岩井圭也のレビュー一覧
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面白かった。戦時中のスパイものだけれど、体の弱いインテリがスパイっていうのも珍しく楽しめた。
最近、読みたいものを読む読書を控えていた。生活や人生における焦りで、何か身になる物を読まなければと、読みたい本ではなく読んだ方がいいだろう本を続けて読んでいた。社会問題、地政学、教育の本など…すると、気分はより沈み、どんどん闇が深くなってしまっていた。
久しぶりに読みたい物を読もうと手に取ったこの本。本の世界に入り込めて、現実逃避にもなり、純粋に楽しめた。
金原ひとみさんがある番組で言っていた。「どこにも居場所がなかったけれど、本の中にだけは居場所がある気がした」と。まさにそんな感覚だった。
この本の -
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主人公は、っていうか主役は科捜研の砦!土門 30歳男性インテリ
幾度も繰り返されている「無表情 ベージュの上下スーツ 寡黙 」
だが、人間であり、生きており、排せつも恋愛も所Ⅸ久慈もする・・正直、想像しがたいが。
自室に閉じこもり、内省の時間が生きているうちの5割はあろうかと。
対象となる事件の主役脇役には事情があり、感情がある。
もちろん、土門にも‥しかし、彼の身上は「人はうそをつくが 科学はうそをつかない」
しかし携わる人には誤謬も、バグも、勘違いもあり得る‥それが幸運に繋がることもあるし、残酷な事も。
久しぶりに燃える程面白いシリーズに出会った・・追いかけなきゃ。
読む順は多少ラ -
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ネタバレ『文身』という言葉を初めて知りました。
刺青のことだそうですね。
虚構が現実になる、というよりも、自分の手で現実にしてしまう。という表現の方が近いように、兄の人生は優秀である弟の手中にある。
しかし、それすらも兄自身が望んだことだとしたら、本当に虚構を生きていたのは弟の方だったのかもしれません。
終盤は読者である私も『どちらが虚構でどちらが現実なの?』といった具合に境目がわからなくなってしまいました。これも作者の狙い通りなんだろうな。
わたしたちの身の回りにもきっと、現実だと思ってた中に虚構が含まれているんだろうと思います。気づかないまま一生を終えることもあるでしょうけど。
おもしろ -
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ネタバレ岩井圭也さんを読むのはこれで二冊目。
北海道東端にある港町で、マスを捌く季節バイトに集った7人。
ある日、そのうちの1人が崖から落ちて無くなっているのを発見するが、なんと6人中4人が警察に通報するのに反対するという展開に。
正義感の強い青年の「シュウ」は、人が死んでいるのであれば必ず通報するべきだと主張するが…
「騙された末の不法滞在」「決して自分を認めない毒親からの脱出」「家族に介護殺人という濡れ衣を着せられ逃走」「離婚を認めないモラハラDV夫からの呪縛」等、警察に通報できない事情を4人はそれぞれかかえています。
4人が通報を反対し、自身の問題から逃げる事が正解ではないかもしれません。
しか -
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「横浜ネイバーズ」シリーズの第1シーズン完結巻。
ここまで語られてきたエピソードがすべて伏線になっているのがほんとにすごい。
6巻まで一気読みするのをおススメしたい。
1巻からずっと続いていたロンの両親に関わる事件についての顛末。
終盤で母親に対する気の持ちようが変わっていく様に、ロンの成長を感じて「大人になるってこういうことなんだ」って思った。子どもは親が育てるものではなく、環境の見守りの中で育つものなんだろうな。
作中で凪が闇バイトに応募するのはお金や人とのつながりや立ち直る気力のない弱い人で、そういう弱い人を叱責するような真似はできないって言ってて、この感覚はすごく強くて優しいなって -
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ネタバレ横浜・中華街を舞台にした「横浜ネイバーズ」のシリーズ続編。
今回はロンの友人凪の物語。
舞台になった川崎の臨海部はわたしにとっても特に思い出深い場所。実際の地名を使ってくれているので、情景が頭の中に浮かぶし、なんならバスの車窓も臨港バスのちょっとさみしい空気も感じられて、物語に入り込めた。
何をもって普通というかはわからないけど、人と違う思考や嗜好を胸を張って言える人は少ないと思う。それが思春期の多感な年ごろならなおさらで、そのあたりの感情を丁寧に描写しているところがとてもよかった。
岩井さんの書く文章は読み手を傷つけない優しさがあるのがいい。 -
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ネタバレ横浜・中華街を舞台にした「横浜ネイバーズ」の続編。
今回はロンの幼馴染妃奈子が家から出られなくなった顛末の章がメイン。
SNSの怖いところそれがなかった時代の噂話というものは「ひとのうわさもな浜・中華街を舞台にした「横浜ネイバーズ」の続編。
今回はロンの幼馴染妃奈子が家から出られなくなった顛末の章がメイン。
噂話というものは「人の噂も七十五日」という感じで口の端に上ったとしても身の回りだけでそのうち忘れられていくものだったけど、SNSが一般的になったことでそれが、より広い世界に発信されるようになり、しかもその記録はずっと消えくなってしまった。
そのあたりの残酷さを淡々と描きながらも、登場 -
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「我は、この世界を知り尽くす」
1867年生まれ、型破りの研究者である南方熊楠(みなかた・くまぐす)という実在の人物を描いた小説。
読んでいる途中でも熊楠への好奇心スイッチが入りまくるので、ついググって調べたくなってしまう。
例えば、熊楠は中学時代の後輩イケメンの繁太郎と、【露は二人の肌を隈無く湿らせ、汗や唾液と入り混じった…】と、何やらあやしげな夢を見る。
「え!?そうなの!?」と調べると、熊楠は〈男色〉の文献研究を熱心に行ったことでも知られていたという。
熊楠は男色の一体どんな研究を…とまた調べたくなり、早く続きが読みたいのに横道もすごくて、なかなか作品に戻れない(^_^;)
今度は -
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今回は天才数学者の話。
数学は全ての科目の中で1番嫌いだったから、またもや自分の苦手な分野。
でも、岩井さん作品は自分の苦手な分野から読みたくなる。自分の知らない世界のことを知るのが楽しい。
瞭司は、幼い頃から天才的な数学の才能があることで周囲と馴染めず、数の世界だけが友達だった。
そんな瞭司が初めて自分らしくいられたのが、同じく特別推薦生で入学してきた熊沢だった。
しかし、才能があり過ぎるがゆえに熊沢や恩師たちは瞭司から離れていく。。。
瞭司と熊沢、二人の語り手で進んでいく。
心理描写が上手いとかそういう次元ではなくて、完全に自分もストーリーの中に入って瞭司と熊沢を疑似体験してしまった -
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太平洋戦争勃発直前の南洋サイパンが舞台。
自分の苦手な戦争やスパイがテーマなのに今回も一気読みだった。
スパイといっても敵国の情報を取得するスパイではなくて、スパイを見つけるスパイ。
そこにミステリーと人間ドラマが入ってくるので、戦争ものでもエンタメ性があってとても読みやすい。
私のように決まったジャンルしか読めない人間にとっては、ジャンルの垣根を壊して読みやすくしてくれる岩井さんの作品は本当にありがたい。
スパイを見つけるスパイとして必死に生きる男の人生が描かれている。
そして行ったことのないサイパンなのに、今回も主人公の隣で一緒に観ているような感覚だった。
戦争がどのように始まって、