岩井圭也のレビュー一覧
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『ぼくにとって絵を描くことは、呼吸と同じだった。人は呼吸しなければ、生きていけない』
冒頭の一文
つまり、描けなくなったら生きる理由がない。
そんな美大生の小滝英哉は、教授からあるアルバイトを依頼される。
「肖像画を描いてほしい」
モデルは学内の事故で亡くなった学生で、彼女の両親から学校に依頼があったという。
小滝は彼女を知るために友人や実家を訪ね歩く。それと同時に、突然姿を消した恋人の宇野ひなたの行方も追う。
その過程で小滝は自分自身と向き合い、己を知ろうと、もがき苦しむ…
私は美大生のように特別な才能もないし、平凡な人生を送ってきたと思う。
だけど一応青春時代を経験してきたから、分かることもある。
嫉妬心や焦り、自分自身を認められない未熟さ…
でもね、苦しい日々が続いても、きっと出口があるのよ。
ある日、小滝の前に現れる謎の青年・ツブキリュウ。
彼は一体何者なの?
しかしこのリュウが、小滝を出口に導く重要な存在なの。
そして私のお気に入りのシーンは、小滝とひなたの思い出のドライブ。
糸魚川の海岸でヒスイを探す場面なんだけど、ここだけは優しい光を放っていて、やわらかい気持ちになる。
あぁ、私は岩井圭也さんの書く小説が好きだなぁ。
と、改めて思う一冊だった。
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Posted by ブクログ
ネタバレネガティブ・ケイパビリティについて知ってからこの本を読みました。
恐らく、この本は以前にも読んでいましたが
今回、人との関わりについてすごく考えさせられました。
後半はどこの職場でもありそうな部下と上司の関係が描かれている感覚でした。
誰が悪いとか、責められる点はないとしても、無自覚が一番たちが悪い。
「正解」「正論」を伝える時に、相手の背景を何も見ようとせずに責めるような言葉を使うことがどれだけ相手を追い詰めるのか。
今までの自分が恥ずかしく思う時間でした。
好きだなと感じたのは、瞭司のことを思う人が暖かい人ばかりだったということ。
「一緒に数学を楽しみたい」その思いで一緒にいられた。
でも大人になるとそればかりではいられないのは、現実も一緒。
だから余計に平賀教授の言葉は冷たく刺さりました。
でも、瞭司の思いは大好きな友人によって成就された。
最後は暖かく、そして心に何かを残す作品でした。 -
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言葉の表現力が乏しい私は、何を言っていいかわからないが、この本はすごい。
世の中にはたくさんの本がある、ミステリーやエッセイや作家さんがこんな世界にしたいなとか、そういう思いが見える本を客観的に感じたり、しながら読む本もある。
この本は作者岩井さんと言う存在が見えない。その凄さがこの本の中にたくさん詰まっている。
本を読んでいると、私はどの世界にいるのかわからなくなる。
現実世界で家事をしていると、不意に私今どこにいたんだっけと思う。そうそう堅次が書いている小説を庸一と共に読んでいるんだとなる。いやいやいや違うじゃん。岩井さんが書いている本を読んでたんだとなる。
それほど岩井さんと言う作者が見えない。書き手の見えない小説の物語に、のめり込む、のめり込ませてくれるこの本がすごい。人にこの本を進めるにあたって、どう説明したら良いのか、ミステリーではない。面白かったよとは簡単には言えない。
どんなふうに面白かったかとも伝えられない面白さがある。
この本の面白さをのめり込んで読んでもらいたいからこそ、ネタバレや帯を見ず、ただ表紙だけで手に取って読んで欲しい。本当に素晴らしい。
こんなにのめり込んでどの世界にいるかわからなくなる文章力は本当にすごい。
深海の巣から涙が止まらず、嗚咽すらでる。
何枚ティッシュに鼻を噛んで涙を拭ったか。
本当に面白かった。 -
