あらすじ
わたし、悪くない。ひとりで破滅なんて絶対しない。妻に先立たれ養子の息子と向き合う老人。仕事が忙しい妻を支える気弱な夫。地方の美術館でくすぶり続ける学芸員。倒産や理不尽なリストラで無職となった同級生たち。借金苦から逃れようともがく老女。会社ぐるみで不正を隠蔽する社畜たち。彼らに正論は通じない。ひとつの嘘から、転がりだす悪意の連鎖。強がり、もがき、這い上がろうとする嘘つきたちが最後につかんだものは?
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Posted by ブクログ
粒揃いの短篇6作品。真綿で首を絞められるが如く、頁を捲るごとに息苦しくなるが、読まずにはいられない。超リーダビリティ。人間の醜悪な業を明らかにし、闇へと誘う著者の筆力に終始圧倒された。
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暗い引力。看板に偽りなし。悪の囁きに吸い寄せられるような短編集で、どの話もワンパターンではなくバリエーション豊富でクオリティが高かった。全作面白かった。なかでもお気に入りは『海の子』→反吐が出るようなオチ。偽善者が大嫌いなので終始ゾワゾワ。『捏造カンパニー』→こういう頭脳戦?は面白くて読む手にも力がこもる。『蟻の牙』→往復書簡は苦手なのだがこれは興味深かった。『堕ちる』→これが一番タイトル作として相応しい内容かも。表紙の人も落ちている。傑作の絵画に魅せられた学芸員。絵が巻き起こす狂気に呆然。
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岩井圭也の六篇の短編集です。どの作品も素晴らしいですが、最後の作品の「堕ちる」は衝撃的な作品です。この一片だけでも読む価値があると思われます。
この短編集を読み、岩井圭也という執筆者に歓心を持ちました。他の作品も是非とも読みたくなりました。
何か久しぶりに良い出会いに巡り合ったように思われます。
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岩井圭也の短編集は初めてじゃないかな?上手い長編小説を書く作家さんと思っていたが、短編もなかなか読ませる。
タイトルの引力って言葉が実によくわかる、これ「嘘」のことなんよね。欲望とか見栄とか言い訳のために「嘘」をつく時、抗いがたい何かにグッと引き寄せられてる感があり、あれは確かに引力的やわと。
「僕はエスパーじゃない」は考えさせられたなぁ。相手の気持ちを読んで行動することに愛はないんだろうか?空気を読む、忖度までは違っても、そこから相手に対してどうするか…の行動部分には愛とか情が大いにかんけいしてると思うんだが…
どれもこれも後味悪い余韻の短編だが不思議と引き込まれるし、読み終わったあとに何かしらすっきりしているところもあるのが絶妙。
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6編が収められたダークな短編集
*海の子
*僕はエスパーじゃない
*捏造カンパニー
*極楽
*蟻の牙
*堕ちる
短編なのをすっかり忘れて読み始めた
第一話「海の子」
告別式を終えた日の夕方、
妻を病で亡くした佐々木は、二十歳の息子・海太と仏壇の前にいる場面から始まる。
私は一瞬で物語に引き込まれ、ドキドキしながら50頁ほど一気に読み進めた。
えっ?終わり?
まだ続くよね?
突然、闇の中に放り出された気分。
第二話「僕はエスパーじゃない」
あれ?
さっきと違う話?
