岩井圭也のレビュー一覧

  • 付き添うひと

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    少年犯罪のその向こう側を見ると親や家庭環境が必ず顔を出す。
    「付添人」という仕事がある事を本書で初めて知ったが、本書の主人公、その過去があまりにも辛い。ただ、親は子の所有物と考える親はいるのだ。
    現実はこうもうまくいかないだろうし、もっとダーティでグレーゾーンな部分が見えてくるだろう。
    それでも自分のような子供を一人でも助ける、過去の自分を助けるために前を向く彼の姿には否応なしに胸が熱くなる。さらりとした文章で、一歩引いたところから描かれる物語はあっさりとしているが読後、忘れ難い魅力がある。

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    2025年11月09日
  • 追憶の鑑定人

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    土門シリーズ3作目。
    今回はクールな土門さんの人間味が垣間見えて、いつも以上に良かった。明かされる学生時代のエピソードも、こういう仲間に出会えて良かったねと思えるものばかりで、だれ目線かわからないけど「これからも土門さんをよろしくね」と思いながら読んだ。
    大学時代の旧友と時が流れても、こんな風にリスペクトして信じ合える関係性っていいなぁ。
    4人みんなが理系でプロフェッショナルというところも羨ましい。文系人間なので、憧れがあるのです。
    このシリーズかまだ続きますように。

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    2025年11月03日
  • サバイブ!

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    悪性リンパ腫ステージⅣの闘病から始まる本書。

    血液内科での抗癌剤治療の壮絶さを垣間見たことのある私は、抗癌剤治療に懐疑的。
    だから読み進めることが辛くて途中でやめようかと思ったものの…岩井圭也さんだからきっと読ませてくれると信じて読み進める。

    治療場面は一章まででその後は起業に話が展開しグイグイと惹き込まれた。

    広告代理店で勤務していた友人から、中小企業は大手の下請け孫請けで利益なんてほとんどないという話を聞いていたけれど、どこの業界でも悪しき構造は同じ。
    そこをどうにかするなんて誰もできないことだと思っていたけれど、コタローのような人はきっといると思うと勇気がでる。

    一度死ぬ程の思い

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    2025年11月01日
  • 楽園の犬

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    喘息を持病に持つ麻田がサイパンに渡り、海軍のスパイとして働く。彼は最後まで死を美化することなく、生きようとする。名誉の戦死、自決の美学を否定する。最終章…ひょっとして生き延びたのでは?という希望も…彼はアメリカ軍によって銃殺されていた。その事を告げに来た、ローザ・セイルズの父、フィリップ経由で手に入れた機密文書が見つかったことが原因。麻田はその事実をローザには告げていない、そういう人であった。読み応え、余韻ともになかなかの良作。性格も方法論も全く違うけど、「ライフイズビューティフルを思い出した。

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    2025年10月25日
  • サバイブ!

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    大病を克服して起業する。
    クセの強い人物が一人また一人と仲間になる。
    ひとやま超えたと思ったら新たな問題が降りかかる。
    ありがちな設定だと思った。でも読み出したら面白くて一気に読んだ。
    作中の短編映画『沙彩は、死なない』を見てみたい。

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    2025年10月22日
  • パパたちの肖像

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    読めてよかった。
    子育てに悩むパパたちの叫びが、胸にズドンときた。
    ママたちと同じくらい、パパたちもうまくできなくて泣きたくなる時があるんだ。
    泣きたいのはママもパパも一緒なんだ。

    子育ては、子どもと向き合うのと同時に、夫婦がお互いに向き合わないといけないチームプレーが必要なんだと、思い知らされた。

    特に「俺の乳首からおっぱいは出ない」と「髪を結ぶ」は、泣ける。
    乳児期に感じる焦りと、親としての自信喪失がこれでもかというくらいリアルに描かれていて、当時の記憶が蘇って、本当に泣いた。

    パパにはもちろんおすすめしたいが、ママにこそ読んでほしいと思う。
    パパの気持ちがわかれば、パパに対しても優

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    2025年10月21日
  • パパたちの肖像

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    ネタバレ

    石持浅海さんの息子の進学、ふいに泣かされた!!息子が遠方の大学に旅立つシーンで。当たり前のように毎日おはよーとか言って一緒にいるけど、ずっと続くわけじゃないんだなぁ。旅立ったら淋しくなっちゃうなぁと思って。自分の学歴思考で子供の希望を閉じ込めないようにしなくては!
    カツセマサヒコさんの専業主婦家庭の話もよかった。競争からはみ出た家庭かもしれないけど、それでもいいなと思えた。
    外山薫さんの損してる気分になってるパパの話も、妻がちゃんと家庭のことも考えてるのがわかって読んでてホッとした。

