小川一水のレビュー一覧
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ネタバレ自分を自分たらしめるものは何か?十万年の戦争に耐え抜き、任務を達成させるような強いものとは何か?オーヴィルにとっては愛であるーーサヤカとの儚い夢のような。あらゆるものが時の風に吹かれ、時の砂に埋もれ、遥か遠くの時間枝に別れてしまっても、胸に残る愛の残像。これらが本作の根底に流れており、知性体としてのオーヴィルをぶれることなく描いている。
叙情的な描写の繊細さもさながら、時間遡行と歴史改変をテーマにしたSFとしても秀逸である。未来からの援軍が来ないので、この時間枝が滅びることが分かってしまう辛さ。カッティ・サークの冷徹なまでの理屈は分かるのだが、どうしても情緒の部分で受け容れることのできないもど -
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ネタバレこれは面白い。極限状況におかれた孤独な者が、他者とのつながりを見いだして懸命に生きようとする、そんなシチュエーションの短編集4編。
「ギャルナフカの迷宮」:政治犯として捕まった主人公が地下迷宮に放り込まれる。わずかな食糧と水、迷宮の地図の一部だけを頼りに脱出を試みるが、迷宮の中には「生肉喰い」がいて...
極限状況での孤独なサバイバルのはずが、少しずつ様相が変わっていくところにグイグイ引き込まれる。
「老ヴォールの惑星」:超臨海水の海面が支配する世界のお話。天変地異をきっかけに惑星外交信を夢見るが...
感動的な展開が待っている。
「漂った男」:8億平方キロの海原しかない惑星パラーザに遭 -
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副題が「改変歴史SFアンソロジー」と書かれ、帯には「5人のSF作家が語る偽史」と書かれ、知っている書評家の2人が「大推薦!」としている。5人の作家はいずれも知っている人で、今回は私の嫌いな伴名練もいるが短い作品なので一応読んでみようと思う。しかし、大袈裟に歴史改変SFって言っているが、ちょこちょことタイムスリップさせる程度のレベルじゃないかと思い、あまり肩肘張らずに読み始めた。
全体を読み終えた感想としては、石川宗生が意外と健闘している、宮内悠介は全く響かなかった、斜線堂有紀は新しい概念で歴史を引き戻し、小川一水はスパイ系の要素を加え、一番驚いたのは伴名練。伴名練、やればできるじゃないか、ダ -
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良いですねー。社会科学的な観点も含めて、本寸法のハードSFですね。
「環境による意識の変容」を共通のテーマとした4篇を収録。といってもそれぞれの作品に繋がりはなく、テイストも様々で、同じ素材を様々な手法で調理したコース料理を味わった感覚です。なかなか贅沢。
あまりSFを読み慣れていない人が「SF」と聞いて想起するイメージをそのまま作品にしたような、無駄なく引き締まった端正なハードSF揃い。冒頭の「ギャルナフカの迷宮」はSFの「S」風味薄めですが、社会科学系SFと言えますし、普段SFを読まない人にもお勧めできる、文句なしの傑作。
明るい結末の話ばかり、ではありません。暗い未来が待ち受けている -
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29世紀。地球人の植民星メニー・メニー・シープの港町セナーセーの医師カドムは、親友アクリラの依頼で急速に町に広がる疫病を調査することに。その結果、感染源は甲皮に覆われた謎の生物イサリであると判明する。カドムは凶暴なイサリとなんとか意思疎通できるようになるが、星の支配者である領主ユレインからイサリを引き渡すよう命じられてしまう。メニー・メニー・シープの民たちは現領主による厳しすぎる配電制限で生活が立ち行かなくなりつつあり、各地で反乱の種が芽吹いていた。反骨精神旺盛な《海の一統》アウレーリア家の嫡男であるアクリラとイサリを失ったカドムも、電力を独占しようとする領主の陰謀を阻止するために動き始める。