櫛木理宇のレビュー一覧
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舞台は地方の温泉街の泥首という地域。そこでは子どもが突然いなくなっても、誰も気に留めない地域だという。
そんな泥首で、子どもが無惨に殺される事件が起こる。
問題児である15歳の少年当真と、子分の慶太郎がその現場から立ち去るのを目撃され、警官に職質された2人は警官を切り付け、拳銃を奪って立て籠りを起こす。
立て篭もりの現場は、親に食べさせてもらえない子たちに食事を提供する『子ども食堂』だ。『子ども食堂』には経営者の司と、その場に居合わせた子どもたちが人質にされてしまう。殺したのは自分たちではないと言い張る2人。解放されたければ、犯人を見つけ、テレビで名前を言うことを条件にしてきた。
今回の子どもの死体以外にも、近くから2人の死体が見つかる。1人は死後20年は経過していた。犯人は一体誰なのか・・・。
凄惨な事件もさることながら、こんな地域があるのだろうか。慶太郎が言う『世間のみんなは死んだ子どもにしか興味がない。生きているうちに、ぼくは、ここから逃げたかった』という言葉があまりに悲しい。
立て篭もりが起こっている店内のジリジリした緊迫感と、警察側の犯人を探し出していくミステリが大いに楽しめた。 -
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ネタバレ表向きの話の主軸は、猟奇的な連続殺人とそれにつながる過去の事件・人間関係かと思いますが、実質的なメインテーマは毒親による精神的支配からの脱却なのかな、と感じました。
それは作中、十和子を含む多数の人物が、親から身勝手な理想を押し付けられて苦しんでいる様子が描かれていたことと、それを土台としていろんな要素が構築され、ストーリーが進んでいったことが原因のような気がします。
十和子や更紗は親に抑圧されていたためか自我が弱く、他人の期待に無意識に応えてしまうタイプで、それに応えられないと矛先を自分に向けてしまいそう。
逆に八木沼とある人物の方は、もともとなのか後天的なものなのか、現実と理想が乖離していると強烈なストレスを感じ、その修正のためには殺人すら厭わない性格(ただし徹底的な他責思考)。その上さらに親から歪んだ(あるいは世間一般から見たら極端な)価値観を植え付けられてしまった。
そのような設定の中で、これまたタイプの違う毒親を持つ市川樹里の存在が、序盤は浮いていたように思いました。連続殺人や戸川更紗の件と関係が薄いので、このキャラって何のためにいるんだろう?と疑問に思いながら読んでいました。
しかしフタを開けてみれば、樹里がいろんな点につながる「要」のキャラクターになっていたように思います。
八木沼や真犯人の親との関連性、脅迫チェーンメール、十和子襲撃のトリガーなどなど。なにより、樹里との共同生活が十和子の精神的自立に大きく寄与していたことに、彼女の存在の必然性を強く感じました。
おそらく十和子は、親から精神的に悪影響を受けている樹里の姿に自分を重ね、それによって初めて客観的に認知したのではないかと。そして樹里の話を聞き、励ましたり課題解決の提案をしていくことが、図らずとも自分の癒しや親からの精神的自立につながっていったのでは、なんて考えました。
そして何よりクライマックス。襲撃された十和子が助かったことより、実母の顔色をうかがうことなく堂々と離婚の報告をする場面の方に感動させられました。
こうしたことが、本作は毒親からの精神的自立が主題のように感じられた次第です。個人的にはそれは興味のあるテーマなので、本作にはなかなかに心を惹かれました(特に十和子の精神的自立が匂ってくる中盤以降)。猟奇的な連続殺人を題材にしたサスペンスであることを前面に出して売ってる本なので、評価の仕方としては邪道かもですが…… -
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佐々木譲、乃南アサ、松嶋智佐、大山誠一郎、長岡弘樹、櫛木理宇、今野敏『戸惑いの捜査線 警察小説アンソロジー』文春文庫。
警察小説を手掛ける人気作家による警察小説アンソロジー。7作を収録。面白い短編もあれば、ハズレの短編もあり、人気作家と言えどなかなか高いレベルの作品を上梓し続けるのは難しいのだなと思った。
佐々木譲『弁解すれば』。北海道警察本部の小規模警察署の刑事部門に復帰した仙道孝司が主人公。物語はまだ続くようで、タイトルの意味が解かるところまでも描かれず、唐突に終わってしまう。てっきり読切り短編かと思ったのだが、連載作からの1話だったようだ。
