門井慶喜のレビュー一覧
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『銀河鉄道の父』の著者による、戦国時代から昭和に至るまで日本を襲った災害にまつわる人間ドラマ集。〈小説現代〉に2020〜22年に発表された。
『一国の国主』天文十一年(1542)甲府洪水(「信玄堤」構築物語)、
『漁師』明治二十九年(1896)三陸沖地震(ある漁村の高台への移転の試み)、
『人身売買業』寛喜二年(1230)大飢饉
京の都で「問丸」=都住人に物資を輸入する商社〈柿鍋〉を営んでいた滝郎は、寛喜元年からの異常気象に「これは不作になる」と見て米の先物を「値段に構わず買い付けろ」買い集め同二年の収穫期には平年並の地方からの米供給で巨利を得た。彼に関係する流通業者から請われて飢饉で食い -
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【第一話 流れを変える】
伊奈忠次 から4代。利根川の東遷事業。
【第二話 金貨(きん)を延べる】
後藤庄三郎光次。
貨幣戦争については偶然最近「ホンモノのおカネの作り方」を読んでいたので興味深かった。もっと勉強したい。
貨幣制度の日本統一は徳川家康、と漠然と理解していたつもりだったが、フィクションとはいえとても現実味があって、関ヶ原の戦いの臨場感というか、こう繋がってくるのかぁと感無量でした。
後藤家が関ヶ原の戦いの際に真田家みたいに兄弟で東西分かれていたのは史実かな?気になる。
【第三話 飲み水を引く】
井の頭公園から玉川上水の川を作って都心まで引っ張る事業。大久保藤五郎と内田六次郎と -
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日本史上に起こった大災害を6編から描く。
「一国の国主」
暴れ川の治水工事を行なった武田晴信(後の信玄)。
人間味あふれる一面が知れておもしろい。
人は、津波・大火など天災の前では無力。
P288
〈人のいるところに天災がある。逃れるすべはなく、
あるのは逃れかたの上手下手だけ。または運だけ〉
「除灰作業員」でも書かれている。
富士山の噴火により降灰で村が覆われた。
幕府により、一方の村は見捨てられ、もう一方の村は『焼け太り』。
たった一里の差が村の運命を変えた。
大飢饉による飢えから、村人が次々と流れてくる
「人身売買商」も辛い。
どの話も人々の悲痛な思いが胸に迫りくる。 -
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タイトルが示す通り天災~洪水、津波(地震)、冷夏(飢饉)、噴火、大火、豪雪~を舞台にした6つの短編。時代も鎌倉時代から昭和38年(豪雪)まで、場所も様々です。
門井さんはこれまで5作品読みましたが、短編は今回が初めてです。
長編では軽快な語り口でサクサク読める作家さんという印象が強かったのですが、この作品はやや重く、しっかり書き込んだ感じがあります。短編のせいでしょうか。
天災を乗り超えて行く話ですが、いずれもかなりの苦みを含み、味わい深く仕上がっています。
強いて言えば、「大火」は前振りをもう少し、例えばキリシタンの妻の想いなどを書き込めば良かったように思うし、「豪雪」の最後の天災の解説は無 -
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ネタバレHKさんのお勧め。
たとえ、建築に興味がなくても知っているであろう「辰野金吾」のお話。
日本銀行本店、東京駅舎をはじめ、
中之島公会堂を設計したのはさすがに知っていたが、
唐津で高橋是清に英語を学んだとか、
鹿鳴館を設計したジョサイア・コンドルが先生だったとか、
国会議事堂の設計を争った妻木頼黄は
神奈川県立歴史博物館や横浜赤レンガ倉庫を設計してたとか、
いろいろ学べて面白かった。
もちろん、専門書を読めばそういうことは書いてあるのだろうが、
時系列で書かれているだけでは、なかなか入ってこない。
物語にしてもらうことによって、
人間関係や時代の雰囲気が感じられて良かった。
ペルーの銀山で -
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辰野金吾のイギリス留学からの帰国後から日本銀行本店と東京駅の設計建築までの生涯を描いた一冊。
辰野金吾という名前は知っていましたが、初めて人物像を知ることができました。
明治維新で江戸時代の名残が残る時代。
西洋に追いつけ追い越せと日本が大変貌を遂げた時代。
師匠のイギリス人のコンドルと日本銀行の設計を巡り、時の総理の伊藤博文への直談判した時の師弟対決。
その師弟対決を超えて、友情を死ぬまで持ち続けてきた二人の絆。コンドル先生の懐の大きさがあったからこその辰野金吾がいたのですね。
妻の秀子の献身ぶりや、苦楽をともにした曽禰達蔵の身分を超えた友情。高橋是清との接点。
偉人は偉人を呼ぶです -
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かの江戸の大惨事、明暦の大火。
老中・松平信綱は如何にして復興の難事業に挑んでいったのか。
第一章 大火発生 第二章 復興開始 第三章 米の値段
第四章 復興景気 第五章 抗争 第六章 大移動
第七章 討ち入り 第八章 遷都
江戸城の本丸、二ノ丸の焼失。江戸の町の多くの建物が焼け、
約10万人の死者の被害を出した明暦の大火から始まり、
その三日後から始まる復興への道程。
知恵伊豆(知恵出づ)と称される老中・松平信綱が、
如何にしてこの大事業に知恵を巡らせたのかを描く歴史小説。
御用部屋での酒井忠清、阿部忠秋ら老中たちとの審議を核とし、
当座の、粥施行、木材や米の供給、牢人問題、