岩井圭也のレビュー一覧
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大学4年で大手企業からの内定も獲得したコタローが、ステージⅣの悪性リンパ腫になったことで人生が一変する。
絶望に襲われる彼を救ったのは、『生きるための起業』という一冊の本と入院中にお見舞いに来た高校の時の同級生・ハクの「奇跡を起こすのって、コタローみたいな人間だと思うんだよね」の言葉だったように思う。
退院後、県庁を辞めたハクと二人で会社を立ち上げたものの、資金なし、経験なし、計画性なしだったが、紆余曲折しながらも仲間を増やして未熟なりに挑んでいく。
それぞれの強みを活かして協力して突き進んでいく姿は好感がもてる。
上手くいかないときこそ、絆が深まっていくのは信じあっているからだろうと思 -
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登場人物みんなが魅力的!
オボロ、浦井、原田、笹木、依頼人やその家族みーんなが、短いお話の中でとても人間味溢れた描かれ方をしている。良くも悪くも。
少年犯罪や児童虐待がテーマなのでクソみたいな大人も出てくる。その、クソっぷりが凄まじい。
これを描き切っているのがすごい。
職業柄近しい業界にいて解像度が上がっていることもあり1時間ちょいで読んでしまった。
作者さんはとても緻密に取材されたんじゃないかな、と思う。特にLDの章。
そして、オボロが付添人を勤めた子どもたちの可塑性を信じているような描き方をしているところに希望を感じた。
正直、再犯率は高いし家庭送致にしたところで親も問題を抱えているこ -
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太平洋戦争勃発間近の南洋の地を舞台にした物語。
前半は、英語教師をしていた麻田健吾が、表向きは南洋庁のサイパン支庁で庶務課として勤務する一方で、日本海軍のスパイとして秘密裏に活動していく様子が描かれる。
各章ごとに、健吾がスパイ活動をする中で直面した事件をミステリー仕立ての物語にしてある。民間人の健吾が、密命を受け、命をかけて活動するため緊張感があり、事件の真相を探っていくことに没頭して読み進めた。
後半は、幾つかの事件を通して命の尊さに思いを巡らすなかで、徐々に近づく開戦を前に、個人の思考の自由が奪われていく様が描かれる。
まさに戦争ムード一色。
日本国軍の勝利を信じて疑わない、或いは -
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プロローグ
灼熱のアスファルトから立ち昇る蜃気楼は、
自身の影をゆらゆらと揺らしている
太陽からは容赦無く熱波が放射され、
己からは汗が吹き出している
纏わりつく湿気も実に不快だ
我が国はいつから亜熱帯気候になってしまったのか
80余年前の彼の地、サイパンも
昨今の日本のように灼熱だったに違いない
本章
『楽園の犬』★5 mariさんの本棚から
主に第二次世界大戦前夜のスパイ小説で
まことに稀有なサイパンが舞台だ!
スパイにならざるおえなかった主人公、麻田
その雇い主である海軍の堂本
2人の人生が、大戦前後の動乱によって
大きく変化していく様を克明に描いた
感動のスパイ小説である
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物語の中身ではなく、外側について。
岩井さんの小説は、セリフと物語が、いかにもなセリフや物語としての書き言葉ではなく、本当に口から紡がれたかのような切り方、それも長い時も短い時もある。それが臨場感や焦燥感など、空気を作り出しているように思う。
また、キャラクターが「立っていない」。だから、本当にいそうで、本当にそう考えそうで、「ふつうに考えた範囲では、ふつうそうなるよな」と思えて、「いやそうはならんやろ」とあまり思わない(一部作品にはあるが)。
そうしたことが没入感をつくり出していると考えた。では人物に共感するか?というと、そういうことではない。ましてや今回の物語は共感してはいけない。そもそも -
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1940年、太平洋戦争勃発直前のサイパンの地に降り立った元女学校英語教師の麻田健吾。表向きは南洋庁サイパン支庁庶務係としての赴任だが、その実態は日本海軍のスパイという任務を帯びていた。
島内を跋扈するあらゆる種類のスパイたち。海軍vs陸軍、アメリカ人vs島民、内地vs沖縄、あらゆる対立構造が生み出す緊張感。
ごく普通の教師だった麻田が飲み込まれていく闇が深すぎる。それでも真っ当な感覚を最後まで持ち続けた彼の姿がどこまでも爽やかで印象的。
日米開戦を回避するべく奔走した堂本海軍少佐と、思いを同じくする麻田の間にある信頼関係。戦争中、非国民の誹りを受けながら、なんとしても生き抜く努力をするこ -
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岩井圭也さん「楽園の犬」
著者の作品は「汽水域」以来5作品目。
80年前の終戦に合わせて結構前からこの「楽園の犬」を本年の8月の一冊にしようと決めていた。
まず表紙。「鳳凰木」という樹木、全く知らなかったのだがサイパンでは「南洋桜」というらしい。
現在もだが、日本人にとって戦中は特に「桜」とはある意味で生と死を象徴する樹木であり、満開に咲いて散っていくその儚さを表象しているようと思慕し偲んできた。
この表紙の満開の真っ赤な桜に当時サイパンにいた日本人はきっと色んな想いを馳せたに違いない。
祖国を想い、家族を想い…
この桜には先人の御霊が宿っている様に感じられる。
自分は20年位前に一度サイ -
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濁流のような作品だった。
これがデビュー作とは思えないストーリー構築や、読みやすさ、キャラクターの強さがあって一気読みしてしまった。
書店でこの本のタイトルと裏面のあらすじを読んで、多分ミステリーなんだろうなと思い購入した。読み進めるうちにミステリーじゃないことに気づいて少しガッカリしたが、もうそんなのはどうでもよくなるくらいに引き込まれてしまっていた。
飛び抜けた才能を持つことでより孤独になること。
その才能に嫉妬して掴まれた手を振り払ってしまうこと。
どちらの感情も理解出来、あまりにも悲しく虚しく、それでもそれらを受け入れることで繋がる未来が、唯一の救いであると感じた。
才能が彼を外 -
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ネタバレ数覚に恵まれ、数の世界に生きた三ツ矢。
数との関係が深くなにつれ、周囲の人と合わなくなり、孤独になっていく。アルコールで孤独を紛らわそうとアルコール依存に陥り最期を迎える。
彼は数を足がかりに人と繋がり生きた。だが、ライフステージを重ねるにつれ、彼の理解者がひとり、またひとりと、それぞれの道を歩んだ時、彼のそばには誰もいなくなった。
そんな中でも、数は最期まで彼を魅了し続け、のちにクマによって生きた証となった。
穴があれば、それは論文ではなくアイデアだと切り捨てられた三ツ矢。アカデミアの過酷さが垣間見える。趣味を仕事にすることのリスクがある。興味関心があるものを生涯の友とし、純粋に愉しめること