読む前は「札幌」という都市の誕生を市政史的に淡々と語っていく感じを想定していた。
しかし、その予想は覆された。
北海道開拓使がおかれた明治初頭から始まり、開拓使の首席判官に任命され、現在の碁盤の目状の都市計画の基盤を構築した元佐賀藩士・島義勇、クラーク博士が去った後の札幌農学校二期生として入学した内村鑑三、アイヌの女性でありながらイギリス人の聖公会宣教師ジョン・バチェラーによって受洗し、ジョンや後に出会う金田一京助が作成するアイヌ語辞書の制作に協力したバチラー・八重子、父親から札幌に購入した巨大な農地を引き継ぎ、慣れないながらも農場経営も行うが、後に農地経営を小作人に譲渡する農地開放を日本政府の施策に先立って実施した作家の有島武郎、蛇行しているが故に気候の変化により周囲に繰り返し水害を及ぼした石狩川の治水の計画を立案して、実行した岡崎文吉。
そう言った札幌という都市の創世に関わった人たち、一方でそれは「和人」によって失われて行くアイヌの土地、北海道の歴史を時代小説的に語る作品。
歴史ノンフィクションというのではなく、Based On True Story 的なフィクション。
その読書前とのギャップが新鮮でどんどん引き込まれて読めた。