門井慶喜のレビュー一覧
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徳川治世の礎となる江戸という都市が、当初沼地の状態から如何にして形作られていったかを、五つの物語を通して描いた本。利根川東遷を担った伊奈氏による治水、貨幣鋳造による経済基盤の整備、玉川上水に代表される水道の敷設、石材の調達から始まる石垣普請、そして白漆喰の天守建設と、異なる分野の取り組みを通して、一つの都市へと収束していく構成が印象的。
「江戸版プロジェクトX」とでも言うべき魅力がある。歴史の表舞台に立つ武将ではなく、現場で試行錯誤を重ねる技術者や職人たちが主役として描かれている。壮大な計画も一足飛びに成功するわけではなく、失敗や衝突を経て形になっていく。その過程には理想だけでは進まない現 -
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宮沢賢治の逸話やエピソードは、書籍やネットなどから耳に、いや目にしたことは多少あった。しかし、その父となると全く知らず、好奇心から。
明治〜昭和を生きたこの父親、政次郎に、現代の父親像を見、描いた著者の慧眼は素晴らしい。
それにしても、鬼になり切ろうとしてもなり切れない、どうしても甘やかしてしまう親の心根に、病弱でおぼっちゃまの賢治もどっぷりと浸かっている。この辺りの描写は、私にとっても耳が、いや目が痛い。親に庇護されつつ、金銭的な援助も受けつつも思春期は反抗したり、夢みがちなことを言ってみたり……。
それでも、さすがにここまでは……。
なんだかんだ言いながら赦し、援助する政次郎の姿は、現 -
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ネタバレ副題 享保のデリバティブに惹かれて、読み始めた。
江戸時代の大坂の事情なんてほとんど知らない状況でも、
経済小説として楽しむ読めた。
特に、先物取引は何のためのものか、という問いに、
出てくる者たちがたどり着く過程が非常に楽しかった。
その視点が将軍吉宗をして、一徳川大名の視点から、全国の将軍としての俯瞰的視点となり、享保の大飢饉を最小限の犠牲に留めようとする、主体的な動きへと変化させる。
ちょっとした気分で手に取ってよかったと思う。
なお、デリバティブの機能とは
・大勢が価格決定に関わることで、価格調整弁としての機能
・将来の価格安定による生産者の安心
といったところだろうか。 -
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父から見た宮沢賢治の姿が描かれた作品。銀河鉄道の夜、のようなファンタジーはどうやったら描かれるのかまったく想像がつかなかったが、この作品で賢治の人となりが少しでも理解できるようになった。少しずるがしこい幼少の賢治、事業を始めようと全く世の中を理解していない高校生の賢治がいて、そこから家族を離れて成長していった賢治は、父からはどういう感情を持っているのか、読み取れなくなってくるのも、面白い。何より一番は、父の底知れぬ家族への愛情を、この作品からあたたかいメッセージのように受け取ることができたことである。家族の大切さを、改めて作品を通して気づけた。
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天下の台所大坂の米市場を巡る大坂商人と吉宗幕府の攻防。
現代の先物取引の先鞭となる帳合米取引の様子が生き生きと描かれる。
「立用(るいよう)」という現代取引所のサーキット・ブレイカーに似た制度や敷銀と呼ばれる証拠金、寄付き、大引けといった市場用語が既に使われていたのは興味深く、完全に民間によって創設された市場で合理的な制度が民主的に導入されたというのは、民主国家としてある意味誇れるものと思う。
対照的なのは米本位制ゆえに米価を高く維持したい、本質的には統制経済を志向する幕府の立場。
幕府からすれば、一般庶民が好き勝手に米価を決める米市場を統制したいと思うのは自然なこと。
本書に描かれた