【感想・ネタバレ】天才たちの値段 美術探偵・神永美有のレビュー

あらすじ

「その絵がもし贋物なら、見た瞬間、苦みを感じ、本物なら甘みを覚えます」。美術品の真贋をその舌に感じる味覚で見抜く美術コンサルタント・神永美有。
短大の美術講師・佐々木昭友にもたらされた、「ボッティチェッリの『秋』が発見された」との情報、半信半疑で出かけた佐々木だが、同席した神永は絵を見た瞬間、強烈な甘みを感じたという。「秋」はイタリア・ルネッサンス期の巨匠の真筆なのか、それとも手の込んだ贋作なのか?
ボッティチェッリ、フェルメールから正倉院御物、江戸時代の涅槃図まで、美術にまつわる謎を解く5篇。
解説・大津波悦子

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ネタバレ

美術品の真贋を眼力ではなく舌で見わけるという天才美術探偵・神永美有が、ボッティチェッリやフェルメールなどの泰西名画から正倉院宝物まで、様々な美術品にまつわる謎を快刀乱麻を断つかのごとく解き明かしていく。

美術探偵・神永が、ちょっとまぬけで人の好い美大講師・佐々木をお供に、美術品の真贋を味覚で判定するという美術ミステリーの連作短編集。

この作品では、美術品の価値の高低は真贋や芸術的な優劣という基準だけではなく、歴史的な研究対象としての価値であったり個人的な思い入れのある特別な品であったりという様々なアプローチで、美術品の魅力に迫っていきます。

単に美術品の鑑定での謎を解いていくだけに収まらず、その品に関わった人たちのさまざまな思いや心の動きが明らかになっていき、視点を変えると見事に一転した真実が見えてきて思わずカタルシスを憶えるという、素晴らしい構成になっています。

ホームズ役の神永とワトソン役の佐々木のコンビの推理合戦も楽しいわ、知的好奇心も刺激されるわ二転三転する構成も楽しいわで、文句のつけようの無いほど面白かった!
悪い人が一人も出てこないというのも読みやすい一因だと思いました。

ラストもいいんですよねー。
頼りないと思ってた佐々木の成長ぶりがグッときます。

鮮やかな謎解きと美術の世界の奥深さが味わえる、贅沢な一冊でした。

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2017年03月07日

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美術品の真贋を舌で瞬時に判別できる神永美有と、女子短大で美術講師をしている佐々木昭友のコンビによる、美術品にまつわる連作短編集。神永は舌で判別というオカルトチックな能力はありながらも、理路整然とした思考を持ち魅力的な探偵役となり、語り手となる佐々木は、はちょっとおとぼけもある名助手役。言わば定番スタイル。
そんな設定の上で取り扱われる美術品については、ボッティチェリ、古地図、涅槃図、フェルメール、アールヌーボーのガラス工芸品と幅広い。どれも含蓄が豊富でいてそれだけでも楽しめるのに、物語としても完成度高し。シリーズ化されているので次作にも期待。

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2021年02月28日

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主人公の美術講師が、ある古本屋の息子である、じきに美術コンサルタントとなる男と出会うところから始まる。
主人公の講師としての知識もさることながら、コンサルタントの男は真贋を舌で感じる変態な上、頭も切れる。メインの知識は講師、それを補填するコンサルタントの男の関係は、この美術ミステリーをより楽しく感じさせる。まさに美術探偵と言える。
構成はいくつかの美術品に関する事件が各話で描かれていく短編型。個人的に好きな話は早朝ねはん。
続編も出ているので非常に気になる。

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2020年08月13日

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美術品を扱う五つの短編集。
ストレスを感じさせない良作。

誠実な学者先生と誰よりも先を見通す天才という、典型的なホームズ&ワトソンコンビ。が、趣は少し異なる。
本作の探偵役はホームズポジションとしては珍しいくらい、不遜でも変人でも嫌味でもない。口調は丁寧だけど紳士然とし過ぎているわけでもない。なんというか控え目。必要最低限のお手伝い。
代わってワトソン役がよく働く。(語り手なのだからワトソン目線で話が動くのは当然として)ここでいう「働く」というのは読者に対する蘊蓄披露という意味。優秀なワトソン。

