あらすじ
【第25回小説すばる新人賞受賞作】冬はどこまでも白い雪が降り積もり、重い灰白色の雲に覆われる町に暮らす高校生の小柚子と弥子。同級生たちの前では明るく振舞う陰で、二人はそれぞれが周囲には打ち明けられない家庭の事情を抱えていた。そんな折、小学生の頃に転校していった友人の京香が現れ、日常がより一層の閉塞感を帯びていく……。絶望的な日々を過ごす少女たちの心の闇を抉り出す。
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まさかね、まさか。だってあれはもう、十年も前の話。いまさらこんな田舎町に、あの子が戻ってくるなんてありえない。
-ああ、だめだ。その刹那、小柚子はそう悟った。もう逃げられない。たったいまわたしは捕まった、と。誰に、なにに捕まったのかはわからない。でも本能が告げている。おまえは終わりだ。これは終わりのはじまりなのだと、低く嘲笑っている。
みんな死んでしまえ。世界なんて、いますぐなくなってしまえばいい。
降り積もる雪の重たさに、小柚子、弥子、そして京香が抱える重たさに、押し潰されそうになった。
母と娘。難しい。どちらが支配していたのか。されていたのか。
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思ったよりテンポ良く読めた。
4人の少女の心の闇(苺実は種類がちょっと違うが)。
それにしても、小柚子はあまりにも救いが無くて辛い…。
性暴力のトラウマから逃れるために
衝動的とはいえ「母殺し」という手段を選んだのに
結果、また性暴力の被害に遭うなんて。
心を失った小柚子に、弥子はどう寄り添うのか。
その後が気になります。
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最近ハマりつつある櫛木理宇さん。これは初期の作品で、小説すばる新人賞受賞作品。この装丁とタイトルの対比が読欲をそそる。
舞台は著者の出身地、豪雪地帯の新潟が舞台。そこで暮らす女子高生、小柚子と弥子とその仲間たちの物語。冒頭の停電と火事の記事が全て。そこに行きつくまでの過程が雪と共に積もっていき視界不良になる。なんともいえない田舎の家庭の閉塞感や女子高生らしいスクールカーストにリアリティを感じる。雪国の天候、曇天で灰白色の空が気持ちをも陰鬱にさせるのか。最期もなかなかの不穏な読後感。
とても好きな作品だった。
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以前読んだ『寄居虫女』よりは、ひねってない話なんですが…出てくる少女4人の家庭がみんな壊れてます。こんな異常な環境で、心穏やかに過ごしていけるはずもなく…少女たちの互いの関係のちょっとした行き違いをきっかけに雪崩式に恐ろしい結末へ…ページをめくる手が止まらないのはさすがです。
その結末を残酷と見るべきか、人それぞれだと思いますが、私はどんな形にしろ、終わってよかったんだと思いました。あの状態が続いていく方が彼女らにとっては地獄だったでしょう。
あえて言うならあの停電の日一日で全てが一度に起きるっていうのはちょっと行き過ぎかなと思いました。
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女子高生二人の視点で物語が展開していた
その他何人かの女子高生が登場して
母親との関係がみなそれぞれだがそこに
いろいろ問題が・・・
最初に新聞記事があり
物語はそこへ向かうんだろうなとはわかりました
精神科医の解説も興味深かった
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閉鎖的なコミュニティでの少女達の日常、葛藤、絶望…
親によって支配を受け続ける少女達の心理描写
、閉塞的な空間でのリアルが生々しい
それぞれの抱える背景が胸くそ悪い
突如現れた旧友の存在によってそれぞれの形で完遂する親殺し
一番やべー奴に見えた苺実も、親によって成長と自立の機会を奪われ続けているというのがが面白い
冒頭に繋がる最後の展開は急展開過ぎてちょっと笑ってしまった
ほったらかしな辻井君が割と可哀想
多分一番まともだから頑張ってほしいと思う
Posted by ブクログ
2020年、4冊目は、まとめ買いしてきた櫛木理宇。
雪深い街に暮らす、女子高生の小柚子と弥子は、小、中、高と一緒の仲。そんな二人でも、それぞれには知らせていない家庭の事情を抱えていた。そこへ小学校の時に転校していった双子の妹、京香が現れる。それをきっかけに、小柚子と弥子の関係に変化が訪れる。
雪国の冬の閉塞感、思春期の不安定さ、各々のイビツな家庭環境、となかなかへヴィーな題材が揃った一作。それが導入で書かれる、そして、大規模停電の夜の出来事へとつながっていく。
へヴィーな題材を取り扱ってはいるし、かなりの閉塞感はあるものの、比較的読み易い。もちろん、「ソレしちゃう⁉️」的なコトが出てきて、顔をしかめる場面もあるが、重くドロドロしたモノはそれ程感じナイ。
★★★★☆評価は、3.7のややオマケ的な感じ。
