あらすじ
奨学金免除の為しぶしぶ刑務所の医者になった是永史郎。患者にナメられ助手に怒られ、憂鬱な日々を送る。そんなある日の夜、自殺を予告した受刑者が変死した。胸を搔きむしった痕、覚せい剤の使用歴。これは自殺か、病死か?「朝までに死因を特定せよ!」所長命令を受け、史郎は美人研究員・有島に検査を依頼するが――手に汗握る医療ミステリ。
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どうして人は罪を犯してしまうのか。
その心情や背景が淡々として物語れるなかにも感情の熱さがあって、引き込まれるように一気に読んだ。
わたしは子どもが集まる施設で働いていて、子ども同士が殴った殴られたみたいな場面に毎日のように接しているんだけど、殴った子に「人を殴ってはいけません」と叱ったところで、なんの解決にもならないという事例を多く見ている。
殴った子には本人なりの理由があって、それは許されざるべきものであっても、その子にとっては正義だったりする。その気持ちを話してもらって、それについて一緒に考えていかないと、殴るという行為はやめられない。その子にとって問題解決の方法が「殴る」しかないから。殴ったほうが感情が高ぶって泣いていたりすると、この子も苦しいんだなって思う。社会の中でうまく生きていくのは難しい。
本作に出てくる主人公は「罪を犯した人」がなぜそうするに至ったかに丁寧に向き合う医師で、その工程はしみじみと心を打つ。
丁寧さというのは時に不器用に映るもので、まわりにはなかなか理解してもらえないものなんだけど、でもそれが大切なんだろうな…と、わたしも丁寧にまわりと向き合っていこうって思わせてもらえた。
そんな風に考えさせてくれるいい本でした。
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短編の連続で面白かった。刑務所内ミステリー。主人公が矯正医官で、プライベートも大変で気持ちを寄せやすい。父親と、恋人とこれからどうなるのか、続編が楽しみ。90
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岩井さんだっていうのと、あらすじが面白そうだったので読んだ。そしたらあらすじの何十倍の情報量詰め込まれてた。
岩井さん本当にすごいな。色んなタイプの話が書けてそれが面白い。
この小説は事件っぽくミステリ仕立てにはなっているけど、内容としては介護問題が印象に残った。第三章然り、史郎の母然り。
そして美波はとてもよくできた彼女だと思うよ。
連ドラ化しそうだな〜、と思いました。そして続編が出たりなんだりしそう。
ひどい偏見なのだが、幻冬者の小説ってそんなに売れてないのに面白い小説が多い気がする。
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刑務所内で働く医者。
公私共に巻き起こる心の葛藤と成長が描かれている。
認知症を患う母との関わり方や受刑者との関わり方。
医師という立場を通して向き合うことで人と人の繋がりも生まれる。
良本。
決して他人事とは思えない、ともすれば自分も受刑者になってしまうかもしれない親の介護問題。
理想と現実が違うからこそ苦しいんだよね。
思い出がたくさんあるから、嫌いになれないんだよね。
何かしらの気づきをこの本から貰える。
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ちょっとずつ読み進めている岩井さん
気づけば11冊目です
今回は刑務所のドクターの話
刑務所にも医者がいるんですよね
主人公の史郎は奨学金免除のため刑務所で働いています。
普通の病院とは勝手が違い、使える薬や予算には制限があります
また患者はもちろん受刑者で、薬を得るために詐病は日常茶飯事
自分はここにいるべきではないという思いもある中、向き合うべきは病だという思いで患者と接していきます。
医療ミステリの連作短編となっております。
普段想像していなかった仕事だったのもあり興味深く読めました。
刑務所での病との向き合い方が新鮮でした
少しずつ熱くなっていく史郎が結構よかったです。周りの人たちもよかったな
終盤は結構驚かされました。
なんとなくまだモヤモヤも残ります(-_-)
それにしても認知症の介護の大変さを改めて感じました、、、
まだまだ読んでない作品はたくさんあります╰(*´︶`*)╯♡
のんびり読んでいこうと思います
Posted by ブクログ
岩井圭也さん応援書店で購入した作品。
「夜更けより静かな場所」の巻末に掲載されていて、読みたくなり手に取った。
奨学金免除のため、しぶしぶ矯正医官になった是永史郎が、受刑者たちの病の奥にある”罪”に迫る医療ミステリ。
刑務所内での医療について、全然知らなかったことを知れて勉強になったし、興味深かった。
診断の前に詐病かどうかの判断が必要だなんて…矯正医官って大変な仕事だな。
もちろん刑務官たちも。
