【感想・ネタバレ】人形の部屋のレビュー

あらすじ

ねえ、お父さん。この謎、解ける? きっかけはほんのちょっとした小さな謎。だが、八駒家の食卓にのぼると、それは一篇のミステリに姿を変える――家主の敬典は、旅行会社の有能なる社員から、専業主夫に転身。家事に追われながらも平和な日々を過ごしていたが、ある日、元先輩が可憐なフランス人形を持ちこんできた。それも、左足の先が粉々に砕けた人形を。なんとかしてくれと懇願され、持ち主まで怒鳴りこんできても、敬典はなぜか悠然とかまえている。そんな父に、中学生の娘つばさは憤慨するが、敬典の頭にはある推理が浮かんでいた……。父と娘が織りなす、温かなおうちミステリ。

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Posted by ブクログ

基本的に蘊蓄が好きな作家さんなんだなということはよくわかった。この話、時代がちょっと古いんだろうなぁ。今ならもっと色々な手助けがあるだろうし。花言葉はちょっと面白かったかな。うーん、でも、もうつばめも高校生なんだし、働いたらと思うんだけど。

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2019年11月08日

Posted by ブクログ

[1]優秀な旅行企画マンだった敬典は現在ヤヌシ(専業主夫)として中学生の娘つばめ、大企業の子会社で重要なポストに就いている妻の陽子を支えているが難しい年頃の娘との関係はデリケート。
[2]家族とは《人はみな、死ぬ瞬間まで中ぶらりんだ》《だから親が子の心を忖度するのも、子が親の心を意識するのも、要するに中ぶらりんが中ぶらりんに対してる》《そのことに耐えねばならない。おたがいに》p.318
[3]ミステリとしては敬典が持ち前の知識と発想力で謎を解くあっさり軽やかな日常の謎系で読みやすい。いくらかウンチクも得られます。読んで謎を解ける読者はほとんどいないのでは? それこそ敬典並でないと。この『人形の部屋』の方が古い作品やったと思いますが、北村薫さんの『中野のお父さん』シリーズに似たテイストです。あっちは基本文学系の謎なのでわりと浮世離れしてますので、こっちの方がより家庭の中の謎という感じです。

