門井慶喜のレビュー一覧
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ネタバレ終戦から1年後の神田神保町。古書の町は復興の息吹を感じつつあった。その中で古書店主、芳松は本に押しつぶされて死ぬ。芳松を弟分として可愛がっていた琴岡庄司は芳松の死に疑問を感じる。そんな中、芳松の妻、タカが失踪。庄司は些細なきっかけで知り合ったGHQの少佐から、ある依頼を受けることになる。
面白かった。古書業界のお話、ということで「ビブリア古書堂の事件手帖」を思い出した。途中で読むのをやめちゃったんだよなあ。
庄司の実直な人柄が好ましい。子孫がいるから、命に別状はなく、大丈夫だったのは分かっているのだが、暮らし向きは平気か?と心配になってしまう。
徳富蘇峰はもちろん青森 五所川原で津島=太宰治 -
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「日米に橋をかけた人ではなく、屋根をかけた人」
20世紀の初め、近江の地に降り立った一人のアメリカ人青年ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。英語教師として来日すると同時に、キリスト教の伝道師としての使命にも燃えていた。
しかし天皇中心の国家として富国強兵に邁進する当時の日本にとっては、生徒を集めてはキリスト教の伝道をするヴォーリズの教育方法は、問題視される。
ほどなくして彼は教師の職を失う。
アメリカに帰ってやり直すか、日本で新しい職を見つけるかの二者択一を迫られた彼は後者を選ぶ。
そこで彼は、趣味で続けていた洋館の建築や改装を仕事にしてしまおうと考え、教会や個人住宅の建設の仕事 -
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ネタバレ日本史を勉強していたらよくこの疑問にぶつかる。日本で天下を取った秀吉が大陸侵攻すること(唐入り)は、さらなる野望に満ちていたのかそれとも他に理由があったのか。そしてその理由も明確ではないのになぜだと疑問に思いながらもノーと言わずついていく大名たちや商人たちは本当の思いはどうだったのか。
読んでいて秀吉唐入りの理由を知りたいという好奇心が止まらなくなる。
門井慶喜先生の著書『家康、江戸を建てる』も拝読したが、読者も冒険しているようなテンポのいい文章から湧き出すワクワク感がよかった。
『なぜ秀吉は』は世の中の流れが大きく変わる局面で登場人物たちがソワソワする感じが伝わってきた。どっしり構えてるイ -
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温故知新
まさしく古きを訪ね新しきを知る。私は高校では日本史というものを履修しなかったのであまり詳しくはない。漫然と東京で暮らし、東京で働いていた。著書に出てくる登場人物のほとんどを知らなかったが、この本を通じて詳しく知りたくなった。というのも、今の東京を知っていれば、家康の偉業がどれほどのものなのか、いや、家康の家臣たちやその人足たちの努力や知恵がどれほどのものなのかまざまざと植え付けられた。特に利根川を曲げ、犬吠埼まで流すなどという発想はもはや地図を変えている。この壮大なシムシティを現実に行い、これほど先の未来を描いていたのは世界史を見てもそういないのではなかろうか。東京の様々な由来を知ることができ
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近江八幡に所縁が深いウィリアム・メレル・ヴォーリズ…作中では、そう呼ばれる機会が多かったという「メレル」となっていることが多いが…彼の人生を巡る物語である。非常に興味深く、また「考える材料」を多く供してくれる作品で、少し夢中になった。
建築に関連する事績は「ヴォーリズ建築」と呼ばれて知られているのだが、そういう活動の経過、更に家庭薬の<メンソレータム>の販売、後に製造も手掛ける経過というのが物語の“緯糸”になって行く。
仕事の展開が“緯糸”だとすれば、“経糸”は「メレルの生涯と思索」ということになるであろう。(確か“朝ドラ”の主人公のモデルになっていたことが在ったと思うが)広岡浅子との出会いが -
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ネタバレ美術品の真贋を眼力ではなく舌で見わけるという天才美術探偵・神永美有が、ボッティチェッリやフェルメールなどの泰西名画から正倉院宝物まで、様々な美術品にまつわる謎を快刀乱麻を断つかのごとく解き明かしていく。
美術探偵・神永が、ちょっとまぬけで人の好い美大講師・佐々木をお供に、美術品の真贋を味覚で判定するという美術ミステリーの連作短編集。
この作品では、美術品の価値の高低は真贋や芸術的な優劣という基準だけではなく、歴史的な研究対象としての価値であったり個人的な思い入れのある特別な品であったりという様々なアプローチで、美術品の魅力に迫っていきます。
単に美術品の鑑定での謎を解いていくだけに収まら -
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“釜さん”こと榎本武揚は、同時代の誰にも先駆けて、所謂“近代”というモノ、技術や社会の仕組みや、そういうモノが発達した歴史を知識として、体感として身に着けたような人物だった。そういう人物であったが故に抱いた野心と行動…それが本作の軸になっている。
他方で、“釜さん”こと榎本武揚が知悉する「近代」に対する「近世」或いは「さむらい」の価値観や、“天子様”という朝廷の台頭によって、一連の戊辰戦争に通じる流れの中での「変化」というようなモノを考察する内容が含まれ、それがなかなかに深い…
力強い感じで、ドンドン展開する物語に引き込まれる…愉しい作品!!