【感想・ネタバレ】なぜ秀吉はのレビュー

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Posted by ブクログ

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日本史を勉強していたらよくこの疑問にぶつかる。日本で天下を取った秀吉が大陸侵攻すること(唐入り)は、さらなる野望に満ちていたのかそれとも他に理由があったのか。そしてその理由も明確ではないのになぜだと疑問に思いながらもノーと言わずついていく大名たちや商人たちは本当の思いはどうだったのか。
読んでいて秀吉唐入りの理由を知りたいという好奇心が止まらなくなる。

門井慶喜先生の著書『家康、江戸を建てる』も拝読したが、読者も冒険しているようなテンポのいい文章から湧き出すワクワク感がよかった。
『なぜ秀吉は』は世の中の流れが大きく変わる局面で登場人物たちがソワソワする感じが伝わってきた。どっしり構えてるイメージのあの徳川家康でさえ焦りを見せる場面もあり斬新だった。
その中で感情表現豊かなカラクと草千代の存在が、読者にさらなる臨場感を与える。 

秀吉の"なぜ"が明らかになるとき、これまで感じていた日本史の疑問点に納得がいき、流れがスムーズになった気がした。 

肥前名護屋城を訪れたことがある。
今はのどかな場所が一時日本の中心だったということ、錚々たる大名たちがここに集ったと思うと感慨深い。と同時に一人の声でこれだけの人が動くという怖さも感じた。
文禄・慶長の役は失敗に終わったが、目を背けてはいけない歴史があるということを教えてくれる。

秀吉の"なぜと同時にカラクの人生もまた印象深い。歴史の大きなうねりの中にたくさんの人々の人生もあったのだと思わせる。

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2021年05月29日

Posted by ブクログ

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タイトルと通り、なぜ秀吉があのとき朝鮮出兵を決めたのかについて各大名の視点から定説を挙げる。結局は秀吉にしか分からないことだけれど、作者は秀吉は"樹"だったからだと考えた。
よく聞く褒賞の為の土地のためという理由より、家康が挙げた"日本各地の大名の結束"や、作者の"樹"という考えの2説が納得できた。
同作者の「信長、鉄砲で降臨する」、「家康、江戸を建てる」も読んだが、歴史を題材としたものが多く、また今作も戦国時代ということも相待って小説としては面白く感じた。

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2024年01月27日

Posted by ブクログ

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信長、秀吉、家康の3人の中で、この10数年前くらいから最も酷く、そして悪く言われているのが秀吉。「戦ベタ」で「調子のいい奴」。下劣かつ卑劣、家康に夫のいた妹と母親まで人質に差し出した。好色で、身分の高い女ばかり何人も側室にした。確たる理由もなく「千利休を切腹、そして梟首。」「甥の秀次切腹、女、子供を含む眷属30名以上の処刑。」そして最大最悪の愚行「朝鮮出兵」。この小説は最後の「朝鮮出兵」を、「なぜ」ではなく「なぜか秀吉は」決断したために起こる色々な思惑、騒動を書いている。他の悪行等についてはスルー。まあこの「朝鮮出兵」以外の悪行については、どういう経過だろうと戦国時代を終わらせ、絶対的権力者となった者が、たまにやってしまう悪行。古今東西、何処でも、何時でもある話。もっとも、こういう権力者を好きか嫌いかは別だが、戦国時代の武将の残忍さ卑劣さはよく知られている。信長の残忍性は凄まじいし、家康の狸爺い振りは酷い。問題は「朝鮮出兵」。「なぜ秀吉は」朝鮮出兵を決断し実行したのか?その理由は?従ってきた武将達に分け与える土地を得るためか?土地変わりの金を大量に得るための勘合貿易をしたいせいか?不満を持つ者達に共通の敵を与え、それに向かわせるためか?或いは単に秀吉が老いてボケただけか?秀吉が頭の働かない傲慢じじいで世界を知らな過ぎたからか?それとも·······?作者が、この小説のなかで主人公秀吉の口から言わせている答は、「欲という奴」。ただ、その答を聞いた家康は「多分違う」と思った。と言うことは作者自身も「違う」と思っているかも。この謎解きの部分は中途半端。しかし、この小説は謎解きを主体にしているのではなく「朝鮮出兵」によってもたされた騒動が主体だと思う。あっという間に日本一の港町になった九州博多の名護屋、日本一の城となった名護屋城。そして、あっという間に寂れた名護屋、廃城となった名護屋城。この馬鹿げた騒動は?一体何の歴史的意義があるのか?·······でも、この小説の秀吉が言った「欲」。良いなあと思ったけど。「秀吉」はボケたか、傲慢か、世界を知らないか、欲ボケか。·······では、テムジンには、どんな「欲」があったのか。彼は「世界の広さ」を知っていて、草原を駆け抜け、砂漠を越えて行ったのか?·······「掠奪者」と呼ばれ、大帝国「遼」の礎を築いた阿保機は「大宋」に何の夢を見たのか?·······大国「遼」を滅ぼし、ついには中国北半分を支配した「金」の阿骨打は「南宋」の何に憧れ、何に失望したのか?そして奴児哈赤は?·······「世界の英雄」達は、どんな「欲」があって他の土地を侵略していったのか?或いは「夢」があって。勿論、侵略された方は堪ったものではないし、赦せない暴挙にしか思えないだろうが。この小説は、この部分でも(「欲」、「暴挙」のことに関しても)中途半端だと感じた。ただ「大騒ぎ」を書きたかっただけなら、まあ、それはそれで有りか。

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2023年04月26日

Posted by ブクログ

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文禄・慶長の役を起こした理由に迫る歴史小説。

ラストで秀吉が語る理由は後付けだとは思うものの、そのような考え方もありと思いました。
泳ぎ続けなければ死んでしまう魚のように、成長し続けるしかない企業のように、現状維持では我慢できないということには一理あると思います。
物語としては、巷間されている理由を各歴史上の人物たちに語らせ秀吉が否定する群像劇のパートと架空の登場人物である唐津の陶工カラクとキリシタン女性の草千代のパートの使い方が自分としてはイマイチな感じがしました。
著者らしく名護屋の街づくりについては分かり易く、歴史上の興亡も面白かったです。
せっかくおいしいテーマと面白い理由考察ができているので、あっさりしすぎているのがもったいないです。

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2021年10月23日

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