門井慶喜のレビュー一覧
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幕末から大正。札幌が、函館に代わって北海道の中心都市になる。
その時代を生きた5人の人生が描かれる。
著者がふくらませた想像によって肉付けされ、過去の物語が生き生きと動き出す。
分厚い本だったけど読みやすかった。
また札幌を訪れたくなった。
島 義勇:明治政府官吏。札幌市の建設に着手し、「北海道開拓の父」と呼ばれる。
内村 鑑三:札幌農学校第ニ期生。文学者・伝道者・聖書学者。
バチラー八重子:有珠生まれのアイヌの歌人、キリスト教伝道者。
有島 武郎:小説家。農学者を志して北海道の札幌農学校に進学。
岡崎文吉:治水技術者。北海道庁の技師として、石狩川の治水計画の基礎を築いた。
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ネタバレ明治版「ハロー!ちびっこモンスター」。
…いや、全然違うのですが、お父さんの悪戦苦闘ぶりがなんだか微笑ましくて連想してしまいました。共働きが当たり前になって家でも休む間もない令和の父親も大変ですが、明治・大正となるとなによりまず家長としての威厳を保たねばならず、子供かわいさとの間で密かに揺れ動く父の姿は現代人から見てほぼコメディーです。
そんな父の愛を一身に受け、宮沢賢治は人格そなわった大先生に育ち…などという事はまるで無く、嗚呼、現代の子育てがそうであるように親の心子知らず極まれりなのです。河原でボヤは起こすわ、謎の商売を始めようとたくらむわ、そのくせ金はいつも父頼み。宮沢賢治、こんなにダメな人だったのか。
父と子が本当に理解しあうのが賢治の死の淵という顛末には哀しみしかありませんが、なんとも人間味に溢れるこの父子像、他人事と思えぬ部分もあって時代を超えて共感した部分もありました。
ちなみに私、この2冊前に恩田陸「蜜蜂と遠雷」を読んでいますが、順番は逆の方が良かったかも知れません。 -
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■内容
時は大正から昭和初期。主人公は作家 菊池寛。作家と名乗りはしても、まともな作品はなく、燻っていた時期。やがて「真珠夫人」が大ヒットし、一躍流行作家となる。
筆一本で世間を沸かせた寛は、ただ名声を得るだけでは満足せず、仲間と共に文学を広げたいという思いから私財を投じ、「文藝春秋」を創刊。とは言え、その道は決して平坦ではなく、社員の給与をはじめ執筆者の原稿料も全て自分の財布だから、帳簿を付ける発想もなく、やがて資金繰りに追われる始末。
それだけではない。時に信じた仲間から裏切られ、事業は暗礁に乗り上げる。それでも寛は、持ち前の行動力と人を惹きつける情の深さで、次々に打開策を見出していく。
この小説は菊池寛の成長物語を縦軸に、文学史に名を刻む若き群像たちの交流を横軸に構成されており、例えば、芥川龍之介―繊細で孤独な魂を抱えながらも、菊池寛の友情に支えられた天才作家。直木三十五―放埒で借金まみれ、見栄っ張りで破天荒。でも、寛にとって放っておけない畏友。濃淡はあれど友情の契りと確執、死別を経て、菊池寛は「文豪」から「社長」へと変貌していく。そして、後年、寛の敬愛と友情は、文学界を代表するふたつの賞〈芥川賞と直木賞〉として結実する…。
■感想
本書を一言で表現するなら…「文学の夢と、現実の苦闘。その狭間を駆け抜けた菊池寛の半生」となる。
「講釈師見てきたような嘘を言い」って、形容したくなるほど、映像を眺めているような場面の切り替え巧みと描写力を装備したストーリーテリングで、ぐいぐいと読者を引っ張っていく。
本書は単なる文豪列伝でもないし、経営指南術を匂わすわけでもない。菊池寛というひとりの作家が、“仲間のための文学の場”を広げようと立ち上げた小さな試みが、やがて文藝春秋という巨大出版社へと成長を遂げていく。
僕が思うに…寛の出発点は「好き」だったからが起点となり、同人誌を作るような感覚で仲間を集めた。だが現実は容赦なかった。資金繰りの苦しさ、信頼していた人の裏切り、仲間との死別等の試練・壁が立ちはだかり、“好き”を嫌いに変えかねない状況に度々陥る。
それでも寛は逃げずに立ち向かい、次の一手を打ち続けた。その姿は作家出身とは思えず、粘り腰を発揮し、そこには紛れもなく経営者 菊池寛が浮かび上がる。
