門井慶喜のレビュー一覧
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GHQに勝ったのは俺たちじゃない。文字を愛し文字を尊ぶ日本人、日本の歴史そのものなんだ───。
古典は『のこる』ものじゃない、誰かが『のこす』ものなんだ───。
歴史を奪う。文化を奪う。敗戦国となった日本にGHQが無慈悲に吐き捨てる。戦いに負けた側が、全ての罪を負いその贖罪を課されるのは長い歴史の中で、戦の常である。
それでもやはり、歴史は宝だ。文化も宝だ。そしてその記録は、どんな形であっても維持し続けなければいけない。奢りでも、陶酔でもそんなことではなく、各々が母国のルーツを知る手段は残っていなくてはいけない。
今も尚、古典に触れられる。それは先人達の血と涙の滲む努力と、情熱と、不屈 -
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作家さん達が全国18か所の灯台を巡り、紹介する紀行文。島国である日本人は古くから海と共生してきたが、現在のような西洋式灯台が建設されたのは明治維新以降になってからだという。風の吹きすさぶ岬の突端でポツンと立ちながら必死に灯を届ける様子は、孤高であり浪漫を掻きたてられる。
近代日本の文化遺産として、灯台が見直されつつあり、各地域では新たな観光資源となっている。各地に旅行に行く際に、灯台へふらりと寄ってみるのも楽しそうだ。私の地元の灯台も紹介されていたので、まずはそこから訪問したい。
また、どの作家さんも『喜びも悲しみも幾年月』という映画について言及されていた。近代日本を支えた誇りある灯台守という -
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ネタバレちょいと読みづらい部分があったなぁ~越後高田郊外,母一人と暮らす上野房五郎は5歳で糸魚川で典医となっている叔父に無心の使いに出され,聡明さ故に相沢家の嗣子となった。漢方医の学びに飽き高田の儒者・倉石の塾にも飽き,江戸へ出る。儒学の戸沢,医者の上坂,旗本の添田と渡り歩き,叔父の死を知って相沢家の相続争いに勝って三百両で従兄弟に譲って江戸へ戻り,筆耕で糊口をしのいだ。ペリー来航に浦賀奉行の中間となって久里浜へ出掛け,長崎へは糸魚川から山陰を廻る。四国へ渡って和歌山から東海道で江戸へ戻る。旗本・設楽弾正・長尾全庵の知恵袋,次期船手頭と噂される江原に長崎の竹内を紹介される。江戸湾に来た観光に乗って船の
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門井慶喜さんの「屋根をかける人」で、建築家のヴォーリズについて知ったところから繋がって、卒業研究を書き上げたら絶対に読もうとワクワクしていた一冊。明治以降のレトロ建徳を二人の博識な作家さんがタッグを組んで巡り、互いのおすすめ建築を見学し、知識を披露しながら楽しい道行き。
この内容で面白くないわけがない。レトロ建築が気になりながら、特に建築に詳しくないし……でももう少し詳しく知りたい。なんなら見学だってしてみたい、という向きにはピッタリの一冊。私も辰野金吾やヴォーリズ、コルビジェくらいはふわっと知っているけど、もう一歩深く知ってるとは言えない、門前の小僧になりそびれている小娘であって。それでも -
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ネタバレ誰もが見たことがあろう1円切手の前島密の物語。
幼少期から母の死までを描いていて、郵便の父になるまでの紆余曲折が面白すぎます。
これまで密が主人公のドラマや小説を知らないので、こんなに破天荒な人とは知りませんでした。
とにかく好奇心だけは旺盛で堪え性がなくいろんなことに手を出して物にはするものの、人生の目標となる軸が定まらない上に政局からは一歩引いた感じなので、生涯の仕事としての郵政に出会うまでが焦らされてしまいました。
一つのことを突き詰めるのも素晴らしい事ですが、とりあえずは与えられた仕事をちゃんとこなしつつ夢を探すのもいいかもしれませんね。 -
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ミステリー仕掛けであるが、ミステリーというジャンルには入りきらない。「歴史ミステリー」かもしれないが、少し違う気がする。作品背景となる時代の情景もビビッドに書かれているが、抽象的な「歴史」を描くことが主目的ではない。中心にあるのは、その時代に、たまたま、ある分野で専門的に活動している主人公が、懸命に自己の分を尽くそうと奮闘する姿だ。
門井は、そんなふうにジャンル分けが難しい作品を出す。
本作では、神保町の古書屋が、戦後のGHQ統制時代に、日本の文化資産の散逸・消滅の危機に際し、自らの生業の範囲内で、知恵を絞って抵抗する姿を描く。
地味で、大うけが狙えるようなテーマではない。が、小説として読むと -
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「近代郵便の父」と言われる前島密が郵便制度を導入するまでの半生記。
英語、数学、儒学、医学、蘭学、操船法など、手を付けたものは全て習得する才能の持ち主だった密は、常に新しいことを求め歩いた人生の旅人でもあった。
長崎留学中に始めた英語塾で出会った勝海舟や薩摩藩士たちとの縁で幕臣となり、維新後は明治政府に誘われ郵便制度の基礎を築くに至る。
頻繁に師を変えたりしても人望を勝ち得たのは、人柄に加え、志や才能が顕著だったためだろう。
郵便制度構築に割かれたページ数は多くないが、その試行錯誤の様子は作者の真骨頂。
制度を全国に拡げるに当たって各地の庄屋・名主が果たした役割は大きく、今でこそ特定