ただ、私が見逃しているだけなのか、二人の年齢設定がよくわからず人物像をイメージしにくい。

蘊蓄もよかった。ぜひ続刊も読もう。

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2013年01月04日

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ネタバレ

美術史や美術品にまつわる謎を解いていく推理小説。
その深さや関連つけの見事さに思わず引き込まれます。

美術史の勉強しようかなって思ってしまいます。
続編も楽しみです。

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2012年10月13日

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美術史の助教授・佐々木は、本物を見ると舌に甘みを感じるという天才鑑定家の青年・神永美有に出会う。
ボッティチェッリの知られざる絵画「秋」を見て欲しいという画商の依頼で訪れた館には、初代館主の子爵が大正時代に東ヨーロッパで買い付けたという絵が壁にはめ込まれていた。
確かに名品だったが、さすがにボッティチェッリとは断定しかねて…?
なぜか神永は本物と断じて買い取ろうとしているらしい。
その理由とは?
画学生の実家にある蔵から出てきた古地図は、値打ちがあるものか?
仏ねはん図の不自然なポーズの意味は?
蒐集家だった佐々木の祖母が遺言に残した謎は?
佐々木が畏敬の念を抱いていた美術書専門の古書店主が、神永の父親と知り、羨ましく思う佐々木。
だが佐々木も祖母が蒐集家という家系なんですね。
アール・ヌーヴォーのガラス器などに財産をつぎ込み、二人の娘のうち謎を解いたほうに、見る目があって末永く大事にしてくれそうだからという意味で、全財産を譲る。どちらも正解したら折半という遺言。
佐々木の母は入院中で、いきりたつ伯母と対決するのに、佐々木は神永の力も借りることに。
有名な絵画や美しい物が出てきて、楽しい。
詳しい事情はひたすら感心して読むしかないが…
才能を認め、信頼を増していく関係。
登場人物たちそれぞれの過去への思いや、張り合いつつ謎解きに夢中になる気分、心配りゆえの嘘。やがて訪れる変化の時。
気分良く読み進められました。

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2010年09月16日

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仰々しいタイトルのわりには普通。良い意味で。
本業が心配になるくらい間抜けな講師に、茶目っけのあるクールな天才。
二人を中心に温かい雰囲気があって、美術のことよく知らなくても読みやすくて、映像が浮かぶ感じがした。

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2010年05月07日

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解説で『大漢和辞典』について触れられていましたが
怏々として、とか
巧言令色少なし仁、とか
気になってピックアップした言葉でした
(両者とも高校国語の教科書で出てきているので)



表紙
《アンドロス島のバッカス祭》1523-1526
イタリア ルネサンス期のヴェネツィア派巨匠
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ

酒の神ディオニュソスの話、バッカス祭の話、興味深かった

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2024年02月11日

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門井氏の本は「家康、江戸を建てる」を先に読んだので、時代小説の作家と思ったら、推理小説でのデビューとのこと。この本のタイトルに惹かれて読んでみたが、膨大な美術の蘊蓄が書かれていて読み飛ばしながら読んで行った。本物かどうか、見た瞬間に味で分かるという、特異体質の青年美術コンサル(神永)と美術専門の短大講師(佐々木)が繰り広げる真贋論争。表向きは短大講師が勝つのだが、その裏でひっそりと神永が勝っているというパターン。神永のせいで仕事を無くした学芸員がライバルとして何度も立ち塞がる。政治家の親と子や佐々木講師の伯母との遺産問題も何となく最後は良い話しで終わる。もっと素人も分かる美術論争だったらとも思うが、多彩な人物像や筋としては悪くない。続編に手が出るかどうかは?

