あらすじ
日本銀行本店や東京駅など、近代日本を象徴する建物を矢継ぎ早に設計した、
明治を代表する建築家・辰野金吾。
下級武士から身を立てるべく学問に励み、洋行して列強諸国と日本の差に焦り、
帰国後はなんと恩師ジョサイア・コンドルを蹴落として
日銀の建築を横取りする……!
周囲を振り回しながらも、この維新期ならではの超人・金吾は熱い志で
近代日本の顔を次々を作り上げていく。
日銀の地下にある意外な仕掛け、東京駅の周辺にかつて広がっていた海の
蘊蓄など、誰もが見慣れた建築物の向こうに秘められたドラマを知ることもできる。
ベストセラー『家康、江戸を建てる』の著者が
「江戸を壊して東京を建てた」辰野金吾を描く、大きく楽しい一代記!
※この電子書籍は2020年2月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
建築家、辰野金吾の大河小説。
正に大河と呼ぶに相応しい、波乱万丈の人生だった。
決して順風満帆ではないし、何より集大成とも言える建築に向かう頃には自分の老いを受け入れて新しいものを拒絶してるんだもんね。
栄枯盛衰、なるほどなるほど。
好きなシーンは色々ありますが、どこか1つを選べと言われたらやはり前述した箇所、辞表を突き付ける松井とのシーン。
時代の移り変わりと共に老いからも逃れられない。。。
『コーヒーにはうるさいぞ』からの『コーヒーはなかなかうまかった』の流れがより一層胸を締め付けます。
もはや、自分は最先端ではないことを社会全体が示してるんですよね。
切ない、切ないよ。
コンドルとの再会も最高ですね。
ラストも良かったなぁ。
思わず国会議事堂の建築家を調べちゃったよ笑
Posted by ブクログ
万城目学との対談本「ぼくらの近代建築デラックス! 」が面白かったので、その対談相手である門井慶喜を初めて読んでみた。
とても面白かった
東京駅を代表とする辰野式と、それとは様式の異なる日本銀行本店。
日銀の支店でも、京都支店は辰野式で、大阪支店は本店と同じスタイル。
という2つの様式の関係が以前から気になっていたが、この本を読んでその事情を理解できたのも嬉しい
Posted by ブクログ
辰野金吾の一代記。
コンドルの弟子で東京駅を設計した人、程度の知識で読んだ。
日銀と東京駅を軸に話は展開し、最後は議事堂コンペの導入まで。
師匠コンドルを越えていき、近代ビルディングの波に越えていかれる姿はなんともいえない。
ただ、東京をつくるという意識と野心は凄い。議事堂をめぐる妻木との争いも、矢橋の視点を入れることで批判的な評価を入れてもストーリーが破綻しないのが凄い。
曽禰達蔵のほか妻木、松井、今村など、この時代の様々な建築家との関係性も読んでいて面白かった。
Posted by ブクログ
江戸時代が終わって、江戸が東京になった時に、東京を諸外国に負けない都市に創り上げていった人の話。
これからの日本がどうなっていくのか、というよりもっと主体的にどういう国にしていくのかというビジョンを持って、日本銀行や東京駅を作った人の話。
なんで昔の人はこんな熱い思いを抱けるのかわからなかったけど、一節に「国家の方が年下なのだ」とあり、なんだか腑に落ちた。
Posted by ブクログ
辰野金吾の二大建築、日銀本店と東京駅の建設を軸に辰野金吾の生涯が活き活きと描写されていて、話の展開がとてもおもしろい。ジョサイア・コンドル、曾禰達三、片山東熊、高橋是清など史実上の人物との絡みも臨場感を持って描かれていて、その時代の雰囲気を身近に感じられて楽しい。
Posted by ブクログ
HKさんのお勧め。
たとえ、建築に興味がなくても知っているであろう「辰野金吾」のお話。
日本銀行本店、東京駅舎をはじめ、
中之島公会堂を設計したのはさすがに知っていたが、
唐津で高橋是清に英語を学んだとか、
鹿鳴館を設計したジョサイア・コンドルが先生だったとか、
国会議事堂の設計を争った妻木頼黄は
神奈川県立歴史博物館や横浜赤レンガ倉庫を設計してたとか、
いろいろ学べて面白かった。
もちろん、専門書を読めばそういうことは書いてあるのだろうが、
時系列で書かれているだけでは、なかなか入ってこない。
物語にしてもらうことによって、
人間関係や時代の雰囲気が感じられて良かった。
ペルーの銀山でだまされ会社をつぶした後、
日本銀行本店建築の事務主任になった
高橋是清の話も面白そうだった。
当時世界的に大流行したインフルエンザ「スペイン風邪」で亡くなったのは、
辰野金吾らしくないと思ったのは私だけだろうか。
一丁倫敦が見たかった。
そして、日本銀行小樽支店を見に行きたい。
Posted by ブクログ
辰野金吾のイギリス留学からの帰国後から日本銀行本店と東京駅の設計建築までの生涯を描いた一冊。
辰野金吾という名前は知っていましたが、初めて人物像を知ることができました。
明治維新で江戸時代の名残が残る時代。
西洋に追いつけ追い越せと日本が大変貌を遂げた時代。
師匠のイギリス人のコンドルと日本銀行の設計を巡り、時の総理の伊藤博文への直談判した時の師弟対決。
