岩井圭也のレビュー一覧
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とても優しい物語だった。
なんて優しい話なんだろう。
心が豊かになるようなほっこりしたお話。
本の中では、小説や詩集、絵本、長編集、楽譜までを題材に、深海とよばれる古書店で読書会で出会った5人+店主が、課題図書をみんなで感想を話し合うストーリー。
開催は0時から2時。
友達でもなく、知り合いより心が通うようなそんな存在。
深海で出会った人が、未来に向かって歩むような、前向きな話だった。
ドキドキとかハラハラとかはないが、しっかりと気持ちよく自分に入ってくる。
作者岩井圭也さんの2作目として読んだ。
1作目は文身 涙が止まらず、すごい作品に出会ったと震えた。
好きな作家さんになりました! -
Posted by ブクログ
不老因子の発見者・嘉山宗弘のドキュメンタリー制作をする三田紗矢子が彼の研究不正について追いかける話
自分だけが知っている真実が誰にも信じてもらえなかったとして
それは妄想と何が違うんだろう
主人公が手に取ったのは振るうほど嘘つきになる諸刃の剣
私たちは普段
画面の向こうで起きる炎上や告発
悪意や暴走を
誰が正しくて誰が嘘をついているのか
分かりやすい物語にしてエンタメとして消費している
その向こう側に本人にしか見えていない真実があるかもしれないのに
真実のためについた嘘は真実そのものまで嘘にしてしまうんだろうか
「あれは風車だ」と笑う人間の目には見えない巨人が
本当はそこにいるのかもしれないのに
多分この感想はドン・キホーテ側に寄りすぎている -
Posted by ブクログ
ネタバレすばらしい作品だった。天才が(特に数学のような、理解者が少なく、現実との接点が持ちにくい世界の)生きていく上でのつながりを失って、孤独になっていくということは、よくある物語の一つではあるのだけれど、彼らが感じている世界像を、数学を特に知らない私たちにも、説得力を持って描いてやろうという作者の野心には大変恐れ入ったし、よく成功していると思う。
トップダウン的な感覚派の天才と、小さな理屈を積み重ねるボトムアップの秀才を対比させるというのも、よくある構図なのだろうけれど、感覚派が自滅するというのではなく、ボトムアップ派に追いつめられて梯子をはずされるけれど、再び救い上げられる・・・という流れはなかなか見事な構造だった。
岩井さんの、全く異なる「大きな政治闘争にまきこまれた、一大学生が、少ない手持ちの武器で何とか戦う」という話(『水よ踊れ』)を読んだばかりで、デビュー作でこんなものを書いていたんだと圧倒されると同時に、「弱いものが大きなものに挑み、一度大きく負けながら、そこから挽回する」という共通点を感じた。
恋愛が主軸にならず、「人間の営み」の一つというような位置づけになっているのも、全然違う話なのに、似たような印象を与える。
まだ二作しか読んでいないから、この共通点は単なる偶然なのかもしれない。他の作品も今から楽しみ。一つ一つ順番に読んでいきたい。 -
Posted by ブクログ
子育て中のパパさんに、ぜひオススメしたい。7人の作家さんによる「現代人としての」父の姿。不器用ながらも懸命に子育てしているパパたちが勢ぞろいした短編集。どの話もどうってことのない日常ではあるんだけど、本としてまとまってくると「みなさん色々抱えてますよね…」と言いたくなる。めちゃくちゃ秀逸な1冊。
どの話にも共感しかない…と思って読んだ。特に子どもが小さい、という話は苦しいくらいに我が家の話。7つのうち6つが共働き夫婦の話なのも、私にとっては共感につながった。
岩井圭也『連絡帳の父』と、河邉徹『髪を結ぶ』は泣いた。
7人の作家さんのうち、6人が1980年代生まれなのだそうだ。私と同世代だ。全員パパさんだというから、「父になったからこそ書けました」という作品なんだな、としみじみ思う。
今の世の中、パパさんの役割ってめっちゃ多いんじゃないかと思う。仕事に加えて子育ても男女平等。男性の家事時間はまだまだ女性に比べて少ない、というけど、やってる人はやってる。きっと。
