【感想・ネタバレ】なぜ秀吉はのレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年05月29日

日本史を勉強していたらよくこの疑問にぶつかる。日本で天下を取った秀吉が大陸侵攻すること(唐入り)は、さらなる野望に満ちていたのかそれとも他に理由があったのか。そしてその理由も明確ではないのになぜだと疑問に思いながらもノーと言わずついていく大名たちや商人たちは本当の思いはどうだったのか。
読んでいて秀...続きを読む吉唐入りの理由を知りたいという好奇心が止まらなくなる。

門井慶喜先生の著書『家康、江戸を建てる』も拝読したが、読者も冒険しているようなテンポのいい文章から湧き出すワクワク感がよかった。
『なぜ秀吉は』は世の中の流れが大きく変わる局面で登場人物たちがソワソワする感じが伝わってきた。どっしり構えてるイメージのあの徳川家康でさえ焦りを見せる場面もあり斬新だった。
その中で感情表現豊かなカラクと草千代の存在が、読者にさらなる臨場感を与える。 

秀吉の"なぜ"が明らかになるとき、これまで感じていた日本史の疑問点に納得がいき、流れがスムーズになった気がした。 

肥前名護屋城を訪れたことがある。
今はのどかな場所が一時日本の中心だったということ、錚々たる大名たちがここに集ったと思うと感慨深い。と同時に一人の声でこれだけの人が動くという怖さも感じた。
文禄・慶長の役は失敗に終わったが、目を背けてはいけない歴史があるということを教えてくれる。

秀吉の"なぜと同時にカラクの人生もまた印象深い。歴史の大きなうねりの中にたくさんの人々の人生もあったのだと思わせる。

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Posted by ブクログ 2022年07月11日

豊臣秀吉の朝鮮出兵(唐入り、唐御陣、高麗陣、朝鮮陣)の動機は大きな謎である。多くの人々は唐入りを無謀で無益な戦と考えた。その後の人々は文禄・慶長の役が無謀で無益な戦であったことを知っている。だから唐入りを無謀で無益と言うことは容易である。しかし、まだ結果を知らない同時代人の多くも無謀で無益と考えた。...続きを読む秀吉だけが突き抜けて無知であったことになる。



伝統的な視点は、秀吉が世界征服という誇大妄想にとりつかれていたとする。ただの拡大主義に巻き込まれたならば、たまったものではない。人々が秀吉の治世にウンザリすることは当然である。



人々は合理的な理由をあれこれ推測するがスッキリしない。真面目に考えれば成り立たない理由ばかりであり、スッキリしないことは当然である。実際、唐入りで実現するどころか逆効果になった。



第一に大名に恩賞として与える土地を欲したとする説がある。しかし、朝鮮や明国の土地が当時の日本人にとって魅力的であったか。平和な江戸時代に新田開発で石高は増大した。言葉も通じず、気候も厳しい他国の領土をわざわざ奪うことは徒労である。満州開拓に夢を見た戦前の日本の貧しい農民とは異なる。文禄・慶長の役は領土が得られず、大名は負担だけとなった。



第二に貿易の利益とする説がある。しかし、貿易は相手があってのものであり、貿易するために戦争をするということは目的と手段が合致しない。貿易をするために戦争することは迷惑な話である。倭寇とメンタリティが変わらない。それで貿易が実現すると考えることは愚かである。



明国と貿易したいならば足利義満がしたように冊封されれば良い。日本では聖徳太子の遣隋使の日出処天子を強調して冊封体制の外にいることをアイデンティティーとする傾向がある。しかし、足利義満が日本国王に冊封されたように冊封を利用する柔軟性を持っていた。南北朝時代には懐良親王が日本国王に冊封され、九州の覇権を握った。ここでは林田隠岐守も活躍している。



東アジアの貿易はポルトガルやイスパニアに握られていた。ポルトガルやイスパニアが日本よりも優れていた点は外洋を航海する技術である。火縄銃を国産化したように、造船技術や航海技術を学べば良い。後に仙台藩はガレオン船を建造して慶長遣欧使節を派遣しており、日本人も学べば外洋航海が可能になる。技術を学ばず、権力で実現しようとするところに公務員的な愚かさがある。



第二の亜種として朝貢国になることは嫌であり、逆に明国を戦争で破って朝貢させることを狙ったとの説がある。しかし、朝貢される側になるということは恩恵を施す側となり、貿易の利益は得られなくなる。また、朝貢の思想的バックボーンとなる華夷秩序を知っていたら現実味が乏しい。



第三に大名を戦争に動員して大名の力を削ぐ説がある。しかし、小西行長と加藤清正が先陣になるなど唐入りは豊臣子飼いの大名が中心になった。逆に徳川家康は渡海せずに勢力を温存した。大名の出費を狙うならば江戸幕府は参勤交代というスマートな方法を採用した。



