門井慶喜のレビュー一覧
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日本に約3000基ある灯台の役割や多様な価値について知ってもらおうという趣旨で進められている「海と灯台プロジェクト」。主体は一般社団法人・海洋文化創造フォーラムで共催が日本財団と海上保安庁である。そのプロジェクトの一環として企画されたのが、灯台が果たしてきた地域固有の役割や機能、存在価値を物語化して知らしめようという取り組み。本書はそれに基づき19基の灯台を6人の著名な作家が分担して現地取材し、紀行文集として取りまとめたもの。
灯台の建築技術や歴史、地域との関わりについて様々な観点から語られ、読み進めるうちに少しずつ灯台への関心が高まってくる。
しかし、門外漢の私には歴史作家や描写力のある作家 -
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学校で無理やり読まされた作家は大体嫌いになるので、宮沢賢治もその1人でした。
童話を読んでもひたれない。詩は説教くさい。何より、自分の周りにいた「賢治好き」の人達が苦手でした。なんか皆んな“良い人“っぽかったんですよ。
その後、好きな作品も見つけましたが、僕の中の賢治像は、「軽度の発達障害で、重度のシスコンで、大人になっても親の金でレコードを買い漁る放蕩息子」と言う散々なものでした。賢治の父政次郎を主人公に据えた本作ではたして何かがかわるのだろうか、、
どうしても上記のような視点で読んでしまうので『父』政次郎よりも賢治の言動に注目してしまいます。歴史小説の常として、どこまでが史実でどこからが -
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東京初、すなわち日本初、東洋初の地下鉄が完成するまでの実話
創設者である早川徳次さんが主人公で、「前例のない大きなことを成し遂げたい」という気持ちから、イギリスで見た地下鉄を日本にも持ち込むと言うことを決めて、その事業の立ち上げから完成までの壮絶な物語が描かれていました
地中に鉄道を走らせると言うことに対して、前列が無いので、懐疑的な意見が大勢を占める中、技術的、事業的に成立する見込みがあることを、泥臭く、コツコツエビデンスを積み上げていく姿は壮絶でした
加えて、地下鉄敷設の工事に携わった面々にもスポットを当て、工事総監督を担った竹五郎さんはじめ、5人の監督、監督同士の意見のぶつかり合い -
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日本銀行、東京駅を建築した辰野金吾さんの一代記
留学先から戻った場面から始まり、夢や理想を語り実現に向けて進んでいく。
欲しいと思った仕事のためには師匠を否定することも厭わない豪快で単純な金吾。
晩年、弟子から否定され若かった頃に自分が師匠にしたことを思い出し、老いた自分に嫌気がさしながらも新しいことを生理的レベルで受け入れられないことで喪失感を覚えるあたりは切なかった。
時代が時代なだけに、色々なものが西洋式に変わっていく過渡期に取り残されていくような感覚は社会人なら誰でも経験することだけど、仕方のないこと。
物語の中の言葉を借りれば
人間は、真摯に仕事する限り、誰でも過渡期の人 -
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[1]優秀な旅行企画マンだった敬典は現在ヤヌシ(専業主夫)として中学生の娘つばめ、大企業の子会社で重要なポストに就いている妻の陽子を支えているが難しい年頃の娘との関係はデリケート。
[2]家族とは《人はみな、死ぬ瞬間まで中ぶらりんだ》《だから親が子の心を忖度するのも、子が親の心を意識するのも、要するに中ぶらりんが中ぶらりんに対してる》《そのことに耐えねばならない。おたがいに》p.318
[3]ミステリとしては敬典が持ち前の知識と発想力で謎を解くあっさり軽やかな日常の謎系で読みやすい。いくらかウンチクも得られます。読んで謎を解ける読者はほとんどいないのでは? それこそ敬典並でないと。この『人形の