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多感な時期の思い込みの極致
雪深い東北のある街で火災事件が起こった。
遺体は母とその娘だと思われていたが娘ではなく娘の友人だった。
高校生の弥子と小柚子は仲が良い、しかしお互いの家庭環境に問題があり、それがしこりとなり段々と大きくなっていく。
思い込みの激しい友だちの苺美
ずっと昔一緒に遊んでいてこの街に帰ってきた双子の京香
小柚子の母とその彼氏の大島
弥子の母と叔父と関口くん
全ての人間が何かと問題あり。小柚子は嫌になり酒に逃げる。弥子は叔父との関係に嫌気がさす。
積もり積もった事が爆発すると自分でも思っていない行動を起こす事になる。
初めて読んだ作家さんでしたが人間のドロドロとした感情の表現がよく書かれています。高校生という何かと色々な事を吸収する時期にキャパをオーバーした出来事に出くわすとどういう状況に陥るか凄く伝わりました。
「日照時間と自殺率は比例するらしいよ」南国に住んでいる自分はこの言葉がなぜか響きました。この作家さんの他の作品も読んでみたいが読んだら落ち込みそう……。
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家庭内に問題を抱えている少女たちが出てくる。
家庭内の問題って、ほかの人からはわかりづらいし、本人も知られたくなかったりする。
想えば自分など、多少小うるさい母親がいたぐらいで恵まれていたのだなあ、とつくづく思う。
なぜか引き込まれて一気読みしてしまった本
Posted by ブクログ
2012年に小説すばる新人賞を受賞した、櫛木理宇の初期作品。
『キャリー』のように、母親に抑圧されて暮らす少女が、いつ精神を崩壊させるのかと読者をハラハラさせる物語。
共に母親に抑圧されて暮らす小柚子と弥子、この仲の良い2人の少女に、莓実、京香というもう2人の少女が関わってくることで、閉塞感たっぷりの物語は更に閉塞感を増していきます。
雪の降り積もる冬の新潟を、暗く描いているのも、母娘の物語の閉塞感を更に重苦しく演出してましたね。
ヒロインの一人・弥子が夢野久作『少女地獄』を読んでいたり、冒頭が新聞記事だったり、弥子が背が高いことがコンプレックスだったりと、『少女地獄』「火星の女」を思わせるところ、現代版『少女地獄』を目指したかのようにも思えます。とすると、莓実のモデルは『少女地獄』「何んでも無い」の姫草ユリ子かな、とか想像するのも楽しい作品です。クライマックス・シーンが、オカルト要素無しの『キャリー』、という感じなのもとても良かったです。
Posted by ブクログ
第25回小説すばる新人賞受賞作。衝撃作だと思う。
”女子高生”というものが、非常に不安定なのは知っていたが、鬱屈が熟成され、飽和し、そして爆発する。そのギリギリなラインを存分に感じられる。
解説は読まない方が良かった。
Posted by ブクログ
櫛木理宇にはまってる。
親の責任。親になるのに資格作るべきだよな。→極論。またはカウンセリングを各家庭に置くべきだよ。日本だめになるぜ、このままじゃ。→極論。
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雪降る街で起きた火事。そこに17歳の少女の死体が。
過去の出来事が原因で人を心から好きになれない小柚子、サバサバしているようで自分に自信がない弥子、兄に腎臓を提供するために産まれたと親に言われた双子の姉妹…、死んだのは誰で、何故?
思春期のヒリヒリ感。
Posted by ブクログ
重い灰色の雲に覆われ、降り続ける白い雪。絶望的な閉塞感に心が壊されていく女子高生たち。第25回小説すばる新人賞受賞作。
少女たちの表の顔と心の闇の深さの対極が尋常でない。子を守るべき母親たちの無責任と非常識さも大概だが、大なり小なり母娘の関係ってこんな感じなのだろうか。精神科医・斎藤環さんの解説がショッキング。
Posted by ブクログ
なかなかすさまじい内容でしたね。メンタル状態があまりよろしくないときには、読むのは避けたほうがいいかも(これほめてますよ、それくらい真に迫っていたということ)
母と娘の関係は本当に難しくて、自身も実体験をしているし、親であっても捨てていいとも思うこともあるし、親だからこそ捨てられないというのも事実。
血縁は人間関係の中で最も汚いものだから(私個人の考え方です。そんなことはないと断言できる方が私はうらやましい)
ホーンテッド・キャンパスシリーズとは全く違う世界観で、さすがに驚きましたね。
Posted by ブクログ
「ホーンテッド・キャンパス」シリーズは主人公のピュアさで見逃しがちだが、人の悪意を描くのに長けた作家さんだと思っていましたが、まさに本領発揮。親の呪縛から逃れるためには殺すか捨てるしかないのか、女子高校生たちのそれぞれの結末がせつないです。
Posted by ブクログ
暗い気持ちになる内容ですが、今は毒親というコトバもポピュラーになり、こんなコドモたちは多いのかもな、って思いました。
自分の中にあるドロドロが出てくる内容かもしれません。
メンタル不安定な人には、読むのがしんどいストーリーかもしれませんね。
それか、逆にスッキリするかも!