今度は、幼い息子を持つ夫婦の話だ。
私はここでようやく短編集なんだと思い出す。
これまたラストで闇の中に置き去りにされた。
最後の「堕ちる」
地方の美術館に赴任したばかりの学芸員が主人公。
めちゃくちゃ怖いよ。
でもこれが一番良かった。
人間の欲望は、なんと恐ろしいんだ。
6編どれもブルっと震える、こわ~いお話。
まさにタイトル「暗い引力」の通り、
主人公たちは闇の世界へと転落していくのだ。
岩井圭也さんの作品を読むのは4冊目だけど、どれも作風が違うんだ。
スゴイなぁ。
Posted by ブクログ
暗い引力。実に的確なタイトルだった。
岩井圭也氏は心癒される作品が多いと思っていたが、この小説は心の暗部をじわじわ見せつけてくる。
各短編は勧善懲悪ではない結末がまた唸らせる。2話目の夫婦の話は実に身につまされる話で、このような夫婦関係に自らの生活を顧みて疑心を浮かばせてしまった程である。
人が暗い引力に囚われる様を淡々と描くこの小説はお薦めです。
Posted by ブクログ
それぞれの話の後半の展開が早く読みたくなる。エスパーじゃないの答えはなんやったんや。蟻の牙の書類のやりとりめっちゃ想像できる。会社には勝てん。
Posted by ブクログ
暗い話の短編集。ミステリーとは違うが、最後は暗いところに引っ張られて行ってしまう…そんな話。
オチなどあまりないが、面白くてスラスラ読み進めた。
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今までの作品にはなかったブラックな短編集。
『海の子』
ラストの1言
『僕はエスパーじゃない』
こういう人結構いる。
私はこのタイプ好きだけどな。
『捏造カンパニー』
ドキドキして自分だったらすぐバレそう
『極楽』
オチは予想つくけど不思議でリアルなワールド
『蟻の牙』
頭脳合戦に自分も参加してる気分
『堕ちる』
堕ちていく〜
6編すべてタイプが全く違う。
さすが岩井さん、引き出しが多くて楽しい。
辛い気持ちになるイヤミスではなく、どんでん返し狙いでもなく、ブラックユーモアが効いていて自分的には好きな作品ばかりだった。
『海の子』は、今まで自分の思ってた岩井さんのイメージを良い意味で裏切ってくれて新鮮だった。
ブラック岩井さん好きだなぁ。
Posted by ブクログ
表紙のイラストがとても印象深く手に取った。
6話の短編それぞれ、このイラストの如く、闇に堕ちるようなお話。それぞれとても面白かったし、同時に表紙から受け取る印象を全く裏切ってない。
中でも「極楽」
借金から逃げるために認知症を装って施設で匿われるお話。
自分が突然行方不明になったら、唯一の身内である一人息子に迷惑がかかる、、であろうが、そんな事はお構い無しで、、
それも仕方ない、唯一の親孝行だと諦めてもらおう、、なんてお気楽な主人公。
暗い中にもクスッと笑える部分あり、飽きずに楽しめた。
この作家さんは、色んなテイストの物語が得意らしく、どれもとても好評らしい。ぜひ、読んでみよう!
Posted by ブクログ
6遍の短編集。
どれもがダークで悪である。
そして到底考えられないことをやるから驚かされる。
何をもって悪である…かとはそれぞれだが、すべてに破滅を感じる。
堕ちていくイメージのカバーに絶望を感じるが、これは自ら招いたことなのだろう、暗い闇に引き寄せられた作品に怖さを感じた。
「海の子」〜養子だと知っていたが、実は…気づいたときには憎しみしかなかった息子のとった行動は。
「僕はエスパーじゃない」〜仕事が忙しい妻に代わって育児も家事もこなす夫に妻が言い放ったのは。
「捏造カンパニー」〜倒産やリストラで無職となった同級生3人が考えたのは、実体のない会社を設立したことだったが。
「極楽」〜借金から逃れるために企んだのは認知症のふりだったが。
「蟻の牙」〜亡き夫の死は、過重労働のせいなのか…その後も不正を隠蔽しようとする会社側の態度と関わる人の死。
「堕ちる」〜地方の美術館の学芸員が、任された回顧展の企画から妻しか描かなかった作家のことを調べるうちに〈ゼロ番〉を手に入れ…。
Posted by ブクログ
雑誌「ジャーロ」に2022から2023に掲載された短編6編
雑誌をほぼ読まない私は、全く知らなかったけど
ミステリー小説専門誌
実はミステリーと知らずに読みまして
逆に岩井さんの知らなかった魅力がより大きく
気がつかないうちに引き込まれる闇
闇でもがく人を描いた六編
「海の子」
72歳、妻に先立たれた夫
一人息子は 訳ある養子だった
息子に乞われ、その時の状況を語る
見知らぬ女が妻に乳飲子を引き渡し去っていった
養子のはずの息子は父親にそっくりになっていく
真実を確認した息子の報復
「僕はエスパーじゃない」
妻を労りよく気が利く夫
キャリア志向の妻と一人息子
妻の顔色 世間の風潮を読み 行動する夫
妻の望み通りの夫と育つ
妻はそのあまりの空虚さに別れを決意する
どーすりゃいいのよ!
