門井慶喜のレビュー一覧
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先日読んだ「帝国ホテル建築物語」と比較すると、どうも作品へ思い入れが出来なかった。
上述した大正期の苦労人達の物語と、維新を這い上がった(本書の辰野金吾も十分苦労はしているのだが)才能ある野心家の物語では、自分の性格的にどうしても前者に思い入れてしまう。勿論フィクション上の辰野に対して、だが。
辰野に対比されるジョサイア・コンドルや曾禰達蔵は実際もなのかも知れないが余りに恬淡としているし、辰野に似ている妻木頼黄は大して書ききれない内に病死してしまう。
辰野の対立軸を決められないまま作品が終わってしまった、という印象が強い。
天神橋筋 西日本書店にて購入。 -
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明治中〜後期の「はじめて物語」は
バイタリティがあって楽しいね!
もちろん、今と比べて一長一短あるけど
こうして後世から見てみると
何事かを成したいという熱量がすごい。
そのなかでも、これは建築の物語。
好きな分野だから、なお楽しかった。
この時代の建築関係の本には
かならず名の上がる「辰野金吾」
東京駅や日本銀行を設計した人として
名前はもちろん知っていたものの
その人となりと人生を
小説にアレンジされているとはいえ
これで追うことができました。
まぁ、天才のまわりの人間は
いつでも巻き込まれて大変ってことで( ̄∀ ̄)
曾禰達蔵もよくずっと交遊を続けてたなぁ。 -
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ネタバレ信長、秀吉、家康の3人の中で、この10数年前くらいから最も酷く、そして悪く言われているのが秀吉。「戦ベタ」で「調子のいい奴」。下劣かつ卑劣、家康に夫のいた妹と母親まで人質に差し出した。好色で、身分の高い女ばかり何人も側室にした。確たる理由もなく「千利休を切腹、そして梟首。」「甥の秀次切腹、女、子供を含む眷属30名以上の処刑。」そして最大最悪の愚行「朝鮮出兵」。この小説は最後の「朝鮮出兵」を、「なぜ」ではなく「なぜか秀吉は」決断したために起こる色々な思惑、騒動を書いている。他の悪行等についてはスルー。まあこの「朝鮮出兵」以外の悪行については、どういう経過だろうと戦国時代を終わらせ、絶対的権力者と
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ネタバレ明治期に日銀や東京駅を設計し、近代建築の祖となった辰野金吾の物語。巻末に自ら史実に基づくフィクションと書いてあるから物語なのだろうが、参考文献の記載がないのはなぜなのか。実在の人物を描いているにも関わらず、出版社が参考文献なしをよしとする基準はどこなのだろう。高橋是清が意外(私が知らなかっただけなのですが)な役割を演じていて、興味深かった。この作品と無関係だが、明治期の血気盛んな人物を描くと、なぜかみんな漱石の『坊ちゃん』に似るのは気のせいか。日銀といい、東京駅といい、新しい工法をその都度試していく先駆者の心意気には感服する。
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新選組には実はそれほど思い入れはない。
昔大河ドラマで見た、程度のものだ。
ただ、料理人目線で描いていく面白さに期待したのだ。
主人公は、菅沼鉢四郎という。
かろうじて、武士。
禄を取る甲斐性もなく、不器用で内職もできず。
故郷を捨てて一緒になった妻に養ってもらう生活。
他の男との子どもとも知らず、娘を育ててきた。
ところが、蛤御門の変での大火事を機に、妻に捨てられる。
この男を拾ったのが、新選組の原田左之助。
新選組に詳しくないので、この左之助なる人物については全く知らなかった。
屯所の設営などに尽力した人らしい。
そして、新選組の幹部には珍しく、京で妻帯した人でもあるとのこと。
そし -
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美術系ミステリ。
この人の本は何冊か読んできた。
きっと美術のうんちくがつまったミステリなんだろう。
何となしに手にしたが、これ、シリーズ第三作だった。
もちろん、ベテランの門井さんなので、この巻から読み始めても差し支えない。
とはいえ、やはり神永美有の設定が謎すぎる。
本物には甘みを、贋作には苦みを感じる、特異な舌で判断するというのだから。
この巻では、「春のもみじ秋のさくら」という一編がある。
美有が二十歳で特異な味覚に初めて気づくところが描かれている。
でも…だからといって、受け入れられるかというと、やはり人によるのかな。
大田聴雨の軸と大正六年の台風の関わりは面白かったけれど。
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門井氏の本は「家康、江戸を建てる」を先に読んだので、時代小説の作家と思ったら、推理小説でのデビューとのこと。この本のタイトルに惹かれて読んでみたが、膨大な美術の蘊蓄が書かれていて読み飛ばしながら読んで行った。本物かどうか、見た瞬間に味で分かるという、特異体質の青年美術コンサル(神永)と美術専門の短大講師(佐々木)が繰り広げる真贋論争。表向きは短大講師が勝つのだが、その裏でひっそりと神永が勝っているというパターン。神永のせいで仕事を無くした学芸員がライバルとして何度も立ち塞がる。政治家の親と子や佐々木講師の伯母との遺産問題も何となく最後は良い話しで終わる。もっと素人も分かる美術論争だったらとも思