本書にはいろんな受刑者が登場するが、私は第1章に登場する受刑者がとても印象的だった。
病が罪を犯させる。
私も持病の発症タイミングによっては、彼のような人生を歩んでいたかもしれない。
症状を誰にも理解してもらえない辛さや孤独感、ようやく自分の病の原因がハッキリし、信頼できる先生に出会えた喜びにはすごく共感した。
矯正医療の意味についても考えさせられた。
史郎が受刑者と彼らの抱える病に向き合っていく中で、自らの心境を変化させていく様もよかったし、史郎と友人たちの連携が不可能を可能にし、真実を解き明かしていく展開も胸熱だった。
中でも美波のまっすぐさが私はとっても好きだった。
医療ミステリ、今まであんまり読んでこなかったけれど私は結構好きなジャンルだな。
最近ドラマで観ている「天久鷹央の推理カルテ」も面白いので、原作を読んでみたい気もするけれど…冊数がかなり多いので躊躇しています( ..)՞
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見るべきは病であり、患者の肩書きではない。(p.49)
人間はどんな状況でも、階級を作るものです。そしてその上に立とうとする。受刑者の社会であっても同じことですよ(p.68)
見方を変えれば、悪意よりも正義感のほうがよほど恐ろしい。
悪の自覚がある人間は、自分の罪の重さを承知している。しかし正義に酔いしれた人間には、自分が犯した罪状さえ見えていない。視界に映っているのは正義一色だ。だから罪を自覚することもできず、行動に歯止めが利かない。(p.317)
誰にも未来は見えない。だが、現在から未来を想像することはできる。(p.369)
すべての人間とわかり合えるとは思わない。大事なのは完全に理解することではなく、たとえ理解できなくても正面から向き合うことだ(p.376)
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大変な苦労をしてきた史郎と母の博子。
だからこその史郎の暖かさ、正義感なんだと思う。
いずれにしても、認知症の介護は大変だ。
史郎のような対応は私には出来ない。。。
頭脳明晰なだけではなく、優しさもあり
ちょっと抜けている?所もあり、安心して物語に身を委ねて没頭出来た。
彼の人生が今までの苦労以上に幸せなものになりますように。
願わくば、史郎先生の更なる活躍と、幸せの日々をまた読みたいです!
Posted by ブクログ
肩書が矯正医官、つまりは塀の中のお医者さん(刑務所Dr.)、この特異な名称や業務内容、周辺事情を初めて知りました。
本作は文庫書き下ろしで、序章・終章に挟まれた4章で構成されています。舞台は北海道の千歳刑務所。主人公は、新人矯正医官・是永史郎です。神経内科の専門医を目指していますが、奨学金返還免除のため、3年の期限付で(渋々)赴任しました。
第1章を読み、是永の矯正医官としての成長譚として、ヒューマン・ドラマが十分成立すると思いましたが、いやいや岩井圭也さん、攻めてきます。
医療サスペンスに加え、是永の母(認知症)と父(犯罪者)という家族ドラマ、さらに岩井さんには珍しい?是永の恋愛‥と、内容が盛りだくさんです。
岩井作品には、一人の人間の生き方や人と人の関係性が、いつも濃密かつ切実に描かれているように感じます。これが決して半端ではない重いテーマという印象を与えるのでしょうか?
各章の受刑者の症状等の謎解き部分では、かなり専門的な医学知識が使われ、広範囲での丹念な情報収集力がうかがわれました。
重厚さの物語にあって、各話の中に散りばめられた北海道の季節の風景や食の描写と恋バナが、箸休め的な役割を果たし、物語を鬱屈させずに新鮮味を保ち、味わい深いものにしている気がしました。続編が出てもいいかな、と思える作品でした。
Posted by ブクログ
刑務所にも病人はいる
受刑者たちも病気になる
ただ、ムショ内の病人は厄介だ
刑務作業を休むため、医薬品を手にいれるための詐病が多い
そんな輩たちがいる刑務所ドクターになった是永史郎
医師の研修を終えて神経内科医として認知症の専門家になることを希望していたが、奨学金免除のためしぶしぶ刑務所ドクターの矯正医官となった
腰かけの矯正医官だったはずだが、患者と接していくうちに仕事に対する印象が変化し始める
自分でもよくわからないが熱心に、そして患者に対して強い感情を抱いていく
それは、ムショ内の患者だからかもしれない…
分かちがたく結びついた罪と病を医学的に解きほぐし、患者の人生ごと診療しようとする
それは所外の病院ではできないことだ
刑務所ドクターという舞台は面白い
連作短編だがシリーズ化されるかな…
ちょっと楽しみです
Posted by ブクログ
岩井さん作品「永遠についての証明」「文身」に続き、三冊目です。
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刑務所で働く新人医師が、
命と罪の謎に挑む!
