岩井圭也のレビュー一覧

  • 楽園の犬

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    ネタバレ

    「著者の最高傑作」という惹句だけれど、あのとんでもないデビュー作(『永遠についての証明』)はなかなか越えられないんじゃないかなあ。ここまで彼の作品を遡って読んできたけれど、ミステリーはあまり向いていない気がする。

    異世界転生ラノベをふだんたくさん読んでいると、こういう作品は、「現代価値観チート」のようにも見えてしまって。あの戦争の時代にもし、現代に通じるような「命の大切さ」を何よりも重んじるような人がもしいたら、どうしただろうかというフィクションは、興味深くはあるけれど、またそれかという感じがしてしまう。

    そういうチート具合を最初に強く感じたのは、Dance with wolvesだった。Last Samuraiやポカホンタスなどもその系譜かなあ。

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    2026年09月11日
  • 風車と巨人

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    自分が真実だと思う発見の為に癌研究者は論文を捏造したのか?というのがこの小説のメインストーリーで、アカデミックな問題を核にしてはいるものの、この構造自体は世の中にかなり溢れていると思います。コロナ禍(後も)のSNS上で呟かれていたワクチンへの疑いを示す“証拠”とされていたもの、あるいは医学系に限らず今日もどこかで投稿されている気象や政治、もっといえば芸能界の真実の“証拠”。それらは外側から見れば単なる嘘でしかない。けれど彼らにはそれを示してまで世の中に見せなければならない自分が見ている真実と正義がある。タイトルになっている『ドン・キホーテ』の有名な一場面からもわかるように、私たちが思っているより彼らには悪意はないのかもしれない。ただその純粋さゆえに彼らがどこまでも頑なになるのだとすれば、陰謀論をはじめとする広義での真実を巡る議論を終わらせるのは不可能に近いほどの困難さがある。

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    2026年09月04日
  • 風車と巨人

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    がん研究者嘉山の不正疑惑を暴こうとする若手ディレクター三田。
    序盤から不正をしている雰囲気が漂っていて、明らかに悪いのは嘉山なのに、読めば読むほど三田の方が嫌になっていくのが不思議だった。
    相手が悪だからといって、どんな手段をとってもいい訳じゃない。
    タイトルの「風車と巨人」は恥ずかしながら何のことか全くピンときていなかったけど、内容にとてもマッチしていて妙に納得。

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    2026年08月31日
  • 水よ踊れ(新潮文庫)

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    もっと水を描いても良かったように思う。それまでの物語によって描いてきたのだとは思うが、最初と最後に「水」を使った表現をする。この言葉を書きたかったんだろうなと思うが、唐突なまとめのような印象。
    また地名や建物名が現地語表記なので、フリガナが無いと正直読めなくて、結局音読みしながら進めていった。これがテンポを悪くし、没入を妨げているように思う。

    それにしても、である。
    心情を、染み入るように描くのが上手い。
    レイヤンには本当に幸せになってほしいし、主人公の若気の至りには喝!を入れたい。

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    2026年08月26日
  • 風車と巨人

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    ネタバレ

    作者が理系出身なのか、リアリティのある話で引き込まれた。科学論文の再現性の問題も実際にあり、STAP細胞くらい手順が簡単なら、再現してみようという気になるけど、ノックアウトマウスを作成するとなると、ハードルが高くて試しにやってみようとはならないよなあ。
    終盤の展開は好みではなかった。いくら相手が不正を働いているからといって、自分も同じ土俵に立ってしまっては元も子もない。不正を追及する側はどこまでも潔白でいなければ、誰も耳を貸してくれない。

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    2026年08月26日
  • 最後の鑑定人

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    映像化向きの題材でストーリーだなと読んでいて思っていたら、すでにドラマ化されていましたか。最後の鑑定人・土門。科捜研をやめ、民間鑑定会社を立ち上げた。難解な事件の鑑定が持ち込まれる。民事にせよ刑事にせよ、事件の証拠の鑑定ということは、何らかの事件があるわけで、しかも最後の鑑定人として持ち込まれるわけで、結論としてはどれもこれも後味は良くない。絶望を感じるわけではないが、生きづらいことを自覚しながら、自分の使命として鑑定をし続ける土門の姿が苦しく見える。

