あらすじ
舞台のリハーサル中、不可解な死を遂げたひとりの女優。
事故なのか、自殺なのか、それとも――。
女はみんな、誰かを演じて生きている。
舞台の上でも、日常でも、
演じることをやめられなかった女優を描く、
今、大注目の著者があぶり出す女のリアル。
他人を演じている間だけは、ここにいていいんだと思える。
ゲネプロの最中に一人の女優が命を落とした。彼女の名は遠野茉莉子。開幕を直前に控えた舞台で主役を演じる予定だった。舞台演劇界で高い評判を得て、名声をほしいままにしていた茉莉子。彼女をその地位に押し上げたのは、劇作家の名倉敏史だった。
茉莉子の死からほどなくして、舞台の関係者が一堂に会するなか、名倉は重い口を開く。「遠野茉莉子を殺したのは、ぼくです」。やがて関係者たちも次々に、彼女について語りだす。茉莉子の「死」の真相を探るほどに、次第に彼女の「生」が露わになっていき――。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
すごく面白かった!!
読むことを止めることができず、ひさびさに一気読み!!
映像化できそうだけど、映像化すると、薄っぺらくなりそう…(笑)
主人公である遠野茉莉子は、演じるなら
河合優実さんがピタッとハマった私でした
Posted by ブクログ
死んだのは自殺
主人公が演じることに執着したのは、演技が好きだったからではない。演じないと自然に耐えられなかったから。
視線から逃れるために幽霊になった。
飛び降りた理由は幽霊になりたかったから。
幽霊は誰にも見られない
Posted by ブクログ
私には、感想が難しいですが、とても内容の濃い素晴らしい一冊です。何度か繰り返して読むとより整理が出来るのかも、実際の役者さんはこんな気持ちなんだろうなぁ、と失礼ながら思いました。
Posted by ブクログ
y yさんのレビューで、本書と『文身』の繋がりを教えていただき、なぬ?読まなくては!と思い手に取りました。
『文身』は私にとってはかなり衝撃的な物語でした。弟が書いた小説の内容を後から兄が経験する、そして経験した後に自分の私小説として兄が世に出す、それもその内容がもう‥‥。
その兄の娘が本書には登場します。やはり、小説家として。
主人公は遠野茉莉子という舞台女優。自分の中身は空っぽで演じることでしか生きることができないと思っている。その演じ方がストイック過ぎて、実際に経験したことでなければ演じられないという信条で、自ら辛い目に遭いにいく。
その狂気じみた行動が『文身』を彷彿とさせて、薄気味悪くなります。さらには茉莉子が惚れ込み、ぜひ演じてみたいと思う作品を書いたのが、あの『文身』の兄の娘。
もう薄気味悪さでお腹はいっぱいなのに、どんどんページは捲ってしまいます。
でも、『文身』と違っていたのは、茉莉子がそうなってしまったのは、原因があると思えたところでしょうか。いつも演じている、中身は空っぽ‥‥なんて、結構みんな思っていることなのでは、と思うのですが、茉莉子は母親との関係やそれまでの経験から、人並み以上の傷を心に負っていたのだと思います。
そう思うと茉莉子に一人でも心を許せる人がいたなら、と思ってしまいます。
Posted by ブクログ
なんとなくトーンが暗いこともあり、序盤はなかなか読み進めることが出来なかったけれど、中盤くらいから物語の熱量が徐々に上がり文字をたどるスピードも増してきた。
私もよい妻であり、よいお母さんであることを演じる毎日だ。
人は大なり小なり皆『いい人』を演じようとしているのではないか。
そんな風に感じて、茉莉子が破滅へと進んでいく道に共感してしまった。
また、人から見られたり他人と関わることから逃れるために死を選択する茉莉子の気持ちもなんとなくわかってしまう。
人は何かの役割から逃れたくなる時は必ずあると思うし、それさえもうまくいかなくて苦しい時が必ずあるのではないか。
なかなか深くて、心の中にズシンと重いものを投げかけられるような作品だ。
茉莉子はきっと誰の中にもいる。
Posted by ブクログ
人生の中での演技、擬態がテーマの作品。
幕間にて異なる人が異なる死因の考察を語り、それを亡くなった「遠野茉莉子」本人が、なんなら劇評家のようにコメントしながら見ているという構図で進んでいく物語。私たち読者は物語に没入しつつも幕間の度に俯瞰に引き戻されるのが不思議な感覚で面白かった。
