岩井圭也のレビュー一覧

  • この夜が明ければ
    北海道の港町で短期のバイトに参加している7人の男女。
    そのうちの1人の男が遺体となって見つかる。
    誰もが警察への通報を拒否する。

    そこから始まるが、とにかくそれぞれが過去から逃れて短期のバイトを転々としているのに理由がある。

    不法滞在だったり、母親の呪縛から逃れるためだったり、育児とDVから逃げ...続きを読む
  • 水よ踊れ
    1997年7月の中国返還を間近に控えた香港を訪れた1人の日本人留学生。彼は昔、香港に住んでいたことがあり、ある目的を持ってこの地を再訪したのだった。ミステリー仕立ての構成だが、犯人探しが目的の小説ではない。自由の象徴としての香港や、様々な事情で母国を去らねばならなかった人々の思いが交錯し、読む手が止...続きを読む
  • 水よ踊れ
    返還前の香港、愛していた少女が目の前でスラムのビルから落ちて死んだ。犯人を目撃した和志は警察に告げた後家庭の事情で帰国する。3年後香港の大学に留学し、彼女の死の真相を調べる。この謎、事故死にされた理由が物語の本筋だが、本当の面白さは香港の人々の風景、空気、難民や本土からの違法入国など共産党支配の影に...続きを読む
  • 文身
    放蕩無頼な作家須賀庸一。彼の人生は真実だったのか?
    姿を隠し、兄の名で作品を書き続ける弟。彼こそは虚構だったのか?
    現実と虚構が渦巻くスパイラルに巻き込まれて、現実を生きることの意味さえ疑ってしまいそうになる。
    中盤以降の怒涛の展開はまさに、予想外。
  • 文身
    小説という嘘に、人生が狂わされていく人々の物語。
    本が好きな自分は「現実を超える嘘」という存在に浪漫を感じているしそれを肯定するような物語だと思っていたけれど、最後に夫が中村に言った「言葉遊びはやめてください」という叱咤にハッとしてしまった。
    言葉には力があるけれど、それは正義とも悪とも言えないもの...続きを読む
  • 文身
    読み始めてすぐ「あーなんか面白くなさそうー」って思ったけど、なんか止まらなくなって一気に読んでしまった。

    出来の悪い兄と優等生の弟。
    秀才すぎるが故に世を儚み失踪の道を選んだ弟。
    自己実現の為に作家になり、兄の名前で発表する。
    弟の存在を知っているのは兄のみ。
    弟は本当は生きているのか死んでいるの...続きを読む
  • 文身
    01月-02。4.0点。
    私小説を地で行く、「飲む・打つ・女」の主人公作家。
    娘とは絶縁状態だが、作家死亡後に作家から娘にもう一つの私小説が届く。。

    珍しい展開の小説。一気読み。終盤に「あっ」と言わせる事実が。
  • プリズン・ドクター
    奨学金の返済を免除してもらうために仕方なく就いた矯正医官の史郎だが次第にその仕事にのめり込んでいきます。こういう成長物語、好きです。
    病だけでなく、その奥にある罪も治療する姿が良いね。是非とも続編を。
  • プリズン・ドクター
     主人公は、タイトル通り刑務所のお医者さん。でも本人が希望した職場ではない。しかも、若い医師に対する患者の受刑者は見下してくる。助手の人もベテランで、新米の若い医師には立場が逆転したかの様に次々と経験値から言える指導をする。日々、薬を求めて受診に訪れる患者(受刑者)は詐病を訴えるのが多い中、本当の病...続きを読む
  • 文身
    最後の文士と呼ばれた作家、須賀庸一。
    酒乱。女好き。乱暴者。
    庸一が書く作品は私小説。
    彼の生活をのぞき見ているような背徳感を抱きつつ
    何かに取り憑かれたように一気に読み終えた。

    P48〈山ほどある嘘のなかに、たった一つ嘘が混ざるだけや〉

    P305〈私小説とは言え、小説である限りは虚構と現実の混...続きを読む
  • プリズン・ドクター
    神経内科医としてのキャリアを目指していたのに経済的理由で奨学金免除の義務を果たすべく3年だけと刑務所の医師、矯正医官となった是永史郎。
    刑務所であるから患者は犯罪を犯した海千山千の受刑者。医務の助手は准看護師の資格を持つベテラン刑務官。限られた医療体制に薬剤、検査方法。そんな環境下でも、主人公は研修...続きを読む
  • 文身
    私小説作家・須賀庸一。須賀が経験したことが小説に描かれる。小説の内容は極めて暴力的だが、全て私小説ということで人気作家となっていた。しかし、須賀には秘密があった、賢い弟の存在。兄は弟のために生きているのか、弟は兄のために生きているのか。描かれた小説は、それは真実なのか虚構なのか。
    兄弟の行く末が最後...続きを読む
  • われは熊楠
    自分のことを知りたい。
    というのが熊楠さんが博物学者になった主要な動機。

    そうした動機には僕も理解を示す。
    自分も自分のことを知りたいと思うことはある。

    しかしそれは建前ではないかと思った。本当はただ粘菌と呼ばれる生物を収集してコレクションするその生態を研究することが大好きなだけだったのではと思...続きを読む
  • 暗い引力
    短編だからか、展開が読みやすくキャッチーなところもあるが、さすが岩井氏とでも言うべきか、各場面を緻密に引き摺りながら人物たちが堕ちていく姿が描かれている。個人的には『楽園の犬』や『われは熊楠』のような、じっとりと汗をかき、またざわっと鳥肌がたつような作品が好きかも。
  • 横浜ネイバーズ
    横浜中華街を舞台に、フリーターのロンが活躍、というよりは右往左往して事件を解決するための努力をするお話。事件自体はわりと重めなものの、テンポが良く、さらっと読める。一巻は登場人物紹介を兼ねている感じ。次巻以降が楽しみ。
  • 横浜ネイバーズ
    まさにIWGPの横浜中華街版。
    少年達が自らの手で地域内の社会問題を解決するという構成はありきたりだけどその分とっつきやすい。
    この先どのようにオリジナリティを出せるか、もう少し続けて読んでみよう。
  • われは熊楠
    岩井圭也さんも既刊で読みたい本がまだまだあるので、さほど新刊にこだわっていないんだが、そりゃあれば借りるよ
    だって男の子だもん

    はい、生物学者であり民俗学者でもある「知の巨人」南方熊楠の生涯を描いた『われは熊楠』です

    うーん、面白かったんだけど、ちょっと消化不良
    だって南方熊楠よ?逸話が多すぎて...続きを読む
  • 永遠についての証明
    数学のことは全然分からないけど、リーマン予想は容疑者Xの献身に出てきたあれだな、とか浅い知識でうっすら理解した気になって読みました。

    天才にもいろいろあって、むしろわかり合えないことの方が多いのかもしれない。
  • この夜が明ければ
    人間のドロドロした部分をたくさん見ることが出来る本。
    6人がそれぞれちょっとずつ自分語りをしていくのが小説を色んな方向から読み解けて面白かった。
    正しいことだけを貫くのは生きづらいだろうなと思いながら読んでいたので、ラストシーンの一歩踏み出す描写は気持ちが良かった。
  • 楽園の犬
    喘息で仕事にも支障をきたしだした麻田健吾。
    療養も兼ねて家族と離れサイパンに赴任することに。太平洋戦争開戦前の話だ。
    そこで海軍の堂本少佐のスパイとして活動することになる。

    死を美化する事が普通だったこの時代の中、「死は死だ」と言い切ることがどれほど難しく勇気がいる事か。全編死についての麻田の違和...続きを読む