岩井圭也のレビュー一覧
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パパ作家7人による家族の物語。
著者たちも、日々こういうことを考えながら家庭と向き合って奮闘しているのかと思うととても興味深かった。
当たり前だけど「父親」と言っても、いろんなタイプがいる。本作に登場するのも、妻の負担を軽減するためおっぱいを出そうと奮闘する父親から、息子が一人暮らしする家を用意周到に内見する超真面目な父親までさまざまだ。でもどの父親も一生懸命でかっこよかった。
子育てでは母親の大変さがやはり前に出てきやすいし、それは事実だろうけど、父親も妻との家事育児分担や周りの余計な言葉、自分の仕事など、たくさんのものに追い詰められ追い込まれて、こりゃ大変だなぁと感じた。
本当に他人の家庭のことに口出しして自分を正しいと信じて疑わない人っているよね〜!笑
でもどの父親も、一番矛先が向きやすい妻を悪者にして終わらせずに、むしろ懐の大きい素敵な奥さんだと感じる終わり方でとてもよかった。
私が特に好きなのは「髪を結ぶ」と「そういう家庭がそこにある」。男女問わず、子どもがいる人もいない人も全員に読んでほしい作品。 -
Posted by ブクログ
鑑定人シリーズの第一作。そういえば読んでなかった。
何か事件が起きて、その犯人を追い詰めるためとか動機を探るとか事件の突破口としてなんらかのトリッキーな鑑定を土門誠が行う流れ。
一編が割とサラッとして読みやすい。鑑定の専門的なところは語り手である人物が基本的にわからないという体なので小難しいところはなし。そして寡黙で無愛想な土門の過去が話の核になっていくというのはこの後のシリーズでも受け継がれていくわけで。
そんな読みやすい反面、トリックとかはあっさりなのでミステリとしてはちょっと物足りなく感じるかな。あくまでもミステリ風味のお仕事小説であり土門の過去話というかキャラクターを楽しむ一冊と割り切って楽しむのが良いかと思う。 -
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岩井圭也さんの作品かつSF設定が面白そうということで本作を手に取りました。帯コメでディストピア感を謳っているほど、絶望感はないが何とも言われる結末だったかなと思いました。
本作はバイオテクノロジーが進歩した中国でのお話。癌の進行が不審なほど急激に進行し、立て続けに4名の方がなくなる。そのことに不信感を抱いた警察官である主人公が捜査に乗り出すというお話。
バイオテクノロジーの研究をお仕事としているので、設定は割とすんなり入ってきましたが、馴染みのない方からすると、塩基配列とかクリスパーキャスとか難しいのかなと。ただ、現実でもバイオテクノロジーの進歩により新たな社会問題が生まれているのでSF設定としては、すごく面白かったです。
内容については、ちょっと陰謀論じみた設定もあって読む人の好みが分かれそうな感じはしました。作品の設定が精緻なだけに、なおさらニッチな作品になってるような印象を受けました。 -
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民間科学鑑定人・土門誠シリーズ第三作。
これまで科学鑑定人としてはスペシャリストだが、取っつきにくい彼の姿が描かれてきたが、この作品ではその能面のような表情の裏に人間らしさが見えてくるようになった。
大学時代の同期である、猪狩愛(大学教授)、鳥飼(気象サービス会社代表)、窪(麻薬取締官)三人との絆が主に描かれていて、シリーズとしては異色な気がするが土門の新たな魅力を引き出すための展開だったのだろう。
これまでの二作品だと土門は生きづらそうだなと感じていたので、助手の高倉以外にも土門を理解し寄り添えている人がいて良かったと思う。
さらにこれまで科学以外は信じないと言っていた土門が、人を信じることにしたという考え方の変更があったというのも良かった。
ただ、元妻で科警研研究官の尾藤宏香とも、もう少し違う交流があって欲しかったなとも思う。彼女のキャラクターが好きだっただけに、残念。
ただ彼女の能力をリスペクトした上で助力を頼むところもあり、そこは良かった。
シリーズとして変わらない部分もあり、今回も科学でここまで明かされるのかと驚く話ばかりだった。
だが最後は科学で追い詰めるのではなく、人の力で真相を明かすという話があったのもシリーズの変化だろうか。
高倉のハーブティの不味さは相変わらずのようだが。 -
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読み始めるまで気づかなかったんですが、前に読んだ本の続編だった。鑑定人の土門シリーズ。読み始めたら思い出しました。
鉄面皮ともいえる土門の過去が明らかになってる。過去に彼が自殺未遂をした理由とは?そして彼を支える旧友たち。ちょっとベタではあるもののとても心温まりますね。
ミステリ的な意味合いでは、言ってみれば犯人は明らかになってるけどそれをどうやって証明するか?が見どころ。
土門の過去話なのか鑑定なのかどちらを焦点とするかで評価が変わりそうではある。自分は・・・まあ前者がより印象に残ったかな。鑑定については「そんな方法があるのか?!」という驚きはそこまでは大きくなかった。あくまで鑑定を通しての人間ドラマ的な意味合いが強いのではないかな?と。 -
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12月29日は、南方熊楠文学忌。熊楠忌です。
南方熊楠の「文学忌」(熊楠忌)を季語・文学忌として提唱した人は、
「南方熊楠顕彰館(初代館長)・中瀬喜陽(なかせ きよう)氏とのこと。
岩井圭也さんの参考文献にも何冊かお名前があります。博物学者で生物学者の文学忌は、とても珍しいと思います。
そこに民俗学への功績と 多大な日記、書簡が認められているということなのかなと思います。
さて、と書きつつ、南方熊楠という人物を、私は本当に知っていたのかというと心許ない。
柳田國男との関係性の中で、その名を見聞きしていたかもしれない程度。
民俗学の文脈で、「異才」といった認識だったように思う。
岩井圭也さんが熊楠を書いた、という情報も以前から知ってはいました。
奇人、天才、狂気。
そうした言葉で語られがちな人物。
けれど実際に読み始めてみると、
そこに描かれていたのは「偉人」でも「怪物」でもなく、どうにも生きづらさを抱えた、ひとりの人間だったように思います。
著者は、熊楠の残した研究成果以上に、
彼の「人となり」に重心を置いて描いたのだと思う。
もし今の時代であれば、
熊楠自身の精神の不調も、息子の病も、
何らかの病名が与えられ、治療の可能性も探れたのかもしれない。
けれど彼が生きた時代は、知の巨人が戦う相手は、つねに自己の内側にあった。
そして、その不安定さを抱える彼を支えねばならなかった家族の苦しさは、想像に難くない。
読み終えてみると、
熊楠の数々の業績が、思ったほど記憶に残っていないことに気づきます。
もう少し熊楠を知ってから読んだ方が良かったかもしれません。