門井慶喜のレビュー一覧

  • 東京帝大叡古教授

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    結末の種明かしを読んでうなりました。これはすごい。夏目漱石や日露戦争などの歴史上の人物や史実と、叡古先生という架空の人物をうまく織りあわせて、すばらしいミステリーになっている。主人公・藤太の一代記のようにもなっていて、最後、泣いた。思い返してもゾクッとする種明かしだった!
    ウンベルト・エーコが亡くなり、夏目漱石没後100年、そして戦争を起こそうとしているようにも見える現政権。なんというタイミングで文庫化されたんでしょう。舞台は明治~昭和初期だけど、そのまま現代への警告のようにも読める。

    0
    2016年04月25日
  • ぼくらの近代建築デラックス!

    Posted by ブクログ

    2015年26冊目。
    京都、大阪、神戸、横浜、東京の近代建築を巡る、ゆる散歩対談集。街中で、「レトロかわいいな」とか「しぶいなあ」と感じた建築物は、これからは意識的にチェックしてみようかな。
    どの建築物にも、時代背景はもちろん、関係者の趣味や思惑も色濃く反映されている。人間味溢れるストーリーがある。
    色とか雰囲気だけじゃなくて、全体のバランスとか部分的なデザインにも、これからは注目してみたい。
    神戸と横浜の貿易関連施設、大阪の綿業会館とか、特に興味深かった。
    最後に台湾が出てきたのも良かった!植民地政策というと、どうしても、圧政のイメージが強くなっちゃうけど、八田與一のダム建設と銅像の件は、なるほどと思った。圧政というより、その地を自国とみて、生活をよりよいものとする(内実は、利便性や生産性向上のためだとしても)ための建築物。
    それを、現在もリノベーションして脈々と使用してる。
    作ってやったんだでも、作っちゃってごめんなさいでもない付き合い方。勉強になった。

    0
    2015年09月06日
  • ぼくらの近代建築デラックス!

    Posted by ブクログ

    この手の企画は、東京だけとか、関西だけ、という内容が多いけれど、本書は大阪、京都、神戸、東京とバラエティに富んでいるのが嬉しい。さらに追加での台湾の部分も興味深い内容だった。
    近代建築というとどうしでもコンドル、そして辰野金吾に偏りがちだ。本書も勿論辰野金吾の作品はフィーチャーされているが、偏った感じではなく、また設計者の人生んいも多く触れられていて、読み物として面白かった。続編を期待したい。

    0
    2015年06月06日
  • おさがしの本は

    Posted by ブクログ

    本書の解説で「ビブリオ・ミステリー」という語を見て、そういうミステリーのジャンルがあることを初めて知り、どんなものだろうと思い購入。
    殺人事件や犯人捜しがあまり好きではなく、通常のミステリー小説だと、つい後ろから読んでしまって、楽しみを半分くらい失いがちな私にとって、本格派ビブリオ・ミステリーの本書は、純粋に謎解きを楽しむことができてよかった。

    この本、三省堂本店で「書店員のおすすめ」になっていたけれど、その気持ちは非常によくわかる。文献資料のリサーチや分類・整理に関わったことのある人であれば、自分の求める文献資料を探しているときのワクワク感がそのまま味わえるだろう。

    0
    2022年09月06日
  • 文豪、社長になる

    Posted by ブクログ

    菊池寛について、文春創設者であることは知ってましたが、他文士との関わりや、戦前戦後の様子など知らないことばかりだったので、とても興味深く読めたのと、一緒に仕事をしていると楽しい人というのが、心に残った

    0
    2026年10月10日
  • 定価のない本

    Posted by ブクログ

    戦争の敗戦国である日本とアメリカの関係、思惑、そして歴史というものがどのようにして現在に至るかを物語にしたとても面白い本。私は学生時代にきちんと勉強してこなかった身なので、この本の面白さの半分も判ってないと思うけど、それでも知識欲というか、なるほどね!と思うことが多かったこの本はとても面白かった。

    0
    2026年09月27日
  • 天災ものがたり

    Posted by ブクログ

    門井慶喜『天災ものがたり』講談社文庫。

    古来から洪水、地震、津波、飢饉、火山の噴火、火事、豪雪といった天災に何度も見舞われて来た日本人がそれらにどう立ち向かい、乗り越えて来たのかを描いた連作短編集。6編を収録。

    南北に延びた狭い国土の島国のせいなのか、日本は数々の災害に見舞われている。今もテレビでは今回の台風25号がもたらした被害の状況を報道している。

    本作に描かれた6つの天災はこれからの日本で何時起きてもおかしくないものばかりなのだ。歴史は繰り返す、天災は忘れた頃にやって来るという言葉の通り、我々は災害に対する備えを怠ってはいけない。