第四に対外的な共通の敵を設定することで大名間の結束を高めようとしたとの説がある。しかし、朝鮮出兵は逆に石田三成や小西行長らの文治派と加藤清正や福島正則らの武断派の対立を招いた。



結局、朝鮮出兵で得られたものは、朝鮮半島から先進技術を持った陶工を連行したことで、唐津焼など各地で陶芸が発展したことである。唐津焼は文禄・慶長の役以前から始まっていたが、朝鮮人の陶工が連れてこられたことで技術は大きく発達した。これは発展と言えるだろうが、自然発生的な発展に比べると歪な発展である。文禄・慶長の役以前から陶芸に取り組んでいた人々が自然に技術を高める可能性を奪うものである。そこに腹立たしさを感じた人もいるだろう。

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Posted by ブクログ 2021年11月26日

豊臣秀吉による文禄の役。なぜあのタイミングで、秀吉は大陸に打って出ようとしたのだろうか?歴史上のミステリーの答えを探す物語でありながら、秀吉をはじめとする、大名、商人、職人、庶民、キリシタン、色々な人が主人公となりながら、当時を生き生きと生活しています。門井しらしい快活なタッチの物語でした。

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Posted by ブクログ 2021年08月29日

その時代に生きた人々が台詞を通して生き生きと描かれていた。気になったのが草千代。猿楽でのシーンでは胸が締め付けられた。とてもメタファーの上手い作家であり表現も分かりやすい。

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Posted by ブクログ 2021年07月14日

秀吉の晩年、朝鮮出兵はなぜ行われたか。秀吉の真意を探る大名と商人、秀吉の命を狙う朝鮮人陶工、謎のキリシタンの女が複雑に絡み合うドラマ。

名護屋城を舞台とした朝鮮出兵を巡る人間ドラマ。前半はやや単調な感があったが、登場人物が動き出した後半は一気読み。クライマックスの猿楽の緊迫感が素晴らしい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年01月27日

タイトルと通り、なぜ秀吉があのとき朝鮮出兵を決めたのかについて各大名の視点から定説を挙げる。結局は秀吉にしか分からないことだけれど、作者は秀吉は"樹"だったからだと考えた。
よく聞く褒賞の為の土地のためという理由より、家康が挙げた"日本各地の大名の結束"や、作...続きを読む者の"樹"という考えの2説が納得できた。
同作者の「信長、鉄砲で降臨する」、「家康、江戸を建てる」も読んだが、歴史を題材としたものが多く、また今作も戦国時代ということも相待って小説としては面白く感じた。

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Posted by ブクログ 2023年05月30日

なんかちょっと、殺伐とした気分になる話
みんな、付き合わされたなぁ
秀吉(本人)は冷静、周りは過剰適応
そりゃそうか

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年04月26日

信長、秀吉、家康の3人の中で、この10数年前くらいから最も酷く、そして悪く言われているのが秀吉。「戦ベタ」で「調子のいい奴」。下劣かつ卑劣、家康に夫のいた妹と母親まで人質に差し出した。好色で、身分の高い女ばかり何人も側室にした。確たる理由もなく「千利休を切腹、そして梟首。」「甥の秀次切腹、女、子供を...続きを読む含む眷属30名以上の処刑。」そして最大最悪の愚行「朝鮮出兵」。この小説は最後の「朝鮮出兵」を、「なぜ」ではなく「なぜか秀吉は」決断したために起こる色々な思惑、騒動を書いている。他の悪行等についてはスルー。まあこの「朝鮮出兵」以外の悪行については、どういう経過だろうと戦国時代を終わらせ、絶対的権力者となった者が、たまにやってしまう悪行。古今東西、何処でも、何時でもある話。もっとも、こういう権力者を好きか嫌いかは別だが、戦国時代の武将の残忍さ卑劣さはよく知られている。信長の残忍性は凄まじいし、家康の狸爺い振りは酷い。問題は「朝鮮出兵」。「なぜ秀吉は」朝鮮出兵を決断し実行したのか?その理由は?従ってきた武将達に分け与える土地を得るためか?土地変わりの金を大量に得るための勘合貿易をしたいせいか?不満を持つ者達に共通の敵を与え、それに向かわせるためか?或いは単に秀吉が老いてボケただけか?秀吉が頭の働かない傲慢じじいで世界を知らな過ぎたからか?それとも·······?作者が、この小説のなかで主人公秀吉の口から言わせている答は、「欲という奴」。ただ、その答を聞いた家康は「多分違う」と思った。と言うことは作者自身も「違う」と思っているかも。この謎解きの部分は中途半端。しかし、この小説は謎解きを主体にしているのではなく「朝鮮出兵」によってもたされた騒動が主体だと思う。あっという間に日本一の港町になった九州博多の名護屋、日本一の城となった名護屋城。そして、あっという間に寂れた名護屋、廃城となった名護屋城。この馬鹿げた騒動は?一体何の歴史的意義があるのか?·······でも、この小説の秀吉が言った「欲」。良いなあと思ったけど。「秀吉」はボケたか、傲慢か、世界を知らないか、欲ボケか。·······では、テムジンには、どんな「欲」があったのか。彼は「世界の広さ」を知っていて、草原を駆け抜け、砂漠を越えて行ったのか?·······「掠奪者」と呼ばれ、大帝国「遼」の礎を築いた阿保機は「大宋」に何の夢を見たのか?·······大国「遼」を滅ぼし、ついには中国北半分を支配した「金」の阿骨打は「南宋」の何に憧れ、何に失望したのか?そして奴児哈赤は?·······「世界の英雄」達は、どんな「欲」があって他の土地を侵略していったのか?或いは「夢」があって。勿論、侵略された方は堪ったものではないし、赦せない暴挙にしか思えないだろうが。この小説は、この部分でも(「欲」、「暴挙」のことに関しても)中途半端だと感じた。ただ「大騒ぎ」を書きたかっただけなら、まあ、それはそれで有りか。

