刑事事件の証拠品やデータについて、科学的鑑定を行う民間鑑定所「土門鑑定所」の二人が大活躍します。4篇構成で、とっても面白いです。
土門さんといえば、『科捜研の女の』の土門薫刑事ですが、こちらは元科捜研の土門誠先生、ややこしい。
土門先生、科捜研をおやめになり、自ら鑑定所を開所。科捜研時代には、
...続きを読むスーパーという意味で「最後の鑑定人」と呼ばれていたらしいです。
「最後の鑑定人」の鑑定が、とても気になって読みました。今の仕事を引退したら、次の仕事は憧れのスタバの店員さんになりたかったのですが、もっと楽しそうなので土門鑑定所のバイトに憧れ対象をチェンジしました。まあ、キホン老害ですけど。
土門さん、最後の鑑定人だけあって犯罪の鑑定に精通されていて、カバーする領域が広いです。
登場人物の中には彼を、鑑定の「変態」と呼んでいた人もいました。どうやら鑑定大好きオジのよう。好きな鑑定の依頼を受けると、眼の奥がキラリ。
土門鑑定所は土門先生と、技官の高倉さんの二人。この高倉さん、知的美人で心理系大学院修了、ポリグラフ検査で博士となっています。「科学」と「人が嘘をつくこと」に興味津々な人で、お客が来るとハーブ水をすすめる、クセ強めの人です。ハーブ水をすすめる理由は、本書でご確認くだい。
という訳で、「科捜研」好きの方なら必読でしょう。ただ、各お話最後の犯人独白みたいなところは、ちょっと苦手でした。
しかし、岩井圭也さん、面白そう。続けて読みたいです。
以下、土門鑑定所でのバイトに備え、各お話の鑑定について、簡単にまとめておきます。
『遺された痕』
筆跡・文体鑑定、画像・歩容解析、DNA鑑定(科捜研データの検証)
・・・歩容解析などのソフトウエア解析は素晴らしいです。DNA鑑定、この事例は教科書の応用例みたいに感じます。もしそうなら、科捜研のひと、損な役回りでお気の毒です。
『愚者の炎』
ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、炭化深度測定及び解析、心理操作
・・・GC/MSは前処理が肝かな。予備実験なしで指示する土門さん、さすがです。
意外でしたが、土門さんは見かけによらず心理的圧迫がお上手なようです。
『死人に訊け』
DNA鑑定、復顔(外部実施)、骨緻密質観察、FT・IRまたはSEM・EDS(外部実施)、土砂分析及びデータベースリサーチ
・・・科捜研のデータをみるだけでなく、検査方法の詳細をチェックする土門さん、最高ですね。DNA鑑定で科捜研が選択したDNA抽出方法「フェノール・クロロホルム法とプレップ法」とはあれかな?確かにちょと荒っぽいかも。生化学系は何でもキットですからね。
このお話しが一番科捜研ぽいです。
『風化した夜』
筆圧痕レーザー顕微鏡解析、地理的プロファイリング、PCパスワード解除(専門外)
・・・筆圧痕は、えんぴつで薄く塗って読むんじゃないんだ!これじゃ、少年探偵団でしたね。