岩井圭也のレビュー一覧
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y yさんのレビューで、本書と『文身』の繋がりを教えていただき、なぬ?読まなくては!と思い手に取りました。
『文身』は私にとってはかなり衝撃的な物語でした。弟が書いた小説の内容を後から兄が経験する、そして経験した後に自分の私小説として兄が世に出す、それもその内容がもう‥‥。
その兄の娘が本書には登場します。やはり、小説家として。
主人公は遠野茉莉子という舞台女優。自分の中身は空っぽで演じることでしか生きることができないと思っている。その演じ方がストイック過ぎて、実際に経験したことでなければ演じられないという信条で、自ら辛い目に遭いにいく。
その狂気じみた行動が『文身』を彷彿とさせて、薄気味悪く -
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シリーズ3作目。
元科捜研の無愛想な天才鑑定人・土門と嘘を見抜く変わり者の助手・高倉が、3作目ともなるとそれぞれの個性がかなり出て、掛け合いも違和感なく進んでいく。
TVドラマ化され、藤木直人と白石麻衣のコンビでの放送も終了したが、ドラマとは別物として今作も楽しめた。
〈4作の短編〉
交感原理〜ストーキングしたのは誰⁈
雑踏に消ゆ〜花火大会での混乱を招いた声
見知らぬ水底〜溺死体の場所は…
灰色の追憶〜火災に巻き込まれた旧友
灰色の追憶が、土門の原点を知ることができる内容だった…旧友との関わりや彼らの思いが伝わってくる。
愛想がないけど、冷血漢ではない。他人を思いやり、他人を信じること -
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冒頭を読み始めたときは少し難しくて、最後まで読めるか不安になったのだけど、一章一章読み進めるうちにどっぷりと世界にはまって一気に読んだ。
天才が生きる上での生きづらさ、周りの理解や葛藤。そういった決して明るいだけではない道のりの先に先人の知識がある。そんな鬼気迫るまでの知への欲望が痛々しくも魅力的だった。
辛くとも自分の道を突き進むことで周りに希望を与える人っているんだな。と思った。
物語の中に度々登場する「如来」について、若干ファンタジーの要素はありつつ、案外人智を超えたひらめきというものは神がかり的なものなのかも知れないなとも思ったり。
とりあえず、読み切れてホッとしている(笑 -
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最後の鑑定人シリーズ、3作目。
今作は土門の旧友たちが登場して、事件解決に一役買っている。
このシリーズを読むといつも、科学の力ってすごいなぁと思う。
ほんの少しの痕跡から証拠を見つけ出し、真相を突き止めてしまうのだから。
今作でも、こんなものからあんなことが分かるなんて!と毎話驚いた。
土門の意外な行動を見ることができたり、土門の過去が明かされたりと、土門を身近に感じられてよかったし、前回までの登場人物たちの変化を感じられたのもよかった(*ˊ ˋ*)
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一度他者と接触すれば、その他者は必ず心のなかに何らかの痕跡を残す。それがお互いにとっていいか悪いかは別 -
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ネタバレ天才的な数学的才能を持つ暸司は、その才能で有名な大学の数学科へと進み飛び級卒業も認められ、助教につく。周りが彼に影響を受け、それぞれの人生を歩むため彼の目の前から去っていく中、逆に彼は孤独になり身動きが取れずアルコールにすがる生活に落ちていく。うまく生きることができない。正しさを重んじる教授と反りが合わず、精神を蝕まれていく。
クライマックスは涙が止まらない。どうして彼はこんなに不器用なんだろうかとか、みな悪意があるわけではないがすれ違い理解し合えず、生きるのが下手な彼は取り残されていく。
読むのがつらい。
熊沢が『ミツヤノート』の部分的解読の講演中、彼の精神と再会を果たす。目前に閃光が弾け -
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読むか受け流すか迷いましたが、素知らぬ顔ができないのが岩井圭也さんです。まぁ、設定・展開ともベタな「お仕事×青春」物語でしたが、やっぱり岩井さんは上手く引き込み、読ませます。
サバイバル=極限状態からの生存。本作では病気と仕事のダブルの危機があり、そこからどう未来を切り拓いていくかが読みどころになっています。
ダブル危機を乗り越える各段階で、そんな上手く行くかよーとツッコミを入れたくもなります。が、それらを差し引いても、無謀さが許される若さと仲間との信頼関係が眩しく、応援している自分がいました。
極限じゃなくても、困難な状況を打破するためのヒントも含まれている気がします。知識や技術 -
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毎年この時期に戦争に纏わるものを読もうと思って2年目。今年は「最後の鑑定人」の岩井先生の著者を手に取ってみました。
太平洋戦争勃直前のサイパンを舞台にしたスパイものとのことで、スパイ映画的なモノ(前に読んだもので言うなら「破滅の王」なような)を勝手に想像してしまっていたのですが、主人公は元教師の温厚な人物で、こんな人がスパイなんて出来るのか?と首を傾げてしまいました。…が、見るからにスパイ!みたいなキレものっぽい人だと逆に諜報活動してもすぐにバレてしまうんですかね?自分が同じ立場になったらここまで立ち回れるか。四苦八苦しながら日本で待っている家族のために諜報活動を必死に続ける主人公の姿に心を -
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古書店で0時から始まる6人の読書会。
この状況だけで十分魅力的ですが、古書店が深海という店名通りの静けさが漂うお店であり、読書会の参加者がほぼ初対面ではじまることで、より素敵な空間になっています。
読書会なるものの存在は知っていましたが、特に参加したいと思ったことはなく、ここで感想を綴っているだけでした。ただ、こんなに魅力的に描かれてしまうと、どうにも参加してみたくなってしまうものですね。
課題図書で、普段読まないジャンルにチャレンジする機会になるのも素敵に思いました。敬遠していたジャンルでも、ひとりでわからないなあと読むより、ひとと話すことで好きになるチャンスになり得ます。意見をぶつけ合うの