岩井圭也のレビュー一覧

  • 楽園の犬

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    戦時下のサイパンで海軍の諜報活動をせざるを得なくなった麻田健吾の話。ある意味、密室とも言えるサイパン島で海軍少佐から無理強いされる諜報活動における推理ドラマと、戦争に翻弄される民間人の苦悩の両方を見事に描いている。

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    2024年12月04日
  • 舞台には誰もいない

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    ネタバレ

    女優 遠野茉莉子がゲネプロの最中に奈落に落ちて亡くなった。公演は中止となり、劇場に関係者が集まる。それを袖からそっと見ている茉莉子。茉莉子が自分の過去を語っていく。


    ちょっと思っていたのと違った。ミステリーだと思っていた。
    茉莉子の死が事故なのか、自殺なのか、他殺なのか、それを問題にする話かと思っていたのだけれど、そうではなかった。なのに、読ませる読ませる。ハードカバーの分厚い本なのに、一気読みしてしまった。
    単にあらすじだけ書いてしまえば、「面白くない話」と私は思ってしまっていただろう。しかし読んでいると目が離せず、次を読みたくなる。茉莉子の生き方は共感を得にくいし、そりゃ病むわ、と思わ

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    2024年12月04日
  • 水よ踊れ

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    コルビジェの都市計画が鍵を握ってて、めっちゃ面白かった。(プロットがシャレオツ!)

    アジアの混沌。いろんな国から来た香港人のそれぞれの視点が見えて興味深く、香港の街並みも独特の魅力があった。(時折り画像検索しながら読んで楽しかった。旅行気分。)
    登場人物も皆魅力的。(特にベトナム人のトゥーイや、大学の同級生の女子たちがよかった)

    でも主人公が軟弱すぎて、ちょっと辟易した。でもそれが現代人っぽくて良かったのかな。最後のペナンの計画は、ん??と思ったが、その辺も主人公の軟弱さを現してる気がする。

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    2024年12月01日
  • 科捜研の砦

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    科捜研時代の土門の連作短編集 4編
    最後の鑑定人の第2弾

    「科学は嘘をつかない」
    という信条の元、科捜研トップの鑑定技術と知識の科学鑑定で真実を追求する土門
    土門の現在の状況の一作目を補完する第2作

    各作品とも 土門に関わる他者からの視点で描かれるのですが、信念ある有能な変人ですので
    最初は、受け入れ難い様子
    隠蔽捜査の竜崎さんと同じで 最後は結局信頼していくんですね
    すごく読みやすい質と量なので、どこかに連載していたのかと思ったのですが
    「罪の花」以外は、書き下ろしとのこと
    どんだけ書いているんでしょう

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    2024年11月29日
  • いつも駅からだった

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    ストーリーも連作で面白かったし、最後の謎解き仕掛けも良かった!!!
    実際に謎解き街歩きやりたかったなー

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    2024年11月24日
  • この夜が明ければ

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    季節バイトに集まった7人のうち、1人が遺体で見つかる。犯人捜しのミステリに進むのかと思いきや、意外な方向に。
    先が気になって一気に読んだ。
    踏み出した明るい場所に待つものが、本当に夜明けなのかは分からない。
    ただ、過去への執着やしがらみから抜け出し、意志をもって踏み出す一歩こそが、自分を変えていくのだと感じた。

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    2024年11月24日
  • 舞台には誰もいない

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    ゲネプロ中に奈落に落ちて死亡した女優、遠野茉莉子。彼女がなぜ死んだのか?彼女の生い立ち、遠野茉莉子がどういう人間だったのか?を幽霊となった遠野茉莉子が、自分自身を淡々と語っていく。
    たぶん淡々と語る口調が、人の怖さを感じさせる効果があるんだろうな。なんか終始怖かった。

    まず彼女の生い立ち。毒母のせいで感情が欠落してしまう。高校生の時、女優になろうと決めたきっかけがあるんだけど、そこが怖い。感情が欠落してるせいなんだと思うけど、とっさにあんな行動が出来るものなのか?

    女優の遠野茉莉子も怖い。役作りのためにそこまでやるのか?そこまで追い込むものなのか?役者という職業をよく知っている訳ではないの

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    2024年11月23日
  • いつも駅からだった

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    全体的に読みやすい本でした。
    大きな事件がある訳ではないですが、知っている地名が出てくる分実際にその街に行ってこの本をもう一度読みながら歩いてみたいなと思いました。

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    2024年11月19日
  • 舞台には誰もいない

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    主演女優が舞台直前に亡くなった、ミステリーと思いきや主人公がこうしなければならなかった切ないノワール文学に近い本でした。
    岩井圭也さんの作品は楽しみに拝読していますが、今回も期待を超えた深い洞察で、読み進めながらも考えさせられる内容でした。

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    2024年11月17日
  • 楽園の犬

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     舞台は太平洋戦争開戦前の1940年のサイパン。タイトルの「楽園の犬」の犬とはここではスパイのことを意味します。
     スパイと聞くとドラマや映画ではなんとなくかっこいいいイメージもありますが、実際には孤独で常に危険と隣り合わせの命を賭けた任務のように思います。スパイであることにいいことは一つもないように思えてしまいますが、抜けたくても抜けられなくなってしまうのでしょうね。
     日本ではスパイ活動を取り締まる法律がなく、世界からは「スパイ天国」と言われているようです。大丈夫なのかな?
     第二次世界大戦のさなかに勃発した太平洋戦争では、アメリカには石油等の資源量、経済力や軍事力でも到底敵わないことをわ

