門井慶喜のレビュー一覧

  • 定価のない本

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    ネタバレ

    終戦から1年後の神田神保町。古書の町は復興の息吹を感じつつあった。その中で古書店主、芳松は本に押しつぶされて死ぬ。芳松を弟分として可愛がっていた琴岡庄司は芳松の死に疑問を感じる。そんな中、芳松の妻、タカが失踪。庄司は些細なきっかけで知り合ったGHQの少佐から、ある依頼を受けることになる。

    面白かった。古書業界のお話、ということで「ビブリア古書堂の事件手帖」を思い出した。途中で読むのをやめちゃったんだよなあ。
    庄司の実直な人柄が好ましい。子孫がいるから、命に別状はなく、大丈夫だったのは分かっているのだが、暮らし向きは平気か?と心配になってしまう。
    徳富蘇峰はもちろん青森 五所川原で津島=太宰治

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    2022年12月22日
  • マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代

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    肖像画、産業革命、作家の生きた時代と、母国の歴史の重さ。そういう様々な視点から、ミステリの構造を解いていく本。書籍というのは娯楽ではあるけれど、同時に社会そのものや政治でもあるのだな、ということが良く分かります。

    難しい歴史背景はさておき、文中に例として引かれた作品がどれも面白そうで、何篇か通販で購入しました。一般の書店のベストセラーの棚には絶対に並ばない、ここで紹介されなかったら出会えなかったであろう作品たち。これらを読むのも楽しみです。

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    2022年11月17日
  • 池波正太郎と七人の作家 蘇える鬼平犯科帳

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    池波正太郎が生んだ誰もが知るヒーロー鬼平犯科帳。鬼平こと長谷川平蔵を現代の人気作家が描く作品集。
    本編を全巻貪り読んだのは、たしかまだ20代。
    池波正太郎の語りの上手さに感動し、平蔵の人心掌握術に憧れを抱いた記憶がある。
    そしてこの本にて、鮮やかにヒーローが復活した。
    正面から鬼平に取り組んだもの、若き平蔵を描いたもの、ライバルの旗本の視線から描かれたものなど多彩な平蔵に出会えた喜び。正にアンソロジーの醍醐味。堪能しました。

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    2022年01月24日
  • 東京の謎(ミステリー) この街をつくった先駆者たち

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    街の成り立ちと関係する人物を面白、おかしく書いた本。岩崎弥太郎、後藤新平、五島慶太など錚々たる面々が並ぶ。西の三兄弟も必読。

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    2021年11月16日
  • 東京の謎(ミステリー) この街をつくった先駆者たち

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    この東京(まち)のかたち。東京を別の角度から切り取ってみると見えてくる以外な姿。博識な作家な鋭い視点。

    なぜ〇〇なのか、という記載が続く。新書に良くある構成だがひと味もふた味も違う。

    目黒という土地の中途半端な位置付けをエビスビールと目黒のさんまから解題したり、ビカチュウと町田の関係だったり。

    目からウロコな内容の全21回を楽しめました。

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    2021年11月14日
  • 屋根をかける人

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    「日米に橋をかけた人ではなく、屋根をかけた人」  

     20世紀の初め、近江の地に降り立った一人のアメリカ人青年ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。英語教師として来日すると同時に、キリスト教の伝道師としての使命にも燃えていた。

     しかし天皇中心の国家として富国強兵に邁進する当時の日本にとっては、生徒を集めてはキリスト教の伝道をするヴォーリズの教育方法は、問題視される。
     ほどなくして彼は教師の職を失う。
     アメリカに帰ってやり直すか、日本で新しい職を見つけるかの二者択一を迫られた彼は後者を選ぶ。
     そこで彼は、趣味で続けていた洋館の建築や改装を仕事にしてしまおうと考え、教会や個人住宅の建設の仕事

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    2021年08月13日
  • 家康、江戸を建てる

