岩井圭也のレビュー一覧
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あなたも引き寄せられる… 人間の欲と醜さを、皮肉たっぷりに描いたミステリー短編集 #暗い引力
■きっと読みたくなるレビュー
丁寧なプロットで綴られるミステリー短編集。どんでん返しというより、皮肉のスパイスが効いた良質イヤミスですね。
本書のタイトルどおり、人間のダークな部分をしっかり描写されていて、読んでいくうちにゲンナリしてくること請け合いですよ(にっこり
■短編ごとの感想文
〇海の子
子どもができなかった夫婦と養子の物語。母は他界し、父が息子に幼児を引き取った時の話をするが…
そうなりますよね…ってお話ですが、ひとつ間違えば自分にも起こりうるから全く笑えない。しかし最後の一文のキモ -
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ネタバレ面白かった。2度のどんでん返しより、父の存在意義を見出せなかった娘が、最後父と同じ生き方を選択する、それも同じ理由である所が血は争えないというか、そういった親子の絆の描き方もあるのかと感心した。あと庸一の娘を不要と位置付けて小説では描いてこなかった賢次が、兄が亡くなった後最後の文士に明日美を選ぶことで、兄が情をかけていた娘の存在を認めたことにより初めて兄の意思を汲んだ様に取れて、歪な兄弟の絆からまだ解放されない賢次にぞっとする様な嬉しい様な複雑な気持ちにさせられた。
人として生を受けた以上は何か残して死にたい、後世まで語り継がれる自分の存在という何かを。(私が勝手に受け取ったメッセージ)自分の -
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ネタバレ警察官殺しの父親をもつ岳、父親を射殺された遺児和馬。加害者の家族として、被害者の家族として、自らの責任で無い苦労を背負いこんできた二人が、剣道の道を歩み、全国大会京都予選で竹刀をまみえる。
加害者の家族なんだから罰を受ける…そんな考えはナンセンスだと思う。そういう考え方は明らかに差別だと思うが、反面、家族を殺された被害者の家族からしたら、一体誰にその哀しみをぶつければいいのかという気持ちになるのも当然である。
岳が可哀そうで和馬は身勝手…そんな単純なものではないことは、被害者や加害者の家族になったこともない一読者の俺でもとてもよくわかる。正解はない話なんだろう。重たくて読んでてツラい。でも -
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舞台は中国回帰直前の1996年の香港
主人公は幼少期に過ごした香港に留学を機に再度訪れる大学生の男の子
目的は、かつて香港で交際していた少女の死の真相を探るため
ただ、そこには様々な障壁がある
移民と貧困問題、裏社会や政治に蔓延る社会主義の闇、共産党と民主派の対立、日本への敵視
様々な問題、、
自分の生き方に迷い、葛藤する若い青年の物語は純粋に引き込まれる
貧困層の生活と、少年の恋心がリアルに描かれておりとても感情移入ができて面白かったし切ない。
表面的な問題に囚われず、相手の立場に立ち、信じることの大切さと尊さを考えさせられる(回帰直前の国籍問題の件)
香港が抱える様々な問題が浮き彫りと -
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ネタバレ続きが気になってしょうがなかったので、ほぼ一気読みした。
エンディングでは、弟の堅次は生きているのか死んでいるのか、もうどっちが真実なんだか訳わからない状態になってしまった。
庸一の妻、詠子の死に方が本当に作中作「文身」の通りであるならば、詠子も庸一も堪らないだろう。 詠子の台詞。
『〈本当の須賀庸一〉なんか好きじゃないから。あたしが愛してきたのは、傍若無人で社会不適合な、文士の須賀庸一なの。作り物の、虚構の、操り人形の須賀庸一なの。あなたの自由意志なんか知らないし、聞きたくもない』
庸一が、電車の中で会った初対面の一家に対して、泣き喚く弟を泣き止ませるよう兄に命令し、兄が実行する場面、 -
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凄い作品に出会った。
作品自体がその時代背景があるからなのか、昔好きで読んでいた昭和の文豪の小説を読んでいるような不思議な感覚を感じる。
まずタイトルが「分身」ではなく「文身」。読後考えてみて「分身」でも違和感なくストーリーと共和する気がするが、さらに彫っての「文身」なのだろうと推測。
「現実と虚構」というテーマ、読後に考えてみれば作品全体に蔓延り、読者である自分も作品を読みながら「現実と虚構」が整理がつかずグチャグチャに混ざりなんだかわからない状態になる。
虚構を読んでいるのにその中の虚構に虚構か現実かが分からなくなってくる不思議さ。
そこを上手くミステリー風に仕立てている感じが凄く関 -
ネタバレ 購入済み
読み応えあります
む〜ん 後半の暗さである瞭司の苦悩が、私には辛かった。その上で、熊沢の苦悩も辛い。一方で、平賀先生の対応が今の世界の普通の対応でないかとの思いが捨てきれず、現在の生き難さを示していると思う。その上、平賀先生本人は苦悩が無いのであろう。これも真実。
瞭司の凄さを理解すると共に瞭司二世が出てきたという、このような終わり方で良いのだろうかという、不満が心の底にある。