門井慶喜のレビュー一覧
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N市立文学館が財政難のため廃館となる事が決まった。
文学館に勤務する文学青年は館の延命の為、N市に縁のあった作家・徳丸敬生の晩年の失踪の謎を解くことで活路を見出そうとするが、物語は意外な方向へ。
N市は『おさがしの本は』の舞台と同じで、一部の登場人物も重なるので本作は姉妹編的作品。
本作では、小説について命題が出される。
「人間はなぜ小説を読むのか。
言いかえるなら、小説は、私たちの人生のための何の役に立つのか。」
そう言われても…。暇つぶし、疑似体験、空想、妄想、娯楽…。思いつくのはいたって貧弱。情けない。もちろん本作では鮮やかに一つの回答がなされる。
門井慶喜、巧いなあ。
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美術品の真贋を舌で瞬時に判別できる神永美有と、女子短大で美術講師をしている佐々木昭友のコンビによる、美術品にまつわる連作短編集。神永は舌で判別というオカルトチックな能力はありながらも、理路整然とした思考を持ち魅力的な探偵役となり、語り手となる佐々木は、はちょっとおとぼけもある名助手役。言わば定番スタイル。
そんな設定の上で取り扱われる美術品については、ボッティチェリ、古地図、涅槃図、フェルメール、アールヌーボーのガラス工芸品と幅広い。どれも含蓄が豊富でいてそれだけでも楽しめるのに、物語としても完成度高し。シリーズ化されているので次作にも期待。 -
Posted by ブクログ
建築物 家などを 語るというのは、歴史的な視点でみると
面白いものが、見えてくる。
辰野金吾の「東京 はじまる」の 門井慶喜と
日本政治外交史の専門家の 奈良岡聰智による対談が、
1909年に辰野金吾が作った奈良ホテル。
大磯の料亭 松月、丸の内ホテルのレストラン。
という臨場感があって、実に良い企画である。
高橋是清に学んだ 辰野金吾。佐賀出身であったが、
全く、高橋是清に会えたことが、セレンディピティだった。
そのことによって、政治力の力を得ることができたのかもしれない。
建築界には、維新の負け組が多いという指摘は、ありうる。
医療のための海水浴を提唱した鈴木順によって、
大磯が、別荘地