岩井圭也のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
表紙のイラストがとても印象深く手に取った。
6話の短編それぞれ、このイラストの如く、闇に堕ちるようなお話。それぞれとても面白かったし、同時に表紙から受け取る印象を全く裏切ってない。
中でも「極楽」
借金から逃げるために認知症を装って施設で匿われるお話。
自分が突然行方不明になったら、唯一の身内である一人息子に迷惑がかかる、、であろうが、そんな事はお構い無しで、、
それも仕方ない、唯一の親孝行だと諦めてもらおう、、なんてお気楽な主人公。
暗い中にもクスッと笑える部分あり、飽きずに楽しめた。
この作家さんは、色んなテイストの物語が得意らしく、どれもとても好評らしい。ぜひ、読んでみよう! -
Posted by ブクログ
肩書が矯正医官、つまりは塀の中のお医者さん(刑務所Dr.)、この特異な名称や業務内容、周辺事情を初めて知りました。
本作は文庫書き下ろしで、序章・終章に挟まれた4章で構成されています。舞台は北海道の千歳刑務所。主人公は、新人矯正医官・是永史郎です。神経内科の専門医を目指していますが、奨学金返還免除のため、3年の期限付で(渋々)赴任しました。
第1章を読み、是永の矯正医官としての成長譚として、ヒューマン・ドラマが十分成立すると思いましたが、いやいや岩井圭也さん、攻めてきます。
医療サスペンスに加え、是永の母(認知症)と父(犯罪者)という家族ドラマ、さらに岩井さんには珍しい?是永の恋愛 -
Posted by ブクログ
2000年の少年法改正により、少年審判の手続きや処遇を適正に進めるため、裁判所に協力する役割を果たす「付添人」(主に弁護士が担当)が公的に認められたとのこと。つまりは、被疑者の少年(少女を含む)の味方となる人ですね。
本作は、副題の「子ども担当弁護士・朧太一」が主人公の、5話からなる連作短編集です。名前はオボロ、見なりはオンボロ‥、でも少年たちへ寄り添い、手を差し伸べ続ける熱い心の持ち主で、自身が過去に傷を負っている背景がありました。
オボロは様々な問題を抱えた子どもたちへ真摯に対峙しますが、彼らはなかなか心を開かず、SOSの声の上げ方もわからないようです。それでもオボロの丁寧な語り -
Posted by ブクログ
重厚感あふれる物語なのに、なかなかページをめくるスピードが上がらず‥。多分、希望を見出せない暗い内容の所為? それでも岩井圭也作品は、知らぬ間に骨太な世界に引きずり込む"中毒性"を有している気がします。もしかしたら私、自称岩井中毒患者の一人かも‥。
物語は昭和13年から始まり、豊かな水銀鉱床を抱く北海道東部の未踏に近い山系で暮らしていた、水銀への耐性を持つ<水飲み>と呼ばれた一族の、30年間の壮大な物語です。
読み進めるほどに、歴史小説、人間ドラマ、ファンタジー、ミステリーなど、物語に内在する多くの側面に気付かされます。よく言えば「宝庫」で、私は楽しませてもらいま -
Posted by ブクログ
初めましての作家さんです。
主人公は朧太一、弁護士。
少年犯罪において弁護人の役割を担う付添人をしている。
5つの話が収められていて、
ホームレスを襲った少年とその友達の話
親の虐待から逃げてきた少女の話
親の支配から家出を繰り返す少女の話
自分の部屋に引きこもった少年のSNS炎上の話
親が会社のお金を横領した少年の話
それぞれの事に真摯に向き合って、その子にとって一番良い環境、未来を探すのですが、そうする中で主人公、朧太一も自身の過去と向き合い出口を探して行くという話。
この話を読んで思ったのは、子どもは環境に一番影響されるということ。子ども相手の仕事をしていると感じていたことですが、「やっ -
Posted by ブクログ
6遍の短編集。
どれもがダークで悪である。
そして到底考えられないことをやるから驚かされる。
何をもって悪である…かとはそれぞれだが、すべてに破滅を感じる。
堕ちていくイメージのカバーに絶望を感じるが、これは自ら招いたことなのだろう、暗い闇に引き寄せられた作品に怖さを感じた。
「海の子」〜養子だと知っていたが、実は…気づいたときには憎しみしかなかった息子のとった行動は。
「僕はエスパーじゃない」〜仕事が忙しい妻に代わって育児も家事もこなす夫に妻が言い放ったのは。
「捏造カンパニー」〜倒産やリストラで無職となった同級生3人が考えたのは、実体のない会社を設立したことだったが。
「極楽」 -
Posted by ブクログ
中国返還直前の香港
中国人の両親と共に日本に帰化した青年
彼は、10代の多感な4年間を香港で過ごしていた
好きだった少女の転落死は、日本に戻ってからも
香港への思いと共に彼の記憶に後悔を残す
それらに決着をつけるため 交換留学生として
再び香港へと向かう
1997年香港主権移譲
イギリスから中国へ
主権が移るという圧倒的な不安感
その渦中の若者達の切迫感
揺れ動く都市
すっかり日本人気質となっていた青年が
香港のスラム街、そこに住まう人達と対峙しながら 貧困に苦しむアジアの状況を知る
生まれる国は選べなくても
生きる国は選べるのか
生きていく場所を作れるのか
と難解な課題に人生を賭けてい -
Posted by ブクログ
舞台は700万人都市、香港
一人の少女が、スラムの闇に飲み込まれ謎の死をとげる
それは、自殺かあるいは、、、
日本の大学に通う瀬戸和志は、亡き恋人の死の真相を調べるために建築学院の交換留学生として、再び香港の地を踏むことに、、、
いやぁ〜、岩井さん読ませるわ〜
死の真相を探るにあたり見えてくる香港の様々な問題
貧困問題、黒社会、移民、難民、香港返還、民主化運動、、、
政治に無知な私ですが、読む手がとまらない!
