門井慶喜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
人はなぜ、それ(小説)を読むのか。
物語の中には一応の答えがある。
でも、100人いれば100個の、1000人いれば1000個の答えがあるように思う。
小説から知識を得ようとして読む人はあまりいないだろう。
知識が欲しいなら専門書を読んだほうが早いのだから。
あれもこれも全部読んでみたい。
恋愛小説が大好き。
ミステリーには目がない。
人それぞれに好みは違うし、何を面白いと感じるかはその人の感性によって変わってくる。
だからこの物語で示されるひとつの答えらしきものに納得しない人もいるだろう。
「あぁ、そういう見方もあるんだな」といったところだろうか。
別の世界にひたれるから。
これが一番しっくりくる私の答えだ。
本を開いている間、活字を追っている時間は、体はここにあるけれど心はここにはない。
開いている物語に寄り添い、感情を揺さぶられ、笑い怒り悲しみ喜ぶ。
もちろんピッタリと寄り添える物語ばかりではないけれど。
本を読んでいるときは他のことは何もしない。
ただ、読むことだけに集中している。
その時間がたとえようもないくらい幸せな時間だし、心の疲れを浄化してくれる。
本から学ぶことは多い。
語彙も増えるだろうし、何よりも感情が豊かな人間になれそうだ。
最近テレビ番組で「共感力」を育てるために絵本を読みなさいと言っている人がいた。
心を育てていくためにも、読むということは大切なことなのだと思っている。 -
購入済み
江戸を建てたのは誰?
江戸を建てたのは、勿論家康公。
だけど、「江戸」という大構成物のパーツの数は膨大で、
パーツの物語のいくつかをピックアップして
モザイクのように編んだ本、が本書です。
パーツを章立てにしてあるので、読みやすいです。
私は冒頭の川の話が好きです。
江戸開府には、きっと他にもドラマティックな話があるでしょうし、
是非続編が読みたいです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「人はなぜ小説を読むのか」と、本作で勇次が郁太に問いかけていますが、ちょっと前に同様のブログ記事を読みました。
そのブロガーの記事には時々違和感を覚えることがあって、その正体って何だろうと考えていたのですが、その解答は本作の言葉でいう「人格の修行」っていう点なのかな〜と思いました。
なんだか大げさな言い回しですが、自分と異なる考え方の人に(架空、現実問わず)どれだけ多くの人と接することが出来たか、というところでしょうか。人物描写が巧みな小説ほど、文字通り生き生きとその人物が描かれ、その人の考え方などを知ることが出来る。そうして「こういう考え方の人もいるんだ」と“他者を許容する範囲”が広がっていくのかな〜って。(場合によっては許容どころか“目標”になる人物が現れることがあるかも?)
当のブロガー記事も勇次と全く同じ理由で小説を否定していますが、本に直接的な実利しか求められない人の意見だと思います。小説が好きな人と接していたらその視点で考えられる、あるいは意見を聞くことが出来るはずですが、それが出来ないのは常に自分と同じような考え方の人(本には実利しか求めないような人)としか接していないからじゃないかな〜と思った次第。
勇次が言うように映画やコミックなどでも同じ「修行」は出来ますが、個人的には小説を読む理由は「暇つぶし」「娯楽(エンタメ)」であって、小説は多数あるその手段の一つ。それでいいんじゃないかと思ってます。(叙述トリック系のミステリなんかは小説ならではの表現なので、小説でしか楽しめない「暇つぶし」というのもあるとも思います。)
小説好きな私としてはブロガー記事と勇次の言動にカチンと来てしまった(大人げない…)ので、そのような思想的(?)なことをいろいろ考えさせられる本となりました。
