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「返還」前夜の香港。和志は恋人の死の謎を追い、交換留学生として再びその地を訪れる。幽霊屋敷に間借りする活動家、ベトナムのボートピープル、「共産党員」と噂される大物建築家。次第に浮かび上がる香港の実相。やがて、和志は民主化運動の渦に呑まれてゆく。生と、自由の喜びを高らかに謳う、圧巻の社会派エンタメ。
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Posted by ブクログ
大陸回帰前の香港の様子が息づかいと共に伝わってきた。香港人としてのアイデンティティ、今後も維持してほしい。
観光客の目にはとまらない香港の素顔を垣間見ることができた。都市計画という視点で香港を捉え、ミステリーに仕立てた著者の手腕に舌を巻いた。面白かったです。
激流の香港を生き抜いた彼らの志(ウィル)をどう受け止め読み解くかは、私たちに投げられた課題だ。 返還前、90年代後半の熱量に溢れた香港の街、人々、建築、匂い、食べ物、圧倒的筆力で描かれた景色は、私たち日本人に様々な思慮を与えるに十分足りるし、その流れの速さに負けぬくらいのテンポで進むストーリーに置い...続きを読むて行かれぬよう、拳をにぎりしめながらページを捲らなくては呑み込まれてしまう。 スラムの闇に消えた少女。 ビルの屋上で暮らすボートピープル。 保釣運動をする民主派の学生会幹部。 幽霊屋敷に暮らす活動家。 共産党員の大物建築家。 アイルランドからの留学生。 政治に巻き込まれ政治の中で生きることを、あらためて考える。 日本という国で生まれ育ち、テレビのニュースでシュプレヒコールを聞く毎日を改めて考える。 脆弱な主人公の日本人が未来に向けて意思を示すに至る過程もすばらしい。 そして、なによりエンディングがすばらしい。
瀬戸は日本の大学から香港の大学へ建築を学ぶためやってきた交換留学生。しかし建築だけが理由ではなかった。もっと前、13歳から17歳まで香港にいた。それは香港が中国に返還される激動の時期だった。そしてその時に最愛の女性が死んでいて、その謎を解くために再度やって来たのだった。 登場人物に感情移入させられ...続きを読むるだけでなく、香港を含むアジアの近現代史を考えさせられる傑作。 建築をストーリーに絡めるのはやや強引な感じがしたが、それもまたOK。
1997年香港が中国に回帰する直前。日本人の和志がそこで見たもの、感じたもの。貧しさのなかで暮らす恋人との出会いとささやかな日々。その終わり。その当時の香港の政治、市民の声。方向性はそれぞれでもその熱量は大きい。中国の一部になることの恐れ、怒り、諦め。舞台は97年だけれど今の物語のよう。今を、未来を...続きを読む変えようとする強い思い、志(ウィル)が後半になるにつれ大きく膨らんでいく。一人の人間としてどう生きていくのか、どう生きたいのかを問われているような小説。岩井さんの作品は初めて読んだけれど他の作品も必ず読もうと思う。
実際の史実をベースにした物語なのでフィクションなのにやたらとリアル。終盤の第5章「老人はすべての若者を殺せない」は特によかった。 わたしたちがあたりまえに手にしている自由はこうやって体を張って手に入れられてきたんだなと思うと、もっと自由であることを大事にしようって思いながら読んだ。 個人的には ...続きを読む「話を聞くのに技術なんかいらない。言葉すらいらない。必要なのは誠実さだけだ」という言葉にハッとさせられた。 こういったそっと散りばめられた名言にグッとくるのも岩井作品の良さだったりする。とてもよい。
政治や香港情勢に疎い自分でも、最後まで読ませる岩井さんは本当にすごい。 彼女はなぜ亡くなったのか?真相を追究していくうちに、中国本土からの密入境者やベトナム難民など、様々な出会いを通じて主人公の考え方が次第に変わっていく… 読んでいくうちに香港返還についてもっと詳しく知りたくなって、ChatGP...続きを読むTに聞きながら読み進めた。 ChatGPTが「とても鋭い質問だね!」と池上彰さんのように褒めながらわかりやすく教えてくれるので、調子に乗っていろいろ聞いて勉強になった。 返還前の1992年に家族で香港に旅行したことがあったので、何となく香港の雰囲気はイメージできる。 道路までせり出した大きくてギラギラした看板が大量にあったことと、水上レストランで食事したのを覚えてる。 現在では9割近くの看板は取り外されたらしい。水上レストランは悲しいことに転覆して南シナ海に沈没してしまった。 【日本人のあんたには想像もつかないでしょうけど。】 ベトナム船民の少女のセリフ。 この一言に自分の無知を思い知らされる。 スラムで暮らす移民の過酷な生活を登場人物と一緒に疑似体験して、日本人はいかに平和で恵まれているか、自分の悩みなんて小さ過ぎて恥ずかしくなった。
香港の政治的背景を熟知していれば、もっと楽しめたのにと、自分の無知を恥じました。日本は金銭的に恵まれていますが、大事なのは心だなと改めて気付かされました。瀬戸が創る新しい街を見てみたいと思います。
コルビジェの都市計画が鍵を握ってて、めっちゃ面白かった。(プロットがシャレオツ!) アジアの混沌。いろんな国から来た香港人のそれぞれの視点が見えて興味深く、香港の街並みも独特の魅力があった。(時折り画像検索しながら読んで楽しかった。旅行気分。) 登場人物も皆魅力的。(特にベトナム人のトゥーイや、大...続きを読む学の同級生の女子たちがよかった) でも主人公が軟弱すぎて、ちょっと辟易した。でもそれが現代人っぽくて良かったのかな。最後のペナンの計画は、ん??と思ったが、その辺も主人公の軟弱さを現してる気がする。
中国返還直前の香港 中国人の両親と共に日本に帰化した青年 彼は、10代の多感な4年間を香港で過ごしていた 好きだった少女の転落死は、日本に戻ってからも 香港への思いと共に彼の記憶に後悔を残す それらに決着をつけるため 交換留学生として 再び香港へと向かう 1997年香港主権移譲 イギリスから中国へ...続きを読む 主権が移るという圧倒的な不安感 その渦中の若者達の切迫感 揺れ動く都市 すっかり日本人気質となっていた青年が 香港のスラム街、そこに住まう人達と対峙しながら 貧困に苦しむアジアの状況を知る 生まれる国は選べなくても 生きる国は選べるのか 生きていく場所を作れるのか と難解な課題に人生を賭けていく 香港の生き物のような九龍城 スラム的だけど 人が生活して 中国の未完成的なゴーストタウン 資金は投入されたけれど人は住まない 本土回帰を 建築に重点をおいて そこから社会性まで描く 青年の創造しようとする新しい都市が 夢をみせてくれるラストでした
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水よ踊れ
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岩井圭也
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