遠野茉莉子と言う人間は天才的な異端の俳優のように見えるけど、城や神山の前では人間らしい一面が見えたのもおもしろい。逆に名倉の前の遠野茉莉子はずっと「俳優」で掴みどころがないように見えた。とはいえ私が「人間らしい」と感じた面すらも演技なのかもしれないとも考えてしまう。
私たちだって多かれ少なかれ、生きていて演技をする瞬間はある。遠野茉莉子のようには行かなくても擬態をしている時がある。自分を取り繕って苦しくなった時、この作品のことを思い出すと思う。
読んで良かったです。
Posted by ブクログ
著者の作品を何作か読んだが、どれも違う作風で毎回驚かされる。茉莉子が徐々に破滅の道を進んでいく描写が凄い。
最初は面白く読み始めたけど、茉莉子の狂気の世界に圧倒され、最後の方は早く読み終えたくなった。
Posted by ブクログ
ここまでしないと、この世の中に、生存できない、一見、えっと思うかもしれないが、現実にそんな人がいるような…とても、リアルに感じた
そんな主人公に、共感さえ、覚える
少なくとも、この世の中で、仮面をいくつも、使い分けて生活している人は、たくさんいるだろうと思う
そうしないと生きづらいのだから
この題名は、とても、しっくりきた
Posted by ブクログ
a great entertainment!
人気女優がリハーサル中に亡くなり、関係者達による事故か自殺かの推察で話は進む。
誰もが精神を病んでしまう可能性はあるとは思うが、茉莉子の場合は不幸な生い立ちが原因か
Posted by ブクログ
怒り、悲しみ、恐怖といった負の感情を表現する為、心身を徹底的に痛めつけ、役に没入する遠野茉莉子。彼女が演技の域を超え、自身を消滅させてしまうのは毒母の影響だろう。境界を失った茉莉子。遺憾である。
Posted by ブクログ
──私はもう、遠野茉莉子という役から降りた。
私は今、誰でもない、ただの〈私〉だ。──
語り手は幽霊の茉莉子。
ずっと自分自身を演じて生きてきた。
演じる事でしか生きられない人生とは…
最初から最後まで不穏な空気を纏ったまま、物語は進行していく。
しかし重苦しくは感じず、すいすいと頁を捲ってしまうのは、私が岩井さんの文章を好きだから?
人間は誰でも、様々な顔を持っていると思う。
職場での自分、実家での自分、友人の前での自分、家族との自分…
と、それぞれ違うはずだ。
では一人でいる時こそ、本当の自分なのか?
それもよく分からない。
だって、どれも自分だから。
しかし茉莉子はこういう「様々な顔」の事を言っているのではないらしい。
それじゃ「私を演じる」って何だろう?
誰でも「自分をよく見せよう」と演じる部分は少なからずあると思うけど…
などと考えながらの読書時間は、かなり充実したものだった。
作中劇での茉莉子の演技を、この目で見たいと強く思う。
それほど印象的な人物だったのだろう。
Posted by ブクログ
女優 遠野茉莉子がゲネプロの最中に奈落に落ちて亡くなった。公演は中止となり、劇場に関係者が集まる。それを袖からそっと見ている茉莉子。茉莉子が自分の過去を語っていく。
ちょっと思っていたのと違った。ミステリーだと思っていた。
茉莉子の死が事故なのか、自殺なのか、他殺なのか、それを問題にする話かと思っていたのだけれど、そうではなかった。なのに、読ませる読ませる。ハードカバーの分厚い本なのに、一気読みしてしまった。
単にあらすじだけ書いてしまえば、「面白くない話」と私は思ってしまっていただろう。しかし読んでいると目が離せず、次を読みたくなる。茉莉子の生き方は共感を得にくいし、そりゃ病むわ、と思わずにはいられない。けれど、部分部分で茉莉子の生活を見たくなる出歯亀みたいな自分が私の中にもいることは確かで。
普段は読まないジャンルだけに、凄い作家さんだと感じた。
Posted by ブクログ
ゲネプロ中に奈落に落ちて死亡した女優、遠野茉莉子。彼女がなぜ死んだのか?彼女の生い立ち、遠野茉莉子がどういう人間だったのか?を幽霊となった遠野茉莉子が、自分自身を淡々と語っていく。
たぶん淡々と語る口調が、人の怖さを感じさせる効果があるんだろうな。なんか終始怖かった。
まず彼女の生い立ち。毒母のせいで感情が欠落してしまう。高校生の時、女優になろうと決めたきっかけがあるんだけど、そこが怖い。感情が欠落してるせいなんだと思うけど、とっさにあんな行動が出来るものなのか?