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    2025年10月08日
  • 付き添うひと

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    登場人物みんなが魅力的!
    オボロ、浦井、原田、笹木、依頼人やその家族みーんなが、短いお話の中でとても人間味溢れた描かれ方をしている。良くも悪くも。
    少年犯罪や児童虐待がテーマなのでクソみたいな大人も出てくる。その、クソっぷりが凄まじい。
    これを描き切っているのがすごい。
    職業柄近しい業界にいて解像度が上がっていることもあり1時間ちょいで読んでしまった。
    作者さんはとても緻密に取材されたんじゃないかな、と思う。特にLDの章。
    そして、オボロが付添人を勤めた子どもたちの可塑性を信じているような描き方をしているところに希望を感じた。

    正直、再犯率は高いし家庭送致にしたところで親も問題を抱えているこ

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    2025年10月07日
  • この夜が明ければ

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    岩井圭也さん 2冊目
    7人の男女が季節バイトで北海道に集まった。
    そのうちの一人が死んでしまう。
    みんな過酷な状況と誰にも相談できない環境に居て読むのが辛かったし、償いとか未練とか自分を責めていて常にダークな印象。
    向き合うだけ無駄な問題もあるし、百人いたら百通りの正解があっていい。
    白!か黒!じゃなくてグレーももちろんなければ生きてけないよ。

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    2025年09月17日
  • 科捜研の砦

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    土門真の過去が、周囲の人間の目線から語られる。
    まだ、科捜研にいた時代の土門。
    尾藤との出会いから結婚生活の一端も知ることができて楽しかった。加賀副所長も好きだ。それだけに、その後の展開が、、、
    菅野のパートは、苦さもあるけれど、あのままにならなくて本当によかった。
    続きが気になるので、3作目が手元にあってよかった。

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    2025年09月15日
  • 文身

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    文身だと刺青という意味にもなるが本作はそれとは少し違う。分身、とでも言うべきなのだろうがそれともまた違う。ではやはり文身なのか、と延々にループする。
    ロクでもない男たちの物語ではある。救いようがない。
    ただ、そのロクでもない人物たちから生み出されたものが面白いのだから仕方がない。
    本作の展開が見事だった。次第に虚構と現実が混ざり合ってその境界線が見えなくなってくるのだ。凶悪さとも違う、本当にどうしようもない人間たちの虚無的視点とも言えばいいのか。それに射抜かれるようだった。

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    2025年09月15日
  • いつも駅からだった

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    沿線に馴染みのある人が読めば没入感もひとしお。謎解きも難しすぎずあくまでも小説として楽しめる。まだまだ未登場の駅があるので是非とも続編をお願いしたい。小田急線でも。

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    2025年09月07日
  • 楽園の犬

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    太平洋戦争勃発間近の南洋の地を舞台にした物語。

    前半は、英語教師をしていた麻田健吾が、表向きは南洋庁のサイパン支庁で庶務課として勤務する一方で、日本海軍のスパイとして秘密裏に活動していく様子が描かれる。

    各章ごとに、健吾がスパイ活動をする中で直面した事件をミステリー仕立ての物語にしてある。民間人の健吾が、密命を受け、命をかけて活動するため緊張感があり、事件の真相を探っていくことに没頭して読み進めた。

    後半は、幾つかの事件を通して命の尊さに思いを巡らすなかで、徐々に近づく開戦を前に、個人の思考の自由が奪われていく様が描かれる。
    まさに戦争ムード一色。
    日本国軍の勝利を信じて疑わない、或いは

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    2025年08月29日
  • 最後の鑑定人

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    次作の「科捜研の砦」を先に読んでしまっていたので、ようやく読めました。
    さすが土門さん。
    ぶれない様子がとてもいいです。なんだかんだみんな信者になっていく。科学は嘘をつかないを信条に突き進んでいく様がかっこいいです。

    そして元妻!むしろそっちにびっくり!次作のエピソード0にあたる出会いを読んだからなおさら!

