小川一水のレビュー一覧
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ネタバレこれは面白い。極限状況におかれた孤独な者が、他者とのつながりを見いだして懸命に生きようとする、そんなシチュエーションの短編集4編。
「ギャルナフカの迷宮」:政治犯として捕まった主人公が地下迷宮に放り込まれる。わずかな食糧と水、迷宮の地図の一部だけを頼りに脱出を試みるが、迷宮の中には「生肉喰い」がいて...
極限状況での孤独なサバイバルのはずが、少しずつ様相が変わっていくところにグイグイ引き込まれる。
「老ヴォールの惑星」:超臨海水の海面が支配する世界のお話。天変地異をきっかけに惑星外交信を夢見るが...
感動的な展開が待っている。
「漂った男」:8億平方キロの海原しかない惑星パラーザに遭難した男の物語。遭難ではあるが極めて安全で生命の危険は無し、故郷への帰還は絶望的で音信だけは使える、という特殊設定。遭難したタテルマ少尉を音信で励ますタワリ中尉の存在が泣かせる。そして劇的な展開が待っている。
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Posted by ブクログ
副題が「改変歴史SFアンソロジー」と書かれ、帯には「5人のSF作家が語る偽史」と書かれ、知っている書評家の2人が「大推薦!」としている。5人の作家はいずれも知っている人で、今回は私の嫌いな伴名練もいるが短い作品なので一応読んでみようと思う。しかし、大袈裟に歴史改変SFって言っているが、ちょこちょことタイムスリップさせる程度のレベルじゃないかと思い、あまり肩肘張らずに読み始めた。
全体を読み終えた感想としては、石川宗生が意外と健闘している、宮内悠介は全く響かなかった、斜線堂有紀は新しい概念で歴史を引き戻し、小川一水はスパイ系の要素を加え、一番驚いたのは伴名練。伴名練、やればできるじゃないか、ダラダラ無駄に長い長編よりもコンパクトに纏まった短編の方が合っているんじゃないか?感心した!見直した!
それでは、いつものとおり各作品について簡単なコメントをさせて戴こう。
〇 石川宗生「うたう蜘蛛」
最後のどんでん返しでSF登場。それまではどうしてこの作品がSFなんだろうかと思ったが、読み返してみると結構伏線を撒いている。このなかなか巧みな技術に感心した。広義の錬金術師は何でもできる、所謂何でも屋。中にはいかがわしいイカサマ野郎もいただろうに。人を甘利信用し過ぎることは昔も今も危険行為だ。警戒感の薄い偉い人は破滅する。あれ、これってネタバレか?
〇 宮内悠介「パニック――一九六五年のSNS」
おもしろくない。
〇 斜線堂有紀「一一六二年のlovin' life」
「詠語」って素晴らしい当て字。これだけでこの作品を最高評価せざるを得ない。それと、時間旅行者(女房)が昔改変させられた歴史を元に戻す地味な歴史改変とも思えるが、違う背景シナリオの可能性もある。主人公の心の動きも考えると百合の要素もある。結果として、かなり盛沢山な作品になり、今後の作品にも期待がかかる。
〇 小川一水「大江戸石廓突破仕留(おおえどいしのくるわをつきやぶりしとめる)」
ちょっと大雑把な展開、更に悪く言うとこじつけの様な気がするが、エンタテインメントの要素もあり、小川作品らしい面も垣間見られた。
〇 伴名練 「二〇〇〇一周目のジャンヌ」
こちらは石川作品と真逆で、最初からSFの世界、典型的なパラレルワールド、王道ですね。これまで主人公が何回も何回もループする作品はあり、本作品の様に少しずつ良い方向に改変するものはあったが、さすがに20,001回も繰り返すアイディアは凄い。それだけでも伴名作品を十分に評価できる。余談だが、最近の将棋中継では形勢判断にAIが用いられる。AIが読みを深める度に形勢が徐々に変化していく。1万手読むのと1億手読むのとではかなり未来が違ってくる場合がある。まあ、AIほどではないが、この世界も場面を少しずつ変化させることで無数の将来が生じる。勿論、今回は億レベルまでには行かないが、主人公は永遠に繰り返す世界を体感する訳だ。ある意味、凄まじい程のパラレルワールドが折り重なった世界を漂流しているとも言える。素晴らしい作品だ。
今年突然現れたこのアンソロジー、日本SF界に楔を撃ち込む一冊になる可能性を秘めている。
藤井竜王、棋王戦挑決敗者復活戦、頑張れ! -
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良いですねー。社会科学的な観点も含めて、本寸法のハードSFですね。
「環境による意識の変容」を共通のテーマとした4篇を収録。といってもそれぞれの作品に繋がりはなく、テイストも様々で、同じ素材を様々な手法で調理したコース料理を味わった感覚です。なかなか贅沢。
あまりSFを読み慣れていない人が「SF」と聞いて想起するイメージをそのまま作品にしたような、無駄なく引き締まった端正なハードSF揃い。冒頭の「ギャルナフカの迷宮」はSFの「S」風味薄めですが、社会科学系SFと言えますし、普段SFを読まない人にもお勧めできる、文句なしの傑作。
明るい結末の話ばかり、ではありません。暗い未来が待ち受けている不穏な雰囲気を漂わせたまま幕を閉じる作品もあります。それでも、登場人物たちが(時には悲壮な決意混じりながらも)共に協力し合い、前向きな勇気を持ち続けていることが、爽やかな読後感を残します。ちょっと理想的過ぎやしないか、と思うところも、正直ありますけどね(^_^; SFだもん、これぐらいキレイでも良いじゃないか!
