岩井圭也のレビュー一覧

  • 暗い引力

    Posted by ブクログ

    昨年は多くの意外な作家が暗黒面に引き込まれた作品を発表したが、岩井さんも例外ではなかった。年末ぎりぎりに刊行された短篇集で、些細な嘘から非道な犯罪までを描いた6篇を収録している。
    だがダークサイドと呼ぶにはちょっと弱い。こうした小説は読後いや〜な気分にならなければいけないんじゃないかと勝手に思っている。その観点からすると、どれもきれいにまとめすぎだ。
    一番最後に収録されている「堕ちる」は、超写実主義の画家の回顧展を任されたキュレーターの話で、これが一番面白かったのだが、肝心の部分が書かれておらずそこは不満だ。

    0
    2024年01月02日
  • 夏の陰

    Posted by ブクログ

     殺人加害者の息子と、殺人被害者の息子が剣道を通して向き合う話。
     うーん、正直、殺人加害者の息子に恨みを抱く気持ちがわからなかった。だって、事件当時、息子は中学生だよ?しかも父親に暴力を受けて育っている。
     それを知っていてそいつも加害者家族だから謝るべき、加害者の子どもがのうのうと生きているのが不快、という気持ちが理解できない。
     加害者の親なら憎む気持ちはわかる。だってそいつを育てたのだから。高齢父が加害者で成人した息子なら、それはそれで監督責任を考え憎むのもわからないでもない。
     でも、当時中学生の子どもに親の犯罪の責任を問う?しかもそのために人生不幸になるべき?
     坊主憎けりゃ袈裟ま

    0
    2023年11月28日
  • 凪の海 横浜ネイバーズ(3)

    Posted by ブクログ

    シリーズ第三弾。フリーターのロンこと小柳龍一は探偵のようなこともしていて、困った人からの依頼を受けている。今作はeスポーツ、転売ヤー、闇バイトに関する依頼から今の実態を調べていく。この3編はロンの活躍を描いているけれど、最後の表題作は友人の凪のこれまでが明かされていくシリーズ物としての面白さもある。人が向きあうもの、逃げたくなるもの。そういったものを受け入れていく過程に仲間がいて、力になってくれる人がいるということを感じられるのがこのシリーズの魅力なのかもしれない。

    0
    2023年11月28日
  • 凪の海 横浜ネイバーズ(3)

    Posted by ブクログ

    半年ぶりの「横浜ネイバーズ」その3。今回も“山下町の名探偵”ことロンが様々な依頼を解決に導く。
    依頼内容はプロゲーマー、テンバイヤー、闇バイトの3篇で、相変わらず今が旬のネタをうまく取り入れている。
    それに加えて、タイトル作である凪の過去にまつわる1篇が続く。これは本書中最長のエピソードで、さすがに力が入っている。
    凪だけでなく、ほかのレギュラー陣もそれぞれ成長しており、それぞれの目指す場所へ向かっているようだ。例によって、マツがメインの章は短めでかわいそうだが(笑)。

    0
    2023年11月23日
  • 文身

    Posted by ブクログ

    ん??どゆこと??そゆこと??物語終盤危うく超ガッカリするところだったが、何とか持ち直してくれ煙に巻かれたような不思議な感覚を残してくれた。そして終始振りまかれた壮絶で陰鬱な感触はなかなかのもの。酒豪で乱暴者で破天荒さに定評のある作家の本当の正体。それは考えることが極端に苦手な平凡な男。頭脳明晰な弟の書いたシナリオどおりに人生をなぞる操り人形だった。ゴーストライターというのは巷でもたまに聞く話だが、本書はゴースト側のパワーバランスが凄い。弟のまぁ恐ろしいこと。凡人には理解しがたい兄弟の絆のお話だった。