    鑑定人シリーズとしてどんどん続いて欲しいです。

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    2025年08月28日
  • 付き添うひと 子ども担当弁護士・朧太一

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    岩井圭也さんの作品 3冊目のこちら

    主人公朧太一が、弁護士として色んな事情を抱えた子どもたちを助ける物語

    朧自身も過去の自分と向き合いながら、
    子どもたちのために日々奮闘している姿に
    めちゃくちゃ感動しました

    子どもの弁護士をする人を付き添い人と呼ぶことを
    初めて知りました‪‪‪‪‪

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    2025年08月26日
  • パパたちの肖像

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    ネタバレ

    自分は乳幼児の母という立場なんですが、共感する!、耳が痛い!と交互に思いながら拝読しました。
    どんなに自分がしんどくても、「だって俺は親だから」と疲れや苛立ちを抑えて子供に対応する場面は共感したし、妻からなんでこんな簡単なことができないんだ、という表情をされて、夫が自分は子育てに向いてないわぁと落ち込む場面は、耳が痛かった・・
    当時わたしも似たようなことをしてました・すいません・・

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    2025年08月24日
  • 楽園の犬

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    プロローグ

    灼熱のアスファルトから立ち昇る蜃気楼は、
    自身の影をゆらゆらと揺らしている
    太陽からは容赦無く熱波が放射され、
    己からは汗が吹き出している 
    纏わりつく湿気も実に不快だ
    我が国はいつから亜熱帯気候になってしまったのか

    80余年前の彼の地、サイパンも
    昨今の日本のように灼熱だったに違いない


    本章
    『楽園の犬』★5 mariさんの本棚から
    主に第二次世界大戦前夜のスパイ小説で
    まことに稀有なサイパンが舞台だ!

    スパイにならざるおえなかった主人公、麻田
    その雇い主である海軍の堂本
    2人の人生が、大戦前後の動乱によって
    大きく変化していく様を克明に描いた
    感動のスパイ小説である

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    2025年08月24日
  • 汽水域

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    物語の中身ではなく、外側について。
    岩井さんの小説は、セリフと物語が、いかにもなセリフや物語としての書き言葉ではなく、本当に口から紡がれたかのような切り方、それも長い時も短い時もある。それが臨場感や焦燥感など、空気を作り出しているように思う。
    また、キャラクターが「立っていない」。だから、本当にいそうで、本当にそう考えそうで、「ふつうに考えた範囲では、ふつうそうなるよな」と思えて、「いやそうはならんやろ」とあまり思わない(一部作品にはあるが)。
    そうしたことが没入感をつくり出していると考えた。では人物に共感するか?というと、そういうことではない。ましてや今回の物語は共感してはいけない。そもそも

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    2025年08月22日
  • 楽園の犬

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    1940年、太平洋戦争勃発直前のサイパンの地に降り立った元女学校英語教師の麻田健吾。表向きは南洋庁サイパン支庁庶務係としての赴任だが、その実態は日本海軍のスパイという任務を帯びていた。

    島内を跋扈するあらゆる種類のスパイたち。海軍vs陸軍、アメリカ人vs島民、内地vs沖縄、あらゆる対立構造が生み出す緊張感。
    ごく普通の教師だった麻田が飲み込まれていく闇が深すぎる。それでも真っ当な感覚を最後まで持ち続けた彼の姿がどこまでも爽やかで印象的。

    日米開戦を回避するべく奔走した堂本海軍少佐と、思いを同じくする麻田の間にある信頼関係。戦争中、非国民の誹りを受けながら、なんとしても生き抜く努力をするこ

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    2025年08月22日
  • 楽園の犬

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    岩井圭也さん「楽園の犬」
    著者の作品は「汽水域」以来5作品目。
    80年前の終戦に合わせて結構前からこの「楽園の犬」を本年の8月の一冊にしようと決めていた。

    まず表紙。「鳳凰木」という樹木、全く知らなかったのだがサイパンでは「南洋桜」というらしい。
    現在もだが、日本人にとって戦中は特に「桜」とはある意味で生と死を象徴する樹木であり、満開に咲いて散っていくその儚さを表象しているようと思慕し偲んできた。
    この表紙の満開の真っ赤な桜に当時サイパンにいた日本人はきっと色んな想いを馳せたに違いない。
    祖国を想い、家族を想い…
    この桜には先人の御霊が宿っている様に感じられる。

    自分は20年位前に一度サイ

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    2025年08月17日