小川一水氏の作品は、これまでアンソロジー収録の短編をいくつか読んだことがあるのですが、実はその「理想的過ぎる」ところが少々鼻についてしまい、あまり楽しめなかったのでした。この作品集に納められている短編群は、バランス感覚が絶妙で鴨的にもとても楽しく読むことができました。他の作品も、機会があればチャレンジしてみたいと思います。 -
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29世紀。地球人の植民星メニー・メニー・シープの港町セナーセーの医師カドムは、親友アクリラの依頼で急速に町に広がる疫病を調査することに。その結果、感染源は甲皮に覆われた謎の生物イサリであると判明する。カドムは凶暴なイサリとなんとか意思疎通できるようになるが、星の支配者である領主ユレインからイサリを引き渡すよう命じられてしまう。メニー・メニー・シープの民たちは現領主による厳しすぎる配電制限で生活が立ち行かなくなりつつあり、各地で反乱の種が芽吹いていた。反骨精神旺盛な《海の一統》アウレーリア家の嫡男であるアクリラとイサリを失ったカドムも、電力を独占しようとする領主の陰謀を阻止するために動き始める。〈天冥の標〉シリーズ第1作。
上下巻一気読み!面白かった〜。設定も登場人物もてんこ盛りのSF小説だけど、サービス精神にあふれていながら無駄を削ぎ落としたエンタメ特化の文体でリーダビリティが高い。「雄閣」と「雌宮」など、特殊用語のネーミングセンスも好き。
惑星規模のパンデミックを予見した作品としてコロナ禍中に話題となったのがきっかけで手に取ったシリーズだが、このI巻時点では疫病はイサリという謎の生物が登場するためのフックにとどまっている。メニー・メニー・シープはかつての入植船シェパード号に備わる発電炉のみに電力供給を頼っており、その全権を握る領主への反乱が物語の主軸だ。
それと同時に、メニー・メニー・シープという星自体に隠された巨大な秘密があるとちょくちょく示唆される。シリーズものなので解き明かされない謎も多いが、この巻でのクライマックスは「ユレインの目的は本当にシェパード号でこの星から逃げることなのか」という謎の真相。それが明かされたあとは突然ガラッと小説のジャンルが変わってしまうのが最高に楽しかった。『鉄血のオルフェンズ』みたいな絵面を思い浮かべながら読んでいたのに、いきなりギュスターヴ・ドレが描いた地獄絵図になる感じ。
キャラクターでは石工のリリーが好き。クレヴという名を棄て、リリーと名付けられ直して「怒りたい」という自分の気持ちに向き合う彼女には共感せずにいられない。遠い未来の遠い星の話だけど、民の描き方、社会のあり方などに「日本人が書いた小説」だということをビシバシ感じる物語だった。 -
購入済み
初、小川一水読みでした!
作者さんの別作品を人に勧めてもらったものの、そちらは長編シリーズだったため、まずは短編集からと思い、こちらを読みました。
どのお話も素敵だったのですが、SFにあった固いイメージとは異なる読みやすい文章、思わず顔が綻んでしまう様な描写が魅力的な一冊でした!
別作品もこれから読むのですが、楽しみです! -
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新進気鋭の作家様によるSF中短編書き下ろしプラス創元SF短編賞受賞作アンソロジー
自分の裡に形成される「SF固定概念」を毎回アップデートしてくれる最先端を走るシリーズ
ティプトリーを読み涙していた頃、このような未来型が到来すると露ほども予測せず、また今後どのような作品が紡がれてゆくのか、想像するだけで萌えます
読みごたえあります!
『未明のシンビオシス』
南海トラフ大規模地殻変動が発生、列島の姿すら変わってしまった日本
荒廃した世界で生き延びる主人公たちの微かな希望を描いた近未来SF
『いつか明ける夜を』
光のない闇の世界が、夜と昼に別たれた
言い伝えの神馬と少女は、世界の救世主になれるのか? 世界の真実とは?
詩的に描かれた作品
『1ヘクタールのフェイク・ファー』
気がついたらブエノスアイレスに居た…主人公の日本人男性…好意で拾ってもらった女性に部屋から追い出され…めくるめく思考を文字で綴った興味深い作品
『時間飼ってみた』
動画生配信でリアルSF考察する《ときときチャンネル》シリーズ
絶え間なく入るコメントも愉快で、まさに新世代の作品
『ラムディアンズ・キューブ』
電車内で目があった男女…恋愛に発展、、ではなく、壮大な物語が待ち受ける骨太の中編バトルSF
『ほんとうの旅』
“ほんとう”って、何だろう?
事実は人の捉え方によって違うものだし…
列車に乗り合わせたふたりの垣根のない会話に癒される作品
『神の豚』優秀賞
「兄貴が豚になった」
連絡を受けた主人公リリーは急ぎ実家に戻るが、そこに居たのは兄らしからぬピンクの可愛い子豚だった…
食糧、感染症、世界は未だ問題が山積だけれど、伝えてゆきたいことがある、若者たちの熱いメッセージが込められた近未来SF
『射手座の香る夏』正賞
「意識転送中」で横たわっているだけの作業員の「生身の体」が忽然と消えた
まるでミステリーのような物語は、調査する警察官と若者たちの流行「動物への意識転送」が互いに絡み、伝説の狼へそして真実へと導かれる近未来SF