門井慶喜のレビュー一覧

  • おさがしの本は

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    多分、東京タワーは富士山なのだろう。単なる造形場の相似を遥かに超えた、もっと本質的な意味において。そう、現代の我々が東京タワーに捧げる憧憬は、昔の人々が富士山で捧げた信仰とあまり変わりないのだ 貸し出しの実績を見ても、購入図書の一覧を見ても、事実上、無料本屋ではないか 文字を読む能力を最も大規模に、かつ最も組織的に養い、鍛え、保ち、深めるための装置は一体何か。これはもう書物以外にはない

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    2018年02月21日
  • 天才たちの値段 美術探偵・神永美有

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    美術品の真贋を眼力ではなく舌で見わけるという天才美術探偵・神永美有が、ボッティチェッリやフェルメールなどの泰西名画から正倉院宝物まで、様々な美術品にまつわる謎を快刀乱麻を断つかのごとく解き明かしていく。

    美術探偵・神永が、ちょっとまぬけで人の好い美大講師・佐々木をお供に、美術品の真贋を味覚で判定するという美術ミステリーの連作短編集。

    この作品では、美術品の価値の高低は真贋や芸術的な優劣という基準だけではなく、歴史的な研究対象としての価値であったり個人的な思い入れのある特別な品であったりという様々なアプローチで、美術品の魅力に迫っていきます。

    単に美術品の鑑定での謎を解いていくだけに収まら

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    2017年03月07日
  • かまさん――榎本武揚と箱館共和国

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    “釜さん”こと榎本武揚は、同時代の誰にも先駆けて、所謂“近代”というモノ、技術や社会の仕組みや、そういうモノが発達した歴史を知識として、体感として身に着けたような人物だった。そういう人物であったが故に抱いた野心と行動…それが本作の軸になっている。
    他方で、“釜さん”こと榎本武揚が知悉する「近代」に対する「近世」或いは「さむらい」の価値観や、“天子様”という朝廷の台頭によって、一連の戊辰戦争に通じる流れの中での「変化」というようなモノを考察する内容が含まれ、それがなかなかに深い…
    力強い感じで、ドンドン展開する物語に引き込まれる…愉しい作品!!

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    2017年01月22日
  • シュンスケ!

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    自身が生きる時代の、そして自身が創る時代の、その行き着く先を飽くまでも見詰めようとした男…本作の俊輔はそういう人物かもしれない。
    立派な時代モノながら、タイトルが漂わせる雰囲気のような、「現代の若者の奮戦」に何処か通じる…
    非常に愉しい一冊で、お薦めだ!!

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    2016年09月05日
  • 東京帝大叡古教授

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    結末の種明かしを読んでうなりました。これはすごい。夏目漱石や日露戦争などの歴史上の人物や史実と、叡古先生という架空の人物をうまく織りあわせて、すばらしいミステリーになっている。主人公・藤太の一代記のようにもなっていて、最後、泣いた。思い返してもゾクッとする種明かしだった!
    ウンベルト・エーコが亡くなり、夏目漱石没後100年、そして戦争を起こそうとしているようにも見える現政権。なんというタイミングで文庫化されたんでしょう。舞台は明治~昭和初期だけど、そのまま現代への警告のようにも読める。

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    2016年04月25日
  • ぼくらの近代建築デラックス!

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    2015年26冊目。
    京都、大阪、神戸、横浜、東京の近代建築を巡る、ゆる散歩対談集。街中で、「レトロかわいいな」とか「しぶいなあ」と感じた建築物は、これからは意識的にチェックしてみようかな。
    どの建築物にも、時代背景はもちろん、関係者の趣味や思惑も色濃く反映されている。人間味溢れるストーリーがある。
    色とか雰囲気だけじゃなくて、全体のバランスとか部分的なデザインにも、これからは注目してみたい。
    神戸と横浜の貿易関連施設、大阪の綿業会館とか、特に興味深かった。
    最後に台湾が出てきたのも良かった!植民地政策というと、どうしても、圧政のイメージが強くなっちゃうけど、八田與一のダム建設と銅像の件は、な

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    2015年09月06日
  • ぼくらの近代建築デラックス!

