岩井圭也のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
どうして人は罪を犯してしまうのか。
その心情や背景が淡々として物語れるなかにも感情の熱さがあって、引き込まれるように一気に読んだ。
わたしは子どもが集まる施設で働いていて、子ども同士が殴った殴られたみたいな場面に毎日のように接しているんだけど、殴った子に「人を殴ってはいけません」と叱ったところで、なんの解決にもならないという事例を多く見ている。
殴った子には本人なりの理由があって、それは許されざるべきものであっても、その子にとっては正義だったりする。その気持ちを話してもらって、それについて一緒に考えていかないと、殴るという行為はやめられない。その子にとって問題解決の方法が「殴る」しかないから。殴ったほうが感情が高ぶって泣いていたりすると、この子も苦しいんだなって思う。社会の中でうまく生きていくのは難しい。
本作に出てくる主人公は「罪を犯した人」がなぜそうするに至ったかに丁寧に向き合う医師で、その工程はしみじみと心を打つ。
丁寧さというのは時に不器用に映るもので、まわりにはなかなか理解してもらえないものなんだけど、でもそれが大切なんだろうな…と、わたしも丁寧にまわりと向き合っていこうって思わせてもらえた。
そんな風に考えさせてくれるいい本でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレわたしのまわりには登山を愛してやまない人が数人いるのだけど、その人たちはみんな趣味程度にとどまることなく、常に次を求めている。
なぜそんな気持ちになるのかな、と思っていたのだけど、この小説の引き込まれるような描写で登山を疑似体験した気になり、限界を突破することの中毒性みたいなものを感じ、少し腑に落ちた。
わたしがもし登山家なら、きっと下山をしながら、気を緩めてはいけないとわかっていながらも、すでに次のアタックのことを考えているかもしれない。
岩井圭也という人は、イマジネーションのなかにリアリティがある稀有な小説家だと思う。
さらに、物語が過去と現在を行き来していても、その手法が必然だと思わせるほどすんなり入ってくる。
ほかの作品もはやく読みたい。
(これも中毒性…) -
Posted by ブクログ
第二次世界大戦中のサイパンで諜報活動に従事する1人の男の物語でした。前半は、推理小説のような展開でしたが、日米の開戦が近づくにつれて緊迫感が増してきました。最後まで生きることに執着した麻田はあの時代には異端の存在だったと思います。だからこそ、簡単に自決を選んだその他大勢の人達より比べものにならないくらいの勇気が必要だったはずです。「生き抜くことが何より美しい」というメッセージを頂いたような気がします。平和な現代でも自殺を選択してしまう人は一定数いるので…。あとは、「因果ヅラ」というセリフが印象的で、スパイという人を裏切る活動に従事していた麻田が、家族と生きて再会することは出来なかった結末は仕方なかったのかなと思いました。
-
Posted by ブクログ
良い!
この作品良いよぉぉぉぉ〜。゚(゚´Д`゚)゚。
犯罪者、それは大人も子ども関係なく罪を犯した者が悪い!
だけど、罪を犯した者だけが悪いのだろうか?
特に少年犯罪に関しては、子どもたちを取り巻く環境や人物の影響が大きのではないだろうか?
その中でも、子どもたちにとって一番身近な存在である親の影響力はかなり大きいのではないだろうか?
子どもに全く興味を示さない親、子どもを自分の持ち物のように扱う親、子どもの心の声を聞こうとしない親…
そんな親たちが子どもたちを犯罪の道へと追いやっているかもしれない!
そうならないように「付添人」のオボロのように子どもたちに寄り添ってみよう
心を閉ざした子どもたちと向き合ってみよう
悩み、苦しみ、悲しみ、心に大きな何かを抱えているなら「付添人」の1Q84O1を頼りにしてきて!
全力で寄り添い、力になるよ! -
Posted by ブクログ
目次
・罪の花
・路側帯の亡霊
・見えない毒
・神は殺さない
四話どれも印象に残るストーリーだった。
前作と比べて、登場人物たちの人間の深い部分を描いているのかな、と思う。
土門は無表情で感情が読み取れない。
しかし、とても人間らしい土門誠がこの作品の中に生きている。
特に最後の【神は殺さない】は苦しかった。
ある事件により心が深く傷付く土門。
そんな土門が自分を頼ってくれないことに打ちのめされる尾藤宏香。
ラストシーンの切なさ。:゚(;´∩`;)゚:。
「人は嘘をつきますが、科学は嘘をつきません」
真実を明らかにすることは、残酷なことでもあるんだな…
あぁ、辛い…
またいつか、続編が出ることに期待したい。
-
Posted by ブクログ
うわ〜、凄いとは聞いてたけど、これは凄い!
よくこんなプロット考えつくな〜
「虚構と真実の境目に迷い込んでみませんか?」
岩井さんのこの言葉どおり、まんまと迷い込んでしまった。
弟の描く私小説に、翻弄される兄の人生。
大筋の話だけでも先が気になって読む手が止まらなかったけど、最後の方で降りかかる、???の嵐。
そしてラスト1行で更なる、???の嵐。
どこまでが虚構なのか、いったい何が真実なのか?
めっちゃ翻弄された。。
今も頭の中で、え?どういう事?ってぐるぐるしてる。
岩井さんの思惑にしっかりハマってしまった。
人によって解釈が違うだろう作品。
また時をおいてじっくり読み直してみたい。
その時はまた違った捉え方をするかも知れない。
すっきりはしないけど、めっちゃ面白かった!
-
Posted by ブクログ
自らも少年のころに罪を犯してしまった過去がある弁護士が、少年の弁護士にあたる「付添人」として、子どもたちに寄り添い支えていくエピソードをつづった物語。
私は子どもの声を聴く傾聴ボランティアを長くやっていて、子どもに心の内を話してもらうことの難しさをずっと考えながらやってきてるんだけど、「なんでも話して」なんて言ったって、その相手を信用できなければ自分の本当の気持ちなんて話せないと思うのね。
主人公の朧太一が言う「ここは安全です。落ち着いて話してください」っていうひとことをどれだけ責任をもっていえるか。そういった言葉たちをいくつもかみしめながら読んだ。
エピソードと並行して主人公自身の心の傷もにも焦点が当てられていくんだけど、支える人をまた別の人が支えて…というひとのつながりで得られる癒しみたいなものも描かれているのがとてもよかった。
ボランティア仲間にも勧めて読んでもらって、感想を言い合ったりしたりもしたんだけど、それをそばで聞いていた他の人も読み始めたりして、うちのボランティア界隈でちょっとした「付き添うひと」ブームが来ているのも最高にいい。