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    2026年08月23日
  • 科捜研の砦

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    ネタバレ

    登場人物は魅力的なんだが、ラストのエピソードはそうする必要があったのか。そこに至るまでの流れが自然に感じたのに、ラストで無理やり複雑にしているかのような印象。誰しも人を憎んだり殺したいと思ったりすることはあるのかもしれないけど、合理的な考えの人だし科捜研としての志みたいなものが垣間見えるシーンもあるのに、完全犯罪で自身の復讐を果たそうとしてるところ、そこのギャップに着いて行けなかった。しかも結構最初から犯人の最有力候補みたいな扱いで、『なんで???』という気持ち。

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    2026年08月22日
  • 風車と巨人

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    「不老因子」の発見で脚光を浴びるがn研究者・嘉山宗弘のドキュメンタリーを撮ることになった映像制作会社のディレクター・三田紗矢子。
    嘉山を追うにつれて、彼の研究不正疑惑が明らかになっていく。決定的証拠がない中、自らの真実に突き動かされた三田はある行動に出る…。


    面白いんだけど、主人公である三田のなんとも傲慢で独善的な性格に辟易。
    報道ではなくドキュメンタリー、番組ではなく作品、彼女の独りよがりのこだわりがそのまま嘉山の独善性とリンクしていくという作り。

    「信じ続ける限り、風車は巨人のままでいてくれる。その人にとってはね」
    真実と虚構をないまぜにし、“ドン・キホーテ”となったのは嘉山だけじゃなく、彼の不正を暴こうとする三田自身でもあるという皮肉。そして、嘉山の祖父・花木紀一郎もその一人だったのかもしれない。

    真実と信じることの違い。真実のためなら事実を曲げてもいいという姿勢を最後まで貫く主人公には寄り添えない。
    ドキュメンタリーの作り手がそんな考えなら、むしろドラマと謳ってほしいと思うのは私だけだろうか…。
    この作品に対するテレビマンの感想を聞いてみたいものです。

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    2026年08月12日
  • 風車と巨人

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    SL2026.8.9-2026.8.12
    大学教授嘉山のドキュメンタリーを撮るディレクター三田。取材を進める中で教授の研究不正疑惑が浮かび上がる。
    嘉山教授も三田もどうにも傲慢。
    最後まで主人公に感情移入できない作品だった。
    ディレクターという職業が身近にないせいもあるんだろうな。人の人生を映像に残すことにどれほどの意味があるのか。
    嘉山教授の論文より、彼の講座から中退していった学生たちのことを考えてしまう。

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    2026年08月12日
  • 文身

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    ネタバレ

    こういう何か暴力的ですさんだ世界って、あんまり好みではないのだけれど、小説家として、こういう設定を書いてみたいという野望はわかるし、それをやりとげているのは確かにすごいなと思う。

    でも人生って、やってみなきゃわからないもので、こんなふうに一方の側がストーリーを書いて演じてみても、相手がそのように動くなんて、そうはいかないだろうと思う。そういう意味では詠子さんのエピソードは特にリアルではあった。 
    そういうスタンスからすると(人間の行動はやってみないとわからない)、多重人格説ならしっくりくるわけだが、おそらくエンディングはそうではないんだろうな。

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    2026年08月11日
  • 最後の鑑定人

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     「鑑定人・土門誠」シリーズ第1作。
     わけあって科捜研を辞めた天才鑑定人・土門誠。科捜研時代、他の人が解明できないようなことも多角的な鑑定から解明し、「最後の鑑定人」と呼ばれるようになった。今は、民間の鑑定所を立ち上げ、依頼に応じている。
     本書では、そんな土門に持ち込まれた4つの事件を取り上げている。

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    2026年08月09日
  • 風車と巨人

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    自分だけの真実があるからかそれ以外を軽んじている性質が好ましくない
    それがドキュメンタリーと言うなら彼女の作品は見ない

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    2026年08月01日
  • 暗い引力

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    自らの保身や欲や野心のために嘘を吐き、暗い領域に堕ちていく者たちを描く6つの短編。
    一線を軽々と越えた彼らが手にするのは意図したとおりの成功なのか…。

    どの話も嘘と悪意と虚栄に満ちている。人としての良心を投げ捨てた先にあるのはやはり絶望であると信じたい。
    「極楽」の主人公の行く末は恐ろしく、「堕ちる」の学芸員の野望も一瞬で崩れ去ることだろう。

