門井慶喜のレビュー一覧
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親父は蒸発し、母親も男を作って蒸発。施設に預けられ、決して恵まれた少年時代を送らなかった主人公。高卒で不動産営業のドサ回り。
営業中、とあるオッさんに出会い物語は始まる。
竹島が日本のものか韓国のものか、一冊の古文書を巡り、外務省から、韓国大使館、さらに中国へ。三つ巴の展開に。
さすが、門井慶喜氏。
領土問題だけでなく、貧困による教育格差、その他、実に示唆に富む一冊。
竹島問題についても、新書5冊分くらいを大変分かりやすく、噛み砕いてくれている。
この手の題材からイデオロギーを排して、エンタメに昇華する技術はさすがだ。
領土問題に興味を持つために良い一冊でした。
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徳川家康という人物に対しては、信長や秀吉よりも地味なイメージを持っていました。しかし家康が江戸に幕府を開いた先見性や、世界でも有数の100万都市への発展。その後の戦前と戦後に繋がる東京への軌跡を知って、決してふたりにひけをとらない名将なのだと思いました。
本書では、特に江戸の発展に川の存在が欠かせないとあります。利根川の流れを曲げるという事業や神田上水をはじめとする水流を制御するシステムは、経済の発展に大きく寄与したのだと実感。
また、東京各地の日比谷などの名前の由来にも触れて、興味深く読むことができました。日比谷は、ひびというのり?をとる棒の名前が由来だとか。 -
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万城目さんと門井さんの軽妙なトークがにより繰り広げられる近代建築のガイド。
大阪、京都、神戸、横浜、東京、そして台湾の近代建築を散歩して探訪する企画である。
行ったことがある物件もあるし、日曜美術館やら、美の巨人たちやらで見たことのあるものもある。
(もちろん、今回初めて知るものもあるんだけど。)
それでも、門井さんが言うように、建築家の人となりに注目した紹介は新鮮で、面白い。
ダンディな渡辺節とか。
辰野金吾の人生三大万歳のエピソード(東京駅受注、日露戦争勝利、そして臨終の時)も興味深い。
ヴォーリズのエンドウマメ発芽実験のエピソードは、後の彼のイメージに反するもので、印象的。
なんでも、少年時代、脱脂綿の上にエンドウマメを発芽させる実験をしていて、「花も咲くのではないか」と言ったら、教師にそんなバカな、と言われて発奮。
大事に育て花を咲かせたどころか、実を収穫し、翌年発芽までさせたそうだ。
やはり名を残す人は、中途半端なことはしないということか。
近代建築が、今世紀に入ったころから、希少価値が出てきて、社会的な評価が上がってきていると指摘があった。
さらに、そこからかっこよくリノベーションして使うことに複雑な思いがする、という感想も述べられていた。
わかるような気もするし、一方では、きれいになったほうが嬉しい気もするし・・・。
こちらも複雑な思いになった。 -
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雄弁とか、論理学という言葉に、もはや偏見に近い先入観を持っている。
だから、雄弁学園の生徒はみんなガリガリくん、その教師はきっと奇矯な魑魅魍魎のような人たち。
そういうのが次から次へと、ぞろぞろ出てきて詭弁を振るう小説なのかと(笑)。
本書は雄弁学園の初等部、中等部、高等部、そして大学と、それぞれの教師を主人公にした短編集。
学園長にのし上がる栗坂を狂言回しにして。
教師の休職、保護者のクレーム、学園内政治の紛争など、さまざまな困難にそれぞれの教師たちが立ち向かい、解決する姿が描かれる。
結構ヘビーなトラブルなのに、やけにあっさり解決するから、もしかすると短編にすることもなかったのではないかという気がする。
が、どの編も読後感はあたたかい。
論理学に偏見があっても、それなりに楽しめる。 -
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美術品の真贋を舌で見分ける天才美術探偵・神永美有シリーズ第二弾。
「筆を持たない芸術家」と呼ばれた岡倉天心の直筆画ははたして本物かどうかを推理する表題作『天才までの距離』。
佐々木の幼馴染の家で見つかった日本画家・平福百穂の切り絵についての話『文庫本今昔』。
結婚を決意した相手の男性から贈られた古時計の謎を解く『マリーさんの時計』。
ある文化人の「日本は中国の属国」という発言にイヴォンヌが激昂し、牧谿の水墨画を巡る真贋対決に佐々木が巻き込まれる『どちらが属国』。
神永美有の父親や佐々木と因縁のある人物からの依頼により再び岡倉天心の真筆かを推理する『レンブラント光線』の五作品。
前作のラストで、いつまでも神永に依存してはいけないと、神永と決別をした主人公の佐々木先生がどのような経緯でまた神永と関わるようになるのか読む前から気になっていたのですが、結構なし崩し的に復縁したので佐々木先生の決意はなんだったのか・・・とちょっと思いました。
また二人の推理合戦が読めるので勿論嬉しいですが!
前作同様、今作でも、美術品の真贋を追及していくと結果的に視点をずらされたり、もっと大きな枠組に視点が拡大したりしていて趣向に富んでいました。
衒学的なうんちくが鼻につくこともありますが、登場人物たちの細やかな情感を練りこまれた文章や会話が滋昧に満ちていてしみじみと感じ入りました。
時折登場する佐々木の元教え子・イヴォンヌもインパクト大。
彼女は問題を持ち込んでくるトラブルメーカーなのですが、物語のアクセントというか、話を進行させたりひっかきまわしたり、話の締めにも使えるキャラでもあるのです。
実は話を盛り上げる一番の重要な脇役だと思うので、とんちんかんなことを言ってても憎めません。
また次作でもイヴォンヌの活躍を期待してます。