「捏造カンパニー」
捏造した会社で融資を受け続ける三人組
突然の税務調査に慌てふためく
どーにか会社の体裁を整えて迎えた税務署員
そっちも捏造
「極楽」
パチンコの借金から逃げる為認知症を偽る
本当の認知症患者と共に過ごすうちに
そうなれば極楽
「蟻の牙」
家電メーカーに勤める夫が過労死
夫は会社の不正製品検査証を残していた
妻は、それを証拠として会社の隠蔽工作と闘う
書簡体小説で 手紙、メール、記事、議事録と
様々な文章形態を使い会社の不正に近づく
足元の蟻にも牙があります
「堕ちる」
地方都市に学芸員の職を得た主人公
地方画家の個展を任される
その作家の絵を見て 精巧さに惚れ込む
妻だけを描き続けた作家のプロフィールを探し始めた主人公は 未発表の絵を発見し
自分の思いを止められず 罪を犯す
Posted by ブクログ
タイトルの『暗い引力』は、収められている6編の短編の表題にはなっていないんですね…。6編全てひっくるめて『暗い引力』ということなのかと思いました。
「海の子」:
妻に先立たれ養子の息子にその経緯を話すことに…。
「僕はエスパーじゃない」:
仕事と育児の両立、夫の助けもあって妻は順調にこなしていたが…。
「捏造カンパニー」:
同級生3人がペーパーカンパニーを設立、突然税務調査が入ることになり…。
「極楽」:
パチンコの借金から逃れるため、老女が考えた策とは…。
「蟻の牙」
長時間勤務で夫に先立たれた妻の復讐劇とは…。
「堕ちる」
地方の美術館で学芸員として個展の準備に奔走するうちに…。
どの作品も、ダークでその世界観に読んでいて気づくと堕ちている…。連作短編ではなく、どの作品も全く異なるテイストなのに、引き込まれている…。なんか、スゴイ作品でした。まさに『暗い引力』でした。
Posted by ブクログ
面白かったです。
全体的に暗い雰囲気のお話が多いですが、イヤミス系が好きな方とかはハマるかなと思う。
意思を持たない男の話
認知症のふりをしていたら認知症になってしまった人
成り上がりたい学芸員
夫をブラック企業に殺された妻の復讐
バリエーション豊富で良きでした。
Posted by ブクログ
あなたも引き寄せられる… 人間の欲と醜さを、皮肉たっぷりに描いたミステリー短編集 #暗い引力
■きっと読みたくなるレビュー
丁寧なプロットで綴られるミステリー短編集。どんでん返しというより、皮肉のスパイスが効いた良質イヤミスですね。
本書のタイトルどおり、人間のダークな部分をしっかり描写されていて、読んでいくうちにゲンナリしてくること請け合いですよ(にっこり
■短編ごとの感想文
〇海の子
子どもができなかった夫婦と養子の物語。母は他界し、父が息子に幼児を引き取った時の話をするが…
そうなりますよね…ってお話ですが、ひとつ間違えば自分にも起こりうるから全く笑えない。しかし最後の一文のキモさは、なかなかの衝撃。これでこそ人間ですよ。
〇僕はエスパーじゃない
育児に協力的な夫と、仕事人間の妻。夫婦の在り方と価値観を見つめなおす物語。
私も主人公の彼に似ているところがあるので、考え方や気持ちが正直よくわかる。こういう性格って、まるでモテないんですよね、アハハ! 最後の結論は自明なんですが、はっきり言ってどっちもどっちだし、そもそも子どもが最優先になっていない時点で双方悪だと思うわ。
〇捏造カンパニー【おすすめ】
学生時代の同級生たちがペーパーカンパニーで詐欺を行っていた。そこに税務署の立ち入り検査が入ると分かり…
大変よくできた、全くもって救いようのないお話。キャラも構成もミステリーとしても出来が良く、そのまま映像化できそうです。しかし、世も末だなぁ…と感じざるを得ない。
〇極楽
パチンコの借金で苦労している老女、解決するために考えた奇策とは…
筋書きは想像できますが、何もかもがリアルに書かれていて、かなりコワイ。施設に入っている父を思い出しました、近いうちに会いに行かなきゃ。
〇蟻の牙
過重労働で夫を失った妻の復讐劇、会社を守る社畜たちの卑劣な手口とは…
手紙、メール、記事、書面などだけで構成される短編。地の文が一切ありません。淡々と示される文章を読んでいるだけなのに、人の怒りや醜さがありありと伝わってきます。ただ本作が一番読んでて悲しくなりましたね。どんな復讐劇も、どこか報われないんですよ。