    『一国の国主 天文十一年甲府洪水』。最近も台風や大雨であちこちの河川が氾濫し、多くの家屋が浸水被害にあっている。現代は河川の氾濫に輪をかけて内水氾濫が被害規模を大きくしているように思う。

    都市部はアスファルトやコンクリートで覆われ、一度まとまった雨が降れば、雨水の逃げ場が無くなるのだ。

    さらには無駄に造り過ぎたダムが大雨が降れば、河川への大量放水を余儀なくされ、危険な武器へと変わる。

    戦国時代、後に武田信玄となる21歳の若き国主、武田晴信が甲斐の国の河川の氾濫に挑む。と、同時に晴信は洪水対策事業を通じて、国主としての成長を果たしていく。


    『漁師 明治二十九年三陸沖地震』。明治二十九年の三陸沖地震による大津波は吉村昭の『三陸海岸大津波』などにも描かれている。

    本作の舞台は現在の岩手県宮古市田老地区である。田老は何度も津波被害を受けて、万里の長城とも呼ばれる巨大な二重の防潮堤を建設したが、あの東日本大震災による巨大津波には歯が立たなかった。

    人間の叡智を結集した構造物も自然災害の前では無力であり、さらに頑丈で高い構造物を建設しても自然災害はさらにそれを超えて来るのだ。

    そして、海辺で暮らす人びとの多くは何度津波に襲われようと再び元の場所に居を構えるのだ。

    岩手県下閉伊郡田老村の漁師である四郎は兄の復員祝いがあるのにも関わらず、父親から漁に出ろと厳命される。渋々、海に出た四郎たちだったが成果は上がらず、さらに沖に向かうと巨大な海の壁が迫って来た。それが津波であると判断した四郎は船を真っ直ぐに津波に向け、巨大な壁を何度も乗り越える。

    浜に戻った四郎たちは壊滅した村を目の当たりにし、生き残ったのは僅か381人であることを知る。四郎たちは今回の津波でもおよそ到達しない山の上を無断で開墾し、そこに居を構える。


    『人身売買商 寛喜二年大飢饉』。1993年に起きた米不足はまさに本作と同様、冷夏によるものだった。2024年から2025年に掛けて起きた米不足は猛暑の影響と言われた。

    しかし、実際には米は余っており、米不足は買占めによる影響だった。その証拠に2026年になると買占められた古米が余り、政府は一度放出した備蓄米を買取り、新米の価格が大きく下落する。

    本作でも飢饉に乗じた米の買占め、さらには飢饉で種籾まで食べ尽くした農民の人身売買が描かれる。

    鎌倉時代の初期に起きた異常気象により、大飢饉が起きる。柿鍋という米問屋を営む滝郎は京の商人たちに協力を求められ、米の買占めを行う。僅かに収穫出来た米も年貢に取られ、食べ物が無くなった農民たちは翌年の種籾にも手を付け、やむ無く身売りをすることになる。


    『除灰作業員 宝永四年富士山噴火』。近頃は毎年のように日本列島のあちこちで大きな地震が起きている。自分自身も11年前の東日本大震災で震度6強を経験し、義理の両親が暮らす津波で壊滅的な被害を受けた三陸沿岸にも何度も足を運んだ。

    恐らく次に来る大地震は南海トラフ地震か関東大震災であろう。そして、永らく休眠していた富士山も活火山として目覚めることだろう。

    江戸時代末期、徳川綱吉の治世の時代に南海トラフで発生した大地震に誘発されて、富士山が噴火する。火口にもっとも近い須走村は火山弾と火山灰を浴びて壊滅し、隣村の大御神村は火山灰により大きな被害を受ける。そして、何故か幕府は何故か須走村だけに多額の義援金を支給し、村の復興を急がせた。


    『囚人 明暦三年江戸大火』。最近は都市部での大火災は余り無いように思うが、山林火災、東日本大震災時の大火災などは記憶に新しい。

    江戸幕府第四代将軍・徳川家綱の時代。牢屋に収監されていたキリシタンの権右衛門は、大きなからっ風の吹く音に江戸の町で大火が起きて、切り放しになることを願っていた。権右衛門の思惑通り大火が起き、権右衛門たちは牢屋から開放される。


    『小学校教師 昭和三十八年裏日本豪雪』。北国は度々豪雪に見舞われる。自分が盛岡市で大学に通っていた時、明け方まで卒業論文を書いて、ふと外を見ると思いの外、大雪になっていた。当時、父親は秋田市に単身赴任しており、月曜日の早朝に車で秋田市に戻っていた。