    0
    2023年10月24日
  • 横浜ネイバーズ

    Posted by ブクログ

    横浜中華街を舞台にしたご当地小説
    横浜の人に読んで欲しい作品
    老舗の名店を閉店して隠居した良三郎と一緒に暮らすフリーターのロン
    なぜかいつも事件に巻き込まれて、本人の意思とは関係なく解決に導いてしまう
    周りからは山下町の名探偵などと呼ばれている
    ロンを取り巻く先輩後輩、地域の大人達が織りなす関係も今は珍しくなったのかなという風情を醸し出している

    ところでいつも思うのだが、こういうご当地ものの小説にというか日本の小説全般に、相関図や地図が載ってないのはなぜなんだろう?
    それがあるととても理解しやすいのに…

    0
    2023年10月13日
  • 文身

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    波瀾万丈で破天荒な私生活を小説に綴り最後の文士と言われ亡くなった男が娘に実は自分が小説を書いたのではなく弟が小説を書きそれを自分が実行に移してきただけだったという衝撃的な事実を手紙で送ったことから始まる物語。
    自分で決めた事とはいえ表に出ない弟と自分は描いてないのに持て囃され人気者にある兄と関係性の変化がリアルだった。
    そして最後に衝撃的な内容が書かれており、さらに最後の一文でまたどんでん返しのようなものが待っている作品。
    途中読むのやめようと思ったけど読んで良かった。

    0
    2023年07月23日
  • 横浜ネイバーズ

    Posted by ブクログ

    IWGPブームから20年以上経ち、皆が知らない今その後釜を狙っているのかな/ 中華街版IWGP/ トラブルシュートものとしてはエピソードが弱い/ 不良の世界を描き切れていない/ 特に詐欺グループのくだりはきつい/ 不良の世界を描くのは真面目に生きていた人たちには難しいだろう/ 得られる知識は整理されたものだけだし、あの空気を知ることなく大半の人は大人になる/ 不良じみていないトラブルをシュートする話を頑張って欲しい/

    0
    2023年07月05日
  • 横浜ネイバーズ

    Posted by ブクログ

    横浜駅から向こう側、みなとみらい〜元町中華街。ザ・横浜なんだけどなんとも言えない愛着の湧く感じがあって、ここを舞台にしてくれたことがまず嬉しかった。
    博多とんこつラーメンズもそうだけど、愛着のある街を舞台にしてくれる小説って大好き。夢中にさせてくれる時間をつくってくれてありがとうという思いです。

    0
    2023年05月19日
  • 飛べない雛 横浜ネイバーズ(2)

    Posted by ブクログ

    2ヶ月連続での刊行となる「横浜ネイバーズ」第2巻。4篇が収録されている。
    今回ロンは、周囲にいる大切な人たちのために奔走する。最初の2篇はヒナをめぐる話。前巻のラストで思わせぶりに書かれていた謎が明かされる。そんなに簡単に解決しちゃうのかいと突っ込みたくなるが、まあエンタメ小説なんでよしとしよう。3篇目はマツが絡むがあっさりと終わる(笑)。そして4篇目はロン本人の過去にまつわる話だ。
    美容系ユーチューバーや詐欺を取り上げているが、前巻とはちょっと趣が異なり〈山下町の名探偵〉の冴えは感じられない。
    第3巻の刊行はいつかなあ。

    0
    2023年05月16日
  • プリズン・ドクター

    Posted by ブクログ

    「病が人を、罪に追い立てるのか?」

    刑務所を出てからの再犯率の高さを考えると、最後の彼の考え方も良くわかります。
    ただ、信頼関係を築きかけていたのに、このお別れの仕方は悲しいと感じました。

    東野圭吾さんの「さまよう刃」を思い出しました。

    0
    2022年12月13日
  • 水よ踊れ

    Posted by ブクログ

    08月-20。3.0点。
    香港返還前夜の1997年、建築を学ぶために留学していた主人公。数年前香港在住の際、好きになった女性がビルより転落死。留学の目的は、転落死の真相を探ること。。。

