岩井圭也のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレシリーズが進むにつれて土門誠の人物像が少しずつ深掘りされていきますね。
今回はベージュのセットアップに関する逸話と学生時代の意外な出来事について。
学生時代をともに過ごした仲間たちとの繋がりを紐解きながら、現在の事件の謎も明らかにしていく展開に引き込まれました。
土門さん、学生時代も去ることながら、今も側には高倉さんという心強い存在がいるあたり、不器用ながらも身近な人には恵まれているようにも思います。
なんだろう。実力や技術を認めた上で、不器用でカタブツなところすらもユニークと受け止めてくれる人々。
複雑な家庭背景だったり、それゆえの学生時代の苦しみだったり、社会人になってからは自分を導いてくれた人の裏切りにあったり、、結構な苦境に立たされ続けた土門さんですが、科学だけでなく、人を信じてみようと思えたのは身近な人たちの影響でしょうね。
おもしろかったです! -
Posted by ブクログ
ネタバレ芸術を志す人たちの心情とは繊細でなんと苦難に満ちているのかと思い知らされた。
才能がない自分と向き合うことから逃げるために死を選ぶことも厭わないなんて、凡人には想像できない心理状態である。
小滝は突然連絡が取れなくなった恋人ひなたの失踪理由と作品制作中の事故で亡くなった学生樺沢穂香の肖像画を描く依頼を受け穂香の過去を辿る中で、自分を見つめ傷つき絶望していく様は心がザワザワして「小滝、死なないで」と祈りながら読んだ。
ツブキリュウの存在が救いでもあった。タイムリープものは好みではないが、この作品では大いにありだ。
岩井圭也さんの作品は好きで何冊か読んでいるが、これはお気に入りの一冊となりました。 -
Posted by ブクログ
数学界について見識もなく、ただただ人間ドラマとして魅了されました。
巻末の森見登美彦さんの解説を見るにつけ(デビュー作なのにすごい!)その深すぎる洞察を目の当たりにしたら書くことがみつかりません。
あえて自分の体験に照らし合わせると、主人公に及ぶべくもないですが比較的知能に恵まれた私の前半生は、無邪気な批判をくりかえしては社会からつまはじきになることばかり。
実際に不適応者となった時期には、通い詰めていた病院のスタッフさんに「感覚で生きている人は頭脳と肉体の衰えと共に凡人以下になる」と気づきを促され首を斬り落とされたような思いでした。
そこで積み上げることの大切さを学んだのも今では良い経験です。
数学の森で遊び、木々の間から星をつかもうとする主人公の儚さはギリシャの時代ならきっと星になれたのかもしれない。でも複雑化しすぎた現代では、誰がどう汲み取るのか。
プラトンやエッカーマンのような傍らにいる存在、私にはもう1人の主人公である熊沢勇一にこそ寄り添いたい気持ちがわきました。
というかそういう話でもあるのか!(今わかった) -
Posted by ブクログ
アンソロジーなので評価は付けにくかったけど、総合で★5。世間のお父さん、お母さんの苦労というか哀愁を感じられた。親になれなかった自分には分からないものが伝わる。
子育ての大変さとその成長の喜びの経験ができなかったのを自分の選択とは言え後悔がないとは言えない。やはり良いものなんだろう、と言ってしまうと世間様から簡単に言ってくれるなと非難を浴びるんだろうな。
それでもこの作品達からはそう羨ましく思わされるものがあった。
髪を結ぶ、そういう家族がそこにある、この2作品が特に良かった。その分少し落ち込むかな。
でも良いアンソロジーでした。初読みの作家さんにも出会えたしね。