岩井圭也のレビュー一覧
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ネタバレ恋人が行方不明になる、学内で死者がでる。
大きな出来事が起きてはいるけれど序盤は物語が淡々と進んでいく。けれど小滝の激情が垣間見える。小滝はどう考えてもいっぱいいっぱい。恋人が消えた、故人の肖像画を描かなければならない、自分の作品。そんな時に現れたのがリュウ。スマホもお金もない彼は何者なのだろうか、そう考えた時ひなたの縁者かと思いました。正解は当たらずも遠からず。
日常に潜む幻。それがリュウだった。
ミステリー、人間関係を描いた作品としてすごく面白かったのですが、リュウの存在によりとても好きな作品になりました。
本来だったらありえないかもしれないけれど、でも奇跡のような夢のような物語をどうしても読みたいと願ってしまうから。
すごく素敵な作品でした。 -
Posted by ブクログ
数学の天才、三ツ矢瞭司は特別推薦生で協和大学に入学する。彼の数学に特化した世界は幼い頃から誰からも理解されず一人だったが、大学の恩師、小沼と同期の同じ推薦入学の熊沢勇一と斎藤佐那、研究室の先輩、田中と木下という始めての仲間を得て、彼の天才的な証明までの漠然とした道筋を、皆で証明する作業の楽しさを知る。しかし、その世界はどこかで崩壊したらしく、瞭司が亡くなり熊沢の手元に残されたノートに、コラッツ予想の証明が書かれているようなのだが、もちろんその内容は解読が必要な独特のメモなのだった。
これがデビュー作と知らずに読み、完成度の高さに驚かされました。誰も証明したことのないような高度な数学の世界を不自由なく体感させる表現。読むのには数学ができなくても全く問題ないです。ただ、瞭司の生き方の不器用すぎる様が、読んでいて苦しすぎる。熊沢の方もある程度普通に生きられると、雑事多くて数学に埋没できず、また、瞭司への嫉妬・羨望心が友情に勝ってしまうのも辛い。
瞭司が死んでしまっているので、凄く楽しく読める本ではないのですが、内容の重厚感と、天才の追体験できるのが良かったです。
アルコール依存の表現がやや小学生向けではないところなどあり、中学校以上向け。 -
Posted by ブクログ
本好きさんから借りた本。
太平洋戦争勃発直前の南洋を舞台にした
スパイ小説。
太平洋開戦直前、持病の喘息のため、
英語教師を辞めた麻田健吾は、妻子を日本に残し、表向きは南洋庁の役人としてサイパンに赴任する。
海軍少佐、堂本頼三の下で、海軍のスパイ(犬)と
して働く麻田。堂本からの指示で島で起こる不審な死の真相を調査していく。
その頃日本は、勝てる見込みがない米国との開戦に向かわざるを得ない状況となっていた。
麻田と堂本の共通の思いは戦争を止めること。
だが、大きな時代のうねりの中では個人の意思や
信念など、あって無きにも等しい。
表紙の南洋桜、日本の桜とは似ても似つかないが、堂本少佐はサイパンに咲く、この南洋桜に日本の桜を思ったのか。堂本少佐が、あのような最期を選んだとは対照的に、麻田の最後まで生き延びようと
する姿、信念に心をうたれた。
生き延びて、家族に再会して欲しかった。
美しい死など決して存在しない。
このような極限の状態となった時、
自分は果たして信念を持ち続けられるのか、
深く考えさせられた。
読み応えのある作品だった。 -
Posted by ブクログ
医学分野での研究不正疑惑を暴くというあらすじに飛びついた感じで手にしたものの、私の予想とはかけ離れた着地点で驚き!
本のテーマから、STAP細胞とその研究者をイメージした人が多いようだけれど、私はまた別の研究者のイメージだった。(誰とはいわないけど)
近年の様々な社会現象から医学研究そのものが、科学ではないな…と感じている私にとって、論文というものはやはりあてにならないシロモノだなと実感してしまった。
論文にさえしてしまえば、再現可能かどうかも問われないなんてなんでもありじゃないかと思う。
岩井圭也さんがそのあたりを見事に暴いてくれたのはさすが!
嘉山教授も三田も真実を追究したり証明することに夢中になりすぎて、何が真実か分からなくなってしまったのだろうけれど、こういうことは少なくないはず。
嘘がよくないことは当たり前だけど、大切なものを守るために時と場合によって人は嘘を使いこなして生きているわけで…
その嘘の重大性も大切なものの重大性も人によって受け止め方は様々なのだ。
研究者が夢を追いかけることは素晴らしいし、始めは世界を救うためにと思って研究するのだろう。けれど、きっと様々なしがらみで本来の意思が失われたり歪曲してしまうことは少なくないはず。
お金や名誉といったものに縛られずに研究できればよいのだろうけれど、なかなかそうはいかない。
医学というものが、こんなに崩れやすい論文を元に人の生命を握っている…
みんなもっと気づけばいいのに…と改めて思う読書でした。