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    この手の企画は、東京だけとか、関西だけ、という内容が多いけれど、本書は大阪、京都、神戸、東京とバラエティに富んでいるのが嬉しい。さらに追加での台湾の部分も興味深い内容だった。
    近代建築というとどうしでもコンドル、そして辰野金吾に偏りがちだ。本書も勿論辰野金吾の作品はフィーチャーされているが、偏った感じではなく、また設計者の人生んいも多く触れられていて、読み物として面白かった。続編を期待したい。

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    2015年06月06日
  • おさがしの本は

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    本書の解説で「ビブリオ・ミステリー」という語を見て、そういうミステリーのジャンルがあることを初めて知り、どんなものだろうと思い購入。
    殺人事件や犯人捜しがあまり好きではなく、通常のミステリー小説だと、つい後ろから読んでしまって、楽しみを半分くらい失いがちな私にとって、本格派ビブリオ・ミステリーの本書は、純粋に謎解きを楽しむことができてよかった。

    この本、三省堂本店で「書店員のおすすめ」になっていたけれど、その気持ちは非常によくわかる。文献資料のリサーチや分類・整理に関わったことのある人であれば、自分の求める文献資料を探しているときのワクワク感がそのまま味わえるだろう。

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    2022年09月06日
  • 夫を亡くして 北村透谷の妻・ミナ

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    学生時代に、北村透谷を尊敬するあまり自らを「透谷先生」と名乗っていた教師がいた。何の単位かも忘れたが熱く思いを語る少年のような顔だけは覚えている。
    これは僅か25才で家族を残して自死した後の妻の孤軍奮闘の伝記的小説。まだ封建的な明治時代に自分の意思を貫くバイタリティーは凄いと思った。

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    2026年06月21日
  • 銀河鉄道の父

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    「お前は、父でありすぎる」
    厳格な『明治の父』であろうとしながらも、子どもたちへの『愛、情』が勝ってしまう。『大正、昭和の新しい父親』政次郎。

    本書を読む前の宮沢賢治像は、中学校教諭の聖人君子なイメージ。読んだあとには見事なほどの親の脛をかじり尽くす放蕩息子になった。

    それでも、「宮沢賢治の、一番の読者は、この俺だ」と、言える父。すごい。資金力も。

    子どものやりたいことを最終的には肯定し、支えられる様な親に私もなりたい。

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    2026年06月16日
  • 家康、江戸を建てる

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    湿地だらけの貧しい村だった関東を割譲された家康が、町づくりに注力する話。利根川の流れる方向を人工的に変えるなどの奇抜な発想を実現したり、飲料水の確保に尽力したりと、武将ではなく政治家としての人物像が描かれます。未来を見据えた家康の先見の明に驚かされるし、家康に抜擢された役人をはじめ職人や商人が今の東京の基礎を築いた情熱が行間からもあふれ出てるし、良い作品でした。

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    2026年06月01日
  • 定価のない本

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    ストーリー展開が意外性もあり期待とはまた違う方向ではあったけど、面白かった。恥ずかしくなるくらい熱い展開もあり、門井さんの本の魅力がしっかり詰まってる。読みやすさも◎!

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    2026年05月21日
  • 銀河鉄道の父

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    父である宮沢政次郎から見た宮沢賢治の物語。後半はかなり泣かされる部分も多かった。

    政次郎は笑ってしまうくらい親バカで賢治のことが大好きで…賢治の描く美しい世界は家族の愛(と、経済的援助)に支えられたものであったのだなとしみじみ感じた。

    しかしこの時代、結核とは本当に恐ろしい病気だったのだなぁ。宮沢賢治も妹のトシも、成人してから結核で亡くなったとされている。淡々とした語り口だったけれど、大切な子供を2人も亡くすことがどれほどの地獄か。胸が締め付けられる思いだった。

    賢治は今日では聖人のように扱われることが多いけれど、かなりの変人でもあり、親に繰り返し金を無心するような金銭感覚の未熟さもあり

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    2026年05月19日
  • 札幌誕生

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    あれ?
    札幌ってまだ100年ぐらいしか経ってないの??
    というか全然知らない話で面白かった!

