門井慶喜のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
小学校の頃、インフレを学んだ事がある。
高学年か低学年か、いつか忘れたけどBB弾集めが流行っていた。神社で中学生か高校生かがたまにサバゲーごっこをやっており、流れ弾が至る所に落ちている。それをただ集めるだけの遊びというか収集だ。オレンジは普通種、白もよく見る、たまにある緑や青はレアで、みんな羨ましがった。
そこから、BB弾同士を交換しはじめ、そしてオレンジいくつで給食の何何と交換、とおったような紙幣価値すら持ち始めた。割と理にかなったシステムで、労働(BB弾拾い)に勤しむ人ほど豊かになるのだ。
ただ、ある時、BB弾を「購入」したヤツがいた。残高数百のBB弾をばら撒き、どんどんBB弾の価値が下がっていった。
この時はまだインフレという言葉を知らなかったが、まさにインフレだったと思う。
今ある経済の難しいシステム、機構も元を辿れば、こんな感じで自然発生していたのだろう。そこから更に多数の知恵を借り、徐々にシステムが精錬されていった。途中で意図的、非意図的に壊す人がいても、自然発生したということは発生する利があるというもの。神の見えざる手ではないが、最適に向かう歩みは止められないのだろうな、と読んで思った。何を言ってるんだ私は? -
Posted by ブクログ
もっと面白くなったんちゃうのん。と。
米を主にしたデリバティブ。
相場操作じゃねえかと危惧するお公儀が、逆に相場操作をしようとする。
自らの正義、お江戸の正義に商売人としての正義を重ねようとする人たちと、ほっとけやボケ、と言う商人。
皆んな自分の利ばっかり追求する、神の見えざる手的な資本主義的な市場原理を絡めつつ、暴れん坊将軍的なケレン味を加えると思いきや、伏線と思わせながらも回収する気の全くない展開と、数ページにわたるブルーバックス的な、わかるが必要のない描写。
自分のことを「おけい」という女子もどうかねというドン引きがスパイスとは言え。
まあ、こんなもんなんすかね。
時代小説も。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ幕末から戦前を中心とした北海道、札幌の歴史小説。
五つの章から構成されていて、島義勇、内村鑑三、バチラー八重子、有島武郎、岡崎文吉が各章の主人公。
札幌の開拓物語と思っていたが、島と岡崎の章以外は札幌ゆかりの人の話という感じです。
とにかく島や松浦武四郎がいなかったら札幌が道都になっていなかったと思えると島の章は重要です。
堀利煕についても最期について記述してあげてほしかったです。
内村、八重子、有島と文化人が続きますが、キリスト教やアイヌ民族や農場経営について勉強になりました。
石狩川治水責任者の岡崎がトリになるのですが、時代的にはそれまでの章と前後する部分もあるものの、彼の功績によるところが大きく、札幌の人口が函館の人口を超えて、名実ともに道都となったところは感動しました。
確かに、平城京や平安京のように何もないところから初めから都として創られた札幌は近代日本人の偉業とも言えます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ昨秋(2025)、新聞書評で見かけた一冊。
享保の改革の様子、暴れん坊将軍で有名な吉宗がなぜ米将軍ともあだ名されていたかが良く分かる(笑)
副題に、「享保のデリバティブ」とあるように、これは経済小説だ。天下の台所と呼ばれた大阪では、江戸の中期には米取引が発展、一大市場を成していた。そして、そこでは現物の売買だけでなく、現代のデリバティブ取引と同じ仕組みを持つ「帳合米」の取引が発達していたという話。
それを、ひとりの仲買人を通し、大阪堂島で繰り広げられる米取引の様子と、権力で価格を統制しようとする幕府との丁々発止の駆け引き、交渉の様子が描かれる。
その中心人物である垓太と、将軍吉宗は、十代の若いときに堂島の米市場で会っているというエピソードを挿入することで、物語に厚みと人間味を加味する、なかなか巧い建付けだ。
「帳合米」は、実は、幕府非公認のグレーゾーンの市場でもあったという。
故に、大阪の商人たちに米価を随意にコントロールされているのでは? と江戸の御家人、幕府役人たちは訝る。米価を上げ御家人・侍の生活を向上させようと、江戸幕府 ――徳川吉宗と大岡忠相―― が、江戸の名商を大坂に派遣し、米取引市場の乗っ取りを図る。
それに対して、市場の力を信じ、大坂の米取引を守ろうとする垓太ら米商人たちが立ち上がり、幕府と対峙するというのが大筋だ。
ここで、そのデリバティブの妙を活かした経済合戦が展開されるのかと思ったが、意外や、垓太が江戸へ直談判、帳合米の仕組み、市場メカニズムの重要性の理解を吉宗、大岡に求めるという展開は、ちょっとテンションが下がった。これを交渉の場でなく、相場の中で、相手に身を以って知らしめるような展開とできなかったかと、少し残念。
ただ、交渉の場に、本来いるはずもない吉宗が、屏風の陰から盗み聞きしていたというのは、落語的で面白かったりもする。
日本史上もっとも資本主義が進んでいたといわれる江戸時代。その中心の堂島の米取引所の実態を詳細に描き、エンターテインメントに仕立てたのはお見事だった。
垓太のこの言葉が、物語の核心を突いている。
「相場いうのは、運や勘で張るもんやない。情報(ねた)で張るもんや」