い引力に囚われる様を淡々と描くこの小説はお薦めです。
Posted by ブクログ
面白かったです。
全体的に暗い雰囲気のお話が多いですが、イヤミス系が好きな方とかはハマるかなと思う。
意思を持たない男の話
認知症のふりをしていたら認知症になってしまった人
成り上がりたい学芸員
夫をブラック企業に殺された妻の復讐
バリエーション豊富で良きでした。
Posted by ブクログ
あなたも引き寄せられる… 人間の欲と醜さを、皮肉たっぷりに描いたミステリー短編集 #暗い引力
■きっと読みたくなるレビュー
丁寧なプロットで綴られるミステリー短編集。どんでん返しというより、皮肉のスパイスが効いた良質イヤミスですね。
本書のタイトルどおり、人間のダークな部分をしっかり描写されていて、読んでいくうちにゲンナリしてくること請け合いですよ(にっこり
■短編ごとの感想文
〇海の子
子どもができなかった夫婦と養子の物語。母は他界し、父が息子に幼児を引き取った時の話をするが…
そうなりますよね…ってお話ですが、ひとつ間違えば自分にも起こりうるから全く笑えない。しかし最後の一文のキモさは、なかなかの衝撃。これでこそ人間ですよ。
〇僕はエスパーじゃない
育児に協力的な夫と、仕事人間の妻。夫婦の在り方と価値観を見つめなおす物語。
私も主人公の彼に似ているところがあるので、考え方や気持ちが正直よくわかる。こういう性格って、まるでモテないんですよね、アハハ! 最後の結論は自明なんですが、はっきり言ってどっちもどっちだし、そもそも子どもが最優先になっていない時点で双方悪だと思うわ。
〇捏造カンパニー【おすすめ】
学生時代の同級生たちがペーパーカンパニーで詐欺を行っていた。そこに税務署の立ち入り検査が入ると分かり…
大変よくできた、全くもって救いようのないお話。キャラも構成もミステリーとしても出来が良く、そのまま映像化できそうです。しかし、世も末だなぁ…と感じざるを得ない。
〇極楽
パチンコの借金で苦労している老女、解決するために考えた奇策とは…
筋書きは想像できますが、何もかもがリアルに書かれていて、かなりコワイ。施設に入っている父を思い出しました、近いうちに会いに行かなきゃ。
〇蟻の牙
過重労働で夫を失った妻の復讐劇、会社を守る社畜たちの卑劣な手口とは…
手紙、メール、記事、書面などだけで構成される短編。地の文が一切ありません。淡々と示される文章を読んでいるだけなのに、人の怒りや醜さがありありと伝わってきます。ただ本作が一番読んでて悲しくなりましたね。どんな復讐劇も、どこか報われないんですよ。
〇堕ちる【おすすめ】
大学での美術研究から学芸員になった女性。成功を胸に秘めるも既に若くはなく、経済的な理由で地方都市の美術館に就職していた。しかしその美術館で、これまでに見たことないほど魅力的な絵画に出会ってしまい…
面白い! 何より好きなのは、人間の欲が迫力満点に書かれている点。主人公の女性は興奮の鼻息が聞こえるようだし、画家の変態性、モデルの落ちっぷりが下品。「価値観」はさっぱり理解できないんだけど、「欲望」だけは理解できるですよね。きれいごと言っても、人間なんて所詮こんなもんすよって感じが愛せる。
闇落ちしていく感覚がクセになる作品ばかりでしたね、楽しませていただきました。
Posted by ブクログ
「海の子」
「僕はエスパーじゃない」
「捏造カンパニー」
「極楽」
「蟻の牙」
「堕ちる」
6話収録の短編集。
それぞれ独立した作品だが、全編に共通して不穏な気配が漂っている。
人は誰でも嘘をつく。
ひとつの嘘が新たな嘘を呼び、はずみを付けながらどんどん悪い方へと転がりだす。