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    2021年7月16日
    鳴かぬなら鳴くまで待とうほととぎす
    この言葉が実感できる5篇だった。
    江戸を領地とするマイナスをどうプラスに転じるのか。不可能と思うことを根気強くやり遂げる粘着気質。
    そして人を見る目。
    壮大な都市つくりをやってのける手腕にわくわくした。
    身分の低い者達が話す言葉もぞんざいだが、仕事は着実で、矜持を持っているところもどっしりした太い基盤に違いない。
    たぬきオヤジのイメージだった家康が、こんなにも有能だったと目からウロコで楽しい読書になった。

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    2021年07月16日
  • 家康、江戸を建てる

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    江戸の町ができる様子が目に浮かんできました。
    まちづくりを5話に分け、エピソードとともに語られています。
    その一つに、江戸を水浸しにしている原因は利根川だと結論づけたら、その流れを変える工事に着手するなど、応急処置ではなく恒久的な対応をして現代に至ります。
    真因を突き止めることの大事さを学びました。

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    2021年05月30日
  • なぜ秀吉は

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    ネタバレ

    日本史を勉強していたらよくこの疑問にぶつかる。日本で天下を取った秀吉が大陸侵攻すること(唐入り)は、さらなる野望に満ちていたのかそれとも他に理由があったのか。そしてその理由も明確ではないのになぜだと疑問に思いながらもノーと言わずついていく大名たちや商人たちは本当の思いはどうだったのか。
    読んでいて秀吉唐入りの理由を知りたいという好奇心が止まらなくなる。

    門井慶喜先生の著書『家康、江戸を建てる』も拝読したが、読者も冒険しているようなテンポのいい文章から湧き出すワクワク感がよかった。
    『なぜ秀吉は』は世の中の流れが大きく変わる局面で登場人物たちがソワソワする感じが伝わってきた。どっしり構えてるイ

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    2021年05月29日
  • 池波正太郎と七人の作家 蘇える鬼平犯科帳

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    永遠のヒーロー「鬼平」再来!「鬼平」誕生から50年を記念し、七人の人気作家が「鬼平」に新たな命を吹き込んだ作品集。

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    2020年08月28日
  • 家康、江戸を建てる

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    各章で違う物語。それぞれの章で出てくる登場人物の掛け合いが面白い。東京の有名な地名の由来も紹介されていて、「あ、これがあそこか」という歴史の面白さを体験できるよさがある。良書。

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    2019年12月22日
  • 家康、江戸を建てる

    購入済み

    温故知新

    まさしく古きを訪ね新しきを知る。私は高校では日本史というものを履修しなかったのであまり詳しくはない。漫然と東京で暮らし、東京で働いていた。著書に出てくる登場人物のほとんどを知らなかったが、この本を通じて詳しく知りたくなった。というのも、今の東京を知っていれば、家康の偉業がどれほどのものなのか、いや、家康の家臣たちやその人足たちの努力や知恵がどれほどのものなのかまざまざと植え付けられた。特に利根川を曲げ、犬吠埼まで流すなどという発想はもはや地図を変えている。この壮大なシムシティを現実に行い、これほど先の未来を描いていたのは世界史を見てもそういないのではなかろうか。東京の様々な由来を知ることができ

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    2019年11月28日
  • 家康、江戸を建てる

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    タイトルは「家康、江戸を建てる」とありますが、歴史の中に埋もれた職人さんたちのお話です。利根川の東遷事業や貨幣鋳造のお話など、江戸時代初期の街づくりがどのように行われていったのかがわかります。
    利根川東遷事業が行われていなければ2019年の台風被害でさらに甚大な被害が出ていたかも知れないと思うと、先人たちが苦労していたことに感謝しかありません。

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    2019年10月17日
  • 屋根をかける人

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    近江八幡に所縁が深いウィリアム・メレル・ヴォーリズ…作中では、そう呼ばれる機会が多かったという「メレル」となっていることが多いが…彼の人生を巡る物語である。非常に興味深く、また「考える材料」を多く供してくれる作品で、少し夢中になった。
    建築に関連する事績は「ヴォーリズ建築」と呼ばれて知られているのだが、そういう活動の経過、更に家庭薬の<メンソレータム>の販売、後に製造も手掛ける経過というのが物語の“緯糸”になって行く。
    仕事の展開が“緯糸”だとすれば、“経糸”は「メレルの生涯と思索」ということになるであろう。(確か“朝ドラ”の主人公のモデルになっていたことが在ったと思うが)広岡浅子との出会いが

