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舞台のリハーサル中、不可解な死を遂げたひとりの女優。
事故なのか、自殺なのか、それとも――。
女はみんな、誰かを演じて生きている。
舞台の上でも、日常でも、
演じることをやめられなかった女優を描く、
今、大注目の著者があぶり出す女のリアル。
他人を演じている間だけは、ここにいていいんだと思える。
ゲネプロの最中に一人の女優が命を落とした。彼女の名は遠野茉莉子。開幕を直前に控えた舞台で主役を演じる予定だった。舞台演劇界で高い評判を得て、名声をほしいままにしていた茉莉子。彼女をその地位に押し上げたのは、劇作家の名倉敏史だった。
茉莉子の死からほどなくして、舞台の関係者が一堂に会するなか、名倉は重い口を開く。「遠野茉莉子を殺したのは、ぼくです」。やがて関係者たちも次々に、彼女について語りだす。茉莉子の「死」の真相を探るほどに、次第に彼女の「生」が露わになっていき――。
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Posted by ブクログ
y yさんのレビューで、本書と『文身』の繋がりを教えていただき、なぬ?読まなくては!と思い手に取りました。
『文身』は私にとってはかなり衝撃的な物語でした。弟が書いた小説の内容を後から兄が経験する、そして経験した後に自分の私小説として兄が世に出す、それもその内容がもう‥‥。
その兄の娘が本書には登場します。やはり、小説家として。
主人公は遠野茉莉子という舞台女優。自分の中身は空っぽで演じることでしか生きることができないと思っている。その演じ方がストイック過ぎて、実際に経験したことでなければ演じられないという信条で、自ら辛い目に遭いにいく。
その狂気じみた行動が『文身』を彷彿とさせて、薄気味悪くなります。さらには茉莉子が惚れ込み、ぜひ演じてみたいと思う作品を書いたのが、あの『文身』の兄の娘。
もう薄気味悪さでお腹はいっぱいなのに、どんどんページは捲ってしまいます。
でも、『文身』と違っていたのは、茉莉子がそうなってしまったのは、原因があると思えたところでしょうか。いつも演じている、中身は空っぽ‥‥なんて、結構みんな思っていることなのでは、と思うのですが、茉莉子は母親との関係やそれまでの経験から、人並み以上の傷を心に負っていたのだと思います。
そう思うと茉莉子に一人でも心を許せる人がいたなら、と思ってしまいます。
Posted by ブクログ
──私はもう、遠野茉莉子という役から降りた。
私は今、誰でもない、ただの〈私〉だ。──
語り手は幽霊の茉莉子。
ずっと自分自身を演じて生きてきた。
演じる事でしか生きられない人生とは…
最初から最後まで不穏な空気を纏ったまま、物語は進行していく。
しかし重苦しくは感じず、すいすいと頁を捲ってしまうのは、私が岩井さんの文章を好きだから?
人間は誰でも、様々な顔を持っていると思う。
職場での自分、実家での自分、友人の前での自分、家族との自分…
と、それぞれ違うはずだ。
では一人でいる時こそ、本当の自分なのか?
それもよく分からない。
だって、どれも自分だから。
しかし茉莉子はこういう「様々な顔」の事を言っているのではないらしい。
それじゃ「私を演じる」って何だろう?
誰でも「自分をよく見せよう」と演じる部分は少なからずあると思うけど…
などと考えながらの読書時間は、かなり充実したものだった。
作中劇での茉莉子の演技を、この目で見たいと強く思う。
それほど印象的な人物だったのだろう。
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