〇堕ちる【おすすめ】
大学での美術研究から学芸員になった女性。成功を胸に秘めるも既に若くはなく、経済的な理由で地方都市の美術館に就職していた。しかしその美術館で、これまでに見たことないほど魅力的な絵画に出会ってしまい…
面白い! 何より好きなのは、人間の欲が迫力満点に書かれている点。主人公の女性は興奮の鼻息が聞こえるようだし、画家の変態性、モデルの落ちっぷりが下品。「価値観」はさっぱり理解できないんだけど、「欲望」だけは理解できるですよね。きれいごと言っても、人間なんて所詮こんなもんすよって感じが愛せる。
闇落ちしていく感覚がクセになる作品ばかりでしたね、楽しませていただきました。
Posted by ブクログ
「海の子」
「僕はエスパーじゃない」
「捏造カンパニー」
「極楽」
「蟻の牙」
「堕ちる」
6話収録の短編集。
それぞれ独立した作品だが、全編に共通して不穏な気配が漂っている。
人は誰でも嘘をつく。
ひとつの嘘が新たな嘘を呼び、はずみを付けながらどんどん悪い方へと転がりだす。
まさに暗い引力に導かれてでもいるように。
全話陰鬱で後味が悪いが、借金取りから逃げる為に逃走計画を立て認知症患者になり切る女性を描いた「極楽」はオチまで含め秀逸。
岩井圭也さんは長編も良いが短編も読ませてくれる。
嘘つき達のなれの果てを描いたダークな作品集。
Posted by ブクログ
ま、表紙を見てくださいな
真っ黒の表紙に
この表情
この堕ちていく姿
この表紙を見ればもうわかりますよね
この本がどういう話なのか
、、、。
、、、。
ええええぇぇぇぇーーーっ!?
わからないってΣ(゚Д゚)
もう一度よく表紙を見てください
そして、想像力を膨らませてください
見えてきたでしょ〜
わかってきたでしょ〜
どういう話か
、、、。
、、、。
やっぱりわからないってΣ(゚Д゚)
(・д・)チッ
じゃあ、この本を読みなさいよ!
もしくは、他の人レビューを見なさいよ!
そしたらわかるでしょ( ー`дー´)キリッ
Posted by ブクログ
窮地に陥ったとき、人は何とか逃れようとする。それが姑息な手段に過ぎないことも、ただの欺瞞であることもわかってはいても、嘘やごまかしでその場をしのぎたいという誘惑に負けてしまう。
そんな「暗い引力」に抗えなかった人たちを描くヒューマンサスペンス短編集。
◇
ダイニングでお茶の用意をする。妻の入院から半年が過ぎ、ようやく茶を入れることにも慣れてきた。
妻の容態が急変したのは4日前。病院からの連絡で駆けつけたときには、妻はすでに意識がなく危篤状態になっていた。
それでも遅れて駆けつけた息子の海太が耳元で呼びかけると、妻は瞼をピクリと動かして応えようとした。けれどそこまでだった。
通夜と告別式を済ませ、ひと息入れようとお茶を入れて仏間にいる海太を呼んだ。
差し向かいで座り茶をすする海太を見る。20歳になり私に似てきた海太だが、赤ん坊のときに子どものいなかった私たち夫婦の養子になった子だ。
感慨にふけっていると、海太が「父さん」と話しかけてきた。「うん?」と答える私に海太は、「僕はどこでどうやってもらわれたの?」と思い詰めたように尋ねた。それは、私にとって蓋をしたままにしておきたいことだった。( 第1話「海の子」) ※全6話。
* * * * *
全話を通して描かれるのは、人間の弱さや醜さと、そこから引き起こされる悲劇です。
保身や目先の欲にかられるあまり、つい姑息な手を使ってしまう。その気持ちはよく理解できるからこそ直視したくない。そんな短編ばかりでした。
6話中で印象に残ったのは、第5話「蟻の牙」と第6話「堕ちる」です。
「蟻の牙」は電子メールや書簡、社内資料等の間接的コミュのみで展開していきます。
書簡体小説と呼ばれるこの手の作品は単調になりやすいのですが、本作では視点人物を適度に増やすことで目先を変え、ストーリーに奥行きや広がりを出していました。
また、扱うテーマも会社ぐるみでの不正隠しという企業のコンプライアンス違反についてでした。深刻な社会問題であり、夫を過労死で亡くした主人公の気持ちに共感しやすい設定になっています。
なお主人公が糾弾する側に回るのは、この第5話のみです。
「堕ちる」は女性学芸員が欲望に負けて罪を犯すまでのいきさつを中心に描かれます。
