門井慶喜のレビュー一覧
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ネタバレ美術品の真贋を眼力ではなく舌で見わけるという天才美術探偵・神永美有が、ボッティチェッリやフェルメールなどの泰西名画から正倉院宝物まで、様々な美術品にまつわる謎を快刀乱麻を断つかのごとく解き明かしていく。
美術探偵・神永が、ちょっとまぬけで人の好い美大講師・佐々木をお供に、美術品の真贋を味覚で判定するという美術ミステリーの連作短編集。
この作品では、美術品の価値の高低は真贋や芸術的な優劣という基準だけではなく、歴史的な研究対象としての価値であったり個人的な思い入れのある特別な品であったりという様々なアプローチで、美術品の魅力に迫っていきます。
単に美術品の鑑定での謎を解いていくだけに収まら -
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“釜さん”こと榎本武揚は、同時代の誰にも先駆けて、所謂“近代”というモノ、技術や社会の仕組みや、そういうモノが発達した歴史を知識として、体感として身に着けたような人物だった。そういう人物であったが故に抱いた野心と行動…それが本作の軸になっている。
他方で、“釜さん”こと榎本武揚が知悉する「近代」に対する「近世」或いは「さむらい」の価値観や、“天子様”という朝廷の台頭によって、一連の戊辰戦争に通じる流れの中での「変化」というようなモノを考察する内容が含まれ、それがなかなかに深い…
力強い感じで、ドンドン展開する物語に引き込まれる…愉しい作品!! -
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2015年26冊目。
京都、大阪、神戸、横浜、東京の近代建築を巡る、ゆる散歩対談集。街中で、「レトロかわいいな」とか「しぶいなあ」と感じた建築物は、これからは意識的にチェックしてみようかな。
どの建築物にも、時代背景はもちろん、関係者の趣味や思惑も色濃く反映されている。人間味溢れるストーリーがある。
色とか雰囲気だけじゃなくて、全体のバランスとか部分的なデザインにも、これからは注目してみたい。
神戸と横浜の貿易関連施設、大阪の綿業会館とか、特に興味深かった。
最後に台湾が出てきたのも良かった!植民地政策というと、どうしても、圧政のイメージが強くなっちゃうけど、八田與一のダム建設と銅像の件は、な -
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本書の解説で「ビブリオ・ミステリー」という語を見て、そういうミステリーのジャンルがあることを初めて知り、どんなものだろうと思い購入。
殺人事件や犯人捜しがあまり好きではなく、通常のミステリー小説だと、つい後ろから読んでしまって、楽しみを半分くらい失いがちな私にとって、本格派ビブリオ・ミステリーの本書は、純粋に謎解きを楽しむことができてよかった。
この本、三省堂本店で「書店員のおすすめ」になっていたけれど、その気持ちは非常によくわかる。文献資料のリサーチや分類・整理に関わったことのある人であれば、自分の求める文献資料を探しているときのワクワク感がそのまま味わえるだろう。 -
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宮沢賢治の逸話やエピソードは、書籍やネットなどから耳に、いや目にしたことは多少あった。しかし、その父となると全く知らず、好奇心から。
明治〜昭和を生きたこの父親、政次郎に、現代の父親像を見、描いた著者の慧眼は素晴らしい。
それにしても、鬼になり切ろうとしてもなり切れない、どうしても甘やかしてしまう親の心根に、病弱でおぼっちゃまの賢治もどっぷりと浸かっている。この辺りの描写は、私にとっても耳が、いや目が痛い。親に庇護されつつ、金銭的な援助も受けつつも思春期は反抗したり、夢みがちなことを言ってみたり……。
それでも、さすがにここまでは……。
なんだかんだ言いながら赦し、援助する政次郎の姿は、現 -
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ネタバレ副題 享保のデリバティブに惹かれて、読み始めた。
江戸時代の大坂の事情なんてほとんど知らない状況でも、
経済小説として楽しむ読めた。
特に、先物取引は何のためのものか、という問いに、
出てくる者たちがたどり着く過程が非常に楽しかった。
その視点が将軍吉宗をして、一徳川大名の視点から、全国の将軍としての俯瞰的視点となり、享保の大飢饉を最小限の犠牲に留めようとする、主体的な動きへと変化させる。
ちょっとした気分で手に取ってよかったと思う。
なお、デリバティブの機能とは
・大勢が価格決定に関わることで、価格調整弁としての機能
・将来の価格安定による生産者の安心
といったところだろうか。 -
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父から見た宮沢賢治の姿が描かれた作品。銀河鉄道の夜、のようなファンタジーはどうやったら描かれるのかまったく想像がつかなかったが、この作品で賢治の人となりが少しでも理解できるようになった。少しずるがしこい幼少の賢治、事業を始めようと全く世の中を理解していない高校生の賢治がいて、そこから家族を離れて成長していった賢治は、父からはどういう感情を持っているのか、読み取れなくなってくるのも、面白い。何より一番は、父の底知れぬ家族への愛情を、この作品からあたたかいメッセージのように受け取ることができたことである。家族の大切さを、改めて作品を通して気づけた。