どっちに出るかは博打みたいになっちゃう気もします。。
Posted by ブクログ
雪深い田舎町の設定が物語の物悲しさをさらに深くする。実際に住んでみないとわからない細かなところまで描写しているのがとても印象的。
複雑な事情を抱えた女子高生が登場し、友人関係で悩み
とまではありそうな展開だったが
お酒に手を伸ばしたり、犯罪に手を染めていったりする辺りは度を越している。
こんなことあってはいけないと思いつつもページを繰る手がとまらないのは作者の筆力なのだろう。
このあとの作品の残忍さがなりをひそめていたのは幸い。
読むほどに辛くなっていったお話ではあったけれど。
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思春期の危うさ、自由のない世界が書かれてる。親と子の関係って難しい。親はいつまで子供は所有物と思ってしまう節がある。。親も成長しないといけない
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雪深い田舎町に暮らす女子高生たち。
彼女たちは各々、家庭に事情を抱えていた。
“母親”と“娘”という、難解で切実な事情が…。
櫛木理宇さん初読みですが、とても描写が上手で、臨場感があり、面白い!特に、弥子と叔父の対決シーンなんて、映画を観てるような感覚になる。
表題について、匂わせるような表現は本文中にはないものの、いろんな意味で捉えられそうで、そこも良かった。
Posted by ブクログ
雪の無い生活に憧れる登場人物たちの気持ちは良くわかる。彼女達が思うほど雪は嫌いじゃないけれど、やっぱ無い暮らしに憧れるよね。かなりデフォルメされたエキセントリックな人物ばかり登場するのがいまいちかな。読んでいる間に感じた疑問や思ったことにに巻末の解説が応えてくれた。
Posted by ブクログ
小説すばる新人賞の受賞作。新潟の雪深い地域を舞台にした、心も体も冷え冷えする物語です。
エピローグで紹介される2つの記事。1つは真冬の中越地方を襲った大停電。もう1つはその停電の夜に起きた民家の火災。発見された遺体は2体で、同家に住む母娘のものかと思われたが、母と娘の同級生の遺体だった。物語に登場する娘の同級生は数人いて、遺体はいったいどの少女のものなのか、最後までわかりません。
登場する少女たちはみんな、母親と歪んだ関係。小柚子(こゆず)の母親は男を取っ替え引っ替え。過去に小柚子は母親の相手から性的虐待を受けたこともあるけれど、それを誰にも言えません。酒の味を覚えた彼女は17歳ですでにアル中。弥子(やこ)の母親はひきこもりの弟(=弥子の叔父)を溺愛し、彼の面倒を見させるために弥子を産んだのだと断言。しかし、小柚子も弥子もそんな母親に従順。それが事件を引き起こします。
話中に出てくる映画は『ピクニック at ハンギング・ロック』(1975)。ピクニックに出かけた女子たちが行方不明になってしまうあの映画はものすごく不気味で、観てから何十年経った今も忘れられません。この小説もそんな不気味さを兼ね備えていますが、後々まで心に残りそうかと言えばそこまでではない。重さがくっいてきたら、もっと読み応えがあるかもしれません。
Posted by ブクログ
病床に伏せていた一週間で読んだ本。
雪で閉ざされた田舎町を舞台に、身勝手なことしかのたまわない大人(主に母親)から抑圧されまくっているせいで夢も希望もない日常を送る女子高生たちが、そのフラストレーションを大爆発させるまでの行程を描いた話。
正直、読後感のいい小説ではないっす。だけど、僕はスカっとした。登場する大人の大部分がそろいもそろってクズばかりで最終的にそいつらみんなヒッドい目に合うから、ざまぁみろ、って思えるってところが、そういう要因を作ってるんだと思う。特に小柚子の母親は逝ってよし。
だけど、病気のときにこんな小説読んだら余計に具合悪くなるわwww
Posted by ブクログ
読み終わった後味はけして良くない。
でも、こんなことはたくさんあると思う。
もっと何でも話せると良かったねーと思う。
でも、好きだから話せないことって本当にたくさんあるのだ。
この子達はどうやって生きていくのだろう?
くびきを逃れて、強くたくましく生きて欲しい。
Posted by ブクログ
3組の母娘間と、4人の女子高生間の不安定な関係を描いた作品。
ただでさえ不安定なものが、がたがたと崩れ落ちていき、冒頭でしるされた不幸な結末を迎える。
彼女たちがまだ女子高生ということだけが救いかな。
Posted by ブクログ
どこまでも深い闇。読んでいて息苦しくなる。彼女らの未来に救いが訪れることを願ってしまう。それにしてもホーンテッドマンションと同じ著者だとは未だに信じられないぐらい作風が違うのにも驚いた。
あらすじ(背表紙より)
冬はどこまでも白い雪が降り積もり、重い灰白色の雲に覆われる町に暮らす高校生の小柚子と弥子。同級生たちの前では明るく振舞う陰で、二人はそれぞれが周囲には打ち明けられない家庭の事情を抱えていた。そんな折、小学生の頃に転校していった友人の京香が現れ、日常がより一層の閉塞感を帯びていく…。絶望的な日々を過ごす少女たちの心の闇を抉り出す第25回小説すばる新人賞受賞作。