女優の遠野茉莉子も怖い。役作りのためにそこまでやるのか?そこまで追い込むものなのか?役者という職業をよく知っている訳ではないので何が正しいのかは分からない。でもやり過ぎなのでは?尊敬ではなく恐怖を感じる。
そんな感じで人が怖いのだけど、読んでて重たくて暗い気持ちにはそんなにならなかった。逆にサラッと最後まで読めた。読みやすくて面白かったんだと思う。死の真相が分かったときは、よかったねと言ってあげたかった。それと同時に悲しかった。
"演じている"と"擬態する"という言葉が印象に残りました。それは分かる気がします。日常で"演じている"と"擬態する"ことはあるなと思いました。
Posted by ブクログ
主演女優が舞台直前に亡くなった、ミステリーと思いきや主人公がこうしなければならなかった切ないノワール文学に近い本でした。
岩井圭也さんの作品は楽しみに拝読していますが、今回も期待を超えた深い洞察で、読み進めながらも考えさせられる内容でした。
Posted by ブクログ
ゲネプロの最中に不可解な死を遂げた女優・遠野茉莉子。
事故なのか、自殺なのか、『幽人』の関係者たちが彼女について語りだすのだが、ラストに幽霊になった彼女が語ったのは…。
母親の言いなりに生きて、自分の感情を露わにすることがなかった彼女が、高3の夏に母を事故で亡くしてから好きに生きようと東京へ出た。
自分以外の役柄を演じることができるなら別の誰かになれると役者の世界へ。
最初についた役の名前〈遠野茉莉子〉を芸名にし、影響を受けた劇作家・名倉敏史が信奉するメゾット演技を武器にして名だたる舞台女優となったのだが。
彼女にはしばしば母の幻影が取り憑いていたのも誰かを演じなければ自分というものが、何をどう求めて何を生きがいにすればわからなかったのでは…と思ってしまう。
怖いほどまでに演じることに執着していた彼女の実名が最後までわからなかった。
あなたは、最期まであなたが演じた役で死んだということか…。
Posted by ブクログ
物語の中へ引き込む力が凄まじい。
そして一旦はまってしまったら
主人公の舞台女優がどんどん
破滅へと向かっていくのと同様
途中で抜け出すことができない。
ずっと誰かを演じなければ
生きてこられなかった女の半生が
あまりにも過酷すぎて
悲しいとか辛いとかの感情も超え
最後まで本当の名前も明かされないまま
顔も本性もわからず
まさに幽霊を見せられている?
