門井慶喜のレビュー一覧
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美術系ミステリ。
この人の本は何冊か読んできた。
きっと美術のうんちくがつまったミステリなんだろう。
何となしに手にしたが、これ、シリーズ第三作だった。
もちろん、ベテランの門井さんなので、この巻から読み始めても差し支えない。
とはいえ、やはり神永美有の設定が謎すぎる。
本物には甘みを、贋作には苦みを感じる、特異な舌で判断するというのだから。
この巻では、「春のもみじ秋のさくら」という一編がある。
美有が二十歳で特異な味覚に初めて気づくところが描かれている。
でも…だからといって、受け入れられるかというと、やはり人によるのかな。
大田聴雨の軸と大正六年の台風の関わりは面白かったけれど。
視点人物は佐々木昭友という、イタリア近世の美術を専門とする研究者。
ちょっと頼りない人物で、彼がカリスマ美術コンサルタントとなった神永に泣きつくというのがお約束だ。
美術ミステリというよりは、歴史ものと見た方がいいのかもしれない。 -
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門井氏の本は「家康、江戸を建てる」を先に読んだので、時代小説の作家と思ったら、推理小説でのデビューとのこと。この本のタイトルに惹かれて読んでみたが、膨大な美術の蘊蓄が書かれていて読み飛ばしながら読んで行った。本物かどうか、見た瞬間に味で分かるという、特異体質の青年美術コンサル(神永)と美術専門の短大講師(佐々木)が繰り広げる真贋論争。表向きは短大講師が勝つのだが、その裏でひっそりと神永が勝っているというパターン。神永のせいで仕事を無くした学芸員がライバルとして何度も立ち塞がる。政治家の親と子や佐々木講師の伯母との遺産問題も何となく最後は良い話しで終わる。もっと素人も分かる美術論争だったらとも思うが、多彩な人物像や筋としては悪くない。続編に手が出るかどうかは?
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信長と鉄砲という組み合わせ~1鉄砲が伝わる(そして試作させる種子島時堯)2鉄砲で殺す(信長に命じられた橋本一把は根来から鉄砲を手に入れ,岩倉攻めで弓の師と差し違える)3鉄砲で儲ける(堺は鉄砲作りで根来・国友の後塵を拝していたが,後の今井宗久は後の千利休との硝石輸入合戦を日本で容易に手に入れられる硫黄で逆転する)4鉄砲で建てる(信長の天下取りに貢献した鉄砲足軽は平時には安土城の足場作りの足衆であったが,信長の天主作りに熱狂し,丹羽が画策する櫓作りと敵対したが,天主は名もない人々が主役となる世の中の象徴でもあったのだ)5鉄砲で死ぬ(有能であった明智光秀は京都係から外されて,新式銃を持って本能寺を攻める)~鉄砲伝来から,製作秘話,使用法と戦法の変更及び前線を構成する人々の交替まで。本能寺のあった場所は小さな石碑しかなかったけど,城のように堀が巡らされていたのだね
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後に『文禄・慶長の役』と呼ばれる朝鮮出兵。
タイトル通り『なぜ秀吉は』朝鮮出兵を思い立ったのか、について様々な視点で描く。
博多商人・神谷宗湛(そうたん)
キリシタン大名・小西行長
後の天下人・徳川家康
そして朝鮮から来た陶工・カラクと元武家の妻・草千代。
作中にも出てくる巷間の説としては
『あらたな封土』を得るため
『勘合貿易の復活のため』
『歴史に名をのこしたいから』
『権力者の気まぐれ』
など様々なある。
だが家康は全く違う視点で考える。個人的にはこの説は面白いと思った。家康らしい考え方でもある。
だが秀吉はそれは違うと言う。
またイエズス会宣教師たちの、一般的に伝えられている面ではない負の部分も描かれているのも興味深かった。
当時の宣教師たちが当たり前過ぎて違和感など感じていないことに焦点を当てているのが面白い。
そして架空の人物・カラクの視点も一般的に想像するような愛国心とは全く違うところにあって、彼が秀吉を殺そうと考えるほど朝鮮出兵に反対した理由は意外性があって良かった。
結局のところ『なぜ秀吉は』朝鮮出兵を思い立ったのか。この作品で明かされるその理由は個人的には拍子抜けの感がある。
だが実際のところはそういうものなのかも知れない。
しかし巷間の説も家康の説も捨てがたい。
結局、様々な理由が織り交ざって、ということだろうか。 -
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ネタバレ文禄・慶長の役を起こした理由に迫る歴史小説。
ラストで秀吉が語る理由は後付けだとは思うものの、そのような考え方もありと思いました。
泳ぎ続けなければ死んでしまう魚のように、成長し続けるしかない企業のように、現状維持では我慢できないということには一理あると思います。
物語としては、巷間されている理由を各歴史上の人物たちに語らせ秀吉が否定する群像劇のパートと架空の登場人物である唐津の陶工カラクとキリシタン女性の草千代のパートの使い方が自分としてはイマイチな感じがしました。
著者らしく名護屋の街づくりについては分かり易く、歴史上の興亡も面白かったです。
せっかくおいしいテーマと面白い理由考察ができているので、あっさりしすぎているのがもったいないです。 -
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豊臣秀吉の晩年、朝鮮出兵の真の理由をめぐり、関係する人たちの心のうちを描く歴史小説。
博多の商人である神田宗湛、出兵の先鋒に立たされることになる小西行長、そして家康。それぞれの立場で、いろいろな解釈をいろいろな場面で披露している。そこに、朝鮮出身の陶工カラクや、武家の女房であった草千代が絡んでくるのが面白い。
力ずくでねじ伏せるしかない戦国の世にあって、天下人に登り詰めるその先に、ただ朝鮮があっただけと秀吉は言いたいのかもしれないが、その原動力はつまるところ、権力に対する欲望にほかならないのではないか。今の時代の権力者には想像もつかないほど強大な。
そして、名護屋城ほか全国各地の400を数える城が破壊されたのも、権力者のなせる技。
城跡で、当時に思いを馳せたい気持ちになった。 -
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軽いなあ。
『銀河鉄道の父』で直木賞後の第一作です。
タイトルは『・・料理人』で、実際に前半は武道は全くダメで赤子の世話と料理が得意な菅沼鉢四郎という元浪人が主人公です。しかし、話が進むにつれ十番隊組長の原田左之助が、最後には隊長の近藤勇が中心になり、鉢四郎は端役に追いやられて行きます。それに従い、最初は新選組の衣食住を扱っていた物語が、幕末の政情と近藤勇の政治的活動が大きなボリュームを占める様になり、特異性が失われてありきたりの「新選組もの」になってしまいます。
そうなると、どこまで人物が描けるかという事が作品の良し悪しを決める要素になると思うのですが、どうもそこがプアな気がします。その例が第二の主人公ともいうべき原田左之助の妻子に対する言動です。背後に大きな人格の塊が有って、時と場合によってその右端から、あるいは左端からその言動が出て来るように感じられたら素晴らしいのです。ところがそうした大きな人格(優れたという意味では無く幅があるという意味です)が感じられず、人格そのものが右往左往しているように感じられてしまいます。そうなると、あまり魅力的には思えません。
紹介文には「新直木賞作家の野心作」と書かれていますが、どうもこの「野心作」という言葉は「やって見たけど、失敗だったかな」という意味で使われる事が多いように思えます。
文句ばかり書きましたが・・・・
軽いところも、時勢をシンプルにバサッと切り取ってしまうところも本来は門井さんの特徴で『自由は死せず』ではこれが上手く生きていました。期待している作家さんなので辛口になったという事で。。。