岩井圭也のレビュー一覧
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ネタバレ岩井圭也があの熊楠を描く、そりゃ期待するやろ。そしてその期待は裏切られることなく。
頭脳も行動も規格外のド迫力というのが、南方熊楠の魅力。彼を小説に書くなら、ファンタジーでもSFでも歴史偉人伝でも伝奇でもどないでも料理できるのに、岩井圭也は、人間熊楠を家族小説として料理してきた。父母や兄弟、奥さんや息子・娘との関わり。そして彼を支えてきた友人知人たちとの交流が物語のメインとなる。
奇矯な言動に、天才的頭脳とフィールドを駆け巡る肉体、天狗(てんぎゃん)の異名も大げさとは思えない熊楠が、周囲とどういう風に関わっていくのか?年齢・性別どころか生死の境すら破壊しての関わり合いは読んでいて息をつめ、 -
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どうして人は罪を犯してしまうのか。
その心情や背景が淡々として物語れるなかにも感情の熱さがあって、引き込まれるように一気に読んだ。
わたしは子どもが集まる施設で働いていて、子ども同士が殴った殴られたみたいな場面に毎日のように接しているんだけど、殴った子に「人を殴ってはいけません」と叱ったところで、なんの解決にもならないという事例を多く見ている。
殴った子には本人なりの理由があって、それは許されざるべきものであっても、その子にとっては正義だったりする。その気持ちを話してもらって、それについて一緒に考えていかないと、殴るという行為はやめられない。その子にとって問題解決の方法が「殴る」しかないから -
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ネタバレわたしのまわりには登山を愛してやまない人が数人いるのだけど、その人たちはみんな趣味程度にとどまることなく、常に次を求めている。
なぜそんな気持ちになるのかな、と思っていたのだけど、この小説の引き込まれるような描写で登山を疑似体験した気になり、限界を突破することの中毒性みたいなものを感じ、少し腑に落ちた。
わたしがもし登山家なら、きっと下山をしながら、気を緩めてはいけないとわかっていながらも、すでに次のアタックのことを考えているかもしれない。
岩井圭也という人は、イマジネーションのなかにリアリティがある稀有な小説家だと思う。
さらに、物語が過去と現在を行き来していても、その手法が必然だと思わせ -
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第二次世界大戦中のサイパンで諜報活動に従事する1人の男の物語でした。前半は、推理小説のような展開でしたが、日米の開戦が近づくにつれて緊迫感が増してきました。最後まで生きることに執着した麻田はあの時代には異端の存在だったと思います。だからこそ、簡単に自決を選んだその他大勢の人達より比べものにならないくらいの勇気が必要だったはずです。「生き抜くことが何より美しい」というメッセージを頂いたような気がします。平和な現代でも自殺を選択してしまう人は一定数いるので…。あとは、「因果ヅラ」というセリフが印象的で、スパイという人を裏切る活動に従事していた麻田が、家族と生きて再会することは出来なかった結末は仕方
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良い!
この作品良いよぉぉぉぉ〜。゚(゚´Д`゚)゚。
犯罪者、それは大人も子ども関係なく罪を犯した者が悪い!
だけど、罪を犯した者だけが悪いのだろうか?
特に少年犯罪に関しては、子どもたちを取り巻く環境や人物の影響が大きのではないだろうか?
その中でも、子どもたちにとって一番身近な存在である親の影響力はかなり大きいのではないだろうか?
子どもに全く興味を示さない親、子どもを自分の持ち物のように扱う親、子どもの心の声を聞こうとしない親…
そんな親たちが子どもたちを犯罪の道へと追いやっているかもしれない!
そうならないように「付添人」のオボロのように子どもたちに寄り添ってみよう -
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目次
・罪の花
・路側帯の亡霊
・見えない毒
・神は殺さない
四話どれも印象に残るストーリーだった。
前作と比べて、登場人物たちの人間の深い部分を描いているのかな、と思う。
土門は無表情で感情が読み取れない。
しかし、とても人間らしい土門誠がこの作品の中に生きている。
特に最後の【神は殺さない】は苦しかった。
ある事件により心が深く傷付く土門。
そんな土門が自分を頼ってくれないことに打ちのめされる尾藤宏香。
ラストシーンの切なさ。:゚(;´∩`;)゚:。
「人は嘘をつきますが、科学は嘘をつきません」
真実を明らかにすることは、残酷なことでもあるんだな…
あぁ、 -
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ネタバレ4歳の頃から頭の中で他の声が聞こえる熊楠。そしてその声は熊楠を煽ったり、不安にさせトラブルの原因になります。
弟に生活費を出してもらって研究をつづけるも、やがて…
ある程度南方熊楠のやらかし人生は知っていたけれど、めっちゃ面白くて一気読みしました。
弟の「那智山から下山してほしくなかった」という、弟が思い描いた兄でいて欲しい気持ち…那智山は平安の時代から霊験あらたかな場所なので、余計に兄が現実離れしたイメージから一転して成り下がったと感じたのかも知れません。弟の痛烈な一言が悲しすぎました。
そして息子の病気…辛すぎる。
所々にでてくる和歌山弁「お休みよ(お昼以降に言うバイバイ)」「ふう -
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素直に面白かった。
南方熊楠、彼のことがよくわかる、ノンフィクション自伝をフィクション化したような作品なのか?
そこがわからないところだが、彼の紀州弁語りで弟に全生活を支えてもらいながら研究に没頭した生涯。医師になった同胞、喜多幅武三郎の見立てで結婚、息子と娘も誕生。石友、盟友の毛利清雅、さまざまな人に助けてもらい生涯を世の中のもの全てを知り、己を知ること、粘菌に捧げる。
詳しく知らなかったので記憶に刻まれる一冊になった。
子ども自分から脳内で声がして、その声に返答したり怒ったりすることで気性の荒い、暴れん坊として育つ。中学時代に和漢三才図会を踏破し、世の中のさまざまな文献に目を通していく。 -
Posted by ブクログ
うわ〜、凄いとは聞いてたけど、これは凄い!
よくこんなプロット考えつくな〜
「虚構と真実の境目に迷い込んでみませんか?」
岩井さんのこの言葉どおり、まんまと迷い込んでしまった。
弟の描く私小説に、翻弄される兄の人生。
大筋の話だけでも先が気になって読む手が止まらなかったけど、最後の方で降りかかる、???の嵐。
そしてラスト1行で更なる、???の嵐。
どこまでが虚構なのか、いったい何が真実なのか?
めっちゃ翻弄された。。
今も頭の中で、え?どういう事?ってぐるぐるしてる。
岩井さんの思惑にしっかりハマってしまった。
人によって解釈が違うだろう作品。
また時をおいてじっくり読み直し