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    2019年05月31日
  • 家康、江戸を建てる

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    「家康」自身の話ではなく
    「家康」の命で江戸の町を作った男たちの連作
    利根川や荒川の付替えをした人
    小判の鋳造をした人
    江戸城のための石を切った人
    神田上水を引いた人
    江戸城の天守を作った人

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    2018年04月07日
  • おさがしの本は

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    多分、東京タワーは富士山なのだろう。単なる造形場の相似を遥かに超えた、もっと本質的な意味において。そう、現代の我々が東京タワーに捧げる憧憬は、昔の人々が富士山で捧げた信仰とあまり変わりないのだ 貸し出しの実績を見ても、購入図書の一覧を見ても、事実上、無料本屋ではないか 文字を読む能力を最も大規模に、かつ最も組織的に養い、鍛え、保ち、深めるための装置は一体何か。これはもう書物以外にはない

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    2018年02月21日
  • 天才たちの値段 美術探偵・神永美有

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    ネタバレ

    美術品の真贋を眼力ではなく舌で見わけるという天才美術探偵・神永美有が、ボッティチェッリやフェルメールなどの泰西名画から正倉院宝物まで、様々な美術品にまつわる謎を快刀乱麻を断つかのごとく解き明かしていく。

    美術探偵・神永が、ちょっとまぬけで人の好い美大講師・佐々木をお供に、美術品の真贋を味覚で判定するという美術ミステリーの連作短編集。

    この作品では、美術品の価値の高低は真贋や芸術的な優劣という基準だけではなく、歴史的な研究対象としての価値であったり個人的な思い入れのある特別な品であったりという様々なアプローチで、美術品の魅力に迫っていきます。

    単に美術品の鑑定での謎を解いていくだけに収まら

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    2017年03月07日
  • かまさん――榎本武揚と箱館共和国

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    “釜さん”こと榎本武揚は、同時代の誰にも先駆けて、所謂“近代”というモノ、技術や社会の仕組みや、そういうモノが発達した歴史を知識として、体感として身に着けたような人物だった。そういう人物であったが故に抱いた野心と行動…それが本作の軸になっている。
    他方で、“釜さん”こと榎本武揚が知悉する「近代」に対する「近世」或いは「さむらい」の価値観や、“天子様”という朝廷の台頭によって、一連の戊辰戦争に通じる流れの中での「変化」というようなモノを考察する内容が含まれ、それがなかなかに深い…
    力強い感じで、ドンドン展開する物語に引き込まれる…愉しい作品!!

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    2017年01月22日
  • シュンスケ!

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    自身が生きる時代の、そして自身が創る時代の、その行き着く先を飽くまでも見詰めようとした男…本作の俊輔はそういう人物かもしれない。
    立派な時代モノながら、タイトルが漂わせる雰囲気のような、「現代の若者の奮戦」に何処か通じる…
    非常に愉しい一冊で、お薦めだ!!

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    2016年09月05日
  • 東京帝大叡古教授

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    ネタバレ

    結末の種明かしを読んでうなりました。これはすごい。夏目漱石や日露戦争などの歴史上の人物や史実と、叡古先生という架空の人物をうまく織りあわせて、すばらしいミステリーになっている。主人公・藤太の一代記のようにもなっていて、最後、泣いた。思い返してもゾクッとする種明かしだった!
    ウンベルト・エーコが亡くなり、夏目漱石没後100年、そして戦争を起こそうとしているようにも見える現政権。なんというタイミングで文庫化されたんでしょう。舞台は明治~昭和初期だけど、そのまま現代への警告のようにも読める。

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    2016年04月25日