いやぁ〜、岩井さん読ませるわ〜
とてつもない吸引力に最後まで一気に引っ張られ、読み終わってしまう感じ
そして思う「あぁ、すごい」と
ところで、九龍城砦って知ってます -
Posted by ブクログ
雑誌「ジャーロ」に2022から2023に掲載された短編6編
雑誌をほぼ読まない私は、全く知らなかったけど
ミステリー小説専門誌
実はミステリーと知らずに読みまして
逆に岩井さんの知らなかった魅力がより大きく
気がつかないうちに引き込まれる闇
闇でもがく人を描いた六編
「海の子」
72歳、妻に先立たれた夫
一人息子は 訳ある養子だった
息子に乞われ、その時の状況を語る
見知らぬ女が妻に乳飲子を引き渡し去っていった
養子のはずの息子は父親にそっくりになっていく
真実を確認した息子の報復
「僕はエスパーじゃない」
妻を労りよく気が利く夫
キャリア志向の妻と一人息子
妻の顔色 世間の風潮を読み 行 -
Posted by ブクログ
少年犯罪において、弁護人の役割を担う付添人
不遇な少年時代を送り、親の支配下での窃盗で14歳で逮捕され少年院へ送られた主人公、朧
社会復帰の後、弁護士となり付添人として積極的に活動している
付添人として罪を犯した少年少女達に正面から向き合った短編5編
少年少女達の罪の背景にある家庭環境に踏み込んで、彼らの将来を見据える
幼年期の経験は、子供達の気持ちに寄り添える糧であると共に、時折、過去の怨讐に囚われそうになる
それでも活動を認めてくれる人達、立ち直ろうとする子供達に 自身も救われる
大変で重要な役割の付添人
あまり認知されていない仕事に焦点をあて読ませてくれました
-
Posted by ブクログ
タイトルの『暗い引力』は、収められている6編の短編の表題にはなっていないんですね…。6編全てひっくるめて『暗い引力』ということなのかと思いました。
「海の子」:
妻に先立たれ養子の息子にその経緯を話すことに…。
「僕はエスパーじゃない」:
仕事と育児の両立、夫の助けもあって妻は順調にこなしていたが…。
「捏造カンパニー」:
同級生3人がペーパーカンパニーを設立、突然税務調査が入ることになり…。
「極楽」:
パチンコの借金から逃れるため、老女が考えた策とは…。
「蟻の牙」
長時間勤務で夫に先立たれた妻の復讐劇とは…。
「堕ちる」
地方の美術館で学芸員 -
Posted by ブクログ
この作品を読むまで、付添人という制度があるということ、全く知りませんでした…。家庭裁判所調査員が登場する作品なら読んだことあるけれど、あっ…あれは元家庭裁判所調査員でした!ひとつ、自分の知識になりました。
この作品は弁護士であるオボロ(朧太一)が、悩みを抱える少年少女の抱える家庭環境や生活環境など本人や関係者から聴取したり各関係機関と調整することで、少年少女の権利を守っていくもの…と、言えばいいかな…。それだけではなく、オボロが少年時代に受けた心の傷に向き合うこともテーマになっています。
悩みを抱える少年少女にとって、付添人ほど心強い存在はいないでしょうね…!!オボロが奔走する姿、胸