    こういう人間のダークサイドを描く話は嫌いじゃないんだけど、この作品はなんだか進まなかったな。

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    2026年07月28日
  • 檻を出ろ!横浜ネイバーズSP

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    久々のネイバーズ。今回も最新トレンドを取り込んで、東南アジアでの特殊詐欺拠点の話。相変わらずムチャするわ、ロン君。欽ちゃん、浅香さんといい感じ?SPと云うことは、シーズン2の開始ってことじゃないのね・・・

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    2026年07月27日
  • 風車と巨人

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    不老不死の新薬の秘密。話の先は読めるのだが、不思議とスラスラ読めて苦にならない。ただし、終わり方がなんだかなぁというもの。それが残念。

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    2026年07月26日
  • 汽水域

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    「死刑になりたかった」連続通り魔殺人事件を追う事件記者の話。
    事件と犯人に他人事と思えないものを感じたということで記者本人の記憶と犯人の生い立ちが交差して解明されていく
    事件を起こすにはワケがある
    記者として会社との軋轢や世間の目、ライバルに振り回されながら報道の倫理も信念も再確認しながら進んでいく
    でも最後は個人の思いなのかなぁ

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    2026年07月21日
  • 横浜ネイバーズ

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    ニートで「山下町の名探偵」。現実と二つ名のギャップが恥ずかしい。本人も決して望んだ名前ではないし、むしろ、そう呼ばれるのを本気で嫌がっている。二十歳のロンは横浜・中華街の四川料理屋の孫。地元に愛着があり、近所の爺様連中にも可愛がられている。惜しむらくは働く気も夢もない。「暇だから」と持ち込まれる頼まれごとは、解決するには手強い。幼馴染たちを巻き込み、横浜を走り回る。ハードボイルドには重さがたりないけれど、ハードボイルド風の味付けで、時々軽妙なのはロンの若さかと思ってみる。

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    2026年07月16日
  • 横浜ネイバーズ

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    ネタバレ

    岩井圭也さんがポッドキャストで話していたのを聞いてオーディブルで聞き始める。聞きやすくて展開も早くよかったです。短編は苦手なので1つだけ聞いて終わりました。

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    2026年07月12日
  • 横浜ネイバーズ

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    完全に池袋ウエストゲートパークの横浜版。実際作者がIWGPをオマージュして書いているらしい。それにしてもあまりにもIWGPすぎて笑ってしまった。
    IWGPの魅力はその時代のタイムリーな時事ネタと個性的なキャラクター、そして軽快な文体。特に文体が占める割合がかなり高かったんだなと改めて感じた。さすがに石田衣良の域には達していないものの、ジェネリックIWGPとしてはそこそこ楽しめた。キャラクターもそれなりに魅力はある。個人的に横浜が好きなので、その見知った地名が出てくるのもテンションが上がった。今後の展開と作者の筆力の向上に期待。

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    2026年06月25日
  • 永遠についての証明

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    熊沢勇一、斎藤佐那、そして三ツ矢瞭司の3人は、協和大学の特別推薦生として出会う。3人とも素晴らしい数学の能力の持ち主だったが、その中でも瞭司は特別だった。彼には結論が「見える」のだ。彼の見ている世界は、他の人とは違う。そのため彼はいつも孤独だった。しかし、協和大学に入り、担当の小沼教授、佐那、熊沢と数学の話をしている時は、彼は孤独ではなかった。彼はいつまでもその環境が変わらないことを望んでいた、しかし…数年後、瞭司は自宅で亡くなっていた。誰も解けなかった「コラッツ予想」を解いたとされるノートを残して。それには彼が晩年取り組んだ「プルビス理論」について記載されていた。熊沢は彼が亡くなった後、このノートを発見し、三ツ矢瞭司を見つけるためにノートの解読を始める。

    この本を読んで、「アルジャーノンに花束を」を思い出した。何かに突出している人は、見える世界が人とは違うから孤独だ。やはり人は同じ世界を共有したい、同じ気持ちを共有したいと思う生き物なんだな、と再度思った。最後熊沢に見つけてもらって良かったと思った。読みやすかった!

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    2026年06月22日