    これはヤバいのではないかと思い、両親を起こし、雪のことを伝えると母親は朝イチの列車で秋田市に戻った方が良いと言うが、頑固で真面目な父親は大事な会議があるから車で出発すると譲らなかった。父親は何時もより2時間程早目に出発し、免許を持っていた自分も車に同乗することになった。

    家を出て直ぐに吹き溜まりにハマり、自分が車の周りの雪をかいて、何とか車は走り出したが、秋田市に向かう道すがら何度も同じような状況に陥った。田沢湖駅の近くで盛岡駅始発の列車に追い抜かれた時には午前7時過ぎだったろうか。

    結局、秋田市の父親の社宅に辿り着いたのは午前11時で、父親は慌てて会社に向かうが、肝心の大事な会議は大雪の影響で出席者が集まらずに中止となったようだ。

    新潟の実家に父親の介護で戻っていた小学校教師がこれまで経験したことの無かった豪雪に見舞われ、職場に戻れず、難儀する。

    本体価格980円
    ★★★★

    0
    2026年09月23日
  • 銀河鉄道の父

    Posted by ブクログ

    作品と生き様にギャップがあるという切り口のパターン。「ボタニカ」でも感じたヤツ。やれやれとしか言えない。しかし読んで考えれば父親からするとトシも賢治も逆縁だったのか。

    0
    2026年09月19日
  • 灯台を読む

    Posted by ブクログ

    全国各地の灯台と、その土地にまつわる歴史、風物、人々の営みを各作家が描き出すエッセイ集
    まさに『文章で読む灯台』
    まずは別の写真集やホームページ等で灯台外観を愛で、それから本書を紐解くと、写真だけでは伝わりきらない人の温度や、暮らしの気配を味わうことができる

    0
    2026年09月09日
  • 札幌誕生

    Posted by ブクログ

    北海道を開拓し、あるいは札幌で生きた5人――島義勇、内村鑑三、バチラー八重子、有島武郎、岡崎文吉の物語。札幌を舞台に少しづつ時代を下りながら語られるお話は、人の物語であると同時に札幌という都市の大河ドラマでもあって、なかなか面白かったです。そして、和人だけでなく、アイヌの視点でも語られたところが良かったです。『札幌誕生』というタイトルは島義勇の話については確かにそうだけど、後の4人も含めたら『札幌物語』の方が良いのでは?とも思ったり。

    0
    2026年08月25日
  • 札幌誕生

    Posted by ブクログ

    この夏、北海道に家族旅行をするので、予習として読書。おもしろかった。なんで札幌が道内最大の都市になったのか、その地形と街づくりの裏話までしっかり分かりました。たくさんの開拓者たちの夢と努力の結晶が、今の北海道を作ってるんですね。旅行中、北大と創成川に散歩しながらあいさつしてきます。

    0
    2026年08月23日
  • 銀河鉄道の父

    Posted by ブクログ

    父親の育児参加が唱えられる今の時代だからこそ、話題になったんだろうなー、という一冊。不器用な父親の息子への愛情が温かなタッチで描かれている。読んでてほっこりする物語ではあるけれども、どうも私の中の〈宮沢賢治像〉と小説の中の賢治が一致しなくて、満点には至らなかった。

    0
    2026年08月16日
  • 札幌誕生

    Posted by ブクログ

    明治初期の札幌を作った5人の物語。
    ①札幌の発展に尽力するも職を罷免され最終的には佐賀の乱で没しした島義勇(よしたけ)
    ②札幌農学校に学んだ内村鑑三
    ③アイヌの子でイギリスの宣教師夫妻の養子となったバチラー八重子
    ④札幌農学校を出て農場経営を行いながら小説を書き、小作人に農地を譲渡した有島武郎
    ⑤石狩川の流れを変えた岡崎文吉

    0
    2026年07月29日
  • 地中の星―東京初の地下鉄走る―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    面白かった。
    地下鉄というインフラがどのように作られたのか?
    題材にとても惹かれよみました。
    初めての門井さんの作品でしたが読みやすく
    よかったです。
    地下鉄を乗る時の気持ちが変わりそうです。

    0
    2026年07月10日
  • 灯台を読む

    Posted by ブクログ

    「海と灯台プロジェクト」というものがあることを初めて知った。GPSの発達により、役目を終えつつある灯台を利活用していこうという活動とのこと。読むほどに、灯台という施設が日本の近現代史と深く関わっていることが感じられ、使わなくなったからといってただ放置するのは確かにもったいないなと思った。そして何度か文中に登場する映画『喜びも悲しみも幾歳月』にも描かれた、灯台守という仕事の過酷さ。自動化によって現在はなくなったというが、むしろ2000年代まで存在していたことの方に驚く。