乃南アサ『青い背広で』。背広とは随分と懐かしい言い方だなと思ったら、敗戦から15年過ぎた昭和の東京が舞台だった。交番勤務から刑事に抜擢された若手警察官の土門功太郎が主人公。シリーズ物なのだろうか、主人公の土門功太郎の人と成りがじっくり描かれる。刑事になり、新しく背広を仕立ててもらい、靴まで新調し、妻の真智子からプレゼントされたネクタイで固めた土門が連続強盗事件の捜査という初陣に臨む。
松嶋智佐『刑事ヤギノメ』。ヤギノメと呼ばれる女性刑事が主人公のシリーズ物だろうか。何作か読んだ松嶋智佐の作品の中でも面白い部類の短編だった。急性膵炎で入院した刑事の弓木瞳巡査部長が現場に復帰する。弓木の体調はまだ不十分のようで、コンビを組んだ後輩の茂森隼太は弓木のことを気に掛ける。しかし、弓木が管内で起きた連続放火事件の捜査に参加すると驚くべき能力を示した。
大山誠一郎『三十年目の自首』。初読みの作家。警視庁付属の犯罪資料館の緋色冴子が三十年前の強盗殺人事件で自首してきた藤木正也の抱えていた心の内を看破する。なかなか見事なプロットで、読者を右へ左へと振り回すところが面白い。
長岡弘樹『噛みついた沼』。長岡弘樹でなければ創れない短編だろう。語り手は警察官の雄吾の妻の潤子なのだが、事件を解決する本当の主人公は後に登場する百目鬼巴という変わった名前の女性だった。筋は通っており、納得しながらも狐につままれた気持ちになる。ある日、警察官の雄吾と潤子は自宅近くでカミツキガメを捕まえる。その直後、何故か雄吾は過疎地の交番勤務になってしまう。
櫛木理宇『ルームシェア警視の事件簿』。櫛木理宇の作品にしては珍しくハズレ。櫛木理宇にはほんわかした作品は似合わないのかな。キャリア署長の佐桐一海とルームシェアする八島那青、西野穂高は複雑な家族関係にあり、同じ署に勤務する警察関係者であった。一海が着任早々、数年振りに管内で発生した殺人事件。
今野敏『ケースオフィサー』。これも、またハズレ。公安警察物の短編。ロシア大使館に新しく赴任して来た駐在武官を公安警察の2人が行確するという話。だから、それがどうしたという結末。
本体価格800円
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【2024年87冊目】
幼い息子を失い、魂を失ったような皆川家。真面目な長女、一歩置かれたような次女、ワガママな三女と家に寄り付かない父親に、錯乱する母親。そんなある日、母親が小さな男の子を保護したことで、家族の均衡は崩れ出す。互いに憎しみあい、罵詈雑言を口にする皆川家に寄り添う謎の女と男。家族はひとつにならなくちゃ――ね。
さすが櫛木理宇さんでしたね、鬼怖い。表紙が怖かったので、覚悟はしてましたが、途中の描写は本当に勘弁してくれよと思うほどでした。依存症シリーズを拝読していたので「いや、からの〜?」って思いながら祈るように読んでましたが、想像していた+願っていた以上の展開でひっくり返りました。さすが、ただでは終わらない…!
結構読んでて眉間に皺を寄せる内容ですが、ミステリー的な要素としても非常に良かったと思います。人間て、危ない存在になる可能性が、常に横にあるみたいな生き物なんだなぁと思ったのと、感情を描くのうますぎだろと思う感じでした。 -
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ネタバレ思いついたまま書くのでとっ散らかってます。
これはひどい〜〜(事件が)
ここまで凄惨な事件を読まされると胸糞通り越して言葉を失う
それでいてすらすら読みやすいんだから
ほんと嫌になるわね…
なんか犯人の供述がいかにもこういう奴らが言いそうなセリフばかりなんだけど
それはそれでまんまとイライラさせられたのが作者の掌で転がされてる気がしたなぁ
櫛木理宇さんは死刑にいたる病しか読んだことないけど
なんとなくエンタメ性が強い表現が印象的で
この作品にもそれを感じた(犯人たちのセリフや最後の真千代との対峙とか)
みんな!こういうサイコパス好きでしよ!感があるというか…
真千代みたいな犯人は別に共感はしないけど
ああやって人を操れる人心掌握術に長けてる人って
ちょっと憧れたりするもんな…
真千代みたいな人いたら怖いし事件は胸糞だけど
個人的に最後がそんなに嫌じゃなかったのは
浦杉にまったく感情移入できなかったからなのかも。
娘に対しての接し方がイライラしすぎて「こ、こいつ…!!」と思ってたので
これからさらなる生き地獄を味わうのかと思ったらちょっとスッキリすらした