出版業界注目の俊英が描く、
感動必至の人間ドラマ
「何回読んでも、
ラスト、涙が止まらない」
絶賛の声多数!
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奨学金免除のために3年間、
刑務所の医者になった是永史郎。
本当は神経内科の専門医になりたかった。
彼と同居する母親は認知症を患い介護をしながらの勤務生活。
大学の友人たちはそれぞれ自身の専門分野で頑張っている様子のなか、史郎は自分の今後について考えていた。
刑務所内で受刑者が変死体となって発見されるまでは。
詐病で薬を欲しがる受刑者や、
原因不明の不調を訴える受刑者へどこまで検査を行うか。
そもそも協力してくれる医療機関も少ない。
付き添う刑務官の数も限られている。
受刑者と時にはその家族、
周囲の人間たちとの関係を描きながら、
違和感や謎のようなものを解き明かしていく。
受刑者それぞれの背景は違うし、
罪に対しての向き合い方、人間性も違う。
ラストは泣きはしなかったものの、
史郎の友達や恋人とのつながりが良かったし、
おかげで史郎もブレずに進んでいる様子で
読後はとても良かったです。
Posted by ブクログ
刑務所の医師として受刑者の治療にあたる主人公が関わる様々な事件を取り上げた連作ミステリーだが、もう一つのテーマは認知症の介護。
通り一遍ではなかなか書ききれない難しい問題と思うが、辛くて厳しい現実を暗くなりすぎずに正面から捉えていた感じがして小説としては良かったと思う。
登場人物の関係性はちょっとご都合よく作られた感があるが、医学生時代の仲間たちの裏話がもう少しあってもいいかも。
Posted by ブクログ
奨学金の返済を免除してもらうために仕方なく就いた矯正医官の史郎だが次第にその仕事にのめり込んでいきます。こういう成長物語、好きです。
病だけでなく、その奥にある罪も治療する姿が良いね。是非とも続編を。
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主人公は、タイトル通り刑務所のお医者さん。でも本人が希望した職場ではない。しかも、若い医師に対する患者の受刑者は見下してくる。助手の人もベテランで、新米の若い医師には立場が逆転したかの様に次々と経験値から言える指導をする。日々、薬を求めて受診に訪れる患者(受刑者)は詐病を訴えるのが多い中、本当の病気を疑う症状を見逃さない感性が真剣に病の症状に悩む犯罪者を救う結果になる。
主人公の母親は認知症を患い看病で生じるトラブルもある。そんな家庭環境を理解している彼女との恋愛では、級友の女友達とのいざこざもある。医療のメインストーリーの合間に描かれている私生活も苦楽が満載である。
冒頭の場面は、犯罪者が逃亡している情景が描かれており逮捕される瞬間で終る。その場面が中盤になり、診察の状況を一変させる。逮捕された犯罪者と主人公の医師の関係が後半の中では主軸になり、最後には背けていた感情を少し和らぐ変化が読み取れる。
不本意な感情が使命感を帯びて、前向きな気持ちに変化していく様が仕事の面、私生活の面で並行して描かれているところが現実の自分の生活を見直す考えを促される気がする。
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神経内科医としてのキャリアを目指していたのに経済的理由で奨学金免除の義務を果たすべく3年だけと刑務所の医師、矯正医官となった是永史郎。
刑務所であるから患者は犯罪を犯した海千山千の受刑者。医務の助手は准看護師の資格を持つベテラン刑務官。限られた医療体制に薬剤、検査方法。そんな環境下でも、主人公は研修医を終えて即、単独でしかも総合医的な診断をしなくてはならない。
帯には本格医療ミステリー的な扇情的なフレーズが書かれているが、受刑者の病状を明らかにする過程は、数年前にNHKでやってたドクターGのカンファレンスを彷彿させる。
またミステリーよりも矯正医官としての成長するヒューマンドラマと感じる。学生時代の仲間、刑務所のスタッフ、家族、恋人、そして受刑者たち。物語が進むに連れて、主人公との距離感が近づいたり離れたり。楽しめた。
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奨学金返済の条件として刑務所のドクターになった主人公
受刑者の病、母親の介護、刑務所での環境に向き合いながら自分のアイデンティティーをつかんでいくお話
少し欲張り過ぎた感がしました。
刑務所でのドクターを主軸にするなら、母親や父親のエピソードが強すぎると思います。
両方成立させるなら圧倒的に文章量がたりない。
しかしながら、必死に目の前のことに向き合う主人公を応援したくなったし、
ラストのしめかたは好きでした。
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奨学金免除のため、しぶしぶ刑務所の医者になった史郎先生。
【罪を犯した人間にも医療を受ける権利はある】
刑務作業を休むためや、医薬品欲しさに詐病も多い。詐欺師もいるし、殺人犯もいる。
受刑者の医療費は受刑者からではなく、税金で運営している。
限られた予算の中でどこまでケアを行うか…。
普通の医療ものにはない葛藤がある。
次第に史郎先生は病だけではなく、患者の人生ごと診察していく。
そしてまた介護問題かー。。。
本音を言えば介護は私の日常なので、小説まで介護の辛い話を読みたくない…。
ただ、史郎先生の気持ちと重なる部分もあって感情移入してしまった。
科捜研の土門さんにはハマれなかったけど、プリズンドクター是永史郎先生は好きになりました!