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    2024年11月16日
  • 舞台には誰もいない

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    ゲネプロの最中に不可解な死を遂げた女優・遠野茉莉子。
    事故なのか、自殺なのか、『幽人』の関係者たちが彼女について語りだすのだが、ラストに幽霊になった彼女が語ったのは…。

    母親の言いなりに生きて、自分の感情を露わにすることがなかった彼女が、高3の夏に母を事故で亡くしてから好きに生きようと東京へ出た。

    自分以外の役柄を演じることができるなら別の誰かになれると役者の世界へ。
    最初についた役の名前〈遠野茉莉子〉を芸名にし、影響を受けた劇作家・名倉敏史が信奉するメゾット演技を武器にして名だたる舞台女優となったのだが。


    彼女にはしばしば母の幻影が取り憑いていたのも誰かを演じなければ自分というものが

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    2024年11月14日
  • 竜血の山

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    ファンタジーだけどリアルさもあり最期がどう迎えるか気になって気になって、、、
    愚かさと純粋さとを感じながら、辿り着いた場所は幸せだったのか不幸せだったのか

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    2024年11月14日
  • われは熊楠

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    ネタバレ

    この世の全て、そして、己を知り尽くしたいと願った南方熊楠は、何か一つの単語をもってカテゴライズすることはできない唯一無二の存在感を持っている。

    膨大な記憶力を持ち、自分の興味にまっしぐらな幼少期を過ごした熊楠。青年期には家族の援助があり、アメリカやイギリスへ渡航する。そこで学問を深めるも、脳病の影響もあって周囲の人とトラブルを起こし、金銭的にも苦しくなり帰国を余儀なくされる。帰国後は、一度那智の山に籠るも、他者との関わりなくしては、己を知ることができないと下山する。その後、結婚や神社合祀計画への反対運動、昭和天皇との交流等、周囲の人との関わりが熊楠を支えていく。羽山兄弟や、息子の熊弥の存在は

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    2024年11月11日
  • 飛べない雛 横浜ネイバーズ(2)

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    ネタバレ

    横浜ネイバーズの第二弾、第4章のマザーズ・ランドは地面師の話で特にサクサク読み進めることができた。QRコードを使った詐欺やSNSなど現代を表したわかりやすいストーリーだと思う。

    心に残ったワード
    P60 大半の人はあなたを外見で判断する。しかしごく一部の人は外見以外の部分に目を向けてくれる。ルッキズムに満ちた世の中は誰があなたに取って本当に大事な人かを教えてくれるはず

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    2024年11月10日
  • 科捜研の砦

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    『科捜研の女』ならぬ『科捜研の砦(男)』。鋭い視点で現場を洞察。微細な証拠を看過せず、科学技術で死因を究明。暴き落とす。科捜研の矜持を守護した土門のバグには、被害者が渇望する正義も共在していた。

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    2024年11月08日
  • 科捜研の砦

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    真実を知ること暴くことは周囲に波風が立つよね。その本質を見て判断できる人達ばかりならいいけど、いっときの風や風聞で右往左往するのはみっともないね。真実を追求しようとする姿勢はなかなか評価されないけど、絶対必要な人やと思う。

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    2024年11月01日
  • この夜が明ければ

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    ネタバレ

    初めて文庫本を3時間強で読破しました。
    一文一文が短く簡潔で読み易いため、工夫の凝らされた文章を楽しむというより、展開を楽しむ本という印象です。
    映像化したら面白そう。

    登場人物がみな魅力的でしたが、主人公と唯ちゃんだけがずっと気味が悪かったです。
    その不気味さも、心の内が知りたくて早く読み進める促進剤となりました。
    独白シーンで、主人公には共感できましたが、唯ちゃんは本当に気持ち悪いと思いました。

    最後は皆でお金持ってバイト飛んだという解釈で合ってるのでしょうか。
    本人たちが自分の過去をそれで清算できるなら、それでよいのでしょう。
    雇用者が可哀想だな、と思いましたが。

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    2024年10月31日
  • この夜が明ければ

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    書店で見つけて衝動買いしました。北海道が舞台というのが気に入って。読み始めたら、止まらなくなりました。あっという間の350ページでした。次どう展開するのかが待ちきれなくなります。

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    2024年10月29日
  • 科捜研の砦

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    シリーズ2作目は科捜研で「最後の砦」と呼ばれていた土門誠が心に大きな傷を負った事件や妻となる尾藤との出会いが描かれる短編集。意外ときちんと人間関係を築いていくのが面白い。土門が周りの人たちにかける真っ直ぐな言葉が響くのは本人が思ってるよりもずっと感情豊かだからかも知れない。それだけに最後の話ではどれだけ悲しみが深かっただろうかと切なくなる。こうやって正しい答えに辿り着こうと何度でも検証し事件に真摯に取り組んでくれる人がいたら安心だし心強い。土門の鑑定技術も幅広い知識も素晴らしかった。科学は嘘をつかない。

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    2024年10月28日
  • 舞台には誰もいない

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    物語の中へ引き込む力が凄まじい。
    そして一旦はまってしまったら
    主人公の舞台女優がどんどん
    破滅へと向かっていくのと同様
    途中で抜け出すことができない。
    ずっと誰かを演じなければ
    生きてこられなかった女の半生が
    あまりにも過酷すぎて
    悲しいとか辛いとかの感情も超え
    最後まで本当の名前も明かされないまま
    顔も本性もわからず
    まさに幽霊を見せられている?
    かのようだった。

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    2024年10月22日