その師弟対決を超えて、友情を死ぬまで持ち続けてきた二人の絆。コンドル先生の懐の大きさがあったからこその辰野金吾がいたのですね。
妻の秀子の献身ぶりや、苦楽をともにした曽禰達蔵の身分を超えた友情。高橋是清との接点。
偉人は偉人を呼ぶですかね。
死の間際に梅太郎の言った「お義父さん。このおちょこは、今度は別のものを飲むのに使いたいですね」が涙を誘いました。
「人が仕事を選ぶのでなく、国が人を選ぶのである」
仕事の本質をつくハットする言葉な気がします。
最後の方は名言ばかりですが、辰野金吾や当時の偉人たちが今の日本を見て、何を思うのでしょうね。
Posted by ブクログ
日本近代建築の父と言われる辰野金吾の物語
日銀や東京駅の建設を担い、東京の街づくりに貢献された方
恩師であるコンドル先生とのやり取りや周囲の達蔵さんとのやり取りに面白さを感じた。
多くの政界人物との関わり合いも触れられていて、ロマンを抱いた
Posted by ブクログ
日本銀行、東京駅を建築した辰野金吾さんの一代記
留学先から戻った場面から始まり、夢や理想を語り実現に向けて進んでいく。
欲しいと思った仕事のためには師匠を否定することも厭わない豪快で単純な金吾。
晩年、弟子から否定され若かった頃に自分が師匠にしたことを思い出し、老いた自分に嫌気がさしながらも新しいことを生理的レベルで受け入れられないことで喪失感を覚えるあたりは切なかった。
時代が時代なだけに、色々なものが西洋式に変わっていく過渡期に取り残されていくような感覚は社会人なら誰でも経験することだけど、仕方のないこと。
物語の中の言葉を借りれば
人間は、真摯に仕事する限り、誰でも過渡期の人である。
そして、盟友の曽禰達三さんや弟子たちの存在が終始、光り、辰野金吾さんの人柄がよく分かるようだった。
建築業界に興味はなく、タイトルで購入したけれど
建物を知っているだけにその建築過程を覗き見ることが出来たような作品だった。
Posted by ブクログ
熱き建築家の一生を描いた物語。
この時代を生きた人の情熱はすごいなと
シンプルに感動した。とにかく熱い。
男というより漢感。
建築の専門用語が多いので、少し内容は難しめ。
わずか30年間で統治体制が変わり、身分が変わり、街並みも変わった激動の明治時代。
今は見慣れた東京駅や日本銀行がこの時代に作られた背景など初めて知ったし、
デザインに込められた思いなど時代を知らないと理解できないものも多かった。
一応星3だが、読み返すほどいい作品じゃないかなと思って、また時間を置いて読み返そうと思う。
Posted by ブクログ
めっちゃ面白かった銀河鉄道の父の作者×大好きな東京駅の話
と言うことで大期待して読みました。結論楽しめたし、すごく勉強にもなったのですが、主人公自体の魅力度、魅力的に描かれているかどうか、で言うと、完全に政次郎に軍配でした。笑
でも本当に勉強になりますよ!
Posted by ブクログ
先日読んだ「帝国ホテル建築物語」と比較すると、どうも作品へ思い入れが出来なかった。
上述した大正期の苦労人達の物語と、維新を這い上がった(本書の辰野金吾も十分苦労はしているのだが)才能ある野心家の物語では、自分の性格的にどうしても前者に思い入れてしまう。勿論フィクション上の辰野に対して、だが。
辰野に対比されるジョサイア・コンドルや曾禰達蔵は実際もなのかも知れないが余りに恬淡としているし、辰野に似ている妻木頼黄は大して書ききれない内に病死してしまう。
辰野の対立軸を決められないまま作品が終わってしまった、という印象が強い。
天神橋筋 西日本書店にて購入。
Posted by ブクログ
明治中〜後期の「はじめて物語」は
バイタリティがあって楽しいね!
もちろん、今と比べて一長一短あるけど
こうして後世から見てみると
何事かを成したいという熱量がすごい。
そのなかでも、これは建築の物語。
好きな分野だから、なお楽しかった。
この時代の建築関係の本には
かならず名の上がる「辰野金吾」
東京駅や日本銀行を設計した人として
名前はもちろん知っていたものの
その人となりと人生を
小説にアレンジされているとはいえ
これで追うことができました。
まぁ、天才のまわりの人間は
いつでも巻き込まれて大変ってことで( ̄∀ ̄)
曾禰達蔵もよくずっと交遊を続けてたなぁ。
Posted by ブクログ
明治期に日銀や東京駅を設計し、近代建築の祖となった辰野金吾の物語。巻末に自ら史実に基づくフィクションと書いてあるから物語なのだろうが、参考文献の記載がないのはなぜなのか。実在の人物を描いているにも関わらず、出版社が参考文献なしをよしとする基準はどこなのだろう。高橋是清が意外(私が知らなかっただけなのですが)な役割を演じていて、興味深かった。この作品と無関係だが、明治期の血気盛んな人物を描くと、なぜかみんな漱石の『坊ちゃん』に似るのは気のせいか。日銀といい、東京駅といい、新しい工法をその都度試していく先駆者の心意気には感服する。