岩井圭也のレビュー一覧

  • 生者のポエトリー
    小学生から老人までさまざまな境遇、環境で生きる人たちが自分の思いを自分の言葉で自分の声で伝える詩の朗読を通して繋がっていく6編の短編連作。
    最初にタイトルの「ポエトリー」って何だろうと思ってググってみたがいまいちピンとこない説明。
    でも最後の『街角の詩』で「ポエトリー」の意味もさらに【生者のポエトリ...続きを読む
  • 生者のポエトリー
     最初はとまどった。この作者の作品は、ちょっと変わった設定が多いことは知っている。詩だって、今度は。
     しかし、まさかこんなに熱くなっていく人間の姿を見せてくれるとは。一人ひとりの登場人物は、とても不器用な人たちばかりなのに。
     言葉は、心なのだ。言葉で表し行動することで、前へ進むことができるのだ。...続きを読む
  • 生者のポエトリー
    詩という言葉の力をこの本で知る。詩のよさはよく分からないし、この本の詩を読んでも感動もしなかったけど、この本の中の人たちが感動や考えている事を知って自分も感動を体験できた。言葉の力はナイフにもなるし、包み込む毛布になる。それを気づかせてくれた本。
  • この夜が明ければ
    7人の季節労働者、お互い身も知らず一過性の関係のはずが1人の死によって警察を呼ぶか呼ばないかかで曰くありの過去を持つ人らと判明。母親からの束縛から逃げ出した家出人。オーバーステイの中国人、DVから逃げ出した主婦、介護放棄した孫息子、盗聴マニアが発覚し退職、事情が事情だから仕方ないねって言えるものでも...続きを読む
  • 文身
    最後の文士と呼ばれた大御所私小説作家、須賀庸一。彼の無頼な人生を描いた作品は多くの人の心を掴むが、妻の自殺を自身が毒殺を試みたと思わせる作品を発表した事をきっかけに娘は彼と縁を切る。数十年後、庸一の死後に彼女の元に送られてきた遺稿、それは狂言自殺で世間から身を隠した彼の弟、堅次が書いた小説の通りに行...続きを読む
  • 竜血の山
    昭和13年、北海道東部の山奥で、自然水銀の湧く巨大鉱山が発見された。
    那須野寿一は、鉱山技師として調査に入った山奥で、ひとりの少年・榊アシヤと出会う。
    その集落には、〈水飲み〉と呼ばれる水銀への耐性という特殊な体質を持つ者たちが住んでいた。

    フレシラ鉱山に住む〈水飲み〉の一族と鉱業所で働く者たちの...続きを読む
  • 生者のポエトリー
    いい小説を読んだと思いました。
    詩を創り朗読する人たちの連作短編集。
    各編ともにその主人公が創った詩が載っています。

    「テレパスくそくらえ」
    中学生の時場面間黙症で壮絶ないじめに遭っていた悠平25歳。日雇いのバイトで知り合った久太のライブを勇気を出して観に行くと、久太に場つなぎに詩の朗読を頼まれま...続きを読む
  • 竜血の山
    ガツンと重い作品でした。
    面白かったです。

    時は1959年から。
    北海道のフレシラ鉱山で働く鉱夫たちの中に<水飲み>と呼ばれる、水銀に耐性を持つ血筋の者たちがいました。
    その者たちは<水飲み>故に、水銀中毒を起こす心配がなく、フレシア鉱山で優遇されて働いていました。

    その中の一人榊芦弥(さかきあ...続きを読む
  • 竜血の山
    北海道の石北峠にあったイトムカ鉱山をモチーフにした物語。
    水呑みと呼ばれる現地民を主人公にしたフィクションだけど、水銀鉱山の歴史を知ることが出来て、とても読み応えがあった。
  • 生者のポエトリー
    “詩”を主題とした6篇から成る連作短篇集。それぞれの作品には連作と呼んでいいか悩むほどの繋がりしかないが、最終話ですべてのエピソードが1つになる。そして遥かに大きなものへと変わる。
    短篇だからさほど複雑なものではない。岩井さんの作品にしては物足りなさを感じるかもしれない。収められた作品の主人公達はそ...続きを読む
  • 文身
    凄い小説としかいいようがない。
    今までには無い感情が、未だぐるぐると心の中に残っている。