それとは別にもう一つ、同じレベルで興味を引かれた点があります。それは「死後に刊行された遺稿集に、著者直筆のサインがある」という“ありえない事案”。この「普通ゼッタイあり得ない」という事柄に果てしなく興味を惹かれ、その謎を解き明かして行くミステリとして私はとても楽しめました。その作家、徳丸敬生を解説するパートは少々文字を追う速度にブレーキがかかりましたが、それ以外は一気読みでした。
なお、世界観を共有する別作品があるようで、本作にそのキャラクターが登場しています。何となく気になったので、近々そちらの作品にも手を出してみようかと。 -
Posted by ブクログ
美術品を扱う五つの短編集。
ストレスを感じさせない良作。
誠実な学者先生と誰よりも先を見通す天才という、典型的なホームズ&ワトソンコンビ。が、趣は少し異なる。
本作の探偵役はホームズポジションとしては珍しいくらい、不遜でも変人でも嫌味でもない。口調は丁寧だけど紳士然とし過ぎているわけでもない。なんというか控え目。必要最低限のお手伝い。
代わってワトソン役がよく働く。(語り手なのだからワトソン目線で話が動くのは当然として)ここでいう「働く」というのは読者に対する蘊蓄披露という意味。優秀なワトソン。
ただ、私が見逃しているだけなのか、二人の年齢設定がよくわからず人物像をイメージしにくい。
蘊蓄もよかった。ぜひ続刊も読もう。 -
Posted by ブクログ
美術史の助教授・佐々木は、本物を見ると舌に甘みを感じるという天才鑑定家の青年・神永美有に出会う。
ボッティチェッリの知られざる絵画「秋」を見て欲しいという画商の依頼で訪れた館には、初代館主の子爵が大正時代に東ヨーロッパで買い付けたという絵が壁にはめ込まれていた。
確かに名品だったが、さすがにボッティチェッリとは断定しかねて…?
なぜか神永は本物と断じて買い取ろうとしているらしい。
その理由とは?
画学生の実家にある蔵から出てきた古地図は、値打ちがあるものか?
仏ねはん図の不自然なポーズの意味は?
蒐集家だった佐々木の祖母が遺言に残した謎は?
佐々木が畏敬の念を抱いていた美術書専門の古書店主が、神永の父親と知り、羨ましく思う佐々木。
だが佐々木も祖母が蒐集家という家系なんですね。
アール・ヌーヴォーのガラス器などに財産をつぎ込み、二人の娘のうち謎を解いたほうに、見る目があって末永く大事にしてくれそうだからという意味で、全財産を譲る。どちらも正解したら折半という遺言。
佐々木の母は入院中で、いきりたつ伯母と対決するのに、佐々木は神永の力も借りることに。
有名な絵画や美しい物が出てきて、楽しい。
詳しい事情はひたすら感心して読むしかないが…
才能を認め、信頼を増していく関係。
登場人物たちそれぞれの過去への思いや、張り合いつつ謎解きに夢中になる気分、心配りゆえの嘘。やがて訪れる変化の時。
気分良く読み進められました。 -
Posted by ブクログ
日本初の建築家であり、「江戸を東京」にした辰野金吾の一代記。
師であるコンドルのスタイルを「古い」と断じ日銀の仕事を横取りし一躍日本のトップ建築家になった金吾が、東京駅を作り終える頃には自分を慕っていた弟子に「古い」と言われてしまうのに因果応報と悲哀を感じた。 主軸の話ではないが金吾と一緒に学んだ曽禰達蔵の御一新の時のエピソードが感動的で、登場人物の中では曽禰達蔵と高橋是清(二二六事件で殺された人)が魅力的だった。
ちなみに金吾の性格は最後まで好きになれなかった。
晩年の国会議事堂にこだわる話は財力と権力を持った成り上がりが最後に名誉欲を欲する典型で、某国の大統領のようだった。
東京駅完成間際にコンドルと窓枠に腰掛けながら話をするシーンがすごく印象的で美しかったので、俄然東京駅ステーションホテルにガイドツアー付きプランで泊まってみたくなってしまったけど、調べたら約8万円。。。
最期に金吾はスペイン風邪で死ぬのですが、私はこの本で初めてスペイン風邪がインフルエンザの一種だった事を知りました。恥。