門井慶喜のレビュー一覧
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ネタバレ誰もが見たことがあろう1円切手の前島密の物語。
幼少期から母の死までを描いていて、郵便の父になるまでの紆余曲折が面白すぎます。
これまで密が主人公のドラマや小説を知らないので、こんなに破天荒な人とは知りませんでした。
とにかく好奇心だけは旺盛で堪え性がなくいろんなことに手を出して物にはするものの、人生の目標となる軸が定まらない上に政局からは一歩引いた感じなので、生涯の仕事としての郵政に出会うまでが焦らされてしまいました。
一つのことを突き詰めるのも素晴らしい事ですが、とりあえずは与えられた仕事をちゃんとこなしつつ夢を探すのもいいかもしれませんね。 -
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ミステリー仕掛けであるが、ミステリーというジャンルには入りきらない。「歴史ミステリー」かもしれないが、少し違う気がする。作品背景となる時代の情景もビビッドに書かれているが、抽象的な「歴史」を描くことが主目的ではない。中心にあるのは、その時代に、たまたま、ある分野で専門的に活動している主人公が、懸命に自己の分を尽くそうと奮闘する姿だ。
門井は、そんなふうにジャンル分けが難しい作品を出す。
本作では、神保町の古書屋が、戦後のGHQ統制時代に、日本の文化資産の散逸・消滅の危機に際し、自らの生業の範囲内で、知恵を絞って抵抗する姿を描く。
地味で、大うけが狙えるようなテーマではない。が、小説として読むと -
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「近代郵便の父」と言われる前島密が郵便制度を導入するまでの半生記。
英語、数学、儒学、医学、蘭学、操船法など、手を付けたものは全て習得する才能の持ち主だった密は、常に新しいことを求め歩いた人生の旅人でもあった。
長崎留学中に始めた英語塾で出会った勝海舟や薩摩藩士たちとの縁で幕臣となり、維新後は明治政府に誘われ郵便制度の基礎を築くに至る。
頻繁に師を変えたりしても人望を勝ち得たのは、人柄に加え、志や才能が顕著だったためだろう。
郵便制度構築に割かれたページ数は多くないが、その試行錯誤の様子は作者の真骨頂。
制度を全国に拡げるに当たって各地の庄屋・名主が果たした役割は大きく、今でこそ特定 -
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『ゆうびんの父』 門井 慶喜 著
門井慶喜氏の本にハズレはないと新刊をゲット。と思ったところ、前半は前島密(上野房三郎)があっち行ったり、こっち行ったりの繰り返し。北は北海道から南は九州まで、上司・師・仕事を転々とし、「いつ本題は出てくるのやら…」と不安になってきます。後半から郵便事業の立ち上げとなり、ヤマト運輸の小倉昌男氏バリの活躍に移行します。しかも、前半の長々とした旅の経験が事業立ち上げに役立つということもわかりました。特に、旅を通じた維新の志士たちや勝海舟らとの交流が、やがて「人脈」となって活きてくることも描かれています。
いまでも郵便局には地元の「名士」が就くことが多いようで -
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「一国の国主」天文の乱十一年(1541)甲府洪水
晴信と名乗る若かりし武田信玄が奮闘した「信玄堤」のとっかかり事業
『家康、江戸を建てる』に繋がっていくような締め方でジンときた
「漁師」明治二十九年(1896)三陸沖地震
津波、、、どんなホラーよりもミステリーよりも怖かった、、、
“金と言うものはタダでもらうなら単なる数字だが、労働の対価として受け取れば人間の肯定そのものなのである。”この作者はこういう金言になりそうな良い事を散りばめてくる。
「人身売買商」寛喜二年(1230)大飢饉
鎌倉幕府第三代執権北条泰時の時代
寛喜の飢饉
鎌倉幕府の六波羅探題
「除灰作業員」宝永四年(170 -
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『銀河鉄道の父』の著者による、戦国時代から昭和に至るまで日本を襲った災害にまつわる人間ドラマ集。〈小説現代〉に2020〜22年に発表された。
『一国の国主』天文十一年(1542)甲府洪水(「信玄堤」構築物語)、
『漁師』明治二十九年(1896)三陸沖地震(ある漁村の高台への移転の試み)、
『人身売買業』寛喜二年(1230)大飢饉
京の都で「問丸」=都住人に物資を輸入する商社〈柿鍋〉を営んでいた滝郎は、寛喜元年からの異常気象に「これは不作になる」と見て米の先物を「値段に構わず買い付けろ」買い集め同二年の収穫期には平年並の地方からの米供給で巨利を得た。彼に関係する流通業者から請われて飢饉で食い -
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【第一話 流れを変える】
伊奈忠次 から4代。利根川の東遷事業。
【第二話 金貨(きん)を延べる】
後藤庄三郎光次。
貨幣戦争については偶然最近「ホンモノのおカネの作り方」を読んでいたので興味深かった。もっと勉強したい。
貨幣制度の日本統一は徳川家康、と漠然と理解していたつもりだったが、フィクションとはいえとても現実味があって、関ヶ原の戦いの臨場感というか、こう繋がってくるのかぁと感無量でした。
後藤家が関ヶ原の戦いの際に真田家みたいに兄弟で東西分かれていたのは史実かな?気になる。
【第三話 飲み水を引く】
井の頭公園から玉川上水の川を作って都心まで引っ張る事業。大久保藤五郎と内田六次郎と -
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日本史上に起こった大災害を6編から描く。
「一国の国主」
暴れ川の治水工事を行なった武田晴信(後の信玄)。
人間味あふれる一面が知れておもしろい。
人は、津波・大火など天災の前では無力。
P288
〈人のいるところに天災がある。逃れるすべはなく、
あるのは逃れかたの上手下手だけ。または運だけ〉
「除灰作業員」でも書かれている。
富士山の噴火により降灰で村が覆われた。
幕府により、一方の村は見捨てられ、もう一方の村は『焼け太り』。
たった一里の差が村の運命を変えた。
大飢饉による飢えから、村人が次々と流れてくる
「人身売買商」も辛い。
どの話も人々の悲痛な思いが胸に迫りくる。