芥川龍之介と直木三十五。ふたりへの友情と確執の果てに、彼らの名を冠した芥川賞・直木賞が誕生するくだりは激しく胸を打った。
■最後に
「好き」だけでは続かない。でも「好き」を出発点に現実と格闘することで、人は新しい地平に立てると思う。
菊池寛は「起業家マインドで事業を起こした」のではなく、文学仲間の場づくり=同人誌的発想で創刊。結果的に「文藝春秋」という巨大メディアが誕生した。
この“無自覚な起業”感が、現代にも通じる面白さがある。「好きな本を読んで暮らしたい」と切望した目黒考二氏が1976年に創刊した『本の雑誌』との類似性を感じる。いずれも「好きでやりはじめた小さな試み」が、結果として出版文化を支える大きな存在に育っていった。
この本を読んで、改めて「起業」とは机上のMBA理論ではなく、好きなことを武器に現実と格闘し続ける営みでもあるて痛感させられた。
青春小説、教養小説、ビジネス小説という多面性のある小説に心を揺さぶられ、文学史と企業史の交差点に立たされたような稀有な読書体験が堪能できた好著。 -
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『天下の値段』(門井慶喜)
働く人が出て来る話しは好きです。主人公は江戸の享保時代(8代将軍吉宗の頃)の大阪で米の仲買人として活躍しました。現在では、お米については、政府備蓄・農協調整・長期契約が中心で、デリバティブ市場は存在しません。この本では江戸時代には、米市場に先物取引が制度としてあった事が書かれています。門井慶喜さんの本は、経済情報だけでなく人がきちんと描かれていて、だから「今を生きる人にも響く」?と言われる所以なのでしょう。主人公の垓太や米将軍と呼ばれた吉宗、大岡越前が出て来て享保の大飢饉を救った話しは胸がすぐエピソードです。全く歴史や経済の知識がない私でも面白く最後まで読めたのは、登場人物の感情や心の動きを上手に描いて、しかも難しい経済を絡めてわかり安く書いてあるからでしょう。私は若い頃、大阪の商家で修行させて頂いた事も思い出しました。相当に面白い本です -
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菊池寛と聞いて文豪をイメージする人は少ないのではないだろうか。
何を隠そう私もその一人だ。
名前は聞いたことあるけれど作品名やら経歴をなにも知らなかった。
師の夏目漱石、天才芥川龍之介に比べると知名度が低く陰が薄いイメージを持っていたけれど、本書を読んで180度ひっくり返った。
作家としても人間としても菊池寛は多才で凄い魅力的な人物だ。
打って良し、投げて良しの選手兼監督でオールラウンドプレーヤーの名選手。
作家以外にも映画や雑誌も手掛け二足のわらじどころではない。
しかもあの有名な文藝春秋の創業者であり、芥川賞、直木賞の創設者だというから驚きだ。
そんな菊池寛のドラマのような半生が描かれた1冊だから面白くない訳がない。
本書の面白さのひとつは菊池寛を筆頭にたくさんの有名な作家が登場するのと、そのエピソードがユーモラスに描かれているところだ。
特に無口な貧乏神直木三十五のエピソードは必見だ。
菊池寛の素晴らしいところは、自身も苦労したのもあり、若手作家に資金援助をしたり、文藝春秋でチャンスを与えたりとパトロン的な役割を果たしていたところだ。
本書にも当時の多くの若手作家が登場しており、菊池寛がいなければ川端康成や直木三十五、石井桃子らの成功はなかったかもしれない。
それらを考えると文壇への貢献度は大きい。
特に印象的だったのが「ペン部隊」だ。
軍からの打診で菊池寛が文士従軍の音頭をとり、多くの文士が中国へ渡った。
先日読んだ田辺聖子の本で林芙美子らの名前が出ており、田辺聖子が憧れ軍国少女となるきっかけになった作家達だ。
戦後、林芙美子らは戦争協力者として批判されてしまうのですが、その辺りの経緯を本書で知り学ぶことができた。
本書は直木賞を受賞した「銀河鉄道の父」に匹敵する傑作だ。
文豪や近代文学史に興味がある人にはぴったりだと思う。
菊池寛の「恩讐の彼方に」や「無名作家の日記」を読んでみたくなった。
そして菊池寛という文豪のことをもっと知りたくなった。
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明治時代にキリスト教の伝道師として来日し、建築家、実業家として活躍する
ことになるアメリカ人のメレルが日本に留まり帰化することを選んだ理由とは!?