    0
    2026年07月06日
  • 銀河鉄道の父

    Posted by ブクログ

    宮沢賢治といえば「教科書の中の清廉な偉人」というイメージだが、この作品が魅せるのは、世間の規格からはみ出し続けた「不肖の息子」と、彼を甘やかし続けた「厳格になりきれない父親」の、あまりにも人間臭い葛藤のドラマである。

    26歳まで迷走していた賢治だが、妹トシの過酷な看病を通じて、それまでダメ人間だと自覚していた彼が、初めてある種の「達成感」を得る。
    そして、質屋での経験から「大人は嘘をつくが、子供は嘘をつかない」という彼らしい純粋な動機から、ついに童話を書くことで、父親という巨大な壁を飛び越えようとし始める。

    トシの臨終の際、父・政次郎は「肉や骨は滅びるが、言葉は滅亡しない」という強い思いを胸に、遺書を書かせようとする。しかし、目の前で苦しむトシに寄り添う賢治は、その父親の行動に対して激しく邪魔をする。ただ生身の妹を守ろうとした賢治の反発。
    だが、トシを本当に失った後、狂ったように詩や童話を書き始めた賢治が、結果として、かつて拒絶したはずの父の思いと同じように「滅亡しない言葉」の中にしかトシの魂を救えなくなっていく展開には、皮肉でありながらも言葉にできない凄絶な美しさを感じる。

    そして、今度は賢治自身が病の淵に沈み、床から起き上がれなくなってペンを置いてしまう。
    「お前はその程度の文士か。本当の詩人なら、後悔のなかに、宿痾(しゅくあ)のなかに、あらたな詩のたねを見いだすものだ。人間は寝ながらでも前を向ける」
    この瞬間、政次郎は賢治をただの看病すべき我が子としてではなく、一人の「表現者」として認め、その覚悟を迫ったのだ。かつてトシの臨終の際、政次郎が内に秘めていた「言葉は滅亡しない」というあの確信が、今度は死の淵にある長男へと叩き込まれる。
    この深い愛に満ちた叱咤を受け、賢治は再び鉛筆を握る。死を前にした賢治は、気分の良い日に布団の上に正座し、黒い革装の手のひらに収まるほどの手帳に向き合った。そうして命の最後の火花を散らして書かれたのが、あの『雨ニモマケズ』なのである。

    政次郎が狂おしいほどに信じ、甘やかし、守り続けた「不肖の息子」は、父親という高い壁を飛び越え、偉大な作品を後世に残す天才となった。
    親が子を育てる一瞬一瞬には正解など見えないが、その本当の「答え合わせ」は、人生のずっと後になって、思いもしない美しい形で返ってくる。綺麗事だけではない、人間の泥臭い愛のグラデーションに、心の底から揺さぶられる作品だった。

    0
    2026年07月03日
  • 天下の値段 享保のデリバティブ

    Posted by ブクログ

    先物取引の勉強をふむふむしながら、同時に江戸と大坂の知恵比べ合戦も楽しめる。大阪に行って堂島のあたりを歩きながら思い返してみたい小説。

    0
    2026年06月28日
  • 夫を亡くして 北村透谷の妻・ミナ

    Posted by ブクログ

    学生時代に、北村透谷を尊敬するあまり自らを「透谷先生」と名乗っていた教師がいた。何の単位かも忘れたが熱く思いを語る少年のような顔だけは覚えている。
    これは僅か25才で家族を残して自死した後の妻の孤軍奮闘の伝記的小説。まだ封建的な明治時代に自分の意思を貫くバイタリティーは凄いと思った。

    0
    2026年06月21日
  • 銀河鉄道の父

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「お前は、父でありすぎる」
    厳格な『明治の父』であろうとしながらも、子どもたちへの『愛、情』が勝ってしまう。『大正、昭和の新しい父親』政次郎。

    本書を読む前の宮沢賢治像は、中学校教諭の聖人君子なイメージ。読んだあとには見事なほどの親の脛をかじり尽くす放蕩息子になった。

    それでも、「宮沢賢治の、一番の読者は、この俺だ」と、言える父。すごい。資金力も。

    子どものやりたいことを最終的には肯定し、支えられる様な親に私もなりたい。

    0
    2026年06月16日
  • 家康、江戸を建てる

    Posted by ブクログ

    湿地だらけの貧しい村だった関東を割譲された家康が、町づくりに注力する話。利根川の流れる方向を人工的に変えるなどの奇抜な発想を実現したり、飲料水の確保に尽力したりと、武将ではなく政治家としての人物像が描かれます。未来を見据えた家康の先見の明に驚かされるし、家康に抜擢された役人をはじめ職人や商人が今の東京の基礎を築いた情熱が行間からもあふれ出てるし、良い作品でした。

    0
    2026年06月01日