かのようだった。
Posted by ブクログ
演じなければ生きていられない役者の話。
自分以外の誰かになりたいと思ったこととか日常生活でも演技をしている感覚とかが自分にはないので、読んでいておもしろかった。
Posted by ブクログ
遠野茉莉子の生き方が痛々しかった。。自分を食べながら生きている、というのにゾッとしました。ただただ生き方がしんどい。
結末は、わりと最初の方で予想した通りでした。
生前の母親との確執があっさりめだったので、死後母親の幻覚に何度も引っ張られて苦しんでいるのがやや不可解だったような……。
全然ハッピーな話じゃないけど、全体的に文章が読みやすかったです。
Posted by ブクログ
夢中で読んだが最後が肩透かし… たとえるなら、これは聞いた話で、ラストは作者も知らず想像で書いた、みたいな…
小説としては、女優が最後のセリフを書きかえさせるくだりが、かっこよくて好きです。
Posted by ブクログ
ミステリかと思いきや、完全に舞台小説だったなー
遠野茉莉子という舞台女優の生き様がすごすぎるというか、ここまで命を削って演じる人もいそう。でもここまでくると楽しくなさそう。
ちょっとヘルタースケルターとかを思い出した。
Posted by ブクログ
茉莉子のマイナスオーラに引きずられて、こっちまで奈落の底に落ちてしまいそうな気分になった。
メソッド演技という言葉は初めて聞いたけど、役にとことんなりきり、入り込んでしまうというのは素人目にも危険。
演じることで自分を保つ、でもその演じることが自分を苦しめる…
観客目線だと非常に面白い舞台になるんだろうけど、この物語は完全に茉莉子目線でしか読めなかった。そして苦しかった。
Posted by ブクログ
岩井圭也作品は「楽園の犬」に続き 2作目
ゲネプロの最中 主人公である舞台女優 遠野茉莉子が奈落に落ちて死亡する。
上演予定だったのは「幽人」
彼女はその中で W主人公の片割れ 幽霊の役だった。
彼女の生い立ちと共に 役作りをしていく中で垣間見る生き辛さ 切なさ
女優としての名を高めていくたびに 命の炎を削り取っていく過酷さ
はたして 彼女が死んだのは事故だったのか。 自殺だったのか。
この作家さんの作品は2冊目だけど 全く違うテイストで、
この主人公ならではの 重々しい表現や生きざまの描き方が エグイ。
好き嫌い分かれそうだが 引き込まれるのも確か。
そして 主軸となるのは「女はみんな、誰かを演じて 生きている」ということ
そうかもしれないし そうじゃないかもしれない
後味が残る 面白い作品でした
Posted by ブクログ
俳優とはこの本のような仕事なのか?
演じるということはこんなにも大変なのか?
でもこの本を読むことで演じるということの理解が深まったきがする。
素晴らしくもあり、恐ろしくもある。
Posted by ブクログ
岩井さんも幅広い。幽霊になったわたしが舞台で繰り広げられる私の死の動機推理して楽しむ?とんでもない虚構。演技しなくても生きていける他人の視線も気にならない図太い人間、いるよなぁ…
Posted by ブクログ
舞台女優の死をめぐって4人がそれぞれ真相と思うことを語り合う。でも本当のことは死んで幽霊になった本人にしかわからない。
周りの人達の視線が恐い。そのために本当の自分を隠して周りに擬態して生きてきた主人公。舞台女優にならずにもっと早く神経科に行けば良かったのにね。
劇中劇の様に紹介される4つのお芝居が面白そうだった
Posted by ブクログ
舞台のリハーサル中、奈落に落ち亡くなった女優
茉莉子
事故か、自殺か、あるいはー
誰も居ない舞台を前に
亡くなった女優の人生が語られていく
演劇を知らなかった18歳の少女が
メソッド演技を習得し
役に憑依していく姿は
共演者をも魅了して高い評価を受け始める
幾つかの作中劇が挿入され
女優としてのステップアップと
憑依型俳優の精神的な不安定さを
共存させる
地方の女子高生が徐々に女優となっていく
危うさと緊張感を読ませていただきました
ただなんとなくですね〜
小説の序幕の期待の高まりは、
別の方向だったような気もするんです
Posted by ブクログ
自分が経験してきた感情を糧に
見事に役をこなしてきた舞台女優。
果たしてこの人の人生に『本当の自分』はあったのか。
読み終えた瞬間、頭に重いものがのしかかってきた。
私もどれが本当の自分かわからなくなるときがある。
母親役、妻役、子役、ママ友役、職場での役。
どれも自分だしどれも自分じゃないような感覚。
自分に課せられた数々の役を演じている人が読んだら
幽霊になることを選んでしまうかもしれない...
私はマイナスに捉えてしまった。