門井慶喜のレビュー一覧
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ネタバレ父である宮沢政次郎から見た宮沢賢治の物語。後半はかなり泣かされる部分も多かった。
政次郎は笑ってしまうくらい親バカで賢治のことが大好きで…賢治の描く美しい世界は家族の愛(と、経済的援助)に支えられたものであったのだなとしみじみ感じた。
しかしこの時代、結核とは本当に恐ろしい病気だったのだなぁ。宮沢賢治も妹のトシも、成人してから結核で亡くなったとされている。淡々とした語り口だったけれど、大切な子供を2人も亡くすことがどれほどの地獄か。胸が締め付けられる思いだった。
賢治は今日では聖人のように扱われることが多いけれど、かなりの変人でもあり、親に繰り返し金を無心するような金銭感覚の未熟さもあり、なかなか大人の社会に馴染めない、困った息子でもあったのだなぁ。
宮沢賢治の作品は今なお多くの子供たち、そして大人にも読み継がれる人類の大切な宝のような存在。
父のありあまる愛があったこと、賢治が童話という表現に辿り着くことができたことが、後世の人々にとって本当に幸福なことであったなと思う。
しかし同時に、私はこの政次郎のように、大人になってもなかなか芽が出ず金を無心するような息子をずっと信じて支え続けることができるかなぁと少し考えてしまった…
我が子は30を過ぎてもいくつになっても可愛いものなのかな。
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ネタバレ当地在住の身にも関わらず知らないことばかりでとても学びが多かった。
判官様というお菓子があるくらいなのに島義勇のことは開拓の人と言ううっすら知識しかなかったのが恥ずかしい。そしてたったの数ヶ月しかいなかったことに驚愕。それでこの碁盤の目の街の基礎を作ったとは…
あと面白かったのはやはり有島武郎の数奇な人生と岡崎文吉の石狩川工事。
有島は名前を知っていても具体的には何をしたか知らなかったので、ニセコに記念館がある意味を知れたのが大きい。小作農解放は凄すぎる。
あと石狩川がまさかショートカットされていたなんて知らなかったので、読んだ後に地図を見ると面白かった。茨戸川は捷水路で切り取られたものだったとは…
とりあえず札幌の人はみんな読むべき一冊。 -
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徳川治世の礎となる江戸という都市が、当初沼地の状態から如何にして形作られていったかを、五つの物語を通して描いた本。利根川東遷を担った伊奈氏による治水、貨幣鋳造による経済基盤の整備、玉川上水に代表される水道の敷設、石材の調達から始まる石垣普請、そして白漆喰の天守建設と、異なる分野の取り組みを通して、一つの都市へと収束していく構成が印象的。
「江戸版プロジェクトX」とでも言うべき魅力がある。歴史の表舞台に立つ武将ではなく、現場で試行錯誤を重ねる技術者や職人たちが主役として描かれている。壮大な計画も一足飛びに成功するわけではなく、失敗や衝突を経て形になっていく。その過程には理想だけでは進まない現実の重みがあり、その積み重ねこそが江戸という都市を成立させたのだと感じた。
何かで知ってはいたが、家康自身「鳴くまで待とう」という受動的な人物像ではなく、一国の主として方向性は示しつつ細部には踏み込まず、任せるべきところは任せる。その一方で、期待に応えられなければ厳しく叱責するという、現代の(一部の)上司にも通じるような苛烈さがある存在として描かれている。何を求められているのかを読み取りながら成果を出していく難しさは、現代の仕事にも通じるものがあるのかも。 歴史の裏側にある、職人による「作る」という営みに光を当てた本書は、現代にも通じる示唆を与えてくれる一冊。 -
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宮沢賢治の逸話やエピソードは、書籍やネットなどから耳に、いや目にしたことは多少あった。しかし、その父となると全く知らず、好奇心から。
明治〜昭和を生きたこの父親、政次郎に、現代の父親像を見、描いた著者の慧眼は素晴らしい。
それにしても、鬼になり切ろうとしてもなり切れない、どうしても甘やかしてしまう親の心根に、病弱でおぼっちゃまの賢治もどっぷりと浸かっている。この辺りの描写は、私にとっても耳が、いや目が痛い。親に庇護されつつ、金銭的な援助も受けつつも思春期は反抗したり、夢みがちなことを言ってみたり……。
それでも、さすがにここまでは……。
なんだかんだ言いながら赦し、援助する政次郎の姿は、現代的に見ても甘すぎると思いながらも、家族に対する深い愛情と、家長の痩せ我慢っぷりが物語を通じて感じられた。
これを機に、もう一回、宮沢賢治を読み直してみたい。読み残しているものも多いので、ちくま文庫版で全集が出ているので、手に取ってみたい。
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ネタバレ副題 享保のデリバティブに惹かれて、読み始めた。
江戸時代の大坂の事情なんてほとんど知らない状況でも、
経済小説として楽しむ読めた。
特に、先物取引は何のためのものか、という問いに、
出てくる者たちがたどり着く過程が非常に楽しかった。
その視点が将軍吉宗をして、一徳川大名の視点から、全国の将軍としての俯瞰的視点となり、享保の大飢饉を最小限の犠牲に留めようとする、主体的な動きへと変化させる。
ちょっとした気分で手に取ってよかったと思う。
なお、デリバティブの機能とは
・大勢が価格決定に関わることで、価格調整弁としての機能
・将来の価格安定による生産者の安心
といったところだろうか。 -
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父から見た宮沢賢治の姿が描かれた作品。銀河鉄道の夜、のようなファンタジーはどうやったら描かれるのかまったく想像がつかなかったが、この作品で賢治の人となりが少しでも理解できるようになった。少しずるがしこい幼少の賢治、事業を始めようと全く世の中を理解していない高校生の賢治がいて、そこから家族を離れて成長していった賢治は、父からはどういう感情を持っているのか、読み取れなくなってくるのも、面白い。何より一番は、父の底知れぬ家族への愛情を、この作品からあたたかいメッセージのように受け取ることができたことである。家族の大切さを、改めて作品を通して気づけた。
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天下の台所大坂の米市場を巡る大坂商人と吉宗幕府の攻防。
現代の先物取引の先鞭となる帳合米取引の様子が生き生きと描かれる。
「立用(るいよう)」という現代取引所のサーキット・ブレイカーに似た制度や敷銀と呼ばれる証拠金、寄付き、大引けといった市場用語が既に使われていたのは興味深く、完全に民間によって創設された市場で合理的な制度が民主的に導入されたというのは、民主国家としてある意味誇れるものと思う。
対照的なのは米本位制ゆえに米価を高く維持したい、本質的には統制経済を志向する幕府の立場。
幕府からすれば、一般庶民が好き勝手に米価を決める米市場を統制したいと思うのは自然なこと。
本書に描かれた、建前と机上の議論を重んじる江戸と実質に重きを置く上方の対比(対立?)は現代にも通じる。
幕府による米市場支配の目論見が失敗し帳合米公認に至るやり取りが主に上方の目線から諧謔味たっぷりに語られる本書は、江戸の公儀に対抗する浪速商人の心意気がにじみ出ていて快い。
まだ紀州徳川家の部屋住みだった頃の吉宗が堂島を訪れ、あまつさえ米相場博打に手を出したというのは作者の全くの創作だろうが、ルール作りに一生を費やした吉宗がその効用や合理性を認めて、それまで法外だった帳合米を公認した背景の微笑ましいエピソードとしてよく効いている。