    好色で、酒好きで、暴力癖のある作家の須賀庸一。
    しかし、彼を操っていたのは自殺したはずの弟。
    並外れて優秀だった弟が、自ら自殺にみせかけて逃亡し、高校を卒業した兄を待つ。
    その後、私小説を執筆する。
    兄は、弟...続きを読む
  • 水よ踊れ
    イギリスから中国への変換が目前に迫った香港に帰ってきた主人公瀬戸和志。建築学勉強のための留学という名目だったが、本当の目的は3年前になくした恋人の死因をさぐるためだった。

    中国共産党の手により香港から民主主義が消えていく、という社会情勢を縦軸に、和志の成長譚を横軸に、さらには国籍問題や難民問題、貧...続きを読む
  • 水よ踊れ
    激流の香港を生き抜いた彼らの志(ウィル)をどう受け止め読み解くかは、私たちに投げられた課題だ。
    返還前、90年代後半の熱量に溢れた香港の街、人々、建築、匂い、食べ物、圧倒的筆力で描かれた景色は、私たち日本人に様々な思慮を与えるに十分足りるし、その流れの速さに負けぬくらいのテンポで進むストーリーに置い...続きを読む
  • 水よ踊れ
    瀬戸は日本の大学から香港の大学へ建築を学ぶためやってきた交換留学生。しかし建築だけが理由ではなかった。もっと前、13歳から17歳まで香港にいた。それは香港が中国に返還される激動の時期だった。そしてその時に最愛の女性が死んでいて、その謎を解くために再度やって来たのだった。

    登場人物に感情移入させられ...続きを読む
  • 水よ踊れ
    1997年香港が中国に回帰する直前。日本人の和志がそこで見たもの、感じたもの。貧しさのなかで暮らす恋人との出会いとささやかな日々。その終わり。その当時の香港の政治、市民の声。方向性はそれぞれでもその熱量は大きい。中国の一部になることの恐れ、怒り、諦め。舞台は97年だけれど今の物語のよう。今を、未来を...続きを読む
  • 文身
    まことさんのレビューで凄く気になっていた作品。
    久々に、やられた小説に出会った。

    日本海に面した田舎町に生まれた兄、須賀庸一と弟の堅次。大柄な体格とは正反対の気弱な庸一と、神童と呼ばれていた堅次は、廃れた街と両親から逃れる為の計画を立てる。
    それは高校受験に嫌気がさし、庸一の目の前で堅次が自殺した...続きを読む
  • 文身
    これは一体どういう話なのだろうかと思いました。
    今まで、こんな小説は読んだことがなかったです。
    恐い小説でした。
    読み終えたときは凄い小説を読んだと思いました。

    時系列にストーリーをたどると、1963年、高校生の須賀庸一は中学生の弟の堅次に誘われて家出の計画を立てます。二人は両親を快く思っていませ...続きを読む
  • プリズン・ドクター
    短編の連続で面白かった。刑務所内ミステリー。主人公が矯正医官で、プライベートも大変で気持ちを寄せやすい。父親と、恋人とこれからどうなるのか、続編が楽しみ。90
  • 楽園の犬
    評判が高かったので。
    ものすごく面白かった。

    スパイの話=ジョーカーゲームのD機関に似た話かなと思っていたけれど、人間の内面もしっかり描かれ、苦悩や迷いにも共感できる。
    また、サイパン島という狭い世界が舞台なのもイイ。

    綱渡りの会話のシーンは、手に汗握る臨場感もある。
    物語の性格上、続編はない(...続きを読む
  • 付き添うひと
     ″付添人″という存在を、今回初めて知った。
    少年犯罪と一括りにする中には、さまざまな理由があり、成人とは対応が違うことはわかっているつもりだった。
    しかし、実際に日々向き合っている人びとを思うことはなく、鑑別所にいる子どもたちについては、このような本の中やTVなどの中でしか知らない。
     フィクショ...続きを読む