まさに暗い引力に導かれてでもいるように。
全話陰鬱で後味が悪いが、借金取りから逃げる為に逃走計画を立て認知症患者になり切る女性を描いた「極楽」はオチまで含め秀逸。
岩井圭也さんは長編も良いが短編も読ませてくれる。
嘘つき達のなれの果てを描いたダークな作品集。
Posted by ブクログ
仄暗いお話と聞いていたけど覚悟していたほど胸糞悪く…はなかったかも。世にも奇妙な物語のような、一癖ある短編集
ネタバレ感想です
海の子
・養子の息子が実は愛人に産ませた実の子でそれを知った息子に復讐されるお話。やや胸糞。
僕はエスパーじゃない
・自分の意のままに操れる優柔不断な男性と結婚したつもりが、息子も親の顔色を窺う子に育っていると気づいて離婚をきりだすお話。さて、彼は最後に自分を愛しているかという妻の問い、2択を間違えずに答えられたのでしょうか? 妻にとっての正解は彼の正解でなさそうだけれど。
捏造カンパニー
・これ、お話としてすごく面白かったです。1番すきかも。融資目当てでペーパーカンパニーを作ったら税務調査がくることになり、会社を急増するも、その税務調査は詐欺で…?
詐欺師を問い詰めるために税務署に確認の電話をいれたことがあだになり本当に税務調査がくるお話
極楽
・パチンコで作った借金から逃げるために認知症のふりをしていたら本当に認知症を発症するお話。せっかく息子が迎えにきてくれたのにね
認知症の方の見え方がリアルでこわかった。猿…
蟻の牙
・企業の不祥事に連鎖する人の死が資料の形式で淡々と語られる物語。こういう形式も1話くらいあると面白い
堕ちる
・この小説の真髄のような胸糞! 自分の手柄のために人を殺めて絵画を手に入れた学芸員のお話
Posted by ブクログ
岩井圭也さんが描く『世にも奇妙な物語』的な作品。
岩井圭也さんが書くイヤミスってこういう感じか…と6編それぞれに味わって拝読しました。
特に印象的だったのは『海の子』『蟻の牙』の入念な復讐劇、『極楽』の結末はゾッとした。
Posted by ブクログ
仄暗い不穏さが漂う短編集。
読みやすいし、どの話も最後はゾワっとして面白いとは思うけど、個人的には胸糞悪さが足りなくて、ちょっと求めていた感じと違った。
Posted by ブクログ
イヤミス系が読みたくて手に取った本。
6つの短編が入ってるのですが、いやー、読んでると本当に胸糞悪くなりましたね笑
でも、なんだかんだこういう人間の醜悪さが表現された作品にも手が伸びるのはよい傾向かなと。
Posted by ブクログ
イヤミス的な短編集。読後感は重め。
「僕はエスパーじゃない」「捏造カンパニー」「堕ちる」が面白かった。
「僕はエスパーじゃない」は、子どものときから人の顔色を読むのが得意な男性が結婚し子どもが生まれ、常に妻の顔色を伺いながら妻の望むように家事育児をしていくが、突然離婚したいと妻に告げられる話。常に他人任せの主人公に問題があるかと思えば、妻側の思惑も合わさり、結婚とはなんだろうかと考えさせられた。
「捏造カンパニー」は、会社が倒産したりブラックだったりで無職になった元同級生の3人がペーパーカンパニーを作って不正に金を集めているところに税務署の監査が入ることになった話。騙し合いのスリルが面白かった。うっかり3人を応援したくなってしまった。
「堕ちる」は学芸員の女性が就職した地方の美術館でとある画家の絵に出会い、その展示会を開くために画家について調べていく話。亡くなった画家の、描くことへの異常なまでの欲望と、主人公のキュレーターとして名を残したいという野望が混ざり合い、意外な方向に話が転がる最後は夢中で読んだ。