岩井圭也のレビュー一覧
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政治や香港情勢に疎い自分でも、最後まで読ませる岩井さんは本当にすごい。
彼女はなぜ亡くなったのか?真相を追究していくうちに、中国本土からの密入境者やベトナム難民など、様々な出会いを通じて主人公の考え方が次第に変わっていく…
読んでいくうちに香港返還についてもっと詳しく知りたくなって、ChatGPTに聞きながら読み進めた。
ChatGPTが「とても鋭い質問だね!」と池上彰さんのように褒めながらわかりやすく教えてくれるので、調子に乗っていろいろ聞いて勉強になった。
返還前の1992年に家族で香港に旅行したことがあったので、何となく香港の雰囲気はイメージできる。
道路までせり出した大きくてギラ -
Posted by ブクログ
ネタバレ一時期、新田次郎や夢枕獏、笹本稜平にハマっていて、しばらくぶりに山岳小説を手にとる。
山のみならずセクシャリティ、写真の本髄などの要素が絡まって、一気読み。驚くことに登山経験がないのに、その描写は澱みなく、リアル。
一つ気になるのは、女性の感情が男から見たものに思えること。非常にわかりやすいが、女性作家の表現や感情の流れを思いおこすと、実際の性別は超えらず仕方ないか。女性と思しきみなさんの評価ではそれほど違和感を感じていないようです。気にし過ぎかな。
初読ですが、幅広いジャンルを手掛けているみたいですね。
印象的なフレーズもいくつか。
人間の目とカメラの違い。人間は物を見る時前後の出来事 -
Posted by ブクログ
レビューで、ゴッホと弟テオの関係に似ているという指摘をいくつか見かけ、確かにと思った。
熊楠は家族や弟子に支えられてきたけど、特に弟の常楠の支えはとてつもなく大きい。
知の巨人として知られる熊楠の奇才っぷりもすごいけど、私は兄を天狗(てんぎゃん)と尊敬し金銭的に支え続けた弟に驚いた。
よくそこまで、と思うけど、周囲を顧みない天才だからこそ、その才能を確信している身近な人が支えていく構図になるんだなと感じた。
昭和天皇に講義をする場面はじーんときたけど、常楠と喜びを分かち合えないことが悲しかった。
何か恩を返せないものか、熊楠が所帯をもつのは間違えだったのかの二点がモヤるところ。
でも家族を多少 -
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水銀を飲んでも中毒にならない特殊な体質を持つ〈水飲み〉一族。
この発想を思いついた岩井さんはすごい!
水銀鉱山、戦争など自分の苦手なテーマなのに、この特殊体質の〈水飲み〉のおかげで面白くて一気読み。
苦手なテーマでもこんなに面白く読みやすくしてしまう岩井さんの発想に感動してしまった。
普通の人間は、蒸気を吸い込むだけでも危険な水銀。でも〈水飲み〉は水銀を飲んでも何ともない。
こんなにすごい能力があれば怖いものなしに思うけど、十分な教育を受けていない〈水飲み〉の生き方にはもどかしさを感じる。
実在した1930年代のイトムカ鉱山をモデルにしたノンフィクションをベースに、ミステリー、人間ドラマ -
Posted by ブクログ
ネタバレ加害者の息子と被害者の息子。
どちらもその一瞬の出来事で一生の足枷を嵌められてしまうのがつらい。その感情の機微を緻密ながらも強い熱量で綴られた物語に引き込まれた。
法的に裁かれる罪を償ったとて、倫理的な罪は償いきれず、それを家族までもが背負わざるを得なくなってしまうのが犯罪を犯してしてはいけない理由のひとつなのではないかなと思ったりした。だれも幸せにならない。
終盤で一馬が剣道を自分の私的な制裁のために使ってしまったことが残念でならないのだけど、そうせざるを得ないほど追い詰められていたととると、どれだけ心に闇を抱えてきてしまったかがわかる気がする。
エピローグはとってつけたようなものでは -
Posted by ブクログ
ネタバレ
幼少期に、辛いという言葉では表現できないくらいのことを経験したオボロ。
その時の記憶はきっと生涯忘れることは出来ないだろうけど、その事実と向き合いながら、真摯に『付き添い人』の仕事に没頭する。
親と子の関係について、これでもかというほど考えさせられました。
正解はあるのかな。
親も人間。
間違いも、親であることの苦しみもある。
だけど、子供が幸せになることへの望みだけは忘れてはならない。
どのケースも明るい展望が感じられ、オボロの活躍が身を結んだのが嬉しかったです。
また、笹木さんという理解者が現れたのも嬉しい。
戸惑いや不安もわかるけれど、そこは勇気を出して踏み込んで欲しい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人がもし事件を起こしたら、その人に弁護士がつくだろうということは分かっていたが、子供が事件を起こした場合、子供の弁護をするために付添人という人がつくことをこの小説で初めて知った。
一筋縄でいかない世の中だからこそ、それぞれの人間模様があり、また、子供だから、自分の意思ではないのに巻き込まれることに、なんだか歯痒い気持ちにもなった。
最後の言葉がとてもよかったので、すべての子どもに贈りたい気持ちになった。
「あなたにとって、あなたは誰よりも大切な存在だ。あなたの心も身体も、あなただけのものだ。辛ければ休んでも逃げてもいい。
もしも親や他人との関係で苦しんだとしても、自分を大切にしてほしい。
生 -
Posted by ブクログ
面白かったです!北海道に行く用があり、積読本の中から北海道舞台の本作片手に飛行機に乗り込みました。正直、北海道感はそんなに無い作品でしたが、内容はとても面白かったです。期間限定のアルバイトに集まる7名の人物達。その中の1人が謎の死を遂げる。他殺か自殺か。警察に通報をしたがらない残りのメンバー。謎、秘密が徐々に明かされていく様がとても面白い。人は大なり小なり秘密や色々な過去を抱えて生きているものです。逃避は未来に進む為の一歩。状況や事情によっては、逃げることは必ずしも悪ではない、そんな気付きを与えてくれる作品だと思いました。読みやすくて人物描写もとても上手く描かれています!
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Posted by ブクログ
1Q84O1さんのレビューを読んで即ポチした作品。(フルネーム難しいなぁ。)
一休さんのレビューが、珍しく私に刺さりました( ̄▽ ̄)
良いこと書いてるなぁ〜、素敵だなぁ〜と思いポチっとやっちゃいました♪
自身も事情を抱えていたオボロは、自身の経験も活かして少年犯罪において弁護人の役割を担う付添人となった。
問題のある子供たちに寄り添い、彼らの心の声を聞く。
訳あり弁護士というと、中山七里先生の御子柴を思い出しますが、このオボロ先生は御子柴とは真逆の人間。(御子柴も好きですけど)
とても温かく、何とか子供の本心を聞こうと寄り添おうと努力する。「味方だよ」と言ってもらえることが、どれほど