    うーん。イマイチストーリーに乗れなかった。真相も意外にこじんまりと感じてしまった。

    0
    2022年08月30日
  • 夏の陰

    Posted by ブクログ

    話しの設定は良いが、もう一つのめり込めない。
    主人公の2人とも共感出来ないし、好きになれないからなのか?岳が剣道に対し努力をしている姿が見えてこないのが原因かな。
    プリズン ドクターで心を揺さぶられただけに、残念。

    0
    2022年06月07日
  • 水よ踊れ

    Posted by ブクログ

    香港の情勢や建築からの都市計画等、読み応えがあった。
    この本の前に読んだ本が日本のアジア団地にも触れていたので、それもあってもか色々考えることはあった。
    最後まで読んで「水よ踊れ」が「Leap like water」であることに成程と思った。
    この方はの作品は「矯正医官」「数学者」「建築を学ぶ学生」と物語に添わせる専門の選び方が面白いなと思った。
    ただ国家間の話で後ろ盾のない個人がそううまく行くかな、と思うところはほんの少しあった。

    0
    2022年01月19日
  • プリズン・ドクター

    Posted by ブクログ

    02月-05。3.0点。
    医大を卒業し、奨学金免除のため刑務所医官となった主人公。3年勤続で奨学金免除。次第にやりがいを見つけて。。

    面白い。章立てだけど連作短編みたい。続編が読みたい。

    0
    2021年02月07日
  • プリズン・ドクター

    Posted by ブクログ

    奨学金免除の為、神経内科医への夢を後回しに、しぶしぶ刑務所の医者になった是永史郎。
    一人で認知症を患う母親の介護をする姿もまた社会情勢を反映しているよう。

    慢性的な刑務関係者の不足、要介護の高齢受刑者の増加など、刑務所もまた一般社会と同じ問題を抱えている。
    最低限の保証ということで、医療や介護が税金で賄われていることに理解と反感が共存してしまう。

    1つ疑問が残るとしたら、なぜ母は松木なんかと結婚したのかだろうか。
    史郎が3年後に刑務医を続けるのか、新たなことに向かって進むのか、続きが読んでみたい。

    0
    2020年06月14日
  • プリズン・ドクター

    Posted by ブクログ

    奨学金の返還免除の条件として、臨床研修の後、そのまま刑務所の医者として3年間働くこと。しぶしぶ引き受けることになった主人公・是永史郎。様々な受刑者を診療しながら、原因不明な出来事を次々解決していきます。

    あらすじを見る限りでは、長編かなと思いましたが、他にも事件があるため、連作短編集となっていました。
    ミステリーではあるものの、主人公の成長も垣間見れるヒューマンドラマとしても楽しめる作品でした。
    受刑者のあらゆる病気や苦悩だけでなく、刑務所ならではの問題、「刑罰とは」など社会問題にも触れていて、色々考えさせられました。
    主人公の仕事面では、刑務所の医者や聞いたことのない病名などなかなか身近に

    0
    2020年05月08日
  • プリズン・ドクター

    Posted by ブクログ

    北海道の刑務所に勤める矯正医官・是永。奨学金免除ため、三年間、刑務所の医者に。薬欲しさに仮病を訴える受刑者が多い中、ベテランの助手に助けられながらも、奮闘する。受刑者変死の謎、受刑者として刑務所入所した実の父、認知症の母、いくつもの難題に立ち向かう一方で、是永は自分の夢を叶えられるのか。
    刑務所内の医者が直面する苦労を描く社会派の内容でもあり、是永の仕事の成長の物語。3年を終え、早く大学病院に行きたかった是永だけれど、仕事と向き合う姿、落ち着いて問題を解決してゆく姿に目が奪われ、読み応えバッチリ。医学の専門定なこととか出てきて、よく調べてるなあと驚いた。実の父との決着はついていないのが残念かな

    0
    2020年05月04日