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2022年05月09日

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舌で真贋が分るという特殊設定なので、鑑定にまつわるといっても、こっちが本物で終る、単純な話は当然ない。美術品やその鑑賞にまつわる蘊蓄をベースに、凝った話が続く。細かいところのまで神経が行き届いた美術ミステリとして完成度は高いが、重点はそこにはなく、人間ドラマの方のようだ。きちんとした、と形容されるような話が好きな人には合うと思う。

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2021年10月27日

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天才肌の神永と理論派の佐々木が問題のある美術作品の真偽を見極める。専門的知識満載ながら、ストーリーとしても面白い。脇役も活躍し、対決形式でのやり取りには思わず見入ってしまう感じがした。佐々木さんの家族に関わる最終話が特に面白かった。

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2018年07月20日

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ネタバレ

読んでいて賢くなった気がする小説をたまに読みたくなります、そんな時に読みました。
そういう目的としてはちょっとむずかしすぎました、もう少し本書に出てくる芸術などに関する知識があればもっと楽しめたのかもしれません。

たまに描写される、友人関係や親子関係など人間模様も有り、決して主要テーマではないにせよ心温まる話ではあると感じ、おかげで小難しい話は殆どわからないながらも楽しんで読めた。

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2016年11月24日

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美術ミステリー。

美術史はもちろん、技法手法も知っているともっと、面白いんだろうな。

それでも十分に楽しめる一冊。
切り口が斬新。

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2012年10月03日

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本屋さんで平積みされていたので、何となく買ってみた本。だったのですが、ワタクシ的当た~り~♪♪どんどんぱふぱふ♪♪

どのへんが気に入ったのかな?と考えてみて出た結論は、
登場人物とお話の関係が、物凄く優しいからではないかな?と思うのです。
ずばずば物を言うくせに、肝心なところはやんわりとしている、とても関西人ちっくな優しさです。
大事なところをズバッと指摘してくれる関東人的優しさがお好みの方には、「はっきりしろってんだい!」と思われるかもしれません。

主人公の短大美術講師の佐々木氏と、相方の美術コンサルタント神永氏。
という二人の周りで発生する、鑑定と無理難題を解く。という、美術話込みの推理小説。

お話の内容的には、美術に興味のない人には全く興味が湧かないかも…と思われます。
実際、当たりだったとはっきり書いちゃったワタクシですが、内容を全く覚えていません。
専門的過ぎて難しい以前の、分かりません状態です…。

ただし、文章やお話が柔らかく優しいので、完読は難しくありません。
自分にないジャンルの本に興味のある方や、新しい本を読んでみたい方は、お手に取ってみてはいかがでしょうか。

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2012年01月03日

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絵画や美術品を題材にしたミステリ短編集。
作品を見ることができなくても、文章で想像させられる力はすごい。
キャラはもっと個性が強くても良い気がする。

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2011年11月15日

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 題材としては蘊蓄満載で面白いのですが、人物がたってこないのが難点です。

 おしいんだけどなぁ、と思う作品です。

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2017年08月15日

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舌で美術品の真贋を見抜くという超能力を持つ神永を探偵役とした美術ミステリー。
美術のうんちくがたっぷりで、素人のわたしは分からないながらも楽しめました。
物の真贋だけに留まらず、その背景に人間ドラマもあり、驚きの真相の連続です。

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2010年12月30日

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美術品の真贋を「舌」で感じ分けることのできる得意な体質を持った神永美有と、短大の美術講師の佐々木昭友が挑む美術品鑑定ミステリー。

文庫の帯には二人のことを「最強コンビ」と表していますが、神永が天才で佐々木は道化役という感じでした。

読み物としてはとても面白かったのですが、読者が推理できる要素がほとんどないので、ミステリーとしては成り立ってないですね。全部、「ふーん」で終わってしまう感じ。「へ~」を楽しむという読み方ならお勧めです。

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2010年05月17日

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先に続編を購入していたのでこの作品の
文庫化は嬉しい。
美術探偵と名うっての作品だけあってかなり
美術家達の名前などがバンバン挙っており、少々
知識のない人間が読んだ場合にその理解度は難解か?

変則的なワトソン役の視点で語られる短編連作の
スタイルは効果的で、全編魅力のあるストーリーと
謎が興味を惹き、美術に詳しくない自分のような人間でも
単純にミステリとして面白く読めます。長編だと恐らく
美術面でのミステリ展開に着いていけなくなりそうだもの。

記憶が曖昧ですが「ギャラリー・フェイク」とか
「写楽殺人事件」を読んだ時のような自分が未知なるもの
に対するワクワクする興味を起させてくれます。今まで
読んだ門井作品の中では一番。

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2010年03月11日

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