この第6話の柱は2本あって、1本目は学芸員の主人公が持つ沸き立つマグマのような重く暗い情念、もう1本は自殺した天才画家の生きざまと作品の秘密です。
特に天才画家に絡む物語は圧巻で、主人公を妄執の虜にしていく過程が詳細に描かれていて読みでがありました。6話中もっとも岩井圭也さんらしい作品だと思います。
それ以外の4話は、展開がすぐ読めてしまうなど、やや安易な設定に感じました。
前述したように、読んでいると居心地が悪くなってくる話ばかりなので、いわゆる「イヤミス」好きの方にはオススメです。
Posted by ブクログ
暗さに引っ張られていく感じがすごい。
読み進めるうちにどの話も好転しないんだなと分かっているのに、何かしら明るい兆しを探して、でもやっぱり暗い引力に負ける。
極楽で認知症のふりが一番ありそうで怖かった。
Posted by ブクログ
皮肉な味のするの6編の短編集。
以下印象的だった作品。
「海の子」
養子として迎えた息子の出生の秘密。同情的な気持ちで見ていた人物が一転して醜悪な人物に。そういうオチになるとは思ってなくて驚いた。自業自得だけど、残酷なラスト。
「極楽」
借金から逃げるために認知症を装って特別養護老人ホームに潜り込む女の話。認知症の診断にはMRIとか専門的な検査をするだろうし、そう簡単にはいかんやろ…とは思うのですが、皮肉な結末が面白かった。
「蟻の牙」
過労死で夫を失い、企業に過失を認めさせるために戦う妻。妻がWEB上で公開した証拠資料としてメールや手紙のやり取り、記事の抜粋、議事録などで構成されている。現場に責任を押し付けてトカゲのしっぽを切って上の人間はのうのうと逃げおおせている。こういうことって実際にいっぱいあるんだろうなと思って暗い気持ちになった。果たして蟻の牙は届くか…
多分初めましての作家さん。好きな感じの短編集でした。
「暗い引力」というタイトルの作品は収録されていないけど、全体的にこのタイトルと表紙のデザインがぴったりだと思いました。
Posted by ブクログ
短編だからか、展開が読みやすくキャッチーなところもあるが、さすが岩井氏とでも言うべきか、各場面を緻密に引き摺りながら人物たちが堕ちていく姿が描かれている。個人的には『楽園の犬』や『われは熊楠』のような、じっとりと汗をかき、またざわっと鳥肌がたつような作品が好きかも。
Posted by ブクログ
岩井圭也さんが描く『世にも奇妙な物語』的な作品。
岩井圭也さんが書くイヤミスってこういう感じか…と6編それぞれに味わって拝読しました。
特に印象的だったのは『海の子』『蟻の牙』の入念な復讐劇、『極楽』の結末はゾッとした。
Posted by ブクログ
仄暗い不穏さが漂う短編集。
読みやすいし、どの話も最後はゾワっとして面白いとは思うけど、個人的には胸糞悪さが足りなくて、ちょっと求めていた感じと違った。
Posted by ブクログ
イヤミス系が読みたくて手に取った本。
6つの短編が入ってるのですが、いやー、読んでると本当に胸糞悪くなりましたね笑
でも、なんだかんだこういう人間の醜悪さが表現された作品にも手が伸びるのはよい傾向かなと。
Posted by ブクログ
イヤミス的な短編集。読後感は重め。
「僕はエスパーじゃない」「捏造カンパニー」「堕ちる」が面白かった。
「僕はエスパーじゃない」は、子どものときから人の顔色を読むのが得意な男性が結婚し子どもが生まれ、常に妻の顔色を伺いながら妻の望むように家事育児をしていくが、突然離婚したいと妻に告げられる話。常に他人任せの主人公に問題があるかと思えば、妻側の思惑も合わさり、結婚とはなんだろうかと考えさせられた。
「捏造カンパニー」は、会社が倒産したりブラックだったりで無職になった元同級生の3人がペーパーカンパニーを作って不正に金を集めているところに税務署の監査が入ることになった話。騙し合いのスリルが面白かった。うっかり3人を応援したくなってしまった。
「堕ちる」は学芸員の女性が就職した地方の美術館でとある画家の絵に出会い、その展示会を開くために画家について調べていく話。亡くなった画家の、描くことへの異常なまでの欲望と、主人公のキュレーターとして名を残したいという野望が混ざり合い、意外な方向に話が転がる最後は夢中で読んだ。