門井慶喜のレビュー一覧
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ネタバレ通常の科目のほかに,「雄弁」を学ぶという伝統ある名門校雄弁学園を舞台とした連作短篇集。パラドックス(=逆説)をテーマとした論理的な作品というよりは,やや人情ものっぽい要素がある。ミステリではないが,個々の短篇にはミステリ的な手法が生かされている。「パラドックス実践」は,本編の主人公,能瀬雅司という教師が,生徒達から出題された三つの命題にどのような解決を見せるかというハウダニットだし,「職業には向かない女」は,一度,挫折して雄弁学園を去った五十嵐という女性教師と,一歳年下の北原という女性教師との関係は何か。なぜ,雄弁学園は五十嵐を教師として呼び戻したいと思っているのかという点が謎として描かれてい
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万城目学氏との共著「ぼくらの近代建築デラックス!」で溢れんばかりの薀蓄を放つ門井氏に興味を持って、初の門井氏の小説作品。
やはり凡人が知らないような薀蓄ネタに笑みがこぼれた。
「薀蓄在りきで、後からミステリーを組み立てたでしょう。」と 突っ込まずにはいられない。
さらに門井氏に代わり薀蓄をスマートかつ存分に披露するホテルコンシェルジュというキャラクターに思い至った門井氏のほくそ笑む顔が思い描ける。
ということで、普通は可決に至れるとは思えない難事件を薀蓄で解くストーリー展開はミステリー作品としてはあり得ないと思うが、軽快な展開とキャラクターの突飛さと事件のばかばかしさは、薀蓄好きのコメディー -
Posted by ブクログ
ネタバレ父と娘の関係がクローズアップされている日常の謎系ミステリ。5つの短編からなる連作の作品である。主人公の「父」である八駒敬典は,もともとは旅行会社勤務であり,なかなかのやり手だったという設定だが,現在は会社を辞めて専業主夫状態。博識の「父」とその娘「つばめ」との間の,なんとも微笑ましく,そしてちょっと難しい関係が楽しめる作品である。
日常の謎系のミステリとして見ると,各作品で描かれている謎は魅力的であり,解決もなかなかのもの。壊れた人形の謎(人形の部屋),万年筆についての謎(銀座のビスマルク)など,傑作というほどではないが,十分楽しめる佳作が続く。
読後感もよく,なかなかの良作なんだけど,ちょっ -
Posted by ブクログ
ストーリは鳥取のローカル私鉄の駅の取り壊し問題で住民が争う物語。駅が有名な建築家(ライト)が設計したと言われているが、病院建設のために取り壊すことにした村長派と、歴史的建造物だから保存しようとする人々。主人公は村長の孫で、この争いに巻き込まれる。その中、実はライトが設計していないのではないかと主人公は気づく。その気づきの流れは唐突な印象である。気づいた経緯・流れを丁寧に描くともっと面白いと思う。村長が急死して、村長選がはじまる。立候補者は主人公と、保存派活動をしていた女性の息子。この構図も唐突感がある。話を短くまとめようとしたのかもしれない。そして、主人公は病院建設と保存の両立を考えるが、それ