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生まれついての天才的な数覚(数学的感覚)に恵まれた瞭司。
協和大学に特推生として入学し、
狂気的ともいえるストイックさで研究に没頭する姿が印象的だった。
研究に行き詰まったあげく、もともと好きでもなかったお酒に溺れてしまい、それが結局瞭司の命を奪う原因になってしまったことが何とも切なくて胸が締め付けられた。
また熊沢の、瞭司に対する友情と嫉妬で揺れ動く心情も切なかった。
コラッツ予想もリーマン予想もムーンシャインもさっぱりな私だが、瞭司の語るプルビスの魅力は分かるような気がした。
ラストで現れた瞭司2世(?)に数学の果てしない世界に想いを馳せてしまった。
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最も嫌いなタイプの主人公。自己中心的で仕事に託けて周囲の人を全く考えない。その仕事も政治家に次ぐ最低最悪。野次馬根性丸出しで人の嫌がることに口を挟み、興味本位の文章を並べて得意げに騒ぎ立てるだけのもの。社会への問題提起や知られていない悪事の暴露ならまだしも、後追いの3面記事などただのゴミです。それがジャーナリズムとか笑わせます。という設定なのにさすが岩井さん、すっかり話に引き込まれてしまいました。主人公の安田さん、そこまで自分を悪者にしないで、色々考えている真っ当な社会人だと思いますから、ご自分のお子さんにも逃げずにちゃんと向き合ってください。
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ロンは、あいかわらず持ち掛けられた依頼を断れないのね。そこがいいところでもあるんだけど、無鉄砲に突っ走るんだから、ヒナちゃんにとってはたまったものじゃない。欽ちゃんも、心配で気が気じゃないよね。のほほんとした清田先生は、本心が読みにくいけどw
海外で監禁状態で犯罪行為をさせられている翔真。脱走を持ち掛ける健士郎のことが、どうも信用しきれないでいた。
いや、冨尾もどうなんだ?
終盤は、やっぱり欽ちゃんの大活躍が見られて嬉しい。
欽ちゃんの新しいパートナー浅香がなんともいい味で面白い。次作でもコンビなのかな。そうだといいな。
アルファとの戦いはまだまだ続く。 -
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藝大の油画と言えば、日本の最高峰…
そこで学ぶ学生達の苦悩というと、想像以上なのだろうと思ってはいた。
我が息子やその友人達も美術を志し、厳しい予備校時代や浪人時代を経験した。
だからこそ彼らの苦悩を少しでもわかりたいと思いながらの読書。
正直とても辛く、未だその余韻でやや思考停止気味…
美術でも音楽でも、芸術を志す者たちにとっては、常にスランプや嫉妬との闘いであり、天才と呼ばれる者たち程プレッシャーとの闘いでもある。
藝大に入れなかった者にしてみれば、藝大に入れたのだから、才能はお墨付きではないかと思う。
でも、それは全くの逆で、藝大生だからこそ、最高の卒制を生み出すことのプレッシャーは想像できない程なのだと思う。
才能とは、なんなのか…
「兄には絵を描く才能があったからいい!俺には何の才能もない。」
と泣きながら叫んだ我が家の次男に、
「才能があってもなくても同じように努力しないとなんににもなれないんだよ!」
と泣きながら話したことを思い出す。
才能があったとしても、それを活かせるかは自分次第なのだ。
ひなたも小滝も、樺沢穂香も、自分自身を知るために制作し、自分の思いを作品に込められることを願う。
芸術とは、自分自身を探り続ける作業なのだ。
自分自身の明日の肖像画を描くことほど難しいことはない。でも、それをやり遂げる力はどれだけ自分を知り、自分を信じられるようになるかなのだろうな…
自分自身を知ろうとする作業は、芸術を志すものだけでなく、すべての人に与えられた使命なのかもしれない。
我が子だけでなくすべての若者達が、学生のうちに、たくさんの挫折を味わいながら自分を探すことができますように。