■簡単な単語集

【浅香佳美/あさか・よしみ】敬典の知人。女性。
【朝美/あさみ】伊村朝美。現在は若山朝美。西どなりの奥さんの知人のようだが、敬典の学生時代の後輩(ただし朝美さんは同じ大学のドイツ文学専攻を卒業した後一年会会社勤めをし、桜井先生とマックス・ヴェーバーの両方に惹かれ再度入学したので年齢は上)。
【アレゴリー】合理的思考とは相容れない。神聖視すべき何物かがあってそれによって規定されている共通認識が必要。西洋のカトリック的道徳とか日本の貴族文化とか。花ことばもアレゴリーの一種だったが合理的思考社会ではほぼ意味をなさない。
【泉田啓輔/いずみだ・けいすけ】敬典が奈良で筆と墨を購入したのを見て話しかけてきた若者。
【解釈】《複数の解釈を採らないということは、むしろ暗号解読帳としての利点とも称し得る。》p.161。学術的に、広汎な情報をきっちり載せてしまうと用途によっては何も書いていないのと同じ結果になることがあるなあ。
【家族史】《世界史の年表におけるもっとも重宝なインデックスが西暦なら、家族史の年表のそれは子供の学年だろう。》p.259
【川辺里美/かわべ・さとみ】→里美
【柵原紘平/さくはら・こうへい】溝口が壊したジュモーのビスクドールの持ち主。かなり横柄だ。
【桜井義秀/さくらい・よしひで】敬典の大学時代の先生。経済学部。
【里美】川辺里美。敬典の姉。両親の仕事が忙しくつばめがほったらかしになりかけた頃毎週のように金沢から出てきて面倒を見てくれた。
【敬典/たかのり】八駒敬典。現在は専業主夫(というのは本人が嫌がるのでヤヌシ)。金沢出身。元は小さな旅行会社の腕利き企画マンだった。コト消費系の企画を多く立てていたようだ。社内で最も豊富な知識を持っていた。もともと知識欲が非常に旺盛だった。「歩く百科事典」だとか「電源のいらない検索サイト」とか呼ばれていたらしい。浅香さんいわく《人にはどう努めても見えないものが、どうしてあなたの目にだけは見えるのか。》p.84。チコちゃん風に言えば「つまんねーヤツ」っことになりそうな人物。
【タクマ】つばめの口からときどき出てくる単語。男か? と敬典さんは気が気でない。
【詫間昴/たくま・こう】つばめの口からでてくるタクマと同一人部下は不明。サッカー部副部長。
【つばめ】敬典の娘。物語開始時に十三歳中学一年生。ちょっと気が強い。スタイルがいいらしい。バスケットボール部に入った。
【天気予報】新興住宅地でのご近所付き合いには天気予報を見ていることが大切なんだとか。
【西どなりの奥さん】春が嫌い。花がイヤなんだとか。
【花ことば】花束に託して発せられる。
【万国旗】日本独自の風習らしい。開国後の世界に追いつけ感覚の発露かもね?
【ビスマルク氏】敬典が銀座で万年筆を購入するシーンを見て話しかけてきた紳士がそう名乗った。それに対して敬典は「山頭火」を名乗った。ビスマルク氏は最後にはタレイラン氏になった。
【フランス人形】フランス製ではない。舶来人形を真似して日本で作ったもの。
【ブルマ】ちょっと前の時代でしょうか。つばめの学校では体育はブルマらしい。体育教師のカトーくんは目から涎をだらだら垂らしながら見つめているらしい。そういえばぼくが子どもの頃は「ブルーマー」と長音符ありで呼ばれてました。それが正しかったんやとは。
【勾玉まくら】陽子発案の商品でいろいろ工夫されている。売れるようになって陽子は帰る時間がどんどん遅くなった。《それは他人の安眠のために眠れない夜を過ごす日々にほかならなかった。》p.265。八千円以上で枕としては高額だが、今となってはこれくらいの価格の枕はそう珍しくないかも。
【溝口賢/みぞぐち・ただし】敬典の会社時代の先輩。預かりものだったのに落っことして壊したジュモーのビスクドールをなんとかしてくれ持ち込んできた。会社にも持ち主にも連絡していない無責任。挙句の果てに壊したのは敬典だと言った。
【八駒敬典/やこま・たかのり】→敬典
【八駒家】敬典と妻と娘のつばめの三人家族のようだ。埼玉県荒川北岸に家がある。
【安井樹峯/やすい・じゅほう】現在日本で最も著名な書道家と言える。
【ヤヌシ】家主。敬典はそれなりのポリシーをもって現在の立場をこう称する。浅香さんは専業主夫とどう違うのか疑問に思っている。
【陽子】敬典の妻、つばめの母。敬典の四歳下。旧姓大塚。大手寝具メーカーの子会社、「勾玉枕」を売る会社のおえらいさん。

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2024年05月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

旅行会社で様々な経験を積んだと言っても、ここまでの蘊蓄が語れるものだろうか。やや違和感を覚えながらも、面白く読み終えた。

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2018年03月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

父と娘の関係がクローズアップされている日常の謎系ミステリ。5つの短編からなる連作の作品である。主人公の「父」である八駒敬典は,もともとは旅行会社勤務であり,なかなかのやり手だったという設定だが,現在は会社を辞めて専業主夫状態。博識の「父」とその娘「つばめ」との間の,なんとも微笑ましく,そしてちょっと難しい関係が楽しめる作品である。
日常の謎系のミステリとして見ると,各作品で描かれている謎は魅力的であり,解決もなかなかのもの。壊れた人形の謎(人形の部屋),万年筆についての謎(銀座のビスマルク)など,傑作というほどではないが,十分楽しめる佳作が続く。
読後感もよく,なかなかの良作なんだけど,ちょっと好みの作風ではないのが難点。もっとトリッキーな作品や,ダークな作品が好みなのだ。その点を割り引いて★3で。

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2015年09月10日

Posted by ブクログ

専業主夫の父と年頃の中学生の娘.食卓から飛び出すあざやかな推理の数々!ほのぼの日常ミステリ.推理部分がちょっと回りくどい気もしたけど,ハートフルな感じが全面に出てて良い作品でした.それにしても専業主夫に憧れてしまう.

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2014年07月06日

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