    みんな道半ばで外されてしまい切ない…

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    2026年05月09日
  • 夫を亡くして 北村透谷の妻・ミナ

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    北村透谷の名前は知っていたが、27歳で自死していたとは。門井さんの文章は読みやすい。心の声の吹き出し調、クセになる楽しさ。深刻な内容もるんるん気分で。「僕は政治家にはなれなかったのだから。言い換えると天下国家を覆う大説を唱えることができなかったのだから。だから小説を。小説家になります」「小説というのは偉いものだ、高邁なる精神の立ち現れだ。しかしそれはあくまでも西洋の文明社会でのこと。日本では読むほうも書くほうも単なる暇つぶしでしかない」そう…かな…。「自分で決めたことの責任は自分で負う。それが人間というものです」

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    2026年05月01日
  • 天下の値段 享保のデリバティブ

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    すごく読みやすかったけど、1つ問題が起きて、それが解決、というのを繰り返しており最後まで淡々としていた印象。大坂と江戸の対比は面白く、良いエンタメだなと改めて感じた。

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    2026年04月21日
  • 札幌誕生

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    当地在住の身にも関わらず知らないことばかりでとても学びが多かった。
    判官様というお菓子があるくらいなのに島義勇のことは開拓の人と言ううっすら知識しかなかったのが恥ずかしい。そしてたったの数ヶ月しかいなかったことに驚愕。それでこの碁盤の目の街の基礎を作ったとは…
    あと面白かったのはやはり有島武郎の数奇な人生と岡崎文吉の石狩川工事。
    有島は名前を知っていても具体的には何をしたか知らなかったので、ニセコに記念館がある意味を知れたのが大きい。小作農解放は凄すぎる。
    あと石狩川がまさかショートカットされていたなんて知らなかったので、読んだ後に地図を見ると面白かった。茨戸川は捷水路で切り取られたものだった

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    2026年04月18日
  • 家康、江戸を建てる

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    徳川治世の礎となる江戸という都市が、当初沼地の状態から如何にして形作られていったかを、五つの物語を通して描いた本。利根川東遷を担った伊奈氏による治水、貨幣鋳造による経済基盤の整備、玉川上水に代表される水道の敷設、石材の調達から始まる石垣普請、そして白漆喰の天守建設と、異なる分野の取り組みを通して、一つの都市へと収束していく構成が印象的。

    「江戸版プロジェクトX」とでも言うべき魅力がある。歴史の表舞台に立つ武将ではなく、現場で試行錯誤を重ねる技術者や職人たちが主役として描かれている。壮大な計画も一足飛びに成功するわけではなく、失敗や衝突を経て形になっていく。その過程には理想だけでは進まない現

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    2026年04月18日
  • 銀河鉄道の父

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    宮沢賢治の逸話やエピソードは、書籍やネットなどから耳に、いや目にしたことは多少あった。しかし、その父となると全く知らず、好奇心から。

    明治〜昭和を生きたこの父親、政次郎に、現代の父親像を見、描いた著者の慧眼は素晴らしい。

    それにしても、鬼になり切ろうとしてもなり切れない、どうしても甘やかしてしまう親の心根に、病弱でおぼっちゃまの賢治もどっぷりと浸かっている。この辺りの描写は、私にとっても耳が、いや目が痛い。親に庇護されつつ、金銭的な援助も受けつつも思春期は反抗したり、夢みがちなことを言ってみたり……。
    それでも、さすがにここまでは……。
    なんだかんだ言いながら赦し、援助する政次郎の姿は、現

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    2026年04月12日
  • 天下の値段 享保のデリバティブ

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    副題 享保のデリバティブに惹かれて、読み始めた。

    江戸時代の大坂の事情なんてほとんど知らない状況でも、
    経済小説として楽しむ読めた。
    特に、先物取引は何のためのものか、という問いに、
    出てくる者たちがたどり着く過程が非常に楽しかった。
    その視点が将軍吉宗をして、一徳川大名の視点から、全国の将軍としての俯瞰的視点となり、享保の大飢饉を最小限の犠牲に留めようとする、主体的な動きへと変化させる。
    ちょっとした気分で手に取ってよかったと思う。

    なお、デリバティブの機能とは
    ・大勢が価格決定に関わることで、価格調整弁としての機能
    ・将来の価格安定による生産者の安心
    といったところだろうか。

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    2026年04月01日