門井慶喜のレビュー一覧
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ネタバレ映画で原作が気になって読んでみた。
断然原作のほうが好み。
まず父親の内面描写が丁寧で、政次郎をぐっと好きになった。
おそらく私がオッサンになっている頃合いだからというのもあるだろうけれど。
で、筆は大抵政次郎に寄っているが、三人称で、賢治にも寄る。
そこで父が知りえない生活や、内面が多少描かれるが、ここもまたぐっときて。
正確な意味で、ファザーコンプレックスと、インフェリオリティコンプレックス。
法華経がらみも、おそらく映画よりは事実に近いんだろう。
親子を描くと同時に、政次郎の父喜助と、次女シゲや次男清六の子ら(政次郎の孫)を描く。
それを、食卓の座席配置に厳密であることから、新時代の卓袱 -
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ネタバレ直木賞受賞作品。
宮沢賢治の父に焦点をあてた作品。面白くて一気読み。
この父がとても過保護。明治の父なので厳しく接しようとはしているが、子にも「隙だらけ」と思われるくらい子に甘い。息子が入院するたびに周囲の反対を押して泊まり込みで看病し、自分も罹患してしまう。
宮沢賢治については「雨ニモマケズ」の印象が強くて貧しい農民出身なのかと思い込んでいたけれど、実は実家はかなりのお金持ち。質屋で儲かったお金で何不自由なく生活できたことに対する負い目はあるのだが、その割には、その実家に金の無心をしたり、父に改宗をせまったり、妹に禁断に近い愛情をもってしまったり、「ん?思っていた人と違うな・・」とオロオ -
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★4.6
聖人・宮沢賢治。農民のために身を捧げた「求道者」、あるいは「宗教的な詩人」。
しかし”父の目”に映る彼は、手のかかる不器用な一人息子だった。理解と困惑のはざまで、父はその背を見つめ続けた。
『風の又三郎』、『セロ弾きのゴーシュ』、『よだかの星』、『グスコーブドリの伝記』ーー。
ファンタジックで寓意に富んだ作品群で、”あの”教科書で出会う詩人の代表格だ。
宮沢賢治は、まさに“死後に再評価された”人物である。生前はほとんど無名に近く、その後の時代が“賢治像”を創り上げていった。
そもそも、本書を読む前は彼にどのようなイメージを抱いていただろうか。清貧?献身?理想主義?
「銀河鉄道の -
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タイトル通り宮沢賢治の父。政次郎の視点で描かれてます。
解説にもありますが、宮沢賢治の障壁として悪役として扱われていた。よっぽど資料の捜索に苦悩したと思います。にも関わらず実際に見たんかなっていうぐらい描写がしっかりしててびっくり。父親ならシンパシーを感じちゃう政次郎の迷いや感情の動き面白い。私は割かし甘やかされて育てられたので、もしや私の父もこんな気持ちだったんじゃ?と思わされます。
宮沢賢治についての歴史も沢山出てきて、宮沢賢治の印象も変わります。優しい長男のイメージでしたが、純粋すぎる長男のイメージ
内容も時代が違うから想像するのが難しいですが、心の中の呟きが改行されるなどの工夫のお陰で -
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ネタバレ胸を打つ渾身の父親像を政次郎に見ました。
どうしようもなく甘いけど、それだけじゃなく人物として立派で、賢治と似ている部分、似ていない部分の対比が秀逸。
幼い頃から息を引き取るまで何度も賢治の看護をしているシーンは穏やかながらも悲しさが付きまといます。涙の別れではなく、遺言を聞き取ろうと最後まで父親であり続けた様に背筋が伸びるような思いになりました。
賢治が父のようになりたくてもなれなかった葛藤も胸に刺さりました。何とか自分に出来ることで必死に生きようとしている所が、痛いほど共感出来てしまいます。
ひとつの親子の形として、完璧じゃないかと思えるお話でした! -
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ネタバレGPSの進歩により、灯台がその役割を終えていっているという事実を初めて知った。
「海と灯台プロジェクト」協力のもと、灯台が存在することの意義を、その土地のあらましや歴史、灯台を守ってきた人々にスポットライトを当てることで言語化した、6名の作家さんによる紀行文。
作品を読みながら旅行気分に浸れるので愉しい。作家のみなさんが灯台の中の螺旋階段を登り、灯台室に入られる場面のわくわく感が伝わってきた。フルネルライトを初めて検索したが、見事なライトであった。
灯台の父と呼ばれるイギリス人のブラントンさんという方が、菜種油で火を灯す木造の灯明台が主な海の道標だった日本に、西洋式の灯台をもたらした。また