【感想・ネタバレ】屋根をかける人のレビュー

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Posted by ブクログ 2021年08月13日

「日米に橋をかけた人ではなく、屋根をかけた人」  

 20世紀の初め、近江の地に降り立った一人のアメリカ人青年ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。英語教師として来日すると同時に、キリスト教の伝道師としての使命にも燃えていた。

 しかし天皇中心の国家として富国強兵に邁進する当時の日本にとっては、生徒を...続きを読む集めてはキリスト教の伝道をするヴォーリズの教育方法は、問題視される。
 ほどなくして彼は教師の職を失う。
 アメリカに帰ってやり直すか、日本で新しい職を見つけるかの二者択一を迫られた彼は後者を選ぶ。
 そこで彼は、趣味で続けていた洋館の建築や改装を仕事にしてしまおうと考え、教会や個人住宅の建設の仕事を請け負うようになった。製図や構造計算などの正式な教育を受けてはいなかったため、初期の頃の建物はあまり評判の良いものではなかったが、もともとの商才もあって、他の外国人建築家に頼むより、べらぼうに安いコストで洋館(洋風建築)を建てることに成功した。人当たりも良く、建築知識の不足や技術の未熟さは、日本人大工の知恵を借りることによって補った。
 それが評判となって次々に仕事が舞い込むことになり、日本における生活の基盤を固めることができた。
 その他にもメンソレータムの日本独占販売権を取得して、傷薬として大々的に売り出し、軍へも販路を広げるなどして財を成した。そしてその資金を建築の仕事に注ぎ込んで、事務所を大所帯にしていった。

 のちに華族の一柳満喜子と結婚し、日米親善に努めるが太平洋戦争により、敵国人みなされるようになる。それを回避するため不本意ながら神道に改宗、日本国籍を取得し一柳米来留と改名する。妻が元華族ということもあり、特高も逮捕などの手段はとらなかったようだが、常に監視され、祖国アメリカからは裏切り者扱いされた。

 不遇の時代を乗り越え、終戦を迎える。
 
 そこで彼は国体護持の存続に関わる重要な役割を演じることになる。(ここからは史実なのか創作なのかよくわからないが、昭和天皇に拝謁したという事実は記録にある)
 
 ここから感動のクライマックスに向かうのでレビューはここまで。

 書名が平凡なので、あまり注目されてこなかった小説だけど、今まで10冊くらい読んだ門井さんの小説の中では一番面白かった。

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Posted by ブクログ 2019年05月31日

近江八幡に所縁が深いウィリアム・メレル・ヴォーリズ…作中では、そう呼ばれる機会が多かったという「メレル」となっていることが多いが…彼の人生を巡る物語である。非常に興味深く、また「考える材料」を多く供してくれる作品で、少し夢中になった。
建築に関連する事績は「ヴォーリズ建築」と呼ばれて知られているのだ...続きを読むが、そういう活動の経過、更に家庭薬の<メンソレータム>の販売、後に製造も手掛ける経過というのが物語の“緯糸”になって行く。
仕事の展開が“緯糸”だとすれば、“経糸”は「メレルの生涯と思索」ということになるであろう。(確か“朝ドラ”の主人公のモデルになっていたことが在ったと思うが)広岡浅子との出会いが契機になって、伴侶となる一柳満喜子と出逢う。その“マキ”との人生と、時代の移ろいの中でメレルが感じた様々なこと、その変化が描かれているのだ。
メレルは、建築にせよ家庭薬の製造・販売にせよ、大いに成功した反面で「本当の専門家」ということでもない。メレルは、米国のプロテスタント系の価値観の中で育った人間で、それを普及せしめるという活動さえ熱心に続けた他方で、「そこに生まれたのでもないにも拘らず、自ら選んで」ということで日本に帰化した。というように、「揺れ」の中で生涯を送って、その中で色々と考えているということになる。そして晩年に至る境地というものが在る…
大正期や昭和初期に、メレルが感じる「(日本の)違和感」というようなモノが作中に綴られている。これは?或いは現在でも在るのではないか、というようにも思った…その他方に、晩年のメレルが至る境地である。なかなかに考えさせられた。

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Posted by ブクログ 2020年07月24日

冒頭、主人公が地方の学校に英語教師として赴任するところは、ちょっと『坊っちゃん』みたいだ! と思った。事業でバンバン成功を収めていく壮年期を描く中盤部分は、やや退屈。だが、日米開戦からの展開はドラマチックで、引き込まれた。アメリカ出身の主人公が抱く天皇制に対する違和感には、個人的に共感できる部分があ...続きを読むった。門井慶喜さんが本書のテーマとして取り組んでくれたことで、私自身のモヤモヤした思いも解消された気がする。

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