作家さんは、基本的に会社員よりも時間の制約が少なそうなイメージがある。家事や育児は融通がきくほうがやる、というと、それなりに多くの時間を担っているんじゃないかと想像する。
それでいて、仕事の成果も求められる。
キッツー。
これ、みんなどうしてるの?と聞きたい。
我が家も、夫は私と同等、いやそれ以上に家事と育児に多くの時間を割いている。私は融通がきかない昭和的な職場で働いていて、夫はかなりフレキシブルな職場なので、ついついお願いしてしまう。
「なんでオレばっかり!」と怒られてしまう。言いたい気持ちはよくわかる。
「パパ友になれそうな人がいっぱい出てくるよ」と言って、夫にオススメした。
「装画のクロッキー画が素敵だから、それだけパラパラ見るだけでも」と言っておいたら、その装画を見て、気になった話だけ読んだ、と言う。
そう。装画が素敵なのよ。
読み終わってから見返すと、ストーリーの中で印象的な場面が描かれていて「あー、なるほど」と思う。
夫は全部を読んでいないとは言うものの、外山薫の『ダディトラック』を読んでかなり共感した様子だった。
この本は、雑誌VERY2026.2月号『VERY的誌上読書会』のコーナーで、カツセマサヒコという作家のオススメに載っていた。
ご自身も、7つのストーリーの最後に入っている。この話だけが専業主婦の話だ。共働きだったが「もう無理」と、妻自身が専業主婦になることを選んだ。共働きであることが珍しくもなんともない現代において、「あえての専業主婦」という視点。
[もうさ、みんな大変って話をしようよ、こうなったら。飲もうぜ、飲もう。それしかないだろうが、幹事!]
と言い放つ夫の友人に、「カンパーイ!」とジョッキを合わせたくなった。
世の中にはいろんな家庭がある。
それぞれの家庭に、それぞれの事情がある。「ウチはこうやってます」という他のご家庭が参考にできる場合もあるけど、私の家庭で使えるワザとは限らない。
私も夫も、ひとり暮らしをそれなりの期間やってから結婚した。得意というほどではないけど、やっていて苦にならない家事はある。お互いに「これなら自分がやってもいい」という家事をそれぞれがこなしている。
片付けは、2人とも苦手だ。だからいつまでも部屋はぐちゃぐちゃ…。
育児も、2人とも苦手。なにをどう扱ったらいいか、まるでわからない。
そっか。
だから、この本に出てくる不器用なパパたちに共感するんだな。
子どもがいなかったら良かったのに、と時々夫が言う。
そうかなぁ?そうでもなくない?と、最近になって私は思う。
[たしかに大変だけれど、ラクであることと幸せであることは意味が違う]
『連絡帳の父』の中で、岩井圭也がそう書いている。そのとおりだと思う。
[もし親としての適正検査があるのなら、きっと面接を受ける前に落とされる。だけど向いてないと知ったからといって、辞めることのできないのが子育てだ]
『髪を結ぶ』の中で、河邉徹がそう書いている。これも、そのとおりだと思う。
ひと月ほど前に読み終わって、夫も読んだら感想を書こうと思って塩漬けにしていた。
共感できる本があって、共感してくれる人がいて。
みんなそれぞれの生活があって、家族の数だけ物語があって。
なんか、それでいいんだよな、と思う。
いろんな家庭の事情があって当たり前。
社会がもっとフレキシブルになったらいいのにな、と思う。生き方も、考え方も。 -
Posted by ブクログ
本が繋げる人との出会い。
深夜の読書会によって人が動き心が動くことで人生の1ページが新たに紡がれていくお話
自分にとっての大好きな本や大切な本を6人で集まり一つの本について話し合う読書会で自分にとっては誰が呼んでも素晴らしいはずなのに価値観によって少し揉めたりしながらも作品を深ぼれる居場所。
本好きにとっては凄く理想的な古書店。友達とは違う関係でありながらもいつの間にか居場所になっていて、自分にもこんな場所があったらもっと本が好きになるのかなぁ。読んでいると本の内容が一部抜粋されていて自分も読書会にいつの間にか参加しながら読めた。
自分だったらどんな本を課題図書に選んだだろう。