続編がありそうな感じもするけど、初版からもう5年経ってるんだ。
『科捜研シリーズ』は2年後に続編が出てるけど、このシリーズの続編は今後あるのかな。
それにしても岩井さん、史郎先生に重いものを背負わせすぎな気が…(^_^;)
続編では、かわいい素敵な彼女との幸せな姿も見たいな。史郎先生頑張れ!
★3.5
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「病が人を、罪に追い立てるのか?」
刑務所を出てからの再犯率の高さを考えると、最後の彼の考え方も良くわかります。
ただ、信頼関係を築きかけていたのに、このお別れの仕方は悲しいと感じました。
東野圭吾さんの「さまよう刃」を思い出しました。
Posted by ブクログ
02月-05。3.0点。
医大を卒業し、奨学金免除のため刑務所医官となった主人公。3年勤続で奨学金免除。次第にやりがいを見つけて。。
面白い。章立てだけど連作短編みたい。続編が読みたい。
Posted by ブクログ
奨学金免除の為、神経内科医への夢を後回しに、しぶしぶ刑務所の医者になった是永史郎。
一人で認知症を患う母親の介護をする姿もまた社会情勢を反映しているよう。
慢性的な刑務関係者の不足、要介護の高齢受刑者の増加など、刑務所もまた一般社会と同じ問題を抱えている。
最低限の保証ということで、医療や介護が税金で賄われていることに理解と反感が共存してしまう。
1つ疑問が残るとしたら、なぜ母は松木なんかと結婚したのかだろうか。
史郎が3年後に刑務医を続けるのか、新たなことに向かって進むのか、続きが読んでみたい。
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奨学金の返還免除の条件として、臨床研修の後、そのまま刑務所の医者として3年間働くこと。しぶしぶ引き受けることになった主人公・是永史郎。様々な受刑者を診療しながら、原因不明な出来事を次々解決していきます。
あらすじを見る限りでは、長編かなと思いましたが、他にも事件があるため、連作短編集となっていました。
ミステリーではあるものの、主人公の成長も垣間見れるヒューマンドラマとしても楽しめる作品でした。
受刑者のあらゆる病気や苦悩だけでなく、刑務所ならではの問題、「刑罰とは」など社会問題にも触れていて、色々考えさせられました。
主人公の仕事面では、刑務所の医者や聞いたことのない病名などなかなか身近に感じない出来事ばかりでした。しかし、主人公のプライベートでは、認知症の母がいる、恋人とはなかなか前に一歩踏み出せないなど主人公の葛藤が、身近に感じられました。
1章ごとに異なる受刑者の異変をあらゆる人達を駆使して、解決していくパターンでした。主人公は新人でありながら、成績優秀で知識豊富。新人とは思えないテキパキさなためか、現実っぽくない印象もありました。
最後の方では、衝撃な展開が次々と急に来るので、気持ちがなかなかついていけませんでした。どうせなら、主人公と父親との関係も一区切りして欲しかったなと個人的には思いました。
Posted by ブクログ
北海道の刑務所に勤める矯正医官・是永。奨学金免除ため、三年間、刑務所の医者に。薬欲しさに仮病を訴える受刑者が多い中、ベテランの助手に助けられながらも、奮闘する。受刑者変死の謎、受刑者として刑務所入所した実の父、認知症の母、いくつもの難題に立ち向かう一方で、是永は自分の夢を叶えられるのか。
刑務所内の医者が直面する苦労を描く社会派の内容でもあり、是永の仕事の成長の物語。3年を終え、早く大学病院に行きたかった是永だけれど、仕事と向き合う姿、落ち着いて問題を解決してゆく姿に目が奪われ、読み応えバッチリ。医学の専門定なこととか出てきて、よく調べてるなあと驚いた。実の父との決着はついていないのが残念かな。