岩井圭也のレビュー一覧
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「スタップ細胞はあります!」っていう台詞を日常生活で良く言うけど(あります!って訴えたいときとか)ま、この本読んでいても思い出しました。"風車と巨人"はドン・キホーテの有名な場面から引用されていますが、このシーンや引用で部分知ってるだけで実は読んでないじゃんって焦ったのは、私だけじゃないと信じたい。
キャリアを積んで報道系の映像作る会社でディレクターになった三田は、有名な番組の作品として、老化を止め癌治療にも革命を起こしそうな『不老因子』を発見した嘉山教授の取材をする許可が出た。しかし、取材を進めると彼の論文や研究に不穏な影を感じ、それは調べても調べても払拭できない。しかし、逆に黒だと証明するものも決め手がなく、三田は追い込まれていく。
後半の三田に共感できないというか、総合的な結果がスカッとしなさすぎて、評価伸びないんでしょうねぇ。でも、流石の構成というか、スカッと面白くないのに、まあまあ良かった、と思わせるところが素晴らしいです。
内容が難しく社会的な経験に基づく判断をする場面もあるので、高校くらいから。 -
Posted by ブクログ
「不老因子」の発見で脚光を浴びる若きがん研究者の嘉山宗弘。彼を追う人気ドキュメンタリー番組の撮影を始めた三田紗矢子は、やがて嘉山の成果の根幹を揺るがす研究不正疑惑に気づき…。
終始、嘉山教授に対してモヤモヤした感じで物語が進み、若手ディレクター三田の彼に対する疑惑に歯止めが効かなくなっていく姿はわかるような、わからないような…これまたモヤモヤした気持ちになったが、彼女が起こす行動は実際にありそうな展開で恐ろしくなった。
数年前に「とある細胞がある」と信じた女性研究者が話題になったことを思い出し、この『風車と巨人』というタイトルに納得。スペインの名作『ドン・キホーテ』からきてるとは、さすが岩井さん。
最後の三田の行動は鋼の心臓と言うべきか、狂っていると言うべきか。ちょっと薄気味悪くさえ感じた。 -
Posted by ブクログ
がんの治療に役立つ「不老因子」を発見したという嘉山教授を題材にしたドキュメンタリーをを制作するため、撮影を始めた三田。しかしその途中で嘉山の研究不正疑惑を知る。母ががんに罹患したこともありがん研究の発展を願う三田は番組の制作に執念を燃やし、さらに調査を進めるのだが疑惑は増えるばかり。真実はどこにあるのか。
タイトルは「ドン・キホーテ」になぞらえたもの。信じることは真摯ともとれるし、愚かともとれます。たとえ真実と信じていたとしても、証拠がなければ事実にはならない。そんな中で嘉山の研究に疑いを持ちながら必死で撮影と取材を続ける三田の姿がとんでもなく危うく感じました。何事も知りたいという「しつこさ」を持つ彼女はこういう仕事に向いていそうなのだけれど、のめり込み方が本当に怖い……。
しかしこのラストは、彼女にしか選べない結末だったと思います。たしかに彼女には、この仕事以外ありえないのかもしれません。 -
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ネタバレ語学学校で学んだ時の知り合いに、このお話の舞台になった返還前の香港を案内してもらったことがあった。林立する高層ビル群の中を、カイタック空港に降り立ち、物理的な制約の中で、人間がやりたいことをなんでもやろうとするとこんな社会になるんだなあと圧倒された。
しかしただの観光客という立場で、日本好きな友人に案内されながら見た香港の街が、まったく表層的なものだったんだなあということを、本書を読んで感じさせられた。
反日的な感情や、その根っこにある日本がやってきたことについての無知だけでなく、この島に渡ってくる移民たちがどんな生活をしているかといったことも想像力に欠けていた。
作者がこの時期の香港をテーマにしたいと思ったのは、とても共感できたし、出てくる登場人物の一人一人が、それぞれの社会的な位置に応じて、いかにもという感じでつくられているのも、ドラマをとてもわかりやすくしてくれていた。それぞれの立場でそれぞれに動いているのに納得させられた。それらの人物をこのように配して、複雑なストーリーをまとめきった力に感服した。
ただの留学生にすぎない男の子が解決しようとする「個人的な問題」の背景に、こうした「香港返還問題」という大きな社会をいかにからませるかという部分はとても野心的な試みで、最後の落としどころもなかなか良かった。 -
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岩井圭也さん作品なので
手に取りました。
主人公は恐らく場面緘黙症で
声を出す能力はあるし
家庭では話せるのに
外では言葉が出てこない。
辛い子供時代を過ごし
ひっそりと影のように生きている青年、遼馬。
そんな遼馬がボクシングと出会う。
「話せなくてもボクシングは出来るから」
その言葉に支えられ
地道な努力を積み重ねて
遼馬の人生が徐々に徐々に変わっていく。
ボクシングの知識はあまりなくとも試合の臨場感がすごくて、手に汗握りながら一気読み。
ボクシングは拳による対話。
こう書くととてもスマートでかっこいいー感じだけど、
そこは血みどろで、倒されてもすぐ起き上がり、敗ける恐怖、死ぬかもしれない恐怖にもがき苦しみながら辿り着ける場所でした。
しかし拳による対話なら
サクチャイだけでなく
対戦相手の廣瀬や小磯の事も
もっと掘り下げて欲しかったかも。
愚直に努力する遼馬が報われるラストがなんとも爽やか。
勝ち敗けではない。
どう戦ったか。
全力を尽くせたか。
「ぼくはここにいる」と思えたか。
派手な大勝利などなくても
静かな感動がしばらく余韻を引く。
岩井圭也さん。やっぱり好きだなぁ。 -
Posted by ブクログ
若手ディレクターの三田紗矢子は、「不老因子」の発見で脚光を浴びるがん研究者・嘉山宗弘教授を追うドキュメンタリー番組『十一時の肖像』の撮影を始める。
だが、嘉山教授の研究不正疑惑に辿り着き…。
捏造、疑惑、虚構のなかで、真実を見つけるのは至難の業であり、そのために何をしたのか…。
そして…。
母が乳がんだったせいか、三田の嘉山に対する思い入れは熱く企画が通ってからは、全力投球で撮影に挑む姿は凄さを感じるのだが、不正を知ると一転する態度や自分だけが正しいと思い込み、他の人を蔑むような性格に嫌悪を感じた。
最後は潔さを感じたが、それでも自分をこういう形で見せるという態度は、やはり好きになれないタイプだった。
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Posted by ブクログ
タイトルがまず、読書好きの心をくすぐると思います。
そして読み始めてすぐに、好きになりました。
初めに「真昼の子」を勧められた吉乃
翻訳物の海外小説かぁ…と、きっと私も思います。
でも読み始めたら止まらなくなる…。
古書店<深海>に集まる読書会メンバー。
みんな同じではない感想が、リアルで良い。
自分と全く違う受け止め方もあるけれど
その違いを、ざらりとした違和感にしないように
店主の叔父さんがうまく中和してくれる。
いったん泥が舞い上がった水底も
また穏やかな澄んだ水に戻る感じが、素敵だなと思う。
そして共感ポイントも沢山ありました。
本を手に入れて
「今日の昼ごはん、いやついでに晩ごはんも、コンビニで買って帰ろう。」
「本棚の前に立った。何もかも、忘れたかった。本の世界に逃げ込みたい。」
「…意識が文章のなかへ沈みこんでいく。
…ただ、文章によって形づくられた強固な世界だけがある。」
本の世界の中へ入ってしまえるのが、やっぱり気持ち良くて好き。