門井慶喜のレビュー一覧
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建築物 家などを 語るというのは、歴史的な視点でみると
面白いものが、見えてくる。
辰野金吾の「東京 はじまる」の 門井慶喜と
日本政治外交史の専門家の 奈良岡聰智による対談が、
1909年に辰野金吾が作った奈良ホテル。
大磯の料亭 松月、丸の内ホテルのレストラン。
という臨場感があって、実に良い企画である。
高橋是清に学んだ 辰野金吾。佐賀出身であったが、
全く、高橋是清に会えたことが、セレンディピティだった。
そのことによって、政治力の力を得ることができたのかもしれない。
建築界には、維新の負け組が多いという指摘は、ありうる。
医療のための海水浴を提唱した鈴木順によって、
大磯が、別荘地となり、伊藤博文、大隈重信、陸奥宗光、
山縣有朋、西園寺公望・寺内正毅・原敬・加藤高明・吉田茂
など 首相経験者たちが多く住み、明治の奥座敷と言われた。
その別荘は、質素で、日常生活をすることが目的で、
家から 海を越えて、富士山が見える位置であった。
外に視線を置ける 別荘で、軽井沢は うちに向ける別荘。
政治家や経済人が濃密なコミュニケーションができる。
岩崎弥之助、渋沢栄一もいた。
政治家のスケールが、大きいのは、こんなところにあったかもしれない。
原爆ドームの評価の仕方と長崎の浦上天主堂が、なぜ破壊されたのか
というのは、実に興味深い話である。
原爆ドームが、世界遺産に指定された。世界が認めたのはなぜか?
帝冠様式が、1920年から1930年台に流行ったのは、日本の歴史的な背景があり、
天守閣の再建が絡んでいたというのが、愛知県県庁舎から読み取れるのは
なるほど、そうやって、建築物を見るのかと納得した。
愛知県にいた時に、子供ながら 不思議な違和感があったのが、理解できた。
統一性や秩序が一貫しない東京の建築物について、
街並みの あり方として、もっと 深めていく必要がある。
関東大震災、戦争による災害、そしてオリンピック1964によって
東京の街が破壊されていったというのも、面白い。
リフォームという言葉を使っているが、リノベーションというべきものだが
再開発の困難性は、あるものをどうするのかということが
重要で、思想や哲学がいるわけだが、その思想がなくなってきている時代という。
都市計画のあり方にも、もっと 思想がいると思った。
建築物を見る視点を与えてくれる 面白い対談だった。 -
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『おさがしの本は』の姉妹編らしいと知り読んでみましたが、3年後に市役所の総務課へ異勤となった和久山隆彦はでてきましたが、話としては本がテーマとはなっていますが、別物でした。
N市立文学館でアルバイトをしながら小説の研究をしている老松郁太、29歳が神田神保町で作家の徳丸敬生(のりお)のなぜかサインの入った遺稿集をみつけるところから物語は始まります。
徳丸敬生は芥川賞候補にもなったのですが、昭和55年に62歳で樹海で行方不明になりましたが、死亡が確認されていませんでした。文学館には徳丸の遺稿とされる原稿その他一式が置かれています。
しかし、文学館は廃館が決まっていて、廃館後は郁太の父の後継ぎで会社を経営している弟の勇次が買いとって料亭にすることが決まっています。
それを知った郁太は「本のなかでも小説はいちばん役に立たないものじゃないか」という弟に「もし私がお前を納得させられたら、料亭はやめるんだ」と言いだし、勇次もそれをうけてたち、二人の小説談義「人はなぜ小説を読むのか」が始ります。
一方、直筆のサインの入った、徳丸敬生の遺稿の謎、そして、徳丸の生死も途中ではっきりとします。
「人はなぜ小説を読むのか」この答えも兄弟の間で答えが出されますが、それが正論かどうかはともかく、こんな大きなテーマを作品で解答した作者には脱帽しました。 -
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言わずと知れた坂本龍馬の妻おりょうを主人公に、彼女の波乱万丈の人生とともに、門井版龍馬の物語。
龍馬は当初、おりょうからは鼻もかけられなかったとの挿話は意外だった。おりょうが、龍馬との結婚を決めた理由も、頼りないから放っておけないからだったとは。
英雄然とした司馬版龍馬よりも、より人間臭さが感じられる龍馬像。
姉乙女ほかいろいろな人物に手紙を書いていた龍馬を評して、21世紀に生まれていたなら、スマホを片時も話さないSNSの中毒愛好者になっていたかもと、評しているのも面白い。
そんな龍馬とおりょうの夫婦生活は、琴瑟相和すの言葉通りだっただろう。それだけに、龍馬亡き後の彼女の急変には、疑問符とともに、哀れさを感じないわけにはいかない。 -
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門井慶喜氏の歴史小説。江戸を一大都市にのし上げることになった大仕事を、その中心人物のドラマとともに描く。
河川の流れを変えた灌漑技術の伊奈忠次、小判を作り、貨幣の日本統一で経済を掌握した橋本庄三郎、水を引いた内田六次郎。石を見通す見えすき吾平、天守を作った職人たち。
家康の攻めと守り、そして天下人にふさわしい判断力と、一つ一つに思慮のある家康と、優秀で、且つ自分の意思と夢を持つ主人公たちが織りなすプロジェクトのロマン。ゼネコンや、石油コンビナートなどの建設に携わる現代人とも通じるような、熱い情熱が江戸を作っていたということを土台にしたドラマとなっている。特に、石を運び石垣を作るプロジェクトでででくる石切り、そして石への強い思いが、親から子へと、また人から人へ伝わっていく。江戸城完成に至るに3代をかけた徳川は、その後2百年あまりを太平の世とした。その功績と情熱を感じる一冊。 -
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タイトルから、いかつい刑事がうんちくを傾けながら悪いヤツを捕まえるのかと思われたのですが、そうではありませんでした。
いかつい男がうんちくを傾けるのは当たってましたが、刑事ではなく悪いヤツのほうでした。
捜査班は二人、岸すみれと部下の三田村豪気。豪気は素人ながらも着眼点は冴えたところがあり、最初は呆れられたものの、次第に頼りにされるようになっていきます。
この二人が詐欺まがいの事件を追い、黒幕である上述のいかつい男を追いつめていく話です。
その男、実はすみれと浅からぬ縁があり、警察官としては許せないのに岸すみれとしては…と葛藤を抱えながらの追及。
部下で相棒の豪気はすみれの心情を慮り、自分が頑張らなくてはと奮闘するのですが、空回りしたり、逆襲を許したり、もどかしいことこの上ない(笑) でもそこがまた良いのです。
すみれは時に叱咤しながらも優しく豪気を見守り、二人のコンビはこれからも美術犯罪を暴いていくのだろうと思えます。
美術にあまり明るくない私にも理解しやすく書かれていて、楽しく読めました。