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Posted by ブクログ 2022年01月15日

後に『文禄・慶長の役』と呼ばれる朝鮮出兵。
タイトル通り『なぜ秀吉は』朝鮮出兵を思い立ったのか、について様々な視点で描く。

博多商人・神谷宗湛(そうたん)
キリシタン大名・小西行長
後の天下人・徳川家康
そして朝鮮から来た陶工・カラクと元武家の妻・草千代。

作中にも出てくる巷間の説としては
『あ...続きを読むらたな封土』を得るため
『勘合貿易の復活のため』
『歴史に名をのこしたいから』
『権力者の気まぐれ』
など様々なある。

だが家康は全く違う視点で考える。個人的にはこの説は面白いと思った。家康らしい考え方でもある。
だが秀吉はそれは違うと言う。

またイエズス会宣教師たちの、一般的に伝えられている面ではない負の部分も描かれているのも興味深かった。
当時の宣教師たちが当たり前過ぎて違和感など感じていないことに焦点を当てているのが面白い。

そして架空の人物・カラクの視点も一般的に想像するような愛国心とは全く違うところにあって、彼が秀吉を殺そうと考えるほど朝鮮出兵に反対した理由は意外性があって良かった。

結局のところ『なぜ秀吉は』朝鮮出兵を思い立ったのか。この作品で明かされるその理由は個人的には拍子抜けの感がある。
だが実際のところはそういうものなのかも知れない。
しかし巷間の説も家康の説も捨てがたい。
結局、様々な理由が織り交ざって、ということだろうか。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年10月23日

文禄・慶長の役を起こした理由に迫る歴史小説。

ラストで秀吉が語る理由は後付けだとは思うものの、そのような考え方もありと思いました。
泳ぎ続けなければ死んでしまう魚のように、成長し続けるしかない企業のように、現状維持では我慢できないということには一理あると思います。
物語としては、巷間されている理由...続きを読むを各歴史上の人物たちに語らせ秀吉が否定する群像劇のパートと架空の登場人物である唐津の陶工カラクとキリシタン女性の草千代のパートの使い方が自分としてはイマイチな感じがしました。
著者らしく名護屋の街づくりについては分かり易く、歴史上の興亡も面白かったです。
せっかくおいしいテーマと面白い理由考察ができているので、あっさりしすぎているのがもったいないです。

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Posted by ブクログ 2021年08月14日

秀吉が明に攻め入ろうとした理由についての物語。
冒頭の秀長による話は本心のようにも感じたし、理由についてもこれだと思ってた。
信長からの意向、封土確保、貿易、一致団結など、いろいろあるが秀吉はなかなか語らず、全国統一した秀吉にしか見えない視界なのかといろいろ錯綜するが、秀吉がいよいよ語った意外な発言...続きを読むとは。

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Posted by ブクログ 2021年08月09日

樹ですか?ハードボイルドな秀吉像だけど、何となく違和感を感じてしまいました。小説は読ませてくれます。でも、えっそれ?

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Posted by ブクログ 2021年07月24日

「西欧の大航海時代を、日本の戦国時代がどう跳ね返したのか」ということに最近はまっていて読んだ本

もう少し人物に色付けが欲しかったかな
題名の付け方は秀逸

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Posted by ブクログ 2021年06月05日

なぜ秀吉は…朝鮮出兵したのか。
秀吉の周りを取り巻く様々な人々の視点から。
特にカラクが主のような気がした。

生まれたときから武士であるような大名たちとは異なり、百姓の子という圧倒的な出発地の低さがあるからこそ、常に上に上にとする根性、欲が強かったのではないだろうか。そこが朝鮮、明へと手を広げてい...続きを読むった根底としてあるのではと考えた。

本当のところは秀吉にしか分からないが。 

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Posted by ブクログ 2021年06月03日

なぜ秀吉は朝鮮出兵したのか?

に関しては、弱い。。。

小説としてはそれなりにおもしろい。

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