門井慶喜のレビュー一覧
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とても良かった。徳川家康が豊臣秀吉により関東へと移されそこで新たな都市を作る過程が描かれている。利根川を無理やり曲げることで沼のような土地だった場所を人が住めるようにし、貨幣を作ることで経済のあり方を変え、上水を整備することで多くの人が生活できるようにする。江戸城の築城にも多くの人が関わっていて、最後の章の天守閣が白の漆喰で塗られた理由(作者の考え?)が平和の象徴及びそれまでに亡くなった人への墓標というのも感慨深い。
東京の地理にもっと明るかったらもっと楽しく読めたし実際の土地へ行けたのに、残念。
1から都市を作るってすごいことでもう日本じゃぁ起きないよな。 -
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【地中の星】
中島みゆきさんのヒット曲に『地上の星』というのがありましたが、この著書は『地中の星』です。
日本で初めて地下に鉄道を走らせようとした男たちが数々の難局を乗り越えてみせる壮絶な冒険記です。
主役となる早川徳次、名前を見たときに最初はSHARP創業者かと思いましたが、生年月日、名前の呼び方が違いました。
その早川徳次、大学卒業後、南満州鉄道に就職、その後も地上の鉄道会社でそれなりに力を発揮していた人物ですが、ある時、地下鉄道を作ることを命じられます。
もちろん日本にはそのようなノウハウもスキルもなく、またどれくらいの費用がかかるのかも見当がつかない中でのスタート。まずは資金集 -
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建築家、辰野金吾の大河小説。
正に大河と呼ぶに相応しい、波乱万丈の人生だった。
決して順風満帆ではないし、何より集大成とも言える建築に向かう頃には自分の老いを受け入れて新しいものを拒絶してるんだもんね。
栄枯盛衰、なるほどなるほど。
好きなシーンは色々ありますが、どこか1つを選べと言われたらやはり前述した箇所、辞表を突き付ける松井とのシーン。
時代の移り変わりと共に老いからも逃れられない。。。
『コーヒーにはうるさいぞ』からの『コーヒーはなかなかうまかった』の流れがより一層胸を締め付けます。
もはや、自分は最先端ではないことを社会全体が示してるんですよね。
切ない、切ないよ。
コンドルと -
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アメリカ人が日本に来たとか、実業家が何かを成し遂げたとか、一般化できるような話ではなかった。
この、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏でしか成し得なかったこと、彼にしか駆け抜けられなかった人生というものを存分に感じることができた。
まず、ヴォーリズ氏は、若くして非常に弁が立ち、向上心、野心に溢れた男で、この時点で、成功者としての素質を持っているのだった。
ヴォーリズ氏であれば、どの時代でも、どの国でも、成功することができただろう。
20代半ばで日本の近江八幡に来て、英語教師として教鞭をとったのをはじめとして、キリスト教の布教活動、建築活動、そして、メンソレータムの販売と、壮年期まで休むことな -
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ネタバレもはや新政府が勝利するのは史実であるから、なぜ幕府軍が負けたのかは今まであまり考えたことがなかった。この本では、なぜ榎本率いる幕府軍が敗れたのか、門井先生なりの見解が示されていて興味深い。
自分の誤読かもしれないが、結論としては、新政府軍の方が近代化に成功していたからということらしい。
ではなぜ、欧州帰りで当時おそらく最も開明的であった榎本をトップに据える函館共和国で近代化が遅れたのか。
榎本が求める近代国家のロールモデルはオランダだった。そして日本に「オランダ」を作ろうとしていた。スペインから独立したオランダのように、分離したまま実効支配を積み重ねた後の独立を考えていた。
榎本は多くの誤り