岩井圭也のレビュー一覧
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これまで岩井圭也作品に魂を揺さぶられ、すっかり魅了されてきました(まだ4作ですが笑)。本作は、岩井さんの文庫書き下ろしのシリーズ第1作ということで、岩井さんのエンタメ性としての別側面に興味が湧き手にしました。
舞台は横浜中華街。多様な民族や文化が混在する観光名所で、雑多なエネルギーが渦巻いている印象です。ここで、様々なストーリーが展開されます。
中華街の善隣門に記された「親仁善隣」からモチーフを得たタイトルで、主人公の生き方に関わってきます。
4つのエピソードとも、市販薬物乱用、自殺、特殊詐欺、外国人差別など、身近な事件や出来事を元にしているようです。短い文量制約ながら、事件に至る -
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刑務所にも病人はいる
受刑者たちも病気になる
ただ、ムショ内の病人は厄介だ
刑務作業を休むため、医薬品を手にいれるための詐病が多い
そんな輩たちがいる刑務所ドクターになった是永史郎
医師の研修を終えて神経内科医として認知症の専門家になることを希望していたが、奨学金免除のためしぶしぶ刑務所ドクターの矯正医官となった
腰かけの矯正医官だったはずだが、患者と接していくうちに仕事に対する印象が変化し始める
自分でもよくわからないが熱心に、そして患者に対して強い感情を抱いていく
それは、ムショ内の患者だからかもしれない…
分かちがたく結びついた罪と病を医学的に解きほぐし、患者の人生ごと診療しよ -
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殺人犯の息子
vs被害者の息子
剣道を介して出会ってしまった岳と和馬。
ラスト2ページで必ず涙する、罪と赦しの物語!!
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岩井さん4作品目です。
突き抜けた落差が激しい(心が揺れる)のは「文身」が一番でしたが、私は本書も好きでした。
被害者と加害者の家族。
どうしたって切れない縁。
だけど、「その日」を境に決定的になる。
それを著者は本書のなかで、
自分に名札が付く日と表現していました。
たらればが溢れて、
当人たちの気持ちなんて関係なく、
周囲は騒ぎたて、
嫌な目で見たり、誹謗中傷し -
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岩井さん作品「永遠についての証明」「文身」に続き、三冊目です。
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刑務所で働く新人医師が、
命と罪の謎に挑む!
出版業界注目の俊英が描く、
感動必至の人間ドラマ
「何回読んでも、
ラスト、涙が止まらない」
絶賛の声多数!
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奨学金免除のために3年間、
刑務所の医者になった是永史郎。
本当は神経内科の専門医になりたかった。
彼と同居する母親は認知症を患い介護をしながらの勤務生活。
大学の友人たちはそれぞれ自身の専門分野で頑張っている様子のなか、史郎は自分の今後について考えていた。
刑務所内で -
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あなたも引き寄せられる… 人間の欲と醜さを、皮肉たっぷりに描いたミステリー短編集 #暗い引力
■きっと読みたくなるレビュー
丁寧なプロットで綴られるミステリー短編集。どんでん返しというより、皮肉のスパイスが効いた良質イヤミスですね。
本書のタイトルどおり、人間のダークな部分をしっかり描写されていて、読んでいくうちにゲンナリしてくること請け合いですよ(にっこり
■短編ごとの感想文
〇海の子
子どもができなかった夫婦と養子の物語。母は他界し、父が息子に幼児を引き取った時の話をするが…
そうなりますよね…ってお話ですが、ひとつ間違えば自分にも起こりうるから全く笑えない。しかし最後の一文のキモ -
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ネタバレ面白かった。2度のどんでん返しより、父の存在意義を見出せなかった娘が、最後父と同じ生き方を選択する、それも同じ理由である所が血は争えないというか、そういった親子の絆の描き方もあるのかと感心した。あと庸一の娘を不要と位置付けて小説では描いてこなかった賢次が、兄が亡くなった後最後の文士に明日美を選ぶことで、兄が情をかけていた娘の存在を認めたことにより初めて兄の意思を汲んだ様に取れて、歪な兄弟の絆からまだ解放されない賢次にぞっとする様な嬉しい様な複雑な気持ちにさせられた。
人として生を受けた以上は何か残して死にたい、後世まで語り継がれる自分の存在という何かを。(私が勝手に受け取ったメッセージ)自分の -
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ネタバレ警察官殺しの父親をもつ岳、父親を射殺された遺児和馬。加害者の家族として、被害者の家族として、自らの責任で無い苦労を背負いこんできた二人が、剣道の道を歩み、全国大会京都予選で竹刀をまみえる。
加害者の家族なんだから罰を受ける…そんな考えはナンセンスだと思う。そういう考え方は明らかに差別だと思うが、反面、家族を殺された被害者の家族からしたら、一体誰にその哀しみをぶつければいいのかという気持ちになるのも当然である。
岳が可哀そうで和馬は身勝手…そんな単純なものではないことは、被害者や加害者の家族になったこともない一読者の俺でもとてもよくわかる。正解はない話なんだろう。重たくて読んでてツラい。でも