門井慶喜のレビュー一覧
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『おさがしの本は』の姉妹編らしいと知り読んでみましたが、3年後に市役所の総務課へ異勤となった和久山隆彦はでてきましたが、話としては本がテーマとはなっていますが、別物でした。
N市立文学館でアルバイトをしながら小説の研究をしている老松郁太、29歳が神田神保町で作家の徳丸敬生(のりお)のなぜかサインの入った遺稿集をみつけるところから物語は始まります。
徳丸敬生は芥川賞候補にもなったのですが、昭和55年に62歳で樹海で行方不明になりましたが、死亡が確認されていませんでした。文学館には徳丸の遺稿とされる原稿その他一式が置かれています。
しかし、文学館は廃館が決まっていて、廃館後は郁太の父の後継ぎで会 -
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言わずと知れた坂本龍馬の妻おりょうを主人公に、彼女の波乱万丈の人生とともに、門井版龍馬の物語。
龍馬は当初、おりょうからは鼻もかけられなかったとの挿話は意外だった。おりょうが、龍馬との結婚を決めた理由も、頼りないから放っておけないからだったとは。
英雄然とした司馬版龍馬よりも、より人間臭さが感じられる龍馬像。
姉乙女ほかいろいろな人物に手紙を書いていた龍馬を評して、21世紀に生まれていたなら、スマホを片時も話さないSNSの中毒愛好者になっていたかもと、評しているのも面白い。
そんな龍馬とおりょうの夫婦生活は、琴瑟相和すの言葉通りだっただろう。それだけに、龍馬亡き後の彼女の急変には、疑問符ととも -
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門井慶喜氏の歴史小説。江戸を一大都市にのし上げることになった大仕事を、その中心人物のドラマとともに描く。
河川の流れを変えた灌漑技術の伊奈忠次、小判を作り、貨幣の日本統一で経済を掌握した橋本庄三郎、水を引いた内田六次郎。石を見通す見えすき吾平、天守を作った職人たち。
家康の攻めと守り、そして天下人にふさわしい判断力と、一つ一つに思慮のある家康と、優秀で、且つ自分の意思と夢を持つ主人公たちが織りなすプロジェクトのロマン。ゼネコンや、石油コンビナートなどの建設に携わる現代人とも通じるような、熱い情熱が江戸を作っていたということを土台にしたドラマとなっている。特に、石を運び石垣を作るプロジェクトでで -
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タイトルから、いかつい刑事がうんちくを傾けながら悪いヤツを捕まえるのかと思われたのですが、そうではありませんでした。
いかつい男がうんちくを傾けるのは当たってましたが、刑事ではなく悪いヤツのほうでした。
捜査班は二人、岸すみれと部下の三田村豪気。豪気は素人ながらも着眼点は冴えたところがあり、最初は呆れられたものの、次第に頼りにされるようになっていきます。
この二人が詐欺まがいの事件を追い、黒幕である上述のいかつい男を追いつめていく話です。
その男、実はすみれと浅からぬ縁があり、警察官としては許せないのに岸すみれとしては…と葛藤を抱えながらの追及。
部下で相棒の豪気はすみれの心情を慮り、自分が頑 -
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親父は蒸発し、母親も男を作って蒸発。施設に預けられ、決して恵まれた少年時代を送らなかった主人公。高卒で不動産営業のドサ回り。
営業中、とあるオッさんに出会い物語は始まる。
竹島が日本のものか韓国のものか、一冊の古文書を巡り、外務省から、韓国大使館、さらに中国へ。三つ巴の展開に。
さすが、門井慶喜氏。
領土問題だけでなく、貧困による教育格差、その他、実に示唆に富む一冊。
竹島問題についても、新書5冊分くらいを大変分かりやすく、噛み砕いてくれている。
この手の題材からイデオロギーを排して、エンタメに昇華する技術はさすがだ。
領土問題に興味を持つために良い一冊でした。
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徳川家康という人物に対しては、信長や秀吉よりも地味なイメージを持っていました。しかし家康が江戸に幕府を開いた先見性や、世界でも有数の100万都市への発展。その後の戦前と戦後に繋がる東京への軌跡を知って、決してふたりにひけをとらない名将なのだと思いました。
本書では、特に江戸の発展に川の存在が欠かせないとあります。利根川の流れを曲げるという事業や神田上水をはじめとする水流を制御するシステムは、経済の発展に大きく寄与したのだと実感。
また、東京各地の日比谷などの名前の由来にも触れて、興味深く読むことができました。日比谷は、ひびというのり?をとる棒の名前が由来だとか。