フィクションなのか、ノンフィクションなのか、
解説に書かれている、とある実録に名が記されていることでにより、
それが、小説の内容のようなことであるなら、現代日本にとって重大で重要な
ことと言えるでしょう。そして、ウィリアム・メレル・ヴォーリズの人生は、
良くも悪くも、心に響き、読者に感動を与えること間違いなし。
2025年8月に気になっていたこの小説を読んだことは、戦後80年という
ことは意識していなかったけれども、考え深いことではあります。 -
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本作は、『真珠夫人』などのベストセラーで知られる一方、『文藝春秋』の創業者として活躍した一面も持つ作家、菊池寛を主人公に、夏目漱石から向田邦子まで様々な有名な小説家がオールスター的に登場する大変賑やかで、楽しい一冊です。
直木賞、芥川賞の生みの親的な存在でもあり、本作でも創設の過程や芥川や直木とのエピソードがユーモラスに語られているので、著者はすでに『銀河鉄道の父』で直木賞を取っているので取ることはできないと知りながら、これが直木賞を取った世界線を思わず想像していました。
物語は挫折からはじまり、様々な失敗も描かれているので(と言っても、とてつもなくすごいひとなわけですが)、馴染みやすいキャラクターなので、近現代文学にはあまり興味がない、歴史小説はちょっと……、というひとも入っていきやすい内容になっていると思います。個人的に好きだったのは、第三章にあたる「会社のカネ」で、絶体絶命のトラブルに対する菊池寛の行動に、なんだかとても愛おしさを感じました。 -
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肉や骨はほろびるが、ことばは滅亡しない
映画観たかったぁ。。。
大好きな 大好きな宮沢賢治
その生涯を支えた父親の物語!!
そのせいか若き頃の賢治は、この本ではどうにもワガママ息子に描かれていた。
家業を継ぐ気はなく、でも将来を決めかねて、挙句の果てには仕事にもつかず学問を優先するがあまり、親にお金の工面を願い出たり。。。etc。。。
父親からみたら、可愛さ余って。。。だったろう!!
でも、この頃の賢治は、きちんと未来を見据えていたと私は思っていて、岩手の土壌が悪く野菜が育たない。。。でも肥料となりうるかもしれない鉱物は、岩手の地にはたくさんあって。。。
そのことを突き詰めるには、父の豊かな財力が必要で、父の愛情を逆手にとって賢治は父の望まない息子を演じていたのではないか。。。と、思いたい。。。
なぜそう思えるかといえば、賢治が崇教した法華経は、広く宇宙との関わりを持つこと。
土も石も宇宙というなかで、天体の形成、地球で生息している生物の基盤となっている。。。という教えが、賢治にとっては全てが『農耕』に繋がっていたのだと思う。
そして晩年の賢治の言動。
キリスト教の『アガペーの思想』はまさに、『雨ニモマケズ』の詩に現れていて、生徒や農耕で困っている人を見て見ぬふりができなかったのも、この思想からだったと思う。
宮沢賢治がいたから、この地で美味しい野菜が育ち、豊かな地になったとも言える。
野菜を育ててると、土のありがたさを思う。
ただひとつ。。。
生まれた時代がもう少し遅かったら。。。
賢治の思想は
賢治の言葉は
心に響くその言葉は
生まれたであろうか。。。
のこって いただろうか。。。
きっとこの父親で、家族だったからこその
宮沢賢治なのではないのかな。。。
と、この本を読んで深く思った。。。 -
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ネタバレ映画で原作が気になって読んでみた。
断然原作のほうが好み。
まず父親の内面描写が丁寧で、政次郎をぐっと好きになった。
おそらく私がオッサンになっている頃合いだからというのもあるだろうけれど。
で、筆は大抵政次郎に寄っているが、三人称で、賢治にも寄る。
そこで父が知りえない生活や、内面が多少描かれるが、ここもまたぐっときて。
正確な意味で、ファザーコンプレックスと、インフェリオリティコンプレックス。
法華経がらみも、おそらく映画よりは事実に近いんだろう。
親子を描くと同時に、政次郎の父喜助と、次女シゲや次男清六の子ら(政次郎の孫)を描く。
それを、食卓の座席配置に厳密であることから、新時代の卓袱台を囲んで配置にこだわらない風潮で表現しており、すごく射程が広い。(太宰治や、「サザエさん」など連想。)
20代で亡くなった賢治や妹トシが、家父長制の時代や認知フレームワークの中に、生まれ落ち、生きて、苦悩していたのだということを、前後を示すことで強烈に照射している。
やはりトシまわりでは涙腺がゆるんで。
映画の感動路線よりむしろ小説のほうが、想像することで感情が動いた。
よかったポッドキャスト:「吾輩は文豪ラヂオ」の宮沢賢治シリーズ。 -
Posted by ブクログ
タイトル通り宮沢賢治の父。政次郎の視点で描かれてます。
解説にもありますが、宮沢賢治の障壁として悪役として扱われていた。よっぽど資料の捜索に苦悩したと思います。にも関わらず実際に見たんかなっていうぐらい描写がしっかりしててびっくり。父親ならシンパシーを感じちゃう政次郎の迷いや感情の動き面白い。私は割かし甘やかされて育てられたので、もしや私の父もこんな気持ちだったんじゃ?と思わされます。
宮沢賢治についての歴史も沢山出てきて、宮沢賢治の印象も変わります。優しい長男のイメージでしたが、純粋すぎる長男のイメージ
内容も時代が違うから想像するのが難しいですが、心の